子育てに関する講演

児童センターで子育てに関するお話しをさせていただく機会がありました。就学前の小さなお子さんをお持ちのお母さんを対象にしたものです。20人以上の参加者があったのですが、当然のことながら皆さんお子さんとご一緒です。講演の間お子さんをどうするのかというと、別室で預かってくれるのです。面倒を見てくださるのは他の児童施設の職員やボランティアで、子どもの数と変わらないくらいの方がこのために集まっていました。地域全体で子育てを応援していることがよくわかります。今回参加されたお母さん方も、子育ての手が離れたら、今度は応援する側にきっと回ってくれることと思います。こうして次の世代へと助け合いがつながっていくのだとあらためて感じました。

さて、講演の内容ですが、次のようなことを話させていただきました。

・子育てに正解を求めない
・ほめ方叱り方
・親が子どものよいところを見つける
・言葉をかける、聞くことを大切にする

「明るく楽しく前向きな気持ちなっていただけるようなもの」という主催者からの、リクエストだったのですが、ちょっと硬くなってしまったかもしれません。終了後、反省させられたといった言葉が聞かれたり、今まで間違えた叱り方をしていたが、これから直せば大丈夫ですかといった相談を受けたりしました。
育て方が悪い、親のせいだという言葉が安易に使われすぎるような気がします。そのために、子育てにプレッシャーがかかるのです。同じように育てても子どもの成長は、一人ひとりのもつ個性や環境によって大きく変わります。うまく育ったかどうかは、大人になるまで、いや大人になっても言えることではないと思います。
私がお願いしたのは、子どもが安心して居ることのできる場所をつくってほしいということです。「あなたを大切に思っているよ。愛しているよ」ということ子どもに伝えることです。居場所のある子どもは決して崩れないからです。
日々大変な子育てですが、だからこそ子どもの成長を楽しめる余裕を持ってほしいと思います。私の思いが参加者にうまく伝わっていれば幸いです。

食の授業づくりの講演

昨日は栄養教諭・学校栄養教職員対象を対象に、食の授業づくりの講演をしました。

食の授業を何度か見せていただいたことがありますが、共通しているのは資料やワークシートなど、事前の準備を驚くほどていねいにされていることです。年に何回も授業のチャンスがないのでその分、しっかりと準備をされるようです。どなたも、食の授業に対して本当に熱い思いを持って臨まれています。それ故に自分の授業に対して、どうすれば子どもたちが興味を持ってくれるのか、子どもたちの行動を変えるには何が足りないのかと、真剣に悩んでもおられます。
参加された方は、みなさん真剣なまなざしで私の話を聞いてくださいました。少ない授業経験を補うために、しっかりと勉強しようという気迫のようなものを感じました。
また、栄養教諭・学校栄養職員の皆さんの横のつながりの強さも印象に残りました。情報交換し助け合おうとする雰囲気が会場にあふれていました。

食の授業は、やっと学校現場に認知され始めたところです。しかし、参加された皆さんの姿を見て、間違いなく学校現場によい形で定着するという確信を持つことができました。ぜひ、実際の食の授業を見せていただいて一緒に勉強する機会をいただきたいとお願いをして会場を後にしました。

終日特定の学級を見る

先週末に、中学校の授業アドバイスをおこないました。今回は、終日2つの学級を中心に授業を見学し、その学級にかかわっている先生方に対してまとめてアドバイスをさせていただきました。

今回の子どもたちの様子を見て感じたことは、授業の雰囲気をつくっているのは授業者の個性や進め方よりも、学級集団の特性のようでした。
1つの学級は、子どもたちと教師との信頼関係がうまくできていないようでした。過去に友だちの発言をからかうようなことがあったようです。子どもたちが安心して発言できる状況を教師が保証できなかったので、信頼関係も崩れてしまったのです。先生方に次のようなことをお願いしました。

・「わかった人」と正解を求めるような問いかけをしないこと
・どんな発言も「なるほど」とまず教師がきちんと受容すること
・その発言をポジティブに評価すること
・「同じ考えの人」「説明に納得した人」と問いかけることで、他の子どもとつなぐこと

残された時間はあまりありませんが、教師が子どもを認める、子ども同士が互いを認め合う雰囲気をつくることからやり直すのです。

もう1つの学級は、明るく元気な子どもが多いのですが、ちょっと落ち着きがありませんでした。どの時間でも共通していたのは、やるべきことが明確に指示されると取り組む姿勢を見せるのですが、集中力がすぐになくなり、同性間ですぐにおしゃべりを始めてしまうことです。学力的には2極化が進んでいるようです。できる子は終わってしまうとすることがない、できない子は途中で手が止まって集中力をなくす。そのために、ざわついてしまうようです。

