介護の現場で学ぶことのリアリティを考える

昨日は介護技術研修の打ち合わせをおこなってきました。ここで、学校で学ぶことのリアリティについて考えさせられました。

移動の介助技術についての研修内容の確認でしたが、重心、支持基底面、ボディメカニクスといった言葉が登場します。相手の重心を意識し、支えるための接触面や足場の面積を広くとることで安定して移動させることができます。スムーズに移動させるためには、物理的に理にかなった方法を取ることが大切になります。理屈を理解することで、より確実に技術が身に付くというのがボディメカニクスの発想です。このような場合はこうすると一つひとつのやり方を覚えてもいいのですが、モーメント(てこの原理)といった力学的な視点でみると至極当たり前のことであり、共通の技術として理解できるのです。学校で学んだことは試験以外に役に立たないと思う人が多いのですが、決してそうではないのです。学校で学習した知識は役に立つものだということを改めて実感しました。最近の教科書では学習した知識を身近な問題解決に活用する例をたくさん取り上げるようになってきましたが、自分で探そうと思えばいくらでも見つかるのです。

また、車椅子からベッドへの移動を介助するといった場面では、タイミングを合わせることが大切になります。相手と息を合わせためには、コミュニケーションスキルが必要になります。一方的に「○○しますよ」と声をかけただけでは、相手が状況を理解しているとは限りません。ちゃんと伝わっているか確認が必要です。当たり前のことですが、人が人とかかわる所では必ずコミュニケーションスキルが必要となるのです。このコミュニケーションスキルも昨今の学校教育で重視されるようになったことです。

今学校教育で重視されていることの大切さを、思いもかけず介護の現場で実感しています。学んでいることのリアリティを子どもたちに実感させることが学習意欲につながります。そのためのヒントを介護現場からもいただいています。このような機会を得ていることに感謝です。

小学校で授業アドバイス

先週末は小学校で授業アドバイスをおこなってきました。市内の全小学校を年2回訪問しますが、その第1回目です。若手2人の授業と、2つの公開授業を参観しました。

若手の1年生の国語の授業は、授業規律に問題を感じました。子どもに規律が徹底できていないというより、授業者の中でルールが明確になっていないのです。印刷物を配った時にはどうするか。作業が終わったらどうするか。そういったことを一定のルールにすることを意識していないのです。
子どもたちは発表者の方を見て聞こうとしません。というより、友だちの発言にあまり意識が向いていないのです。授業者が発言者の方だけを向いて話を聞き、それを受けて説明するという一問一答形式だからです。子どもたちの発言をつなぐことを意識する必要があります。
また、指示が1回で伝えきれていません。作業に入ってからの指示の追加や修正が目立ちます。指示を明確にして、きちんと伝わっているかの確認を常にすることが大切です。
グループで発表する場面がありましたが、目標がはっきりしません。ただ発表するだけでなく、聞くことに意味のある課題にしなければいけません。1年生のこの時期はまだグループ活動は難しいと思います。まず、隣同士できちんと伝えあうことから始めるとよいと思います。
授業者は、授業規律を上手くつくれていないことや、この日の授業で自分がきちんと指示ができていないことをきちんと自覚していました。このことはとても大切なことです。自覚できていれば、変えようとする力が働きます。一つひとつの課題に対応していけばいいのです。まずは、自分の中で授業のルールを明確にすること、指示が1回で伝わるようにすることから始めてほしいと思います。

初任者の4年生の道徳は、落ち着いた雰囲気でした。授業者は発言者をしっかりと見て受け止めています。発言の終わった子どもはとてもうれしそうにしています。しかし、他の子どもたちは発言者を見ませんし、あまり真剣に聞いているようには見えません。授業者が発言中に他の子どもを見ていない、発言をつなぐことをしないからです。子どもの挙手で授業は進みますが、特定の5、6人だけが順番に発言しているのです。認められる子どもはうれしいので積極的に挙手して参加しますが、その他の子どもは認められる機会がないので、ただおとなしくしているのです。
授業は読み物教材を使ったものです。授業者が淡々と資料を読みます。その後で、ワークシートで内容の確認をします。これは全くムダな時間です。道徳はできるだけ早く内容を理解し、自分に引き付けさせることが大切です。読み取ったことを発表させますが、子どもたちはワークシートの空欄を埋めることに意識が向いています。最初は友だちの発言を聞こうとしても、授業者が発言の途中で板書を始めるとそちらを写しはじめます。まずは、発言を聞くようにさせなければなりません。
試合直前の練習で、雨が降ってきた中で練習を続けるかどうかの判断を迫る課題です。一部の子どもたちを指名して結論を聞いてから、グループでそれぞれの結論と理由を話し合わせます。班長が仕切っています。子どもたちはあまり積極的に聞き合おうとはしません。グループで結論を出そうとしていることが問題です。子ども同士の関係がよくないように見えます。
子ども同士をつなぐこと、特にできる子どもには友だちの考えを理解することを求めることが大切です。子どもたちの様子を見ているとたまたま道徳の時間だけのことではないように思えます。子どもたちを評価する言葉がほとんどなかったことも気になります。発言者もその内容に関して評価されることはありません。発言したということのみが評価になっているようです。
授業者はとても素直で前向きでした。この後の道徳の公開授業を私の横で見ながら、自分の授業を思い浮かべて真剣に考えていました。私の指摘を、自分の授業ではどうだったのかと、他人事ではなく自分のこととして聞いていました。次回訪問時にどのように変化しているかとても楽しみです。

4年生の社会科の公開授業はごみ処理場の社会見学の発表の後のまとめの場面でした。授業開始直前にちょっとした子ども同士のトラブルというハプニングがありました。そのせいもあったのか、子どもたちの動きはやや低調に感じました。
子どもたちに質問させるのですがあまり出てきません。またでてきた質問に対して、すぐにわからなければそのままで、資料やメモを見て探そうという動きが出てきません。自分たちの課題だと意識していないのです。
社会見学では事前に調べてわかったことと疑問を整理しておく、現場で疑問の答を調べることとその場ででてきた疑問、質問などとその答をまとめることが大切です。社会見学終了後にどのような活動をするのかもきちんと伝えておくことが必要です。ごみ処理場で排熱を利用して温水を作っている理由を考えさせるのですが、このことは社会見学を通じてみんなに持ってほしい疑問なのか、それとも一部の子どもから出てくればよい疑問なのか、教師が提示する疑問なのかがよくわかりませんでした。事前にこの課題が子どもから出てくるための働きかけはあったのだと思いますが、全員のものとはなっていないように思いました。社会科見学をする前に、子どもたちに問題意識をどれだけ持たせるかが大切だと思います。
グループの発表で、「どんなことを話した?」と問いかけます。どの子にも答えやすい聞き方です。ところが指名された子どもが上手く説明できません。ちょっと苦しんでいます。そのとき同じグループの子どもが助けるのではなく、くすくす笑うのです。グループを仕切っている、積極的に挙手する子どもです。この子どもは他のグループの発表になると一気に集中力を失くして聞いていません。自分が発表することだけに意識がいっているようです。子どもが落ち着いてよい雰囲気に見えますが、ちょっと心配です。

6年生の道徳の公開授業は、読み物教材を使ったものでした。4年生の道徳の授業と共通のことがたくさんあります。資料を読み取る時間を子どもたちに与えます。ここはできるだけ時間をかけずに、子どもたち自身の問題として課題に取り組ませる必要があります。しかし、子どもたちに読み取りさせると、登場人物を客観的にとらえた第三者的なものになりがちです。自分のことに引き寄せるためにはゆさぶることも必要です。主人公の気持ちにどれだけ入り込めるかが大切です。
この日の課題は、亡くなった子どもと食べたかったお子様ランチを注文した夫婦に対して、規則だから大人には出せないと上司に言われた店員がどうするかというものです。あなたが店員ならどうするという問いかけに、ほとんどの子どもはすらすらと鉛筆を動かします。これは、あまりよいことではありません。子どもの中に葛藤がないのです。悪い言い方ですが、教師が求める答を書こうとしているのでよどみなく動くのです。その中で、2人の手が動きません。やる気がないのではないのです。悩んでいるのです。授業はこの子どもを軸にして、何を悩んでいるかを発表させると子どもたちをゆさぶることができたように思います。
グループで聞き合うように指示します。話し合いではなく聞き合うというのはよいと思いましたが、いいと思ったら書き足すようにと指示をしました。子どもたちは、友だちの話の最中に書き足していきます。ワークシートを埋めたいという気持ちと「いい」という基準を与えたことで、取り敢えずよさそうであれば書き込んだのでしょう。ここは、「あなたがなるほどと納得したら」とすると、より自分に引き寄せることができたので、もう少しじっくり聞きあったのではないかと思います。
店員役を子どもにして、授業者が上司役でロールプレイをします。しかし、ただ単に演ずるだけで、目的がはっきりしません。「なんとしても上司を説得しよう」といった目標を持たせ、見ている子たちには「自分が上司なら説得されるか」といった視点を与える必要があります。子どもたちは傍観者的に見て、拍手をしますが何がよかったのかは意識していません。実のない儀礼的なものになっています。
この話は、店員が子ども用のいすを用意し「ご家族でお楽しみください」と3人分のお子様ランチを用意するという結末です。授業者はかなり時間を残して結末を伝えました。確かにいい話なのですが、店員の機転の利いた対応に夫婦が喜んだということで終わってしまいます。上司の立場、夫婦の気持ち、店員の立場で葛藤が起こるはずです。この話はうまく落ちがつきましたが現実はそううまくいくとは限りません。その葛藤を子どもたちにさせなければ道徳としては「?」なのです。結末は最後の瞬間でいいので、店員は「規則を破ったら馘首になるかもしれない」、上司は「規則を破ったら、次々に大人がお子様ランチを頼んで収拾がつかなくなる」といったそれぞれの立場を強く示し、子どもをゆさぶることが必要だったと思います。

公開授業を受けて、全体でお話しする時間をいただきました。授業規律はどのような姿を目指すのかを教師が明確に意識すること。できていないことを叱って減らそうとするのではなく、できたことをほめて増やそうとする発想を持ってほしいこと。Iメッセージを使って子どもとの人間関係をつくり、子ども同士をつなぎ認め合う場面をつくることで子ども同士の人間関係をつくること。グループ活動は、班長などをつくらず、結論をまとめないようにし、話し合いではなく聞き合いにすることなどをお願いしました。

