2/11 前田康裕先生
「GIGAスクール 2年目 一人一台のタブレット端末をどう生かすか」をテーマに、熊本大学大学院教育学研究科特任教授の前田康裕先生に講演をしていただきました。
学校現場では、タブレット端末が普及し、ICTの活用が広がっています。だからこそ、今後の学校教育についての在り方を具体的にお話ししていただきました。その内容の一部を紹介させていただきます。 *** 【第 1 部】「つけさせたい力について」 ○そもそも「学ぶ」とは 「学ぶ」とは、何かに気づき、自分が変わること。 ○生成 AI 最近では、質問に答えたり、絵を描いてくれたりするAIが誕生。「Chat GPT」が話題になっている。 そして、社会の高度化・複雑化、予測不可能な社会になっていく。 だからこそ、自ら問いを立て、その答えを創造していく能力が不可欠。 特定のタスクを解決する能力は AI が人間を上回るが、AI そのものが問題を解決してくれるわけではない。 批判的思考力や創造力といった、AI を活用するという新たなアプローチで問題を解決する力が人間には求められる。また、力を合わせないと複雑な問題解決は難しい。 コンテンツベースの学習(領域固有の内容(content)中心で何を知っているか)に加えて、コンピテンシーベースの学習(汎用性の高い資質・能力(compitency)中心でどのような問題解決を現に成し遂げるか)を行なっていく。各教科の力を伸ばすのに加え、教科横断的な視点に基づき育成する学習の基盤となる資質・能力を育成することが重要。 学習指導要領では“学力”ではなく “資質・能力”という言い方が使われている。 ○「従来の授業+ICT」ではなく ICT を使って授業改善を行う 「教師が教える授業」から「子どもが学びとる授業」へ ○めあて(学習課題・到達目標) 協働して解決できる課題、目標を設定する。問いを立てる力を日常の教科学習で行い、育てていく。 (算数)平行四辺形の面積の求め方を誰が聞いても分かるように説明しよう (社会)歴史的な建造物の映像から問いを考える。 (体育)自分の動きから問いを立てる。 ○対話(学習者間の相互作用) 思考を見える形にする (国語)思考ツールを使って情報の整理・分析 タブレット型端末を学習のためのメディアとして捉える →自分の考えや集めた情報をやりとりするメディア ○振り返り(リフレクション) 活動による気付き(学習内容・学習方法)を概念化する 形成的評価でメタ認知力( どうすればよりよく学べるかを考える力)を伸ばす。 メタ認知力が高いと、 ・不安を感じたり失敗したりしても冷静に対応できる ・自分と他者との関係を良好なものにできるので協調性が高くなる ・自分の長所も客観的に把握できるので意欲も高まりやすい 振り返りによる学びの言語化を行い、学びを交流し、評価することが大切。 評価の視点 ・自らの気づきを明確にしている記述 ・自らの伸びや課題を実感している記述 ・他の経験や学習とむすびつけた記述 ・友達からの学びを意識した記述 △振り返りの形成的評価に時間がかかってしまう →あらかじめコメントを考えておき、子どもが書いたものに合わせて選択する。 デジタルによる振り返りの共有、振り返りを重視した学習活動は、 ・デジタルによってより効率的で効果的 ・自分の言葉で振り返ることで、自分で学びとる授業となる ・振り返りを共有することで、学びとり方まで学ぶ *** 【第 2 部】「授業改善と校内研修について」 ○Web サイト ・文部科学省 「StuDX Style」 ・経済産業省 「未来の教室 LEARNING INNOVATION」 ○対話を重視した学習形態 自分の意見や他の意見を聞きながら学習していくスタイル 精緻化 一般的な意味 →曖昧さを解消するために、言葉や視覚的要素などを明確化すること 学習活動では →自分が学んでいることについて自分の言葉で詳しく説明すること <探究学習の 4 つのレベル> 〈レベル 1 〉確認のための探究 →教員が作成した問いに知する結果が事前に示されており、生徒は探究の基本原則を確認する。 〈レベル 2 〉構造化された探究 →教員が作成した問いと進め方が提示され、生徒は自ら探究学習を進める。 〈レベル 3 〉ガイド付きの探究 →教員が作成した問いが提示され、生徒は自ら考えた進め方で探究学習を進める。 〈レベル 4 〉自由な探究 →生徒が作成した問いを、生徒が考えた進め方で探究学習を進める。 ○自分たちの学びが、社会に役立つという経験をさせる ・防災学習の内容を地域の方々に伝える ・生徒会活動「いじめ対策プロジェクト」 ・統計データを生かす ・いじめの漫画で表現 ○Creative Confidence(創造力に対する自信) 「自分には周囲の世界を変える力がある」という信念 が、子供たちの資質・能力に繋がっていく。 「教師の指導のもとで学習する段階」から、「学習者が自律的に学習する段階」を目指す。 ○これからの校内研修 ・教師自身が受け身になっていないか ・研修が授業改善につながっているか 教師は学んだことを実践し子供の変化を見て自分自身も変化していく必要がある。 ○ICT 教育モデルカリキュラムから ・小学校 学年の系統性が弱い ・中学校 教科横断的な視点が弱い ○これからの教師の役割 教える専門家→学びの専門家へ ○研究授業では... (1)授業者の自評 (2)タブレットで一斉に記入(良かった点と改善点)→授業者はすぐに意見を把握することができる。 (3)対話による改善のアイデアを出し合う 改善点を中心に少人数による対話をし、改善点の具体案についての全体での意見交換を行う。 (4)対話によるポイントの概念化 (5)対話による自分の授業の改善 →自分自身の授業を振り返る (6)全体の振り返り(学んだこと) 一人一人の授業改善の視点を全体で共有する。 ○校内研修=教職員の協働による問題解決学習 ・スキル向上 ・情報の共有 ・カリキュラム・マネジメント に繋がる *** 前田先生のご講演を聞き自身の普段の指導を振り返ってみると、日々の忙しさから心の余裕がなくなり、子どもと接する上で大切にしたいことを見失っている自分がいました。日々の指導のひとつひとつから意識して改めていきたいと思うことができました。 前田先生、ありがとうございました。 |
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