川上先生セミナー1
6月9日に東京都立矢口特別支援学校の川上康則先生をお迎えし、「通常学級における、発達につまずきがある子どもの輝かせ方」というテーマで講演していただきました。その一部をご紹介します。
まず初めに、子どものつまずき、困難さを感じるところからセミナーはスタートしました。文章を目で追いながら音読するのが困難な状態、体をうまく動かせない状態を体験し、どんな支援があれば、その子にとってよいのかということを考えました。音読で困るならリーディングスリットを活用してみる、運動で困るときは、手順表示をしてみるなどの手立てを提示されました。その子の立場になって考えることが大事であると学びました。 「子どもはルールよりもラポール(信頼関係)に従う」というお話がありました。信頼関係の中身は、1自分が認めた大人、2自分のことを分かってくれる大人の2つ。やり方(How to)を求めがちだけれども、あり方(To be)を見直さないといけないことを教えていただきました。 崩れる学級の原因についてもお話していただきました。学級経営には、「軸・枠・型・幅」が必要だが、これらを崩しにお試し行動をとる子がいます。また、教師に過度な身体接触をしてくる子がいます。「ぶれない、動じない、揺るがない、かつ、その子の持ち味を引き出す」ことを目指すとお試し行動をさせなくすることにつながります。腕に巻きついてきたり、膝の上に座ってきたりする子は意図的に離れないとどんどんエスカレートしてしまいます。「距離をとる」、「やってもらえるという誤学習をさせない」という2つを心がけていくひつようがあると教えていただきました。 川上先生セミナー2
子どもたちの中には、理解がゆっくり「スローラーナー」がいることをお話しされました。スローラーナーは、行間を読み取ること、比喩的な表現を理解すること、言葉の書き写しになどに困難を抱えている。そんな子どもの学びにくさの分かる教師になろうということをお話していただきました。
川上先生は、お話の間にペアトークを何度か行いました。ペアトークの意義として、1理解のレベルを揃える、2インプットした内容はアウトプットで定着する、3他人のフィルターを通して学ぶ、4話すことでガス抜きができ、集中力が続く、の4つを挙げられました。しかし、ペアには能力差があるので、質問の難易度で調整するなど、配慮が必要なことを学びました。 「安心してわからないと言える教室をつくりましょう」というお話もされました。わからないが続くとやろうとしなくなってしまいます。対策としては、援助要求スキルを教えてあげる。しかし、スキルだけでなく、自尊感情と合わせて考える必要があります。困ったが言える人は自尊感情が高い人で自尊感情が低い人は、恥ずかしいという気持ちを持っています。だから「ピンとこない人?」など間接的に聞くことも一つの手段。そしてできたことは、「できたね!」と褒めてあげる、自尊感情を大切にすることを学びました。 川上先生セミナー3
「できていることを発見しよう」というお話を聞きました。苦手を強みにするリフレーミングで視点を変えて、子どもの価値を引き出すことができます。反省しない→切り替えが早い
褒め方についてもお話をしていただきました。コツは短く、太く。「あー」(納得)、「いい」(同意)、「うーん」(降参)、「えー」(驚愕)、「おー」(感嘆)皮肉を込めずに褒めることが大切です。高学年向けな大人っぽい褒め方もベスト5で教えていただきました。1深い(読みが)2鋭い(見方が)3大きい(スケールが)4ちがう(着眼点が)5助かる(頼りにする) 逆に叱り方のコツも教えていただきました。コツは、褒めるときと同じで、短く、太く。気を付けなければならないことは、1行動を叱る(人格の否定をしない)、2意欲まで否定しない、の2点です。最後は、ハッピーエンドで終わるとスッキリします。叱るには、「覚悟」、「基準」、「技術」が必要です。効果のある褒め方・叱り方は、どちらも好球必打であることを学びました。 最後に二次障害についてお話していただきました。周囲の無理解や誤解は、ODD(反抗挑戦性障害/反抗挑発症)やOD(行動障害・素行症性 )などにつながることがあります。二次障害に陥らないためには、1「ポジティブな自己理解、2「レジリエンス」の高さ、3誰かに必要とされている感覚(貢献感覚)が大切になります。レジリエンスは「心の回復力や抵抗力、再構成力」などと定義されます。学校には、もがき苦しんでいる子の気持ちが分かる教師が必要です。子ども達の日常的な姿を見ている教師だからこそ、サポートができると教えていただきました。 今を見直し、教師としてどうあるべきかを見つめ直す2時間でした。参加者の振り返りからも明日から頑張ろうという思いが伝わるセミナーになりました。 |
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