授業者も含め、みなさんとても前向きに話を聞いてくださいました。また、四役の方が非常に熱心に授業を観察し、私の話を聞いてくださったのが印象的でした。授業改善に対する意識の高さを感じます。このような学校は、授業改善が期待されます。次回訪問時にどのような変化が起こるかとても楽しみです。

中学校で授業アドバイス

昨日は中学校で授業アドバイスをおこなってきました。中間考査が終わって試験返しも終わったところでした。

3年生は4月からの頑張りの疲れが出たのか、集中力を失くした子どもをちらほらと見かけました。そのような子どもがすぐに見つかるのは、他の子どもの姿勢がそろっているからです。全体としてはよく集中できているということです。現在教育相談中ですから、担任から気になる子どもに対して適切な対応を取っていただけることだと思います。修学旅行が近づいています。修学旅行で気持ちをリフレッシュさせるとともに、よい人間関係を構築して苦しい子どもを支え合う雰囲気を作っていただけたらと思います。

1年生は、4月の様子と大きく違っていました。以前は、子どもたちの様子がバラバラに感じられたのが、良くも悪くも一つの集団という感じになってきました。多くの先生が授業規律を意識したことがわかります。気になるのが、子どもたちから答を求める姿勢を強く感じることです。例えば、友だちの発言をあまり聞こうとはしませんが、正解とわかった後の教師の説明は集中します。教師の言葉を聞くことより板書を写すことを優先します。どうやら中学校で初めての定期考査でそれなりのショックを受けたようです。子どもたちが、試験で点数をとることにつながるような行動をとっているのです。しかし、子どもたちが変わろうとしていること自体はよいことです。この機会に再度学習の仕方や授業規律をきちんと伝えることができれば、子どもたちはよい方向に大きく変わっていくと思います。目先の点数ではなく、学びを求めるようになってほしいと思います。

1年生の社会科で国や国名について学習する場面を見ました。グループに1つの地球儀で国の形からその国を探し、手元の地図で確認します。子どもたちはすぐに見つけますが、活動はそれで終わってしまいます。どこにあるか発表してもらいますが、挙手をするのは1/3です。指名された子どもが掛図で位置を示すと、いいですと声がたくさん上がります。どのグループも見つけているのですから、この確認作業に意味はあまりありません。子どもたちもここで発表することにあまり意味を感じていないから、多くの子どもがわかっていても挙手をしないのです。この一連の活動は単なる作業で、社会科としての学びが何かが考えられていません。地球儀とメルカトル図法の掛図では手に入る情報は違います。国の位置を言葉で説明するといった課題にするだけで、地球儀とメルカトル図法の違いが見えてきます。日本を基準にして位置を示す課題にするだけでも、方位の問題(特に東西)を考えることができます。
国名の由来について問いかけましたが、これは知識です。知っている子どもしか答えられません。想像するにしてもそのための基本となる知識を全体で共有しなければ、考えることはできません。知識を与えてから考えさせる発想が必要になります。時間の関係がありますから何とも言えませんが、いくつかの国名の由来を知識として与えた後、人名、川の名前などの地理的なものというように分類して、そういったものが国名の由来とになる背景を考えるといった活動も考えられます。国の成り立ちや人々の生活とかかわりの深い物に目を向け、暮らしや文化を考えるきっかけになると思います。
子どもの顔が上がるまで話を始めないというように、授業規律も意識しています。しかし、場面の転換で作業が止まる時にはできていても、展開している時には意識ができていませんでした。板書をして説明に戻っても手が止まらない子どもがいます。写すのを止めて顔を上げさせる必要があるのですが、その余裕がありません。ここで注意を促さなければこういう場面では顔を上げなくてもいいと思うようになります。授業規律を意識した指示をしているから、逆に指示をしないとその場合はいいという間違った授業規律ができてしまうのです。徹底することを意識してほしいと思います。

2年生の数学の授業は、子どもたちが非常によく集中していました。教師の話をよく聞いてくれます。こういう状態をつくれれば、中身の勝負ができます。等式を変形してある文字について解く場面でした。授業者は、この時間で大切なことが何かを明確に意識して授業を進めていませんでした。男子と女子合わせて何人という関係を文字で表し、移項して男子について解きます。ここで何が既習事項であり、何が新出事項なのか明確になっていません。「文字が2つである」「yに値を入れれば1元1次方程式になる」といったことを確認して、既習事項の方程式との関係を整理する。「文字が2つの方程式と考えることもできるね」と次の連立方程式への布石を打って、「xを求めることはできるか」といった問いかけをし、「解くためにはどうするか」と1元1次方程式の解法の復習をする。yを求めることもできることを確認して、それぞれ「xについて」「yについて」「解いたんだね」とここで新しい考え方を定義する。こういったポイントを押さえてほしかったのです。
子どもたちは、結局今日は何を学習したのかよくわからないまま、指示されたことをこなしていくだけでした。
授業者は子どもたちに問いかけますが、期待する答が出てくると「そうだね」とすぐに取り上げ、説明を始めてしまいます。大切な発言であれば、「今○○さんが言ってくれたこと聞けた」「聞けなかった人がいるね。○○さんもう一度聞かせてくれるかな」「どういうことかわかった」と全体で共有する時間を取る必要があります。自分の中で授業のポイントが整理できていないため、どこを大切にするか、どこは流すかが明確になっていないので、軽重がないのです。その結果、テンポの悪い授業になってしまいました。板書も過程とポイントとなることが書かれていないので、振り返ってみても、何をやろうとしているのかがわからないものでした。
また、この日の授業でポイントとなることが理解できているかどうかの確認方法も明確ではありません。「今日習った新しい言葉は何?」「それってどういうこと」とストレートに聞いてもいいでしょう。「この等式をxについて解いてみて、yについて解けるかな」と問題を解かしてもいいでしょう。方法はともかく確認を意識してほしいと思いました。
授業者は自分で教材研究が足りないことをよく自覚していました。子どもたちがしっかり聞こうとしてくれるから子どもたちに申し訳ないと思っています。だから教科の力をつけなければと真剣に考えています。この姿勢であれば、確実に力をつけてくれると思います。教材研究の視点を含めて、これから一緒に学ぶ機会をつくっていくつもりです。

学校訪問での社会科と数学の指定授業の指導案の検討会に参加しました。
どちらの教科も授業者を他のメンバーが支えて一緒につくり上げていることがよくわかるものでした。授業の流れはよく考えられていました。しかし、子どもがどう活動するのか、活動させるためにどのような課題、発問にするのかがシャープになっていません。同じような課題でも、ちょっとした提示の差や切り返し、発問の仕方で子どもの動きが大きく変わってきます。指導案に表れないかもしれませんが、そういうところをどう考えている、準備しているかが大切です。授業者に質問をしながら、そう言ったことを考えていただきました。勤務時間終了後の遅い時間にもかかわらず、どちらの教科もたくさんの方が参加してくださいました。同僚性を感じます。教科の代表の授業という意識を感じました。この後も教科でブラッシュアップしてくれることと思います。実際の授業どのようになるかとても楽しみです。

この日も大変充実した時間を過ごすことができました。先生方の授業、子どもたちの様子からたくさんのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。

介護技術研修の打ち合わせで引き算の発想を思い出す

昨日は、介護技術研修の打ち合わせを行いました。

研修で何を伝えればいいのかということは、素人の私では全くわかりません。介護のプロである担当の方に聞くしかありません。いつも感心するのが、担当の方がそのポイントを非常にシャープにまとめてくださっていることです。お話を聞いていると伝えたいことがたくさんあることがよくわかります。だからこそ、本当に大切なことは何かを真剣に考えて絞っているのです。限られた時間の中での研修は内容が薄くなることもよくあります。もともと伝えたい内容が少なければ、ただ薄くなっていくだけだからです。伝えたい内容が広く深いからこそ、根本は何か、何を伝えれば自力で他のことを身につけることができるかといったことを抽出できるのです。
このことは授業にも通じることです。若い先生はそもそもこの単元で伝えるべきことがしっかりとわかっていないことがよくあります。まずは、何を教えなければいけないかを足し算することから始まります。教えるべき内容が見えてくると、こんどはその中で何が本当に大切なのか、何が身についていなければいけないのかを考えることになります。子どもたちの活動の時間を保障すると、教師が話す時間は減ってきます。足し算の発想では時間が足りなくなってしまいます。この時間の中で絶対に身につけなければならないものは何か、省くことができるのは何かを真剣に考えなければいけません。これが引き算の発想です。

素人の私が研修を組み立てるためには、足りない知識を調べて獲得することが必須になります。介護に関する知識が限りなくゼロに近い私ですが、思ったほど時間がかかりません。それは、担当の方が大切なポイントが何かをしっかりと伝えてくれているからです。基本になることを教えてもらっているので、他の知識はそれをベースにすれば比較的簡単に身につくのです。授業の大切なポイントを体験させていただいています。

担当者の方は介護技術研修の内容を考えるにあたって、利用者の自尊感情を大切にする、リスクを常に意識するといった基本を絶対に外しません。利用者の目線を大切にしています。そのおかげで、私のような素人でも一連の介護技術に関して外してはならないことが何か明確にわかります。このことも子どもの目線を大切にするという、授業の基本に通じます。

素晴らしい介護職の方に出会えた幸運もあり、介護技術という専門でない分野の研修に携わることで今までとは別の視点で学ぶことができています。このような機会を得られたことに感謝です。

授業改善の進め方の検討

昨日は、私立の中高等学校で授業改善の進め方の検討を行ってきました。教科指導部で検討された案をもとに具体的に詰めていきました。

子どもたちを受容することで、まず良好な人間関係をつくるという私の考えに沿った方針を教科指導部は考えてくださいました。このことはとてもうれしいことです。子どもとの関係の大切さを意識していない先生方もいるのですが、基本的には一気に変えようとするのではなく少しずつ意識する先生を増やそうという姿勢でした。まずは授業改善の種を蒔こうというわけです。現実的な良い判断だと思います。

教科指導部の先生方は、授業を見てその場で私が指摘することで課題がよくわかるという感想をもたれていました。うれしい評価です。授業を見ても、具体的な場面についてその場で指摘されないとよくわからないので、他の先生方にも私と一緒に授業中の子どもの様子を見て回る機会を持ってもらいたいと考えられていました。そういう機会をつくって視点を育てることで、授業を見てアドバイスをもらいたいと考える先生を増やそうというのです。まずは若手がターゲットです。
特定の学級の対応に困っているといった問題も学校内にはあります。グループや教科が抱えている問題を相談する機会も作りたいということでした。目の前の問題を一緒に考えることで、学び合う雰囲気をつくるのです。
こういった小さな取り組みを積み上げていくやり方を取らずに、上から一気に改革を進める方法もあります。しかし、そういうやり方は失敗する可能性も高くなります。この学校に適した進め方を見つけることから始めるのはよいやり方だと思います。
校長の頭の中には授業改善のイメージがあるようなのですが、あえて口出しせずに先生方の中から出てくるのを待とうとしています。先生方に集団としての力がつくことを大切に考えているのでしょう。

