足場をそろえる

子どもたちに複雑な問題取り組ませると、最初の方でつまずいてしまい、答えの確認が始まるまで動きが止まってしまうことがあります。また、確認が始まっても最初の部分の説明を理解しようとしているうちに先に進んでしまい、ついていけなくなっていることもよくあります。
どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。

複雑な問題は答えに到達するためにいくつかのステップがあります。最初の段階でつまずいてしまうと何ともなりません。教師は半数くらいの子どもがゴールにたどり着くまでは自力で解決させようとしますが、その間手がつかない子とそうでない子の差はどんどん広がっていきます。このまま答えを確認しても学級全体に理解させるのは難しい状態になっています。
教師が個別に対応しようとしても、つまずいている子が多ければ対応できません。友だちに相談するにしても、相手がまだ解いている途中であればなかなか声をかけづらいこともあります。

このような時は、いったん個別の活動を止めて最初のステップだけを全体で確認します。答えではなく、どこに目を付けたか、何をやってみたかを発表させるのです。例えば図形の問題ではどこに線を引いたか、資料を使う問題であれば資料のどこに目を付けたかを聞くのです。こうすることで学級全体を一つ次のステップに到達させることができます。子どもたちの足場がそろい、開いていた差も縮まります。
ここで再び個別に取り組ませます。場合によっては、何度かこれを繰り返します。
このようにすれば、たとえゴールに到達できなかったとしても、全体の確認の場面ではクリアすべきステップは減っていますので、より理解しやすくなります。

複雑な問題は、一気にゴールに到達しようとせず、一つひとつのステップを学級全体でクリアして、子どもたちの足場をそろえながら進めることで、より多くの子どもが積極的に取り組み、理解できるようになります。

考えるための足場をつくる

子どもたちが考える授業をしたいと誰もが思っていることでしょう。しかし、問題を提示して、「考えてごらん」と言えば考えられるわけではありません。子どもが考える授業にはどのようなことが必要なのでしょうか。

大切なことは、考えるためには知識が必要だということです。授業中に考えさせたい問題に対して、どのような知識が必要かまず教師がしっかりと押さえておく必要があります。その上で、子どもたちがその知識を使える状態にあるのかどうかを確認しなければなりません。
既修事項であっても全員が身についているわけではありません。授業の最初に復習したり、整理をすることから始めなければなりません。考えることに時間を使いたいのですから、この時間はできるだけコンパクトにしたいものです。そのために必要な知識を絞り込んでおくことが大切です。
必要な知識が未習であれば、どのようにして身につけさせるかを明確にしておく必要があります。原則、知識は教えるか、調べさせるかのどちらかです。授業の組み立てで、どの程度の時間を割けるかによって判断する必要があります。

教師は、どうすればこの問いに答えられるのか、考えることができるのかを意識していないことがよくあります。考えるにあたって、無意識のうちにいろいろな知識を活用していますが、そのことを意識下から掘り起こす必要があります。そして、この考えるための足場となる知識を子どもたちが利用できるようにすることが大切になります。この足場をつくるという発想を持つようにしてほしいと思います。
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