とてもうれしいメール

昨日、突然30年ほど前の教え子からメールが届きました。たまたまインターネットで私の動向を知り、連絡をくれたのです。彼は、大学卒業後就職したものの、大学院の夢があきらめきれずその会社を退職し、大学院に入学したそうです。修士課程を終了後別の会社に就職し、6年前にベルギー工場の駐在エンジニアとなり、1年前より、フランスの共同開発ベンチャーで医療機器の開発で活躍しているようです。

うれしかったのは、当時私がよく口にしていた、「俺は君たちの20年後と勝負している」という言葉を覚えていてくれたことです。その頃私は、過去に学んだ知識に頼るだけで今現在学ぼうとしない教師や、子どもたちに対して上から目線の教師に対して強い不満を持っていました。子どもたちは、今は未熟ですが、「後世畏るべし」という言葉もあるように、何年か後に素晴らしい大人に成長する可能性を持っています。自分と同じ歳になった時の彼らに、今の自分が負けていないように学び続けよう。子どもたちを未熟で指導しなければいけない対象ではなく、自分と対等な、いや自分よりも立派な人間となる可能性のある一人の人間として尊重しよう。ともすると、他の教師のように自分に甘く、尊大になりそうになる自身への戒めでした。今から思うと気負い過ぎで恥ずかしいところもありますが、教師として彼らに自分を越えてもらいたいという願いも込めて、そう語っていた記憶があります。

また、当時の数学の授業を「本当に楽しい授業でした」と言ってもらえ、これほどうれしいことはありません。20年後ではありませんでしたが、こうして教え子が活躍していることを知り、そのほんの一部分にでも自分が役に立てたのではないかと思えることは、教師冥利に尽きます。子どもたちの卒業後も「先生面をしたくない」という思いと、関わればきっとしてしまうだろうという思いから、教え子とは距離を置き続けてきましたが、こうした連絡をもらえると、そんなことは忘れてしまいます。
こうした教え子が一人でもいれば、「自分のような者が教師であってよかったのだ」と思えます。とてもうれしいメールでした。

リーダー以外にも読んでほしい、リーダーのための本

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玉置崇先生の著書「主任から校長まで 学校を元気にするチームリーダーの仕事術」の紹介です。

学校は鍋蓋組織とよく言われます。一般企業と違って中間管理職のポジションもはっきりとしません。あなたは主任だからチームのリーダーだよと言われても、いったいリーダーとして何をすればいいのか、具体的に教えてもらった経験がないという方も多いのではないでしょうか。リーダーのあり方が組織を変えるとはよく言われますが、部下の立場でリーダーへの不満を感じていても、いざ自分がリーダーとなった時に何をすればいいのかよくわからないことが多いように思います。日々学校におじゃましていますが、組織としてリーダーを育てる仕組みがきちんと備わっていないとよく感じます。

この本は、「仕事術」とありますが、こうやると仕事がはかどるといった類のことが書いてあるわけではありません。チームのメンバーがやる気を持って仕事をするために、リーダーは何を意識し、どのような姿勢で仕事に向き合えばいいのかが、具体的に語られています。学校の場合、リーダーといっても授業や部活動の指導など、他の先生と変わらない仕事を持っている方がほとんどです。負担感ばかりを感じるかもしれません。そんな中、ちょっと視点を変えるだけで、組織が円滑に動き出してチーム力がアップし、負担感も軽減されます。それこそ、学校が元気になっていくのです。

この本はチームリーダーを対象に書かれていますが、まだその立場にない方にもお勧めしたいと思います。ここに書かれているチームリーダーがなすべきことの中には、チームの一員として知っておくべきこと、意識すべきことがたくさんあるからです。また、学級を一つのチームと考えれば、学級担任はチームリーダーです。ちょっと視点を変えれば学級経営のヒントになることもたくさんあります。3章で書かれている、「職員の悩みを解決する話の聞き方」「職員のやる気を引き出す声のかけ方」「注意を促す時の声のかけ方」などは、小学校中高学年や中学校における、学級の子どもとの接し方に通ずるものがあります。

元気な学校をつくってきた玉置先生だから書ける、実践に裏付けられた、すぐに実行可能な具体的なノウハウやヒントが満載です。リーダーだけでなく、もうすぐリーダーになる方、そしていつかリーダーになる、すべての先生にお勧めしたい本です。