まずは6月に行う授業研究を今までとは少し違った形で進めることになりました。子どもの活動を中心に授業を組み立てる視点を授業者と共有する時間を持ち、指導案の検討を一緒に行います。当日の授業検討の視点も子どもの活動を中心にしたものに変えて、グループで行うようにします。授業中の子どもたちの様子を先生方が意識するきっかけになるようなものにしたいと思います。

また、夏休みのような機会に基本的な授業技術を確認するような研修を持つことも考えることになりました。基本的なことでも長い間におろそかになることがあります。若い先生には身についていないこともあります。こういったことを確認する機会を持とうというわけです。

思った以上にたくさんの手立てが教科指導部から提案されました。先生方の抵抗感がない形で進めることを真剣に考えた結果そうなったのだと思います。焦って結果を出そうとするのではなく、時間がかかってもいいので自然な形で学校全体の授業改善が進む方法を模索しています。この学校の授業改善のお手伝いをすることで、今までとは違った気づきがたくさん持てる予感がします。次回は教科指導部以外の先生と話をする初めての機会を持ちます。どのような授業を目指しているのか、どのようなことを課題としているのかとても興味があります。今からとても楽しみです。

文部科学省で公募の審査

先週末は、「学校の総合マネジメントの強化に関する調査研究」の審査員として文部科学省に出かけてきました。昨年に引き続き2度目です。

調査のための調査、研究のための研究ではなく、その成果をいかに全国に普及できるかという視点が大切にされています。公費を使うということは、多くの者の利益となるものでなければならないという姿勢を強く感じました。

審査の内容については詳しく書けませんが、審査員の大切な仕事にプレゼンテーションに対する質問があります。面白かったのが、その内容がよくわからない調査研究も、皆さんの質問とその答を聞いてなるほどと納得できるものもあれば、なんとなくよさそうに思えても質問の答えを聞いているうちに疑問がわいてくるものもあるということです。質問の大切がよくわかります。
これは授業と同じことのように思います。子どもの発言内容がよく伝わらなくても、教師の適切な問い返しで子どもの考えが整理されます。一見わかっているようでも、説明を求めることで理解が不十分な部分が明確になることもあります。皆さんの質の高い質問からたくさん学ぶことができました。

昨年度の調査研究結果の発表会が間もなくあるそうです。昨年度審査員として興味を持ったものがたくさんあります。日程がうまく合うかどうかはわかりませんが、できるだけ参加したいと思っています。
今回もいろいろな視点で学ぶことの多い場でした。このような機会をいただけたことを感謝します。

介護技術研修の参加者から学ぶ

昨日は、介護技術の研修をおこなってきました。今回は「食事介助」がテーマです。いつものことですが、私は介護技術に関しては素人ですので、実務に携わっている専門家の助けを借りながらでした。

まず、摂食・嚥下とはどういうことなのかを確認しました。摂食を単に食事を摂ることではなく、食べることを意識し、食物を認識、食べるための準備をするところまでを含んで考えることを共有し、摂食について何が大切であるかを考えてもらいました。
研修の冒頭でリスクの話をしていたので、参加者の意識は事故が起こらないようにすること集中するかと思いましたが、まず出てきたのが、食べる意欲を持たせるような働きかけでした。無理やり食べさせるのではなく、食べたいと思ってもらうところから始めるというのは、介護される側の視点に立ったものです。こちらから言わなくても、既にそういう意識ができていることはとても素晴らしいと思いました。また、調理をしてくれる人への感謝を挙げる方もいました。これも素晴らしい視点だと思います。こういう気持ちを持つことで、調理する側も気持ちよく個人に応じた対応してくれます。こういうことが質の高い介護につながっていくと思います。

「食事を摂ることを認識する」⇒「食べ物を認識する」⇒「口を開ける」といった摂食の一連の動きは、コミュニケーションが求められるところです。一方的に指示するのではなく、相手の反応や行動をきちんと確認することが大切です。グループで互いにやってみてもらいましたが、言葉だけでなく、アイコンタクト、接触によるコミュニケーションなど、五感をフルに活かしていました。参加者が日ごろからコミュニケーションを大切にしていることがよくわかりました。

食事の介助は個人の状況によってその対応が異なります。そのために、一人ひとりの状態をきちんと把握する必要があります。情報の共有が大切になります。どのようにしているのか、どのようなことが大切なのかを考えてもらいました。
主に介護士が食事介助をする施設もあります。その施設では、介護士が誰にでもわかるようにと、ポイントとなる所に線を引いたりするなどの工夫をして一人ひとりの情報を整理しています。しかし、担当ではない方はそのことをあまり意識していないのではと思っていました。ところが、みなさんその情報があることを知っているだけでなく、その内容もよく読んでいるようでした。それだけでなく、日頃からその介助の様子を観察しているというのです。担当者だけでなく、自分たち全員の問題という姿勢には感心させられました。

この日も参加者の発言や意識から、私自身が学ぶことがたくさんありました。こういう機会をいただいていることに感謝です。

授業評価の打ち合わせ

昨日は、私立の中高等学校で打ち合わせをおこなってきました。この学校は以前より生徒アンケートによる授業評価を外部委託で行っていたのですが、委託先が撤退したため私どもにお声がかかりました。
生徒アンケートによる授業評価は、設問とするだけで教師がそのことを意識して改善が進むという利点があります。意識すればできることであればすぐによい方向へ変わっていくのですが、具体的にどのようにすれば改善するのかという手立てが見えないと、なかなかスコアがよくなりません。努力しているのだが結果が出ないので、結果を見るのが辛くなる。そのことが常態化すると授業評価や授業改善そのものにも意欲をなくしてしまいます。この学校は8年間アンケートによる授業評価を続けてきているのですが、こういった課題が表面化してきているようでした。

もともとは、今年度のアンケートをどうしようかということでしたが、管理職の方とお話しして、授業改善につながる授業評価にしたいという思いを強く感じました。
アンケートの設問も、もしスコアが低いのであれば具体的にどのようにすればいいのかという方法論がなければ改善にはつながりません。また、教師が意識していることが実際に効果的なのかを客観的に見ることも必要です。生徒アンケートは授業改善の有効な手段ですが、それだけでは十分ではないのです。
こういったことをお話しさせていただいたところ、非常によく理解していただくことができました。年2回行っていたアンケートを今年度は1回にして、授業評価アンケートだけでなくトータルに授業改善の方法を探っていくことになりました。

この学校はビジョンの1番目に、「教職員と生徒が信頼し合う」という言葉が入っています。教師と生徒の人間関係を大切にするという発想はとても素敵です。管理職の方の授業に対する姿勢も、本当に子どもたちを伸ばしたいという思いがあふれるものでした。こういう学校のお手伝いができることをとてもうれしく思いました。次回は、実際の授業での子どもたちの様子を見せていただき、その実態をもとに今後の授業改善の方向性を探っていくことになりました。今後がとても楽しみです。

管理職研修で講演

昨日は、今年度より全小学校の授業アドバイスをする市の管理職研修の講師を務めました。「やる気を引き出す学校経営」というテーマで、授業改善の例を中心に話をさせていただきました。

大切なことは、管理職からの発信がどれだけ具体的であるかということです。例えば「挨拶のできる子ども」と言っても、大きな声で挨拶はするがこちらが挨拶をする前に立ち去ってしまう子ども、ちょっと立ち止まってこちらの目を見て挨拶してくれる子ども、お客を見つけてわざわざこちらに寄ってきて挨拶してくれる子ども、というように私の目にする子どもたちの姿は様々です。でも、どれも「挨拶のできる子ども」です。どのような姿を目指しているのか具体的な姿で発信しなければ正しく伝わりません。
授業を見ても、具体的なフィードバックをしなければ、見られた側はチェックされたとしか思いません。ポジティブな評価をすることも大切ですが、ただよかったではなく、どこがどのようによかったか具体的に伝えなければ、単なる外交辞令だと思われます。「あの場面はどうしたかったの?それならばここをこうするともっとよくなると思うよ」といった具体的なアドバイスも心がけてほしいと思います。見られてよかった、アドバイスをもらえて授業がよくなった。そういう思いをすれば、やる気を出してくれますし、自分からアドバイスを求めてくれるようになります。
また、授業を見てアドバイスをしたからすぐに授業がよくなるわけではありません。大切なのはその後、できるだけ早い時期にもう一度見ることです。たとえ上手くやれていなくても、やろうとしていれば、その意欲を評価するのです。何らかの変化に対して常にポジティブに評価することが大切になります。子どもを育てることと同じです。
授業研究なども、あたりさわりのない意見、批判的な意見ではなく、具体的な改善につながる意見、よいところを認める意見がでるような工夫が必要です。学校全体に互いを認め合う、学び合う雰囲気をつくることが大切です。

保護者や地域の方の力をうまく活用することも、学校経営にとっては大切なことです。まわりの力を活かすには、一方的なお願いではなく、子どもたちの成長のためにどうすればよいかこちらから相談する姿勢が求められます。一緒に考え、互いに補いながら実行することで、やらされている感のない活動に変わります。また、参加してもらって終わりではなく、その結果子どもたちの成長にどのような変化が見られたかといったことをきちんと伝えることも大切です。自分たちの行動が子どもたちの成長に役立っていることを実感することが自己有用感につながります。このようなことを意識していただけたらと思います。
学校ホームページに関連して、アップする内容を工夫することで保護者や地域の方だけでなく、教員のやる気もアップすることも少し話をしました。

限られた時間の中で伝えたいことを一方的に話す形となったため、参加者が受け身となる時間多く、申し訳ないことをしました。そのような中でも、多くの方(特に女性)が積極的に反応してくださったことをうれしく思いました。いよいよ来週から実際に学校に訪問しますが、どのような子どもと先生方にお会いできるかとても楽しみです。少しでも学校の授業力の向上にお役に立てるよう頑張りたいと思います。

教務主任の授業(長文)