・課題に対して答えだけではなく理由の説明をきちんと求めること
・わからなければ友だちと相談できるようにすること
・課題をスモールステップに分けて、わからない子がつまずいたままになる時間を減らすこと
・座席を男女市松模様にすること

このようなことをお願いしました。
できる子には説明などの高度な課題を与える。できない子どもには、わからない状態、手つかずの状態でいる時間を減らすことで、集中力を切らさないようにするわけです。また、同性間で相談すると無駄話になりやすいので、座席の工夫もします。

今回のような授業アドバイスのやり方は初めてでしたが、1つの学級にかかわる先生方が一緒に話をすることで、自分の抱えている問題が個人の問題ではないことに気づき、気持ちも楽になったようです。互いの授業の様子を共有化することで、注意すべき点も明確になり、共通の対応をとれるためにその効果もより期待できます。学級づくりを担任だけの問題ととらえるのではなく、かかわる先生方全員の問題ととらえることが大切だとあらためて思いました。

ICT活用研究校訪問

先週、来年度ICT活用研究のお手伝いをする学校と打合せを行いました。私の方から無理を言って、授業の様子も見せていただきました。この子どもたちの様子であれば、ICTを工夫して使うことで、授業での関わり合いや集中度を高めることができると思いました。

ICTの活用研究というと、まず利用することが第一歩ととらえがちなのですが、この学校ではICTの活用以前にどのような授業を目指すかを明確にすることから始めていました。その上で、どのような場面でICTの出番があるかを考えるのです。そして、ただ使ってみるのではなく、きちんと従来の方法と比較して、どちらがより効果的かを検証しようとしています。このような視点を意識することで、ICTを使う、使わないにかかわらない、基本となる授業力の底上げを図ろうとしていることをしっかり感じました。
目指す授業像も「伝え合う、学び合う」ことをベースとしたしっかりものでした

目指す授業像、子どもの姿を明確にし、それに向かってどのような工夫をするかが、授業をよくしていくための基本です。ICTは黒板やプリントなどと同様に、ツールの一つにしか過ぎません。そのことをわかった上でそのよさを活かす場面を工夫することが大切です。このポイントしっかり押さえている学校です。足が地に着いた研究になることと、今後が楽しみになりました。

教材の広がりを実感する

昨日は幾何ツールを使った授業研究会に参加しました。

1人の授業者が同じ教材で2度授業をします。1回目の授業後に検討会を行い、その内容を受けて修正した授業をもう1度行います。内容の修正はあくまでも授業者の意思で決定するので、言い訳はできません。とても、厳しい研究会です。
まな板にのる授業者へのプレッシャーは想像に難くありません。

1つの教材をつかって2つの課題に取り組んだことから、今回の話題は広がりました。
等積変形を、三角形の等積変形を使って考える、その上で三角形の合同を使って別の形をつくるという課題です。

・教科書で扱っている三角形の等積変形を押さえることを優先するのか。
・三角形の等積変形にはこだわらず、子どもたちが集中して取り組んでいた後半の課題に絞って時間をつかうのか。

・三角形の等積変形、三角形の合同などの学習内容を扱うことを大切にするのか。
・数学的な思考や根拠を持って課題を解決することをより大切にするのか。

・1時間完了にこだわらず、2時間完了にするのか。
・2時間でやるのなら、どちらの課題を先にするのか。

それぞれの先生の授業に対する考えや思いがたくさん語られました。1日議論をしても結論がでる問題だとは思いません。1つの教材でも、本当に様々な授業が生まれてくることを実感しました。教科書の例題であっても、教師の工夫でいろいろな広がりを見せると思います。教師の持つ授業観の多様性と、教材研究の大切さをあらためて学ばせていただきました。プレッシャーのかかる授業に挑戦された授業者と同僚の先生方、忌憚のない意見をたくさん発表して内容の濃い会にしていただいた参加者の皆さんに感謝です。

