第5回は、11月16日13時〜15時です。講師は、インクルーシブ教育の専門家『野口晃菜先生』です。ぜひご参加ください。

20代からの教師修業 出会いと挑戦 −1−

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平成27年7月4日(土)に行われた、第3回教師力アップセミナーでの福山憲市先生の講演を紹介します。

出会いを大切に

好きな言葉は「究日」。休日に学ぶのはとても素晴らしい。みなさんは“一流の学び手”だ。 人と出会い、人から学ぶことが一番の宝。 触れ合うことは非常に大事だ。男でも女でも構わず挨拶ができることが立派。  “触れ合うことで繋がる”

福山先生は、1回目は普通に、2回目には学習を、3回目には動き回ることを指示しました。
段階を追って、よりよい方向付けをしていきます。
日頃の指導法が端的に表れています。

1分、30秒など、時間を指定して予告をするとやる気がUPする。 時間を見て行動するようになる。時間を守ることはとても大事だ、

時間で子供の集中化を図っています。そのあとで、「さっき挨拶した人の名前を憶えていますか?」とゆさぶります。
そこでこう続けます。
一つの出会いをもっと大切に!!

今日の主題を、一瞬で全員に浸透させたこの技術は圧巻です。

この写真の方何歳だと思いますか? 25年くらい勤められ、退職されたのに勉強に来られる。人として高まりたいから勉強する、休日でもかまわない。そういう仲間がいるのは素敵だ。

福山先生の自宅で開かれている「ふくの会」は30年続いています。
学ぶ人を大切にされていることがわかります。

次には、新任教諭と教室を周りながら価値付けていきます。
福山先生:今ので何か気付かない?
新採  :帽子がそろっています ごみが落ちていません
福山先生:まだ違うところがある
新採  :???
福山先生:上靴が入っていない所が3か所あったね
新採  :気づきませんでした
福山先生:戻ってみようか

挨拶の時と同様、繰り返しながら、段階を踏んで視点を拡げていきます。
人だけではなく、ものとの出会いも大切

ここでも、福山流が表れています。

20代からの教師修業 出会いと挑戦 −2−

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運命の出会い

初心には3つあると言われました。
3つの“初心”
1.ぜひ初心忘るべからず  → 最初の時の芸の未熟さ 若い時の失敗・苦労は残る
2.時々の初心忘るべからず → その場限りで忘れては何も残らない
3.老後の初心忘るべからず → 「もういい」ということではない

「咲くのも散るのも心しだい」と「心」のもち方の大切さを述べられました。
生涯学習の理念です。

福山先生自身の「初心」を語られました。

授業中「先生、おもろない。やめよ」と子供に言われ、「じゃやめよか」と言うと「やった!」の反応。
涙が出るほどのショックを受けたのが、福山先生を変えたきっかけです。
これを機会に、勉強会に参加し始めたのです。

そして、その事件が起きます。
『忘れ物をさせない方法』というレポートを提出しました。
それを見た土井先生。 

ふざけるな!!お前は子供のことを考えているのか

そこには、子供へのペナルティが書かれていたのです。
その後の飲み会にて…

「よかったな 言われなかったら気付かないまま教師になっていたよ」と言われた。
「変わるから役に立つ人間になるんだよ。それを変身というんだよ」
変わろう!子供たちの役に立つ教師になろう!と、その時決心をした。

福山先生にとって、運命の出会いだったのです。
福山先生の「心」が変わっていきます。

20代からの教師修業 出会いと挑戦 −3−

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心が変わる

土井先生は「左利き用定規」「左利きのはさみ」を準備していました。
それに対して、福山先生は左利きの子が何人いるかもわかっていません。
こうした「心」遣いが、左利きのことの出会いにつながることを知ったのです。

