ベテランが変わるきっかけを考える

ベテランは変わりにくいということがよく言われます。たしかになかなか変わろうとしない方もいらっしゃいます。しかし、驚くような変化を見せてくれるのもまたベテランなのです。いつも言っていることなのですが、ベースとなるものがしっかりあるだけに、きっかけがあれば大きく進歩できるのです。よい方向に変わっていく学校は、その過程で必ずと言っていいほどベテランの変化が見られます。ベテランが変わることが、学校がよくなる条件のようにも思えます。では、ベテランが変化するきっかけはどのようなことなのでしょうか。

一つは、若手からの刺激です。ベテランは自分のスタイルが確立されています。他者の授業を見て、「そういうやり方もある」と認めても積極的に取り入れようとはあまりしません。しかし、若手の授業での子どもの姿が自分の目指すものに近いと話が変わります。経験の浅い者が自分の域に近づいてくるとプレッシャーを感じます。よい意味でプライドの高い方ほどその傾向が強いようです。経験が少なくても若手が子どもを育てることができた理由をさぐり、その要素を自分の授業に取り入れようとします。もともと力のある方たちなので、すぐに授業は変わっていきます。子どもがよい方向へ変わりだす手ごたえを感じれば、継続的に授業改善に取り組むようになります。

一方、自分の授業に課題を感じているベテランもかなりいらっしゃいます。しかし、ベテランだからこそ、なかなか同僚には相談しづらいところがあります。また、自分の授業スタイルを大きく変えるには勇気がいるものです。課題を感じていてもなかなか変わることができないでいるのです。ところがこういう方も、授業改善につながるちょっとしたヒントや授業技術に出会うと、それをきっかけとして変わっていくことがあります。授業スタイルを大きく変える必要がないものであれば、気軽に試すことができます。たとえちょっとしたことでも、ベテランの経験と組み合わせることで思った以上の効果を見せることもあります。些細なことでも授業を変えてくれることを経験すると、今度は積極的に新しいことを吸収し、挑戦しようとし始めるのです。

いずれにしても、ベテランだからこそ挑戦さえすれば結果を出せるのです。問題はここで述べたようなきっかけをどうやってつくるかです。若手の授業づくりにベテランをアドバイザーとして参加させることやワークショップ形式の実践的な授業研修を学校全体でおこなうことなど、ベテランを巻き込むような取り組みが必要になります。ベテランが変わっていく学校は、こういったことを積極的におこなっています。ベテランは変わらないと決めつけて若手だけに注目するのではなく、ベテランの変化をうながすことも視野に入れた取り組みを考えてほしいと思います。
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