先日訪問した中学校での提案授業は、教務主任の参観者への強いメッセージを感じるものでした。3年生の社会科で、世界恐慌と各国の対策についての授業でした。

この学校の3年生はとても集中力があり、どの先生も口をそろえて授業がやりやすいと言っています。だからこそ、教師が子どもたちにどのようになってほしいかをしっかり伝えることでより高いところへ到達することができます。特にこの時期は、このことを強く意識して授業規律などをきちんと確立することに力を使わなくてはいけません。授業者は、どのようにすればいいかを様々な場面で示しました。授業開始の挨拶では、しっかり子どもたちと目線を合わせ、全員が自分に集中したのを確認してから礼をします。プリントを配る時には、「ありがとうと言えるといいね」と一言そえます。ほめ言葉や認める言葉をたくさん聞くことができました。

授業の前半では、世界恐慌の前後でアメリカの人々の生活がどのように変わったかを確認しました。好景気の時の大きな広告看板の前で配給を待つ人が列を作っている写真を見せて、子どもたちに質問をしていきます。英語の看板から子どもたちはアメリカと気づきます。看板の明るいイメージから、第一次大戦でアメリカが戦争の影響を受けずに反映したことを子どもたちの口から言わせました。自然な形で学習した知識を活用し復習をさせます。授業者は「そうだったね」と子どもの言葉を認めて進めました。この復習内容が大切であるならば、このことについてもう少し詳しい説明を他の子どもに求めてもよかったかもしれません。時間をあまり使いたくなかったのでしょう。

子どもたちに看板の英語の意味をたずねます。他教科の学習を具体的に活かす場面をつくる姿勢は大切です。この場面は子どもから言葉を引き出すためにていねいに進めました。しかし、社会科の授業としては本質的な部分ではありません。また、意味がわかるかどうかは知識の問題でもあります。子どもたちは考えるのですが、辞書を引いたりする姿は見られませんでした。であれば、すぐに答を引き出して社会科の授業に戻らなければいけません。ちょっとまわりの子どもと相談させて、すぐに発表させればいいのです。

子どもたちを指名しながら、何の行列かを考えさせます。「バッグを持っている」「買い物」「行列ができるのはどんなとき?」「遊園地」「人気のあるもの」・・・、子どもたちはうれしそうな表情で意見を発表します。授業者がうなずきながら、しっかりと受容するからです。子どもの様子を見て、「○○君何かわかっているね」と声をかけます。途端にその子どもの表情が明るくなります。固有名詞できちんと外化を評価しています。また、その子どものまわりの子どもたちも明るい表情になります。子どもを具体的に評価することは、他の子どもにもよい影響があるのです。
授業者は、失業者へのドーナツの無料配布の様子の写真も使って、失業者が増えたことを確認し、現代の日本の状況やアベノミクスについても言及しました。歴史を過去のものとして扱うのではなく、今とつなぐことは大切なことです。
授業者は、世界恐慌で何が起こったかを「不況になって、生活が苦しくなった」と単なる言葉で説明するのではなく、子どもたちに実感できることを大切にしていました。しかし、子どもたちに経済的な知識がないので、どうしても説明が多くなります。不況のメカニズムをできるだけ単純に子どもとのやり取りで気づかせるような工夫があるとよかったでしょう。
「物が大量に作れると何がいいの?」「安くなる」、「よそより安くするためにはどうする」「もっとたくさん作る」、「物を作ったらどうするの」「売る」「買ってもらう」、「作りすぎたらどうなる」「売れ残る」「安売りする」、・・・。これほど単純化していいのかどうかわかりませんが、資本主義経済における市場の大切さもここで押さえておくことで、この後のブロック経済がよくわかるはずです。

授業者は、板書をできるだけしないようにしています。板書をするとどうしてもそれを写すことに意識がいってしまい、考えることをしなくなるからです。その代りに「世界恐慌」といった大切な用語は、全体で何度も声に出させます。写すことよりも覚えることを優先させています。子どもたちは、用語を覚えるだけでなくその意味もよく理解していることが、授業者と子どもたちとのやり取りでよくわかります。授業者は今扱っている内容と関連する過去の学習内容を質問しますが、子どもたちはとてもよく反応するのです。

世界恐慌の結果、失業者が増え生活が苦しくなったことをしっかりと押さえたところで、この時間のめあて「世界恐慌に対して、欧米諸国はどのような政策を行ったのだろうか」を板書します。子どもたちは、素早く写します。前半を子どもとやり取りしながらていねいに進めることで興味を持っていることがわかります。子どもたちに欧米諸国の名前あげさせます。亜米利加(アメリカ)、英吉利(イギリス)、仏蘭西(フランス)、伊太利亜(イタリア)、独逸(ドイツ)と板書します。米、英、仏、伊、独といった略名に慣れさせるためでしょうか、面白いやり方です。授業者は意図的に、亜米利加を左の方に、英吉利、仏蘭西を真ん中に、伊太利亜、独逸を右端の下の方に書きました。
ここで、第1次大戦後の各国の工業生産量?の変化のグラフを資料として配ります。子どもたちは、すぐにソ連だけが順調に発展していることに気づきます。そこで、ソ連が他の国とどう違ったのか、当時の指導者スターリン、5か年計画を押さえました。授業者はソ連の国土が大きいため国内だけで経済が完結できることを世界恐慌の影響を受けなかった理由としましたが、雇用の創出、市場の確保といった他の国の政策と共通の視点で整理しておくとよかったと思います。

子どもたちにメモでいいので3分間で各国のとった政策をノートに書くように指示をしました。この日は短縮授業だったので時間が厳しかったこともありますが、3分間としたことで子どもたちの集中度はとても高いものになりました。どの子も素早く取り組みます。3分経ってもまだ子どもたちは作業をしています。しかし、授業者は思い切りよく止めました。「1つは書いているよね」と確認したところ、手が挙がらない子どもがいます。授業者はその子どものノートを確認して、「なんか書いてあるじゃない」と発表させます。ほとんどの子どもが手を挙げているからこそ、手を挙げていない子どもに目を向けることが大切です。できていない子どもも活躍させようと考えているから、途中でも躊躇なく止められたのです。全員を参加させたいという授業者の思いが伝わる場面でした。

子どもからニューディール政策が出てきました。関連することを他の子どもたちに確認します。公共事業とは何かを説明し、道路をつくる、ダムをつくるといったインフラ整備が行われたことを押さえます。雇用の創出という視点で、「どんな事業をすればいい?仕事をつくるだけなら、穴を掘って埋めてもいいじゃない?」「だれがそんな仕事をつくるの?」といった、不況の原因から考えるという発想もあります。授業者は子どもたちに経済はよくわからないだろうと、経済的な部分を自分で説明しましたが、スモールステップを意識することで、子どもたちで考えられるようにすることはできたように思います。
授業者は政策という事実を調べさせることから出発しましたが、不況の原因から次にどう行動するかを考えていくという発想もあります。授業の前半で雇用が失われたことと市場の必要性を押さえておけば、それぞれを意識した政策はどの国がとったのかを問うこともできたと思います。その上で、他の国はなぜそういった方法を取れなかったのかを問うことで、第2次世界大戦への道が見えてくると思います。
結果から考える発想と原因から考える発想のどちらがよいというのではありません。どのように組み立てると子どもたちが考えやすいかで判断するとよいと思います。いずれにしても、この時代のことは現代社会にもつながるだけに、今を読み解く視点を意識して授業を組み立てたいものです。雇用や市場を意識することで、アベノミクスやTPPといった現在の問題もよく見えてくると思います。

授業者は子どもたちの発言に対して、「ありがとう」と返すことで発言をしやすい雰囲気をつくり、「わからない人いない?」と全員が理解することを大切にしています。ブロック経済では、「他の国が入ってこられないためにどうしたらいいの?」と問いかけ、「関税」という発言に「いいこと言ったね」と評価します。また、「笑顔がいいね」と声をかけてから指名したりと、子どもたちとの人間関係をつくることも大切にしていることがよくわかります。
子どもたちは友だちの発言をよく聞いていますが、中には一生懸命メモを取っている子どもがいます。板書をしないので、メモを取っておこうというのです。この行動自体は悪いことではないのですが、ずっとノートを見続けているのが気になります。発言者の方も見てほしいと思うのですが、悩ましいところです。「基本は発言者を見る、メモを取る時は素早くとって発言者に視線を移す」と、メモを禁止するよりも、よりレベルの高いところを目指すようにできるとよいと思いました。

ブロック経済をとられると、ドイツやイタリア、日本はどうなるかを考えさせ、このことが第2次世界大戦につながっていくことを子どもの言葉から押さえて、最後に、黒板の空いたところにそれぞれの国のとった政策を指名して書かせました。自分たちでまとめるようにすることで、子どもたちは受け身になりません。多くの子どもが、友だちの板書をそのまま写すのではなく、自分で言葉を足したりしてまとめていました。
政策を書かせるだけでなく、何を意識した政策なのか、上手くいったのかどうか、その結果どうなったのかも簡単に付け加えさせればよかったと思います。子どもの言葉でこの日のまとめを発表させて終わりました。

社会科の授業としては、子どもたちの活動をもとに組み立てるために思い切って引き算をしていることが印象的でした。たくさんのことを説明するのではなく、何を理解すればこの時代を理解できるかをよく考えた授業構成でした。ただ、経済については子どもたちに知識がないため自分たちで考えるのは難しいだろうと考えたため、どうしても授業者の説明が多くなってしまいました。「単純化できないか」「どのような知識が必要か」「どのくらいスモールステップにできるか」といった視点で教材研究をすることで、難しい内容も子どもたち自身である程度考えさせることができるようになると思います。

社会科の授業としても見どころが多かったのですが、何より感じたのは「教務主任の授業」だということでした。この時期に教務主任としてみんなに意識してほしいことを伝えるための授業だったのです。子どもたちのどんな姿を目指すのか。どのような授業規律を確立したいのか。そのために具体的にどのようにすればいいのか。そういうメッセージがいたるところから伝わってきました。表情や言葉かけ、指名の仕方や受容の仕方に、子どもたちが安心して参加できる、子どもたちの言葉でつくられていく授業を目指していることがよく表れていました。どの教科の先生にも学ぶことの多い授業だったと思います。
教務主任として2年目の先生ですが、忙しいこの時期に自ら意図的な提案授業をおこなったことに感心しました。教務主任だからこそ、何より授業を大切にしたい。そんな思いも伝わってきました。この学校の先生方もきっとこの思いを受け止めてくれたことと思います。この学校に授業を大切にする空気がますます強くなっていくのを感じます。
若い先生方の成長も楽しみですが、こういうミドルリーダーの成長を見ることもとても楽しみです。この学校がこれからどのように進化していくのか、今まで以上に楽しみになってきました。