菊池省三先生と若い先生、学生から刺激を受ける

今年度第1回の教師力アップセミナーは、菊池道場主宰の菊池省三先生の「豊かなコミュニケーションによりお互いを認め合う学級づくり」と題した講演でした。

講演は菊池学級で育った子どもの姿をまず動画でたくさん見せていただきました。子どもたちが堂々と自己開示できていることが印象的でした。子どもが何を話しても安心、安全な学級がつくられていることがよくわかります。また、子どもの口から「価値語」と言われる言葉がたくさん語られていました。「価値語」とは「自分を見くびらない」「いい意味でバカになれ」「白熱する教室」・・・といった子どもたちに大切してほしい価値観や行動を言葉にしたものです。これが子どもたちに浸透しているのです。「価値語」は、子どもから自然発生的に出てくるものではありません。また、いくら「価値語」を教えても、それが具体的にどうすることなのかわからなければ絵に描いた餅です。菊池先生は子どもをポジティブに評価し「ほめ言葉のシャワー」を浴びせ続けます。教師が自らの行動で具体的に示すことや、子どもたちのよい行動を引き出し即時に価値づけすることが必要です。子どものよい行動を引き出すために、菊池先生は通常の係活動とは異なった係をつくっておられました。例えば、「ダンス係」は子ども同士がダンスバトルをする会を企画運営します。こういった活動が、「価値語」の意味を体感する場と実践する場になっています。
また、気なる子どもへの接し方についてもとても納得のいくお話が聞けました。たとえ一瞬でもよい行動をとった時にほめることや、子ども同士で気になる子どもをよい方向に変えるように働きかけるといったことは、本当にその通りだと思います。

子どもたちの具体的な姿を動画で見せながら語られるので、説得力はとても高く、多くの先生方に指示される理由がよくわかります。具体的にどのようにしているのか、細かいところについてもっと詳しく聞きたかったのですが、時間の関係もあってできなかったことが残念です。多くの著書があるので、それを読みなさいということですね。

たまたまかもしれませんが、動画に登場する子どもたちは、明るく自信にあふれていますがややテンションが高い傾向がありました。相手を「説得」するタイプに感じられます。学級として互いに認め合えるように育っているので問題にはならないのですが、進級や進学で他の学級の子どもと混じった時に、まわりの子どもとどのような関係になるのかちょっと気になりました。相手のことを思いやれる子どもたちなので上手くなじむのかもしれませんが、反発されるかもしれません。こういう学級経営が個人の取り組みではなく、学校全体のものとなってほしいと思います。

教師力アップセミナーの運営のお手伝いに、新たに若手の先生、学生が参加してくれました。特に岐阜聖徳学園の玉置ゼミからは、地元ではない方もたくさん参加してくれました。大学以外の場でも学ぼうという意欲が素晴らしいと思います。玉置ゼミの学生に共通して素晴らしいと感じたのは、人に接する姿勢です。受付では参加者に資料をきちんと両手で笑顔をと共にて渡していました。簡単なことのようですが、なかなかできないことです。研究発表などに出かけても、受付で笑顔に出会えないこともよくあります。また、玉置教授から学生に紹介された時、みな素敵な笑顔で応えてくれました。笑顔の内に素直さを感じます。よい指導者の下、きっと素晴らしい先生として教壇に立つ日がくることでしょう。何年か先に彼らと学校で出会う日がくることを楽しみにしています。

運営の反省会でのセミナーの感想の中に、菊池先生の話術の素晴らしさがありました。若い方は、上手な話術にあこがれる傾向があります。確かに教師として大切なことの一つなのですが、過度にそこを意識しないでほしいと思うのです。ある意味、話術は芸です。子どもたちにうける話をできることは悪いことではありませんが、あくまでも大切なのは何を伝えるか、どんな活動をするかという授業の中身です。話術は数ある授業技術の一つに過ぎないのです。この日の菊池先生のお話しであれば、具体的に子どものどんな行動をどのようにほめればいいのか、子ども同士が認め合うためにはどのような働きかけをすればよいのかです。もちろんこのことも意識してくれているとは思いますが。
玉置ゼミのサイトでは、学生が読書などの日々の学びを発信しています。学生らしい素直な視点に好感が持てます。今回のセミナーでどのようなことを学んだのか、発信が楽しみです。
菊池先生の講演と、若い先生、学生に大いに刺激を受けた一日でした。
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