“声かけ”が大切。しかし、声欠けはNG。言葉が欠けるのはダメである

このように、福山先生は、言葉、文字にこだわります。
さらに、絵にもこだわりがあります。

「これは何に使うものですか??」

手に持っているのは、小さな色紙。後方からは見えません。

みなさん、身を乗り出して見ようとした。多少乗り出しても距離は変わらないのに。(笑) でも見ようとすることが大事なのだ。

福山先生は、「心」が態度に表れることをとても大切にしています。
色紙も、わざと小さいものを見せ、じっと見ることで物と出会うことのきっかけを作っているのです。
色紙は誕生日のお祝いでした。福山先生オリジナルの絵が描いてあります。

一人ひとりの誕生日はちゃんとお祝いをしてあげる。
こんなところにも、福山先生の心遣いが見えてきます。

土井先生との出会いが、福山先生の「心」を変えたのでした。
いよいよ、福山先生の教師修行が始まります。

20代からの教師修業 出会いと挑戦 −4−

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教師修行の始まり

福山先生の教師修行が始まりました。

福山先生は、毎日の指導案を、赤で修正をしていました。
振り返ることが大切だ。振り返るとは何か? 子供を見ることだ。

圧巻なのは「守破離」(学級通信)
土井先生の「一人ひとりの記録を残せ」のアドバイスに従ったのです。

毎日全員の名前を書き、ひとりの子につき3行良いところを毎日書いた。

初年度は1週間に1回、2年目は3日に1回、3年目以降は毎日書けるようになったそうです。
学級通信は、年間900号になります。
たしかに、見る目が育ってくるでしょう。

私は、囲碁、将棋をやる。囲碁、将棋も記録の世界だ。学級通信で、子供を記録できるようになると、出会いが増える。

修行の対象が、子供との出会いから、教材との出会いに拡がっていきます。

子供のことを知るためにはこどもの目線に立つべきだ。 「半紙ってなぜ半紙っていうの??」 「なぜ黒板っていうの?」 「やつ手っていうけど8つじゃないよ!なんで??」 身の回りにはいっぱい勉強しようと思ったらできるものがある。それをノートに書いていく。

まさに、有田和正先生の世界です。

「ナナホシテントウムシの背中はどんな模様になってる?ノートに書いてみよう」 「蝶の幼虫は足が16本あるよ。成虫は6本しかないはずなのに、なぜ?」 「阿蘇山という名の山はない。熊本の人達は知らない。」

福山先生は、“童心に還れ”と言いました。             
童心とは、「わからないものをわからない」という素直な心です。
童心が、同心になり、動心となって、最後に憧心となるのです。
先生たるもの、憧れの存在になるべきなのです。
“無知の知”といいます。
「知らないから勉強して子供に伝えるのだ」という土井先生のことばが、福山先生を動かしているのでした。

福山先生の教師修行は続きます。

20代からの教師修業 出会いと挑戦 −5−

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教師修行の拡がり

福山先生の修行の対象は、保護者へ、そして自分自身へと拡がります。

まずは保護者と繋がります。

「ともに育てる教育カード」をくばり、どんな些細なことでいいから教えてほしいと依頼した。 書いてもらうコツは、毎日保護者以上の文量の返事を書くこと。これがたくさんの親が協力してくれる秘密だ。 親は忙しいのに書いてくれたのだから、「ありがとう」の気持ちを伝えなければいけない。 まずは母親。次第に、父親もそのうち書いてくれるようになる。父親は、子供とは全然関係ない趣味が書いてあったりする。(笑) 父親と繋がれる。参観日に来てくれる。母親だけじゃいけない。共に育てるから共育という。

次に、自分自身を高めるために、ボランティア活動を始めます。

点字で一冊の教科書を作ると1年間かかる。 地道な作業だが、でもそれを待っている子供や親がいる。 その子の親の気持ちになってほしい。 そのためには、ボランティアをすることだ。ボランティアを続けることは、教師としての新しい目(芽)を開かせてくれる。

ボランティアとの出会いが、障害児学級の担任へと繋がります。
49歳の時、特別支援学級の6人クラスを担当されました。 
自閉症、アスペルガーなど、授業に集中できない彼らが1週間で素敵な絵がかけるようになりました。
なぜでしょうか?