現職教育と指導案の検討会

昨日は中学校の現職教育で講演をおこないました。それに先立ち先生方と授業を見学しました。前回訪問から2週間ほどしか経っていませんが、それでもいくつか変化が見られました。

3年生はどの学級も相変わらずよい状態なのですが、ここにきて4月の頑張りの疲れが出たのか、学級の中に1人2人集中力が切れる生徒が目につくことがありました。単に体力的な問題なのか、精神的な問題なのかはわかりませんが、学級担任の観察が必要かもしれません。連休明けにはアンケート形式の心理検査も実施される予定ですので、これをうまく活用していただければと思います。

2年生は、3年生と変わらないほど集中している授業がいくつもありました。新学年ということで上手くリセットできたということでしょう。その反面、集中できていない授業も目立ち始めています。教師が一方的に話す時間が長かったり、作業が終わった者への指示がなかったりすると、とたんに集中力を失くすのです。また、子ども同士が上手くかかわれている授業でも、ポツンとかかわれない子どもがいることがあります。こういう子どもを上手くつなげることを意識してほしいと思いました。

1年生は、学級集団の形にまだなっていないという印象です。いくつかの異なる集団がまだ一つになっていないのです。発言者の方を向こうとする集団もあるのですが、2週間前と比べるとその数が減ってきているように感じます。よい行動を評価し、強化することができていないと感じました。一方、子どもたちがしっかりと集中している場面も部分的には見られます。これは例外なく、子どもたち全員が指示に従うまで授業者が待って、徹底している時でした。教師が望めばそのように姿を変えることができる子どもたちだと思います。

この時期ならではの場面をたくさん見ることができました。先生方が時間をかけて子どもたちへの指示を徹底させているのです。先生方それぞれの授業の進め方があります。その進め方や授業規律を子どもたちにきちんと伝えるには時間がかかります。だからこそこの時期は、多少授業の進み方が遅くなっても徹底させるのです。そういった意志を強く感じさせる先生が何人もいたことをとてもうれしく思いました。

この日は教務主任が先頭を切って提案授業をおこないました。この授業の検討会が行われなかったのが、とても残念に思われる授業でした。この授業については別の機会にお伝えしたいと思います。

現職教育ではこの1年の進め方について主任から説明がありました。研究授業については指導案作成を簡略化して、「生徒にどうなってほしいのか=ゴール」「見てほしいところ」に絞り、実際の活動に力を使ってほしいと提案されました。実質を大切にしようという姿勢は好感が持てます。今年度もたくさんの方が授業を公開します。互いに授業を見あえる学校であることはとても素晴らしいと思いました。

私からは、「学級経営・授業の基本の確認」ということで、この時期にしておくべきことを具体的に話させていただきました。ベテランやできている方にとっては言わずもがなのことばかりですが、ここでしっかりと押さえておかないと1年間苦労することになるからです。
子どもとの人間関係をつくる基本は、「笑顔」で接することです。そして、人間関係をつくり上げた上に安心・安全な教室とすることが求められます。子どもをしっかり見ること、学級の規律、授業規律をはっきりと伝えそれを徹底することをいくつかの具体的な場面を例にしてお願いしました。
説明しながら、ああこれは○○先生の授業で見ることができた場面だなと思うことがたくさんありました。この学校は、基本ができている先生がたくさんいることを改めて確認できました。こういった先生方のよさを、互いにもっと学びあえるようになれば素晴らしいと思います。

現職教育終了後、研修部の先生と話をする時間を持てました。今年度異動したばかりの主任ですが、この学校のよいところをまず自分自身が吸収しようというとても素直な姿勢を見せてくれます。こんなことを意識して授業を変えたら、このように子どもたちが反応したととてもうれしそうに報告してくれました。副主任はまだ若手ですが、子どもたちを自分が受け止めることから始めようとする姿勢の方です。よいチームワークが期待できます。
この日、教務主任の授業を見ることができなかった方がいたことや検討会を持てなかったことが残念だったので、今後若手の方に授業のレポートを書いてもらい、授業者のコメントも加えて全体に配ることを提案しました。前向きに検討してくれそうです。

このあと、来月にある学校訪問での指定授業者の指導案の検討会が行われました。社会科と数学科でしたが、それぞれ勤務時間も終わった遅い時間にもかかわらず5名ずつの先生方が参加してくださいました。これだけで、授業者には心強いことだと思います。
社会科は、今年度異動して来たばかりの先生が授業者です。1年生の地理の気候で授業をする予定ですが、内容の検討の前にまず地理は何を学ぶ教科であるかを全体で確認しました。その上で、資料の活用について、資料をもとに何が言えるかを考える演繹的なアプローチとなぜそうなったかを考える帰納的なアプローチがあることを確認しました。どんな資料がよいだろうかという話から、教科書の資料について考えることになりました。教科書はたくさんの資料の中から本当に選りすぐったものを掲載しています。なぜこの資料がこの場所にこの大きさで載っているのか、その意図を考えるだけでも立派な教材研究になります。教科書の吹き出しに書かれた疑問を考えるだけで、ねらい迫っていくことができます。教科書を読み込むことがまず教材研究の第一歩であることを確認できました。
時間をかけた割に、肝心の指導案の姿が見えてくるところまで詰めることができなかったことは申し訳なかったのですが、教材研究についてとても大切なことを学び合えたと思います。指導案をつくる方向性は見えてきたと思います。みんなで協力して、面白い指導案ができるのではないかと期待しています。

数学科の授業者は6年目の先生です。連立方程式の応用の導入の授業です。連立法的式の立式と解くことを分けて考えたいという方向性を事前に明確にしていました。自分で勉強してその方がよいと判断したのです。方向性が明確なので、足が地についた話し合いができます。この授業のねらいを、「わからないものは文字に置き換えればわかりやすい、うまくいく」と子どもたちが言葉にしてくれることとし、立式することを活動の中心にして解くことには時間を使わないことにしました。
ここで参加してくれたベテランがとても素晴らしいアドバイスをたくさんしてくれました。立式だけなら、未知数が2つでなくてもできる。問題を拡張して3元の連立方程式を立てさせてもいい。子どもたちにとってリアリティのある課題なら、子どもたちの野外学習の部屋割りはどうだろうか。参加した全員がなるほどと思うようなことばかりです。とても面白そうな授業になりそうです。
また、自然と子どもたちの現状に話がおよび、しっかり参加して理解してくれるのだが定着が今一つよくないことが課題としてでてきました。直前の復習ではなく、数時間前の復習をすると、「あれ、できたはずなのに」と子どもが口惜しがったといった報告もありました。こういったやり方もあるのだと参考になったようです。以前いた先生がやっていた「音声計算練習」も話題になりました。授業のことをみんなで話す機会を持つことのよさを感じられたように思います。
最後にベテランの方が教科書はなぜこの値を使っているのだろうかと、とてもよい質問をしてくれました。その質問もさることながら、ベテランでもこうして日々教材研究をしていることをさりげなく若い先生に伝えてくださったことをとてもうれしく思いました。

互いに授業のことを話し合う雰囲気が学校の中に広がってきているのを感じます。今年度この学校が大きく前に進むエネルギーを感じた1日でした。次回の訪問が本当に楽しみです。

私学で、今後の方向性について打ち合わせ

昨日は私立の中高等学校で授業見学と打ち合わせをおこなってきました。

今回は若手の教科指導部の先生方と一緒に子どもたちの授業中の様子を見学しました。授業規律に関しては、先生方が子どもたちにどうあってほしいかを明確にしないと成立しません。この日も、先生方がどんな子どもの姿を見たいのかが伝わってこない場面に多く出会いました。子どもの姿をもとになぜそのような姿になっているのかを一緒に考えてもらいましたが、とても素直に聞いていただけました。今までそのような視点で考えたことがなかったということでした。授業に関して他から学ぶ機会が少なかったのでしょう。逆に言えば、授業についていろいろな視点で学ぶ機会があれば大きく伸びる可能性が高いということです。

高校2年生全体に対する校長講話の時間も見学しました。集合時の指導は、学級委員に整列させるように盛んに指示していました。学級委員は命令されているように感じたのではないでしょうか。一方、一般の生徒たちは、自分たちには関係のないことと思っているようでした。リーダーを育てる意図でそのようにしているのかもしれませんが、これでは教師、学級委員、一般生徒の関係が悪くなります。学級委員は先生に叱られた、一般生徒が協力してくれない。一般生徒は、仲間であるはずの学級委員に指示された。そんなネガティブな感情を持つ可能性があります。そうではなく、学級委員に整列の指示確認をお願いする。一般生徒にも学級委員に協力するようお願いし、教師が学級委員をサポートしていると感じさせる。こういう接し方が必要です。「子どもたちになめられてはいけない」という思いが、高圧的な態度につながっているのでしょうが、しっかり受容する姿勢を見せていれば、決して子どもたちはなめたりバカにしたりしません。
その後だったせいもあるのでしょうが、校長が講話で子どもたちに発言を求めてもなかなか反応できませんでした。相手が校長なので、おかしなことを言ってはいけないというプレッシャーもあったのでしょうが、日頃から安心して間違えることができない環境なのだと思いました。校長の話を聞こうとしている生徒はたくさんいます。この子どもたちを評価してあげる場面がほしかったのですが、学年の先生からはよくないことの指摘で終わってしまいました。学年の先生から、我慢して聞くことも大切という価値観が強く感じられました。そうではなく、「他者の話から学ぶことは楽しい、何か学べるはずだ」という価値観に変えてほしいと思いました。

教科指導部の先生方とじっくりお話する時間をいただきました。先生方が一番心配していたことは、学校全体で目指す子どもたちの姿を共有できるかどうかということでした。一人ひとりの授業観が違うことは当然ですが、学校という組織として考えれば基本となるものは共有すべきです。私学であれば、建学の精神がそれに当たるはずです。歴史ある学校ですが、今でもまったく色褪せない素晴らしい建学の精神を持っています。しかし、残念ながらこの学校の先生方はそのことを意識して授業をしているように思えません。トップダウンで建学の精神に基づくことを強く訴えることも可能ですが、できればボトムアップで「こういう子どもたちの姿が見たいね」と先生方に思ってもらえる方がこの学校の現状からはよいように思いました。まずは、教科指導部の先生方を中心として、子どもたちのよい姿をつくり出す授業に挑戦して広げることから始めようとなりました。その第一弾として、新任の先生方による授業研究の場を活かすことにしました。提案授業をする先生を教科指導部の先生方を中心にバックアップし、授業検討会を活性化することで授業について先生同士が学び合う雰囲気をつくりだすことを目指します。教材研究を合同でおこなったり、事前の模擬授業を有志でおこなったりする。3+1授業検討法で授業検討をおこなうことで、授業研究を前向きにとらえる雰囲気をつくる。この方向で具体化することを教科指導部の先生方にお願いしました。
教科指導部の先生方からは、この話とは別に授業に関する質問やアドバイスをたくさん求められました。先生方の向上意欲を強く感じました。特に若い先生方は、具体的なアドバイスを求めているように思います。彼らの向上心をうまく活かしたいと思いました。

