高校入試問題に挑戦して考える

本日は愛知県の公立高校入試Bグループの面接試験です。多くの受験生にとってはこれが最後の試験となることと思います。教師時代は共通一次試験(現センター試験)や愛知県の公立高校入試の問題は、全教科に目を通すようにしていました。それぞれの教科でどのような力が子どもたち求められるかを知ることは、教える側にとってもとても大切なことだと考えていたからです。
どなたも自分の専門教科はチェックされますが、他教科に関してはあまりしっかりとは見てないように感じます。ちょっと意地悪な言い方をすれば、高校入試は義務教育の範囲ですから、基本すべて解けるはずです。他教科を解くということは、教える側ではなく子どもの視点に立つことになります。また、子どもたちは全教科を受験するわけですから、同じように教師も全教科を解いてみることで、子どもの立場でどんな学習が必要かに気づくことができるのです。

今回、新聞に掲載された筆記試験問題にちょっと力を入れて挑戦してみました。
どの教科にも共通して感じるのは、細かい知識を要求していないことです。その代り、一つの知識があればすぐに解けるという問題は少なくなっています。基本的な知識を組み合わせて考えることで初めて正解にたどり着けるように工夫されています。出題者の意図がよく伝わります。

数学は私の専門教科なので、紙と鉛筆を一切使わずに頭の中だけで解くことにしています。紙と鉛筆がなければ解けない問題は、ちょっと複雑か計算が面倒なものということになります。今回は紙と鉛筆の出番はありませんでした。簡単だということではありません。面倒な計算に時間を割かせるのではなく、考えることを重視しているのです。
社会科の細かい知識はもうすっかり忘れています。しかし、資料を読み取る力、社会人としての基礎的な知識や大きな歴史の流れをつかんでいれば、確実に解くことができます。
理科も、基礎的な知識やモデルをもとに、推論するといった論理的な力が要求されます。
国語は感覚ではなく、本文に書かれていることを根拠にしなければ解けないように設問が工夫されています。文章自体は難しいわけではありませんが、解答するために何度も本文に戻りました。
英語は、難しい単語や構文を知らなければ解けない問題はありません。しかし、問題の文章で示されているsituationを理解できなければ解答できないように工夫されています。コミュニケーションを意識した問題と感じました。

全教科に共通することは、知識の総量よりも考える力を要求しているということです。私が興味を持ったのは、受験対策をしている塾ではどのようにして教えているのかということです。問題のパターンを分析して解き方を教えているのでしょうか。もしそうであれば、子どもたちはたくさんのパターンを覚えることになります。パターンが変われば対応できません。不毛な学習方法になります。思考力をつけるのであれば、自分で考え、考え方を発表したり、議論したりすることが必要になってくると思います。受け身では力がつきません。よほど基礎となる思考力がなければ、集団でのかかわり合いが不可欠です。個別学習では、問題の答を教えることができても、子ども自身で気づくための働きかけをよほど工夫しなければ思考力はつきません。そのようなノウハウがあるのならすごいことです。しかし、私の知る高校生の実態は、勉強は覚えることだと錯覚している子がほとんどです。
これは学校でも同じことです。思考力は教えることでは身につきません。子どもが自分の問題として考える経験をたくさん積まなければいけません。

受験対策を口にする先生の授業が、知識伝達型がほとんどというのも不思議な気がします。こいう方は入試問題を見て、「こういう問題を教えておかなければ」「このパターンを事前に教えておいてよかった」といった感想を持たれているのではないでしょうか。このことがいかに教育の本質から外れているかは、説明する必要はないでしょう。
一方子ども同士のかかわり合いを大切にしている先生方はどうなのでしょうか。こういう入試問題は歓迎すべきはずです。もし子どもたちがこういう問題で点が取れないなら、「活動している」が「考えていない」授業だということです。知識が足りなくて解けないのなら、基礎的な知識すら身についていないということです。

日ごろ私の授業アドバイスでは、試験の結果がどうであったかをあまり話題にしません。それ以前の段階の授業がまだまだ多いからです。しかし、先生方の授業力の向上にともない、こういうことも話題にしていく必要があるように思いました。
ちなみに、入試問題に挑戦した結果は、とりあえず義務教育卒業レベルは維持できていたようでした。(笑)
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31