子供は、認められることを待っている。見てほめることを「認められる」という。 「歩き方かっこいい」「えんぴつの持ち方素敵」「消しゴムの使い方最高」・・・ 言葉はたくさんある!

福山先生は、ほめて育てていきます。
すばらしいのが、5分のモジュールで次々に指導をしていくことです。5分したらやめ、「もっとやりたい」という思いを残して次の教科へ移ります。
音読の途中でも「よくやったねえ」と褒め、続きをやらせません。
ただ、「その他」の5分で、自分のしたいことができるのです。

子供の見えない所が見えてきます。自分で選べることが、特別支援の子にはいいのです。

集中力が持続できない障害のある子の特性に合った指導です。

シャボン玉の歌を歌いました。

「シャボン玉ってこれでいいの?シャボン玉ってカタカナ?とんだって漢字?」 「作曲した野口さんっていつの生まれ?」 わからないときは、原点に戻れ。教師は、子供に教えるためには調べるべきだ。

わからないことは、親子自学として、親子で一緒に調べます。
一緒に調べてくれたおばあちゃんに先生から手紙を出しました。それが、新たな出会いを生んだのです。

福山先生の世界は、こうして次々に拡がっていくのです。

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恩送り 倖せとばし

言葉にこだわる福山節が続きます。

“教師は鉛筆人間になれ”  これは、芯はぶれないが、周りの人(子供)に気を使える(周りは木)。 人に合わせてHB、Bなど濃さを変えられる。鉛筆を削る→身を削って人のためになれ。  また、“教師はバカ(馬力、化力、場力)になれ”   その場所で頑張れる、どんな場所でも力になれる。

土井先生からは、どんどん本を読めといわれました。
福山先生の庭には書庫があります。“本は頭の栄養” なのです。

これまで、多くの人の本を読んできました。
・岸本裕史先生 
・斎藤喜博先生
・大西忠治先生
・西郷竹彦先生 
・青木幹勇先生 
・大村はま先生 
・向山洋一先生
・野口芳宏先生
・有田和正先生 

師匠・有田先生が下関へ来た時のこと。
関門海峡の風景から、何か疑問が浮かばない? 有田先生は、子供のことを考えた授業にしろ、旅学びをしろといつも言っていた。 ここは交通の要所のはず。新幹線はどこ通っている?車は? “見えない所を子供に伝える”のが授業。 有田先生はそこから発問を13個考えた。
教師が多くのことに関心を持つことが大切なことを、有田先生の姿で教えていただきました。

福山先生の話題は尽きません。

狩人(かりうど)のように、うどが付く漢字を10個書こう。周りと交流してもよい。
周りと交流しながら、素人、玄人、蔵人、若人、仲人、商人等を見つけていきました。
人に聞くことは、行動(こうどう)⇒ 請う動 ⇒ 幸動 になるのです。

色んな人の知恵を出し合うことを “三人寄れば文殊の知恵”と言う。 “知層をためよ” “出会い”は宝、共育は協育になり、響育になる。

凝った魚の手紙が郵便で送れることを教えると、かまぼこ板やうちわを送ってきた。 段ボールの手紙(裏に糸で住所・名前が書いてあった)をくれた子はデザイナーになった。 “手間をかける = 心の時間”である。

最後に、若い頃に教師修行を積んだ者として、メッセージが贈られました。

受けた恩を、次の人に送るのが、恩送り。倖せとばし。 自分がしてもらったことを、次は誰かに返してあげたい。 喜びを分かち合えば、倍になる。 これを“運呼”という。

最後まで言葉にこだわった、福山先生らしいオチでした。

アンケートは、ここから見ることができます。

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