今は子どもたちをほめる時期

ほとんどの学校で新学年が始まったことと思います。黄金の3日間、1週間という言葉があります。今まさにその真っただ中でしょう。子どもたちとの最初の出会いで、よい人間関係をつくる。子どもたちに学級のルールをきちんと伝え徹底させる。そういう時期です。

子どもの言葉をよく聞いて人間関係をつくるようにアドバイスをすると、子どもたちに迎合する「友だち先生」になることと勘違いをされることがあります。子どもたちの言葉を聞くとは、子どもからの発信を無視せずに受容するということです。そして、ポジティブに評価することです。子どもたちの言いなりになることではありません。人間関係をつくるとは、友だちになることではありません。子どもたちと信頼関係をつくることです。言い換えると子どもたちに安心して学校生活を送れる環境を保障することです。そのためには学級のルールを明確にし、それを徹底させることが必要です。このことに最大限のエネルギーを使うのが今なのです。

子どもとの人間関係をつくるために、この担任は面白そうだ、話を聞いてくれそうだと思ってもらうことから始めます。自分の人となりが伝わるようなエピソードを話すことも必要ですが、子どもの反応をしっかりと受け止めることがとても大切です。特に意識してほしいことは、Iメッセージでほめることです。子どもたちが自分の話に反応して笑ってくれたなら、「笑ってくれたね、うれしいな」「反応してくれたね、ありがとう」とIメッセージで返します。
同じことが学級のルールの徹底でも言えます。学級のルールを伝えたならば、そのルールを守ってくれた子どもを探します。そして、その子どもをほめるのです。「○○さん、みんなの見本になるようなとても素敵な挨拶をしてくれたね。ありがとう」と具体的に固有名詞を出してほめることで、「自分もほめられたい」「このようにすればほめられるのか」と、子どもたちがルールを守ろうとするようになります。できていないことを叱り続けても徹底したことにはなりません。徹底するとは、きちんと守らせることです。そのためには、守れたことをていねいほめて、よい行動を広げることが必要なのです。また、ほめるときは「いい挨拶だね。えらいね」とYOUメッセージになりがちです。YOUメッセージは上から目線に感じます。くどいようですが、この時期は人間関係をつくることを考えて、「ありがとう」「うれしい」とIメッセージでほめるように意識してほしいと思います。

教師が自分のことやこうなってほしいという学級への想い、みんなが守るべきルールをたくさん発信する時期です。それと比例して、子どもたちの反応やよい行動をたくさんほめる時期でもあります。思いを伝えることばかりにエネルギーをかけて、子どもたちをほめることを忘れないようにしてほしいと思います。

忙しい時期だからこそ学べる

初めて担任を持った方は、入学式・始業式に向けていろいろな準備に追われていることでしょう。職員会議や学年会などで連絡、指示された事柄をこなすだけでも目が回っていることだと思います。初任者などで担任を受け持たない方も、何かと慌ただしく過ごしていることと思います。
経験の少ない若い方に伝えたいのは、忙しい時期だからこそまわりを見るということです。隣の席に座っているベテランは何をしているのだろう、他の分掌はどんな仕事をしているのだろうとちょっとした時間の隙間にのぞいてみるのです。こまかい内容までわからなくてもいいのです。何のためにどんな仕事をする必要があるかを意識するのです。ベテランは先を読んで仕事ができます。今自分が手一杯でとてもそこまでやる余裕はなくても、すぐに必要となることです。この先何があるかが見通せているだけで、ずいぶんと違うものです。忙しい時期だからこそ、どんな仕事があるのか、必要なのかが見えてくるのです。

なかなか余裕がないかもしれませんが、時々は息抜きを兼ねて校舎内を見回るといいでしょう。教室の様子も学級によって異なっているはずです。いつでも子どもたちを迎えられるように掲示物などの準備が整えられている学級もあるはずです。一方、あえてほとんど何もしていない教室もあるかもしれません。新学期が始まってその教室がどのように変わるか見ることもよい勉強になります。自分たちでやらせるために、あえて担任が何もしていないのかもしれない。そんなことを想像しながら観察するのです。
新学期は最初の1週間が大切だとよく言われます。その貴重な時期に何をしなければいけないのかを学ぶ一番の機会なのです。書類作成や整理などの事務的な作業もたくさんあります。それと同時に子どもたちとかかわるために必要なこともたくさんあります。しかし、この学級経営に関することは経験がないとなかなかわかりませんし、具体的に教えてもらえません。5月になってどうも学級がうまくいかないと思っても、一番大切な時期はもう終わってしまっているのです。
ちょっと立ち止まってまわりの先生がどんなことをしているか観察してみてください。学級開きの時には、どんな話をするのか、またしたのか教えてもらってください。そこから、学級経営のヒントをたくさんもらえます。

また、担任を受け持たない先生は自分が所属する学年の先生が何をしているか、それこそ真剣に観察してください。自分が担任を持った時に必要なことの多くを学ぶことができます。若いころ、副担任をしている学級の担任の後を金魚の糞のようについてまわり、とにかく何をしているのか盗もうとしたことを思いだします。その先生から学んだおかげで、初めて担任を持った時、子どもたちのためにいつ何をしなければいけないのか、先を見通して学級経営をすることができました。

忙しい時期だからこそ、他から学ぶよい機会だととらえてください。この時期にしか学べない貴重なことがたくさんあることを意識してほしいと思います。
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