いよいよ本格的に授業改善に向けて動き出します。校長は決して焦らず、一歩一歩進めればいいと考えています。まずは、学校内に授業について話し合う雰囲気をつくることから始めたいと思います。

「コミュニケーションを意識した授業づくり」について講演

一昨日は小学校の現職教育で講演をしてきました。「コミュニケーションを意識した授業づくり」と題して、授業を進めるポイントをできるだけ具体的に話をさせていただきました。

教師と子どものコミュニケーションについては、教師が受容することを第一にするようお願いしました。間違った答でもちゃんと受け止めて聞いてもらえる、先生がいつも見守ってくれている。こういった安心感を持たせることで、初めてコミュニケーションが成り立ちます。言葉を交わさなくても、一人ひとりの子どもを笑顔で見るだけでもコミュニケーションの基本となる人間関係をつくることができます。コミュニケーションを意識した時、子どもに外化を求めることが重要になりますが、こういった関係をまずつくることが求められます。発言をすることに対するハードルの高い子どもはたくさんいます。学年が上がれば自信がないとなかなか発言できません。うなずく、首をかしげる、そんなちょっとした動作をとらえてポジティブに評価することが大切になります。教師が子どもたちをどれだけ見ているかが勝負です。

子ども同士のコミュニケーションを考える時に基本となることは、友だちの発言を聞くことに価値を与えることです。友だちの発言に対してどう思ったか、どう考えるかといったことを常に問いかける必要があります。また、教師の話を聞いて理解することが学習ではなく、自分で考える、自分たちで話し合って答を見つけることが学習であるという価値観を持たせる必要もあります。「わからなければ聞けばいい」とわからないことを聞ける子どもに育てることが大切です。
よくできる子どもは、自分はできたからいいと友だちの発言を聞かないこともよくあります。自分の考えを発表させるのではなく、友だちの考えを代わり説明することを求めることでかかわりを持てるようになります。他者の考えを理解することを評価することで、コミュニケーションが活性化するのです。

子どもたちの活動量を増やすためにも、ペア活動やグループ活動は有効です。ペア活動では聞く側に役割を持たせることが大切です。自分が他者とかかわって役に立ったという自己有用感を持つことで、コミュニケーションを取ろうとする子どもに育っていきます。
グループ活動では、話すことよりも聞くことを大切にしてほしいと思います。自分の考えを持てていなくても、友だちの考えを聞いて自分のものとすることができれば充分です。友だちの考えの中から、自分でこれがいいと選ぶことができればそれも立派な自分の考えを持つことです。こういった評価をしてほしいのです。グループで答を一つにまとめるのではなく、友だちの意見を聞くことで自分の考えをまとめることを大切にしてほしいとお願いしました。

最初のうち少しかたい先生もいらっしゃいましたが、次第によく反応してくださるようになりました。子どもへの指導の具体例を問いかけた時、Iメッセージでほめるやり方を答えてくださる方もいました。素敵な先生がたくさんいそうな学校でした。

若い先生から子どもたちに自由に聞きに行かせるやり方について質問が出ました。聞きやすい友だちに教えてもらうことで、動きが活発になるからでしょう。よい質問だと思いました。このやり方だと一見活性化しますが、テンションが上がってムダ話になる危険性もあります。何より問題なのは、授業での人間関係ではなく、日頃の生活での人間関係で活動が決まることです。生活の場だけでなく授業中でも居場所のない子どもが出てくることが予想されます。固定化された人間でなく、誰にでも聞ける、誰とでもかかわれることが大切です。生活の場で仲のよい子と話をすることは自然なことですが、授業の場にそれを持ち込んではいけないのです。子どもたちの聞き合う活動が活性化しないのであれば、そのための手立てをする必要があります。子ども同士の人間関係に問題があるのであれば、ソーシャルスキルやエンカウンターの時間を取ることもその一つでしょう。教師が子ども同士をつなぐように働きかけることも大切です。授業の中で人間関係をつくることをお願いしました。

研修終了後も個別に相談に来て下さる先生が何人かいらっしゃいました。通級指導教室の担当の方は、非常に具体的な場面での対応についていくつか質問してくださいました。その対応を一緒に考えることで私もとてもよい勉強をさせていただきました。
自分の感情を上手く表現できない子どもが、何を聞いても「ふつう」としか答えないので、こちらから「うれしかった?」と聞いて、言葉を出させようとしたそうです。こちらから強要しているようで引っかかっているといった質問から、子どもたちと真剣に向き合っていることがよく伝わってきます。私にも何が正解かはわかりませんが、「今、うれしそうに見えたよ」と、相手に聞くのではなくこちらか伝えるという視点で接することを提案しました。先生も、表情豊かに自身の感情を表現することを心がけることでこの子どもに変化が出てくるのではないかと思いました。この後どのようになったか聞くのがとても楽しみです。

次回は、実際に授業を見せていただいてお話をすることになります。素直な先生方が多いように感じる学校ですので、きっとよい方向に変わっていくと思います。今からとても楽しみです。

中学校で新年度のスタートを見る

昨日は中学校の授業アドバイスをおこなってきました。昨年度に続き多くの方が異動されました。この学校で今まで取り組んできたことを共有することが課題です。今年度の研修の進め方も工夫しなければなりません。この日は、まずは各学年のスタートの状態を学年主任と共に観察しました。

3年生はとてもよい状態でした。どの学級もわかりたい、できるようになりたいという意欲を感じます。子どもたちの視線が教師に集中しています。どの子もあきらめずに授業に参加しているのが印象的でした。学年主任も子どもたちのよい点をたくさん伝えてくれます。子どもたちの関係が良好で、男女を問わずよく話し合ってくれるとうれしそうに話してくれました。
初めて担当する先生に対しては、その先生のやり方を理解して慣れるのに時間がかかるものですが、以前からその先生の授業を受けているような雰囲気に既になっているのが印象的でした。全く初めて担当する先生も、とても素直に反応してくれると言っていました。1年生からずっと担当している先生は、今まで受け持っていなかった子どもも、経験のある友だちに教えてもらったり、助けてもらったりしてすぐに慣れてくれたと、子ども同士の関係のよさを実感していました。子どもたちは、指示待ちの受け身の態度ではなく、次に何をすべきかを意識しています。問題を解き終ってもぼっとしていません。日ごろから何をすればいいのかを指導されているのでしょう。教科書を読んだり、問題集を解いたりしています。指示に対しての反応もとても素早いものでした。話をうかがったどの先生も授業がとてもやりやすいと言っていました。3年生の姿は、この学校の目指す子どもの姿を体現してくれていると思います。これまでの2年間の先生方のかかわりが素晴らしかったのでしょう。とてもよいスタートを切れていると思います。
3年生になるとみんなが頑張るので、努力しても思うように相対的な成績(順位)が上がらず、落ち込む子どもが出てきます。全体がよいスタート切れているので、先生方には少し余裕ができると思います。個を見ることにエネルギーを使ってくださいとお願いしました。

2年生は、集中を見せる時はとてもよい状態でした。作業や課題にも真剣に取り組みます。昨年度末に少し目立ち始めた授業に参加できない生徒があまり気になりません。その一方で、受け身になると直ぐに集中力が切れるという特徴はあまり変わっていませんでした。先生が一方的に話していると、みるみる集中力を失くします。逆に言えば、子どもたちに活動させることを意識すればよい状態で授業が進むということです。担任の先生もかなりの数が入れ替わっているので、子どもたちの気持ちもリフレッシュされているはずです。今がチャンスだと思います。子どもたちの活動量の確保を学年全体で意識すれば、よい状態になっていくはずです。このことを学年主任にお願いしました。
また、若手の先生が時間を見て教育相談(個人面談)を始めていました。学年全体で取り組んでいるのかはわかりませんが、とてもよいことです。この時期は子どもがやる気を出すと同時に環境の変化で不安定になりやすい時でもあります。子どもとの人間関係をつくるためにも個別に話を聞くとよいと思います。忙しい時期ですが、必要な動きができていると思いました。

1年生の第一印象は小学生、それも中学年のような姿だということです。授業規律がまだきちんとできていません。授業を受けている子どもたちの姿を見るとバラバラです。出身小学校での様子をそのまま引きずっているようにも思います。例えば友だちの発言をその子の方をきちんと向いて聞く子どもがどの学級にも1/4から1/3くらいはいます。しかし、他の子どもは前を向いたままなのです。このこと自体は大した問題ではありません。この時、授業者が友だちを見ている子どもを評価しないのが問題です。また、友だちの発言をつなぐこともしません。せっかくよい文化を持ってきてくれている子どもたちがいるのに、これではすぐに消えていってしまいます。
これに限らず、先生方が子どもたちへの指示が通るまで待てていません。子どもたちの行動が遅いため待ちきれないのです。このような時は、指示に対する評価をスモールステップで行うとよいでしょう。「教科書の○○ページを開いて」という指示であれば、「教科書を出す」「開く」「目的のページを見つける」それぞれの段階をほめるのです。「○○さん、もう教科書を出しているね。素早い行動だね。うれしいね」「おっ教科書を開こうとしているね。早い、早い」「△△さん、もう○○ページを開いているね」というようにすれば、動きの遅い子どもたちでもほめることができます。教師が子どもたちの素早い行動を望んでいることをほめることで伝えるようにすることが大切です。全体に、挙手や発言、課題に取り組む様子などの子どもたちの外化を評価していません。そのためよい行動があっても、広げることができていないのです。固有名詞でほめることが大切です。
1年生の先生方に対して総じて感じたのが、余裕がないということです。異動したばかり、初めて担任をもった、そういう方が多いので仕方がないと思いますが、この時期に押さえるべきことは少し時間がかかってもしっかりとしておく必要があります。学年主任にはこのことをお願いしました。