課題意識を持って授業に臨む

昨日は中学校で授業研究と授業アドバイスをおこないました。

今回は授業アドバイスを9人に行いましたが、最後の1人が終わった時は10時近くになっていました。勤務時間を過ぎてまでアドバイスを受けてくださった先生方の熱心さには本当に頭が下がります。
遅くなった原因の一つに、どの先生も子どもとの関係がよいことがあげられます。子どもたちがしっかりと授業に参加しようとしているのです。その結果、教師の働きかけと子どもの活動の関係が明確になり、授業の改善点が具体的にはっきりとします。改善のポイントがたくさん見つかり、どうしても話が長くなってしまったのです。

ある先生は、すべての子どもたちにできたという実感を持たせたいと、全員に○をつけるようにしていました。その結果、以前と比べて子どもたちが授業に積極的になってきたという手ごたえを感じています。しかし、解説の場面等で集中していない子がまだいます。この子たちは、どちらかというとできる子たちでした。このことに気づいていましたが、どうすればよいのか、悩みながら授業に向かっていたそうです。

そこで、できる子たちが参加しない理由を一緒に考えました。
彼らは○をもらっているので、解説を聞かなくてもよいと思っているようです。結果がわかっているので参加しないのです。とはいえ、彼らが興味を示す課題だと、せっかく積極的に参加するようになった学力低位の子どもが離れていってしまいます。扱う問題は変えずに、友だちのやり方を本人に代わって説明するなどの、より高度な課題を工夫をすることにしました。自己完結するのではなく、他の子どもたちとのかかわりをもたせる課題とすることで、できる子も低位の子も参加できる授業に進化させるのです。

他の先生方ともこのような話をたくさんすることができました。
どなたも、それぞれの課題を持って授業に臨まれていました。課題を持っていると、クリアできたかどうか、子どもたちの状況を意識することになります。子どもたちをしっかり見ることで、うまいかない原因も見えてきますし、あらたな課題も見つかります。こうして授業力がついてきているのです。

この学校におじゃまするようになって1年近くがたちました。確実に力をつけてきた先生が何人もいらっしゃいます。授業改善に前向きな先生が増えてきました。
「2月には、4月からの学級経営について相談させてください」という、うれしい一言をくださった先生もいらっしゃいました。
先生方の学ぼうという気持ちに私もたくさんの元気をいただきました。

ペア活動でのアドバイス

先週末は中学校の授業研究に参加しました。

体育の柔道の授業でのことです。ペアでアドバイスしながら、受け身の練習をしていました。先生が一人ひとりにアドバイスするのには限界があります。活動量を確保しながら修正をするにはペア活動はよい方法です。
柔道経験がなくてもよいアドバイスができているペアもいるのですが、どこがよかったか、何をアドバイスしていいか、うまく伝えあえないペアも目につきます。練習を繰り返しているうちに子どもたちの集中力が落ちてきました。
きちんとかかわり合わないので、漫然とした練習になってしまったのです。

柔道経験の少ない子どもたちなので、先生のお手本を数回見て説明をうけただけではポイントがわかりません。互いにアドバイスをし合うにもそのためのベースがなかったのです。

授業の最後に全体で、自分が受けたよいアドバイスを発表させました。とても意味のある活動です。最後ではなく、途中で練習を一旦止めてからこの活動をおこなうことで、アドバイスのポイントが明確になり、その後のペア活動が変わったと思います。

子どもたちがアドバイスし合うには、そのためのベースになる知識や経験が必要なことをあらためて学ぶことができました。

子どもの集中力が続く授業

昨日は中学校で英語の授業研究に参加しました。

子どもが積極的になるにはで紹介した、GDMの授業です。この時間は新たに、"into"と"out of"の使い方を学ぶ場面でした。代表の子どもが、「教室の外に移動して廊下の窓に貼ってあった絵をはずして教室に戻ってくる」というシチュエーションを英語で表現します。
子どもたちは自信がないのかなかなか全員がしっかりと大きな声で言えません。先生は正しく言えている子どもにうなずきながら、何度も挑戦させます。通常このような状態が続くとあきらめる子どもが出てきて、集中力が落ちてきます。ところが、なかなか理解できない子どもも、真剣に友だちの声を聞きながら理解しようとしています。結局この時間の最後まで子どもたちの集中はきれませんでした。

子どもたちの集中が続いた理由の一つは、同じことを何度も繰り返しているということです。この場面で言えば、何度も表現させた後、代表で演じる子どもを変え、内容の変化は絵の種類を変えるなどわずかにとどめ、また挑戦させています。何回も繰り返すうちに、どこかで理解できる瞬間があるのです。子どもたちはそのことを経験的に知っているので頑張り続けることができるのです。わかりたいという気持ちが満たされる瞬間を知っているから集中力が続くのです。

