友だちに「助けてもらう」とは?

授業中に指名された子どもが上手く説明できなかったり、途中で立ち往生したりすることがあります。先生が一生懸命ヒントを言ったりして何とか答えさせようとするのですが、うまく答えられないこともよくあります。これ以上は無理だなと判断して、「すわっていいよ。じゃあ、他の人」と次の子どもを指名すると、答えられなかった子どもは「ダメだった」「失敗した」というネガティブな気持ちになります。そこで、「誰か助けてくれる」と他の子どもに助けてもらうように働きかける場面に出合います。助けてもらって、失敗のピンチを乗り切らせようというわけです。子どもに挫折感を味あわせないためのよい方法に思えます。しかし、中には?と思うような場面を目にすることもあります。友だちに「助けてもらう」ことについて考えてみたいと思います。

よく目にするのが、挙手して指名された子どもが自分の考えを説明し、授業者が「そうだね」とそのまま先に続けてしまう場面です。これでは、「すわっていいよ。じゃあ、他の人」とした時と何も変わりません。答えられなかった子どもは何も助けられてはいません。自分をだしにして友だちが活躍しただけです。
また、「誰か助けてくれる」という言葉に、子どもたちが反応できない学級があります。「助ける」とは具体的にどうしていいかわからないからです。「助ける」ということは、困っている子どもが自分で答えられるようにすることです。そのことを意識すれば対応は見えてくるはずです。

「ヒントを言って助けてくれる」というようにすれば、そのヒントを聞いて「どうかな」と本人に答えさせることができます。誰かに代わりに説明させたのであれば、「どう納得した」と本人に確認します。納得できていれば、「じゃあ、もう一度説明してくれるかな。みんな、○○さんの説明を聞こう」と活躍の場面をつくるのです。「まわりの人、助けてあげて」という対応もあります。これならば、まわりの子どもたちが直接教えることもできます。教えてもらってから、発表させればいいのです。グループ活動の後の発表などに有効な方法です。
また、本人が途中まで説明できていたのなら、「○○さんの考えを代わりに説明してくれる人いる?」としてもよいでしょう。説明してくれた後、必ず「どう、△△さんの説明でよかった?」と確認することを忘れないようにします。自分の考えと同じかは本人にしか判断できないからです。それでよければ、「わかってもらってよかったね」と言って本人に再度説明させる。そのあと、「△△さんに、助けてもらってよかったね」「△△さん、助けてくれてありがとう」と「助けられた」「助けた」ことをポジティブに評価します。

友だちに「助けてもらう」場面は、本人が助けてもらってよかったと思うことが大切です。必ず本人が助けてもらって活躍する場面をつくること。そして、「助けられた」「助けた」ことをポジティブに評価して、子ども同士の関係をつくることを意識してほしいと思います。

子どもの発言の機会を確保する

子どもの発言を増やすこと、発言意欲を高めることについて何度か述べてきました(「子どもの発言を引き出すには」、「子どもの発言量を増やす」参照)。子どもの発言意欲が高まってくることはとてもよいことです。多くの教師が目指す子どもの姿だと思います。ところがここで困ったことが起こります。子どもに発言させるといっても時間に限りがあります。全員が発言したいと思っても全員に発言させる機会を与えることは難しいのです。どのように考えればいいのでしょうか。

一つは、教師の発言量を減らして、子どもが発言できる機会をできるだけたくさんつくることです(「子どもの発言量と教師の発言量」参照)。また、できるだけテンポよく次々指名することで、密度を高める方法もあります。1時間の中で全員が1回は発言できることが理想ですが、なかなか難しいのも現実です。小学校であれば1日に1回とすれば現実的には可能でしょうが、発言意欲が高まっているのに発言の機会がなければせっかくの意欲も下がってしまいます。一斉授業の形を取ると、子どもの発言したい気持ちが高まることが、かえって発言できないという不満を高めることにつながりやすいのです。そこで全員で同時に言わせる先生もいます。確かに、簡単な答の時などには有効な方法だと思います。しかし、特に低学年で目立つのですが、このような時に子どもはとても大きな声で答を言う傾向があります。発言したい気持ちを満足させているだけのように感じます。発表は必ず聞き手を意識して、伝えることが大切になります。簡単な答の時と限定した理由はここにあります。

そこで、もう一つの方法です。全体で発言することにこだわれば、同時に話せるのは常に1人です。そこで発想を変えて、ペアやグループで発表させるのです。理論上は、ペアであれば2人が発言する時間、4人グループであれば4人分の時間で全員が発言することが可能になります。子どもたちが自分の考えを持ち、発言したい意欲があれば、これが一番の解決策だと思います。ここで、注意しなければいけないのは、発言したい意欲が高いと互いに言いっぱなしで終わりやすいということです。これでは、先ほども述べたように発言したい欲求を解消しただけです。互いに聞き合い、聞いたことを評価し、考えを深めることが大切になります。日ごろから友だちの意見をしっかりと聞き合い、聞いたことをもとに話し合うことが学級全体に浸透していることが必要です。ペアやグループを活用するための基本的なことが子どもたちに身についていなければいけないということです。発言する意欲だけではなく、聞く姿勢も合わせて育てなければいけないのです。

子どもたちの発言意欲を高めることは、発言の機会を確保することと一体で考える必要があることを意識してほしいと思います。
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