最新更新日:2024/09/24 | |
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ちょっといい話
お母さんの味噌汁
俺の母さんは、生まれつき両腕が不自由だった。なので料理は基本的に父が作っていた。でも遠足などで弁当がいる時は、母さんががんばって作ってくれていた。でも、小学校6年の時の遠足で、「見た目が悪い、母さんの弁当」を友達に見られるのが嫌でとうとう「弁当はコンビニで買っていくから、この弁当はいらない」と言ってしまった。母さんはそんな馬鹿な俺に、ただ、「うまく作れなくてごめんね」としか言わなかった。 時は過ぎ、小・中は給食だったのだが、高校になってからは給食はないので、いつも昼は購買のパンですませていた。しかし、高校2年になったある日、母さんが弁当を作ると言い出した。遠足の時に作ってくれたものとは味も見た目もよくなっていた。「不自由な手で、一生懸命作ってくれたのだ」と、思ったのもつかの間、肺炎で入院したかと思うとぽっくり逝ってしまった。弁当を作り始めてから3ヶ月しかたたぬうちに……。母さんが死んだ後、親父から聞いたのだが、どうやら母さんは俺のために、定食屋をやっている知り合いの所に1年間料理を習いに行っていたらしい。 後日、その定食屋に行ってみた。定食屋のおばちゃんと俺は直接のかかわりはないけど、やさしそうな人だった。そして母がよく弁当に入れていたメニュー、ハンバーグ。その定食を頼んだ。そして、それを口にした途端、ぼろぼろと涙がこぼれてきた。たった3ヶ月しか食べられなかったけど、確かに母さんのハンバーグの味にそっくりなのだ。腕がまともに動かせないのに、がんばって作ってくれた、あのハンバーグの味。形は少し不細工だったけど、とてもおいしかったあのハンバーグの味。 |
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