永田繁雄先生セミナー1
今回は、東京学芸大学教職大学院教授の永田繁雄先生をお迎えし、「考え、議論する道徳の 具体像 〜これからの道徳授業と評価をどう進めるか〜」をテーマに語っていただきました。 このホームページでは、その一部をご紹介します。
永田先生のセミナーでは、まず東京タワーの話から始められました。昭和33年に完成し た東京タワーと同じ年に道徳の授業も開始され、どちらも60年が経とうとしています。 この60年という節目に、道徳が教科化され、教科書が使用されるようになる中で、次の ようないくつかの分かれ道があるのではないかと話されていました。 <分かれ道> 1 授業が今までより「柔軟化」するか。それとも「硬直化」の道を歩むことになるか。 2 「追求型」の授業が中心になるか。それとも「誘導型」の授業が中心のままか。 3 子供が道徳授業をより「好き」になるか。それとも、より「嫌い」に傾くのか。 永田繁雄先生セミナー2
このような「分かれ道」がある中で、これからの道徳の授業においては、教師がより柔軟 に開発的発想をもってチャレンジしなければならないと話されました。
<ポイント> ・教師自身の価値観を教え込むのではなく、子どもの価値観を育むようにする。 ・子どもが切磋琢磨するように、教師も相互に指導のあり方を切磋琢磨していきたい。 永田繁雄先生セミナー3
雨でも風でも立ち上がることのできる植物には強い「根っこ」がある。それと同じように 子供たちの心の中にも、「根性」や「根気」にも似た強い根っこを育む必要があり、そのた めにも子どもが多面的・多角的に考えて、自己の生き方を深めていくことができるように 促すことが大切だとも話されました。
永田繁雄先生セミナー4
これからの道徳は、アクティブ・ラーニングとしての「主体的・対話的で深い学び」が求 められており、そのために文部科学省が示している道徳の三つの「型」( 1 人物への自我 関与 ・ 2 問題解決的な学習 ・ 3 道徳的行為に関する体験的な学習)を別のものとし て考えずに、組み合わせて指導していくことも必要だと話されました。いわば、主人公の 気持ちをたどるだけのような授業などにしてはならず、そのためにも、教科書を活用しつ つも、次のような多彩な教材を使っていくことも大切だと指摘されました。
・郷土や地域の教材 ・学校の教材 ・放送番組 ・「私たちの道徳」 など また、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、これらの「型」や教材を生かしな がら、道徳の授業の方向性としては、主として次の3点に気を付けることが大切だと話さ れました。 1 主体的な学び…問題意識をもたせる。 生活の反省会のようなものにならないように配慮しながら自分事としていく。 教師が示すテーマ→主題 子供が考えるテーマ→問題意識 これらが重なるようにする。 2 対話的な学び…協働的に問題追求をしたり議論をしたりする。 主人公の気持ちばかりを問い続けるような、共感疲れの授業を避けるようにする。 3 深い学び………子ども同士の「みがきあい」や「みとめあい」を生み出す。 多面的=分析的な思考と、多角的=選択的思考を区別した上でつなげたりする。 そして、これらを生かしながら、誘導過程と追求過程とを分けて考えて、今まで以上に、 また、上の学年や中学校段階ほど追求過程が多くなるように努めるべきだと話されました。 そのためにも、「場面発問」と「テーマ発問」の使い分けも大切だと言います。 永田繁雄先生セミナー5
道徳授業が「特別の教科」となることで、今まで以上に評価への配慮が必要になります。 永田先生は、道徳授業が育成する資質・能力は道徳性であるが、それは人格そのものでも あるので、評価は困難であり、謙虚に見る構えが大切だと話されました。 そして、観点別評価は避けて、大くくりなものとして複数時間の中で、子どもの思考の深 まりと、自分のこととつなげて考えていたかを大きな2つの視点として見るようにしてい きたいとお話しされていました。 道徳科の評価では、数値による評価は避けるため、花丸などの丸の数に基づく評価は好ましくないと言います。また、日常のことではなく学習で見られる内容とすること、子ども のマイナス面を指摘しないことなどが大切になると話されました。
道徳科の指導やそこでの評価は、以上のことを心掛け、先生方の日々の挑戦によって、こ れからの授業をよりよいものにしていけるといいですね。 |
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