今年度新しく研修主任になった方と打ち合わせをおこないました。異動したばかりで学校のことがよくわからない中での担当で、戸惑いもあるようでした。3年生の担当で、子どもたちのよさに気づいています。単に子どもたちがよいのではなく、このように育てるにはこれまでにやってきたことがあるはずだとわかっておられます。これはとてもよいチャンスだと思いました。以前からいる方にとっては当たり前のこととして意識されていない子どもたちへのよいかかわりを明確にすることができるからです。新しく来られた方の視線でこの学校の取り組みを見直すことで、どのようなかかわりが子どもたちを育てているのかを具体的にすることができるはずです。1年間の研修を通じて、この先生の視点でこの学校のスタンダードというべきものをまとめて提案していただくことをお願いしました。経験も豊富で授業に対する感覚もとても素晴らしい方なので期待できそうです。

今年初めて担任を持った先生に少し時間を取ってもらい話をしました。余裕のない状態であることはわかっていますが、「笑顔を忘れずに授業規律、学級規律を確立することを大切にしてほしいこと」「わからないことはあって当たり前だから、臆せずに先輩に聞くこと」、そして、忙しいことはわかるが、「朝少し早く来て教室で登校してくる子どもたちを見ること、雑談をすること」「帰りの会が終わったあと教室に少し残って子どもたちがすぐに部活動に向かうかを確認すること、机の中などの個人スペースの様子を見ること」。こういったことをお願いしました。何をすればよいか、どこから始めたらよいかわからない状態だとは思いますが、優先順位を子どもたちと接することにおいて行動してほしいと思います。

予定していなかった若い先生が2人相談に来られました。「よいスタートを切れていると感じているが、これでよいのか」と確認を求める方。6年目という次は原則異動の年なので、恥ずかしくないだけの教科力を身につけたいと、授業に関して悩んでいることを質問してくれた方。私にとっても刺激となるよい話をたくさん聞くことができました。彼らの成長を感じることができるとても幸せな時間でした。
また、数学科に関してはベテランがほとんどいなくなったので、彼らの教科力をアップするために勉強会を開くことを提案しました。玉置崇先生編著の「中学校数学授業のネタ100(1年〜3年)」(明治図書)(数学の授業アドバイスを助けてくれる本参照)の読書会です。次に指導する単元を有志で勉強するのです。うれしいことにすぐに前向きな答が返ってきました。この学校に訪問する楽しみがまた一つ増えました。

今年度転任されてきた校長からたくさんのお話を聞くことができました。異動したばかりにかかわらず、子どもたちの様子をとてもよく把握されています。時間をつくっては教室を見回っていることがよくわかります。授業をとても大切にされている方です。前任校での取り組みなど、参考になるお話をたくさん聞くことができました。とても楽しい時間を過ごすことができました。よい出会いに感謝です。

この学校のよい点を再確認するとともに、新たな課題も見つかりました。この1年で子どもたちと先生方がどのように成長していくかとても楽しみです。先生方と共に私も成長できるように頑張りたいと思います。

専門学校の登校指導

先日東京に出張した時に面白い光景を見ました。朝、白衣のような制服を着た方が何人も立って道行く若者に笑顔で挨拶しているのです。一体どういうことだと思いましたが、どうやら近くにある専門学校の先生方が学生に登校指導をしているようです。そこは狭い道路で車がすれ違うのがやっとです。登校する学生がわがもの顔で歩いていると交通のじゃまになるのです。小中学校ならまだしも、専門学校でも朝の交通指導が必要な時代になってしまったようです。

感心したのが、先生方がとても素敵な笑顔で挨拶することです。学生への配慮もあるでしょうが、一般の通行人も気持ちがよくなるような笑顔です。おそらく接客をともなう仕事の専門学校なのでしょう。プロの笑顔のすごさを感じました。一方の学生は明るく挨拶はするのですが、先に挨拶するのは先生です。中には友だちとの話に夢中になって、声だけの学生もいます。私がその学校の教師ならつい指導したくなるような状況でも、先生方は決して表情を荒げたりしません。とにかく笑顔で挨拶をし続けるのでした。登校指導には苦情に対して指導していることをアピールするという要素もあるかもしれません。しかし、先生方の姿は指導ではなく気持ちのよい挨拶で学生を迎えようという思いを感じさせられるものでした。見ている私もよい気持ちになりました。

一般の小中学校でも登校指導をしているところは多いと思います。地域の方から苦情をいただくこともあると思います。その時に子どもたちを指導することばかりに意識がいってはいないでしょうか。中には、登校指導は指導をしていることを地域にアピールするパフォーマンスだと言ってはばからない人もいます。地域の方は、先生方がどのように子どもたちと接しているか、どのように指導しているかとてもよく見ています。そして、もっとも敏感に感じているのが、ほかならぬ自分たち地域の人間に先生方がどのような気持ちで接しているかです。登校「指導」ではなく、子どもたちや地域の方と気持ちのよい挨拶をすることを第一の目的にしてほしいと思います。気持ちよい挨拶ができるようになれば、自然とまわりを気遣った安全な登校となるはずです。専門学校の先生の姿からこんなことを思いました。

研究会で学ぶ

昨日は今年度最初の愛される学校づくり研究会でした。新しいメンバーも増え、今年度も充実した会になりそうです。

自己紹介の後、前回のフォーラムの振り返りと来年度のフォーラムを意識しての今年度の研究の方向性について話し合いました。
午前の部は「劇で語る! 校務の情報化 パート2」でした。これに関しては、校務支援システムのよさは広く認知されてきたが、いかにして各学校に応じた形で運用できるようにするかが課題となってきたという話になりました。次回に向けて校務支援システムをよい形で導入し、定着させるための工夫を話題にするというアイデアが出てきました。また、学校ホームページに関して、毎日更新することが目標ではなく、対象を意識して何が伝わったかが問われる時代になってきました。この視点から、具体的にどのような工夫をしているかがその場でたくさん話されました。カテゴリーとキーワードをうまく組み合わせることで教育目標や目指す子どもの姿が伝わる例や、教職員を意識した発信の仕方、伝え方の工夫についても面白い話をたくさん聞くことができました。この内容だけでも十分に外部に発信する価値があると思いました。

午後の部は、「楽しく授業研究をしよう」でした。3つの模擬授業をもとに授業検討法の提案を行いましたが、授業検討法もさることながら、素晴らしい授業を見ることができてよかったという感想が多く寄せられました。先生方にとってよい授業を見るということはとても価値のあることです。来年もぜひ授業を公開したいと考えています。今年度は年に数回の授業検討だけでなく、日常的に授業改善に取り組むことをテーマにしていくことになりました。日常的であるためには、手軽に、気軽におこなえることが大切です。先生方からは若手の授業改善についてどのような工夫をしているかを聞くことができました。授業について第三者に語り、聞き手はそれをまとめるといったことを職員全員に課すという取り組みなど、なるほどと思わされるものがたくさんありました。このことについては、愛される学校づくり研究会のコラムを通じてお伝えしたいと思います(来週より連載開始)。

研究会の後半は、文部科学省に出向されている会員からの最近のトピックと新年度の学校の取り組みなどの発表でした。
地方の教育行政改革の法案の流れや、教育行政や地域と学校のかかわり方の話題、土曜授業・学習についてなど最新の情報をお聞きすることができました。学校の現場の人間にとって心外な言葉ですが、議員からは「教育村」という言葉がよくでてくるようです。教育現場に対する不信感が現れています。対決姿勢ではなく、協力して進めるというスタンスで改革が進んでいってほしいと思うのは私だけでしょうか。

新年度の取り組みの中で、いかにして人を活かすかについて参考になる話がありました。バランスのよい人ばかりではありません。授業力があっても職員同士の軋轢を引き起こす方もいます。その人のよいところを活かすポジションをどうつくるかに腐心されたことが伝わるお話でした。欠点を指摘して矯正しようとするより、そのよさを活かして活躍させることが組織を活性化させます。簡単ではありませんが、その視点が大切だとあらためて確認することができました。
また、皆さんの話に共通していたのは、校長が学校の課題や目標を明確にし、職員だけでなく、子どもや保護者とも共有しようとしていることでした。ポイントの1つは、課題や目標を簡潔な言葉で言い表すことです。その言葉をいろいろな具体例と共に繰り返し伝えるのです。特に保護者には直接伝える機会は限られているので、学校ホームページの記事などで、子どもの姿だけでなく、その姿が課題や目標とどのように関連しているかを伝えようとすることが大切です。こういったことにも気づかせていただきました。

この日もたくさんの学びがある、充実した時間を過ごすことができました。学び合える場を持てることに感謝です。

私学で授業見学

昨日は私立の中高等学校で授業を見学してきました。お昼を挟んで2時間ずつ子どもたちのようすを見せていただきました。全体的な印象は子どもの声がほとんど聞こえないことです。先生から答えが出ることを待っています。子どもとのやり取りも基本一問一答です。教師の都合で授業が進んでいます。子どもたちが考えている場面がないのです。子どもたちはおしゃべりもせずに静かにしていますが、集中はしていませんでした。午後になると、受け身に疲れたのか倒れている生徒も目立っていました。このことを誰よりも校長がよく理解しています。どのようにして授業を改善していくかが課題です。

教科指導部の主任の先生と多くの時間一緒に回らせていただきました。子どもたちとのコミュニケーションを大切にしたい、知的な喜びを感じさせたいという強い思いを持っている方です。自身の授業に対する改善意欲もとても旺盛です。客観的に子どもたちの様子をもとにその原因や対応について話をしていても、自分の授業に引き寄せて反省をされたり、どうすればよいか具体的に質問をしたりしていただけました。最初にこのような前向きな先生に出会えたことはとても幸運でした。こういった先生方がいらっしゃるのであれば、きっと学校がよい方向に変わっていくと思います。副主任の先生や若手の先生とも一緒に回りましたが、共通しているのはとても素直なことです。若手の先生は、子どもたちの様子を外から見ることで、初めて教壇に立ったころは子どもが聞く態勢を取ってから話すことを意識していたのに、今はその基本をおざなりしていることを素直に認めてくれました。私の話もしっかりとメモして活かそうとしていました。きっと成長されることと思います。

また、自主的に公開授業をおこなっている先生もいました。グループを活用した授業に挑戦されています。授業で目指す子どもの姿が明確になれば、とても素晴らしいものになっていくと感じました。自主的なものにもかかわらず、何人もの先生が参観していました。この雰囲気を学校全体に広げることができれば大きな力になっていくと思います。

一緒に授業を見た先生方と話をさせていただいて感じた課題は、この学校の目指す子ども像、授業像が全員で共有されていないことです。もっと言うと多くの先生方が子どもたちの力、可能性を信じていないことです。そのため、考えさせることよりもやらせることに力点がいっています。子どもが笑顔で自ら学ぼうとすることよりも、静かに聞いていれば十分だと思っているのです。子どもを認める場面もありません。そもそも子どもに出力することを求めていないのですから当然です。具体的な方策はいくつもありますが、先生方の意識を変えてもらうことが先決です。まずは、教科指導部の先生方全員で課題を共有し目指す姿を明確にすることから始めたいと校長に提案しました。ゴールデンウィーク中になりますが、次回はできるだけ多くの教科指導部の先生と一緒に授業を見て、その上で部会を開いていただき、話を聞かせていただきたいと考えています。

この学校の子どもたちが持っている可能性はとても高いと感じました。特に1年生は、中学生も高校生もその様子から、学びたい、わかりたいという意欲が伝わってきます。まだまだこの学校での取り組みは始まったばかりですが、今後の展開がとても楽しみになっています。子どもたちの可能性を引き出せるようできる限り先生方のお手伝いをしたいと思います。

介護技術研修で授業から学んだことが活きる

先週末は、介護技術の研修をおこなってきました。今回は「感染予防」がテーマです。私は介護技術に関しては素人ですので、実務に携わっている専門家の助けを借りながらです。

今までのコミュニケーション研修ではこれが唯一つの正解というものはありませんでしたが、今回の「感染予防」の知識に関しては正解があります。知っていれば答えられますが、知らない、忘れていては答えられません。こういった知識は問うばかりでは、定着はしていきません。知識を使って課題を解決することが定着につながります。また、知識面はほとんどの方が一度は学習したはずの内容でした。一方的に説明しても聞いていただけない可能性があります。

そこで、研修の流れは、基本となる知識をグループで確認することから始めました。自分の中で知識が曖昧になっていることに気づいてもらい、仲間から教わって自分の中に答を持った上で全体での説明を聞くことで、参加意欲が高まり知識の定着度も高まります。その上で、知識と関連して、現場で起こりそうな事例についてどう対処する、考えるかを問いかけます。知識を活用する課題、答えるのに必要な知識を確認するような課題です。基本的な知識、一般的な知識は私でも解説できますが、現場に即した問題は専門家に助けてもらいます。学校でのゲストティーチャーを活用した授業での経験がここで活きました。この場面では、参加者から言葉を引き出し、専門家の回答とつなぐことに徹します。

実技の場面は互いに見せ合い、代表者に全体の場で説明してもらうなど、参加者が活躍できる場面をつくることを意識しました。よく知っている方はそのことをただ確認するだけでは、興味を無くします。そういう人が他者に見本を示すなど活躍することが大切です。
最後の課題は、具体的な場面でどのように対処するか、今回の研修での知識を使って考えるものです。この課題にきちんと答えることができるようになることが今回の研修の目標です。皆さんしっかりと必要な対応を考えてくれました。ポイントを確認して終了です。
2時間近い研修ですが、皆さんよく集中してくださいました。

この研修のように参加者に知識があることが前提になっていても、完璧ではないような場合はその進め方に工夫が要ります。学校での復習場面や受験対策の授業と共通するものがあります。知識の確認で、忘れていることを自覚させるとともに、恥をかかさずに前向きに知識を再取得させようとさせることが必要です。グループなどで確認し合うことが、大人でも有効でした。また、授業と同じくこの課題をクリアできればOKという、目標を明確にしておくと進め方がシャープになります。何を扱うか、切り捨てるかといった判断が楽になります。
今回の研修で、日ごろ先生方の授業から学んでいることがとても役に立ちました。教える内容に対する知識も大切ですが、進め方、構成がより大切であると改めて感じました。

企業での新人研修(2日目)

昨日は企業の新人研修の2日目でした。
午前は学校ホームページで「何を変えられるか」という課題を考えてもらいました。学校ホームページは誰を対象としたものか、その対象にどのようになってほしいのかという視点で整理してみます。その上で、学校ホームページからその具体例となる記事を探すというものです。みなさん、まず母校のホームページを検索します。中には昨年の体育大会の記事が最新という学校もあります。ここからどのようにして記事を探すかが問題です。やみくもに探す人、J−KIDS大賞のようなサイトの上位校から探す人、個人が運営しているサイトのランキングから探す人、いろいろです。途中で探し方を共有し、グループで情報交換をしてもらいました。

参加者は、デザインや利便性といったところに目がいきます。保護者が見たくなるという視点です。しかし、最初はそこでひかれても、中身がなければ継続して見てはもらえません。「記事を見ることで、どう変わってほしい」という中身の持つ意味まで考えることができていません。また、「地域」の方を対象にした記事を探したものの、ボランティア募集の記事を見つけるにとどまった人もいます。
自分の中に、「学校ホームページで誰をどのように変えることができるか」の解答の明確なイメージがないため、取り敢えずホームページを見て探すというアプローチです。限られた時間では表面的にしか見ることができなかったのもいたしかたないことです。質の高いものは、単にネットを検索していてもなかなか見つかるものではありません。
実は、この新人たちは「愛される学校づくりフォーラム2014 in京都」に全員参加していたのです。ここで得た情報を活用してほしかったのです。学校ホームページに関する話題を思い出せばヒントになりますし、登壇された先生方の学校を調べて記事のカテゴリーや内容を吟味すれば、よい記事は見つかったはずです。細かいことを思い出せなくても、それこそインターネットで調べればすぐに情報は手に入ります。フォーラムのようなものに参加することの意味がわかってくれればと思います。

午後の課題は顧客とのコミュニケーションのロールプレイです。顧客と出会う前に何をするかをまず考えてもらいます。パンフレットを準備する、顧客の情報を集めるといったことが出てきます。ここで、「先輩にアドバイスを求める」という考えは出てきませんでした。自分でまず考えることが大切です。しかし、わからないことは聞くことが必要です。経験の少ない新人だからこそ、先輩にアドバイスを求めることが重要なのです。

グループで顧客の人物像を作ってロールプレイです。やり取りの様子を見ているとよい表情を作ろうとしたり、相手の目をしっかり見てうなずいたりしています。基本的なスキルはあるようです。互いの気づきをグループで共有してもらいましたが、非常に集中して話を聞き合っていたのが印象的でした。「相手の言葉をオウム返しで言うと、共感が得られる」といったとてもよい気づきが参加者から出てきました。仲間のよいところをしっかりと見つけることができていました。

代表の1組にロールプレイを再現してもらいました。代表も他の参加者もとてもよく集中していました。ロールプレイ終了後、参観していた社長にコメントを求めたところ、すぐさま全員の頭がそちらを向きます。社長は細かいことではなく、その集中する姿勢を評価してくれました。彼らがこれから伸びるために大切なことを評価するところはさすがです。ポイントをおさえたコメントでした。

最後に、私が顧客役になって代表者とロールプレイをしました。自ら手を挙げてくれる人がいたのはとてもうれしいことです。苦戦をしたのですが、簡単に引き下がらず粘りを見せてくれました。やった者しか学べないこともあったとは思いますが、見ていた側も第三者の視点だからこそ学べることにたくさん気づいたようです。顧客の願うものとこちらが提示するものがずれていたが、自分がその立場だったらどうだったどうろかと真剣に考えていたことがよくわかります。長時間にわたる研修でしたが、最後まで、いや終わりが近づくほどに高い集中度でした。

彼らが生徒だったら楽しい学級を作れるだろうなと思うような参加者でした。講師ではなく教師としての楽しさを感じさせていただいた研修でした。参加者の皆さんとこのような機会を与えていただいた企業に感謝です。

企業での新人研修(1日目)

昨日は企業の新人研修の講師をおこなってきました。ほとんどが新卒の方です。

今回の研修では、課題を通じて知識を得ることだけでなく、整理することを通じて「視点によって見え方が変わる」「視点を変えることによって見えなかったものが見える」といった視点の大切さについて気づいてもらうことを意識しました。また、グループで考えることは、他者の異なった視点に触れることになるので、考えを深めるのに有効です。グループワークを通じてこのことにも気づいてもらえたと思います。
最近の若者の特徴でしょうか、みなさんとても素直な反応をしてくれます。与えられた課題も真剣にこなそうとします。しかし、課題に対してはその答をストレートに求めようとします。ネットの利用でも周辺情報を集めることはあまりしません。課題の背景や、課題解決のための方法を考えることはあまり意識されていないように感じます。本日の研修では、そのことについても考えてもらう予定です。

今回の一連の研修で、「小中連携」「教科担任制」といった学校に関連する事柄について互いにレクチャーする課題があったようです。その課題の一環として全員の前でそれぞれがプレゼンテーションをしたそうです。その時互いに評価し合った結果を受けて、今回もう一度全員にプレゼンテーションをおこなってもらうことになりました。
今の大学ではプレゼンテーションは必須のものかと思ったのですが、学校や学部によってまちまちのようです。堂々と動きも加えて全体を見ながら話す方(試食販売のアルバイトをしていたそうです)もいましたが、思いのほか慣れていない人が目立ちました。しかし、受講者に聞いてみると、みなさん指摘されたことを何らかの形で改善しているようでした。前回は原稿を見ながらたどたどしかった方が多かったようですが、かなりの人が原稿を見ずに話せるように事前に練習していました。互いの成長を見あうことはよい刺激になります。同世代の集団で学ぶよさでしょう。
「・・・である」「・・・だそうだ」と結果や結論を述べるだけで、その根拠やその結果が意味するものについてはあまり説明できていませんでした。資料をまとめるだけで、自分が何を伝えたいのか整理できていないものも目立ちました。なぜその話題を取り上げたのか、そこから何を考えたのかといったものが伝わってきません。真剣取り組んでいたのでしょうが、姿勢が受け身だったのかもしれません。

「目的」という言葉がプレゼンテーションで使われていたので、全体に対して「目的」と「目標」の違いを確認してみました。驚いたことに、一人を除いて全員逆にとらえていました。彼らが受けた学校教育ではこのことを意識することがなかったということです。先生相手に同様の質問をしてもかなりの数が間違えます。総合的な学習の時間などで「目的」と「目標」を正しく意識して活動することの必要性を感じました。

本日の研修では、昨日の研修内容が消化できていないと苦労するように考えています。彼らがどのような姿を見せてくれるか楽しみでもあり、不安でもあります。彼らの姿が、私の昨日の研修の評価になるからです。私も彼らの姿からしっかり学びたいと思います。
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