1回やってすぐに先生が正解を言って、それをただ繰り返す。これでは、子どもは答えがわかっただけできちんと理解できたわけではありません。わからない子はわからないまま授業は進んでいきます。すぐに集中力は切れてしまいます。

このことは英語に限ったことではありません。子どもたちがわかる瞬間を保証することが、子どもたちのやる気と集中力を生み出すのです。安直に答えを教え込むのではなく、子どもたちの中から「わかった」が生まれてくるような工夫が大切だということをあらためて確認できました。

子どもが真剣に考える授業

昨日は中学校の国語の授業研究に参加しました。

私も含め参加された先生方は心地よい疲れを感じたと思います。それは、子どもと一緒になって課題を考えたからだと思います。
授業の課題は本文のクライマックスとなる一文を見つけるというものでした。4つの文が候補にあがり、子どもたちがそれぞれ理由を発表し合います。発表に対して、すぐに次の意見を聞くのではなく、賛成する者、同じ考えの者を確認したうえで、再度同じ考えの意見を発表させる。このことをどの意見に対しても丁寧に行っていました。自分と違う考えを一度聞いただけですぐに理解することは難しいことです。このように、何人かに同じ考えを発表してもらうことで、違う意見の子にも友だちの意見がしっかり理解できます。
最後にキーとなる言葉について意見が出されました。その意見について数人が意見を言うのですが、なかなかうまく言葉になりません。それでも授業者は子どもの代わりに言葉を足したりせずに笑顔で子どもの言葉を待っています。どうしても言葉が出てこない子には「誰か助けてあげて」と子どもにつなごうとしました。子どもたちは真剣に考えている様子ですが発言できるまでには考えがまとまっていません。残り時間もあとわずかでしたが、授業者は全体での話し合いをやめて、「一度自分で考えてみようか」と個人に戻しました。
自分の考えがうまく言葉にならずモヤモヤしているのでしょう。隣の子に話しかけている子もいます。授業者はすぐにペアで相談するよう指示しました。すると子どもたちが一斉に話し始めました。全体の場では意見を言えなかったけれど、自分の考えを持っていたのです。子どもたちが本当に真剣に考えていたのです。

このような場面が生まれたのはたまたまではありません。日ごろから子どもたちが互いの意見をきちんと聞く姿勢が育っていて、安心して意見が言える雰囲気があるからこそ、このような活動ができるのです。授業者が「自分だけでなく、学級に関わっている先生方みんなのおかげです」と言っていたのが印象的でした。このような雰囲気は教師集団で育てていくものなのです。

検討会でも子どもたちの素晴らしい様子がたくさん語られました。また、参加された教科指導員の先生からは、子どもたちとのかかわりや教材の位置づけなど、話し合いの中では語られなかったことについて大変勉強になるお話しを聞かせていただけました。

授業者、参加された先生方、そして私にとっても大変学ぶことの多い時間を過ごさせていただきました。皆さんに感謝です。

子どもとの人間関係が基本

昨日は中学校で国語の授業アドバイスを行いました。

子どもたちと先生の人間関係のよさが印象的な学級でした。子どもたちが先生を信頼していることが、表情や反応に表れていました。こういう学級で授業を見ると改善点がはっきりします。例えば、前時の復習が終わった後、グループでの活動に入ったのですが、子どもたちがざわつきました。先生との人間関係が悪い場合は、先生から解放されてざわついたり、だれることがよくあります。しかし、この学級ではそういうことないはずです。
最初の復習で受け身の時間が長かったため、その反動で一時的にざわついたのでしょう。思った通り、しばらくすると子どもたちは集中していきました。
であれば、復習を早めに終えるか、挙手した子どもに指名して先生が説明するという形をやめて、多くの子どもがかかわるような工夫をすればよいのです。
子どもと先生の人間関係は、授業のすべての場面で影響をおよぼします。まず人間関係をつくることが基本となります。その上で、いろいろな工夫が生きてくるのです。

授業後、授業者とピンポイントで具体的な話をすることができました。子どもたちとこのような人間関係を作ることができる先生ですので、きっと新しい工夫をしてよりよい授業をつくっていかれると思います。次の機会がとても楽しみです。

同じ方向で取り組むことのよさ

先週末は中学校で来年度の研究の方向性を確認する会議に参加してきました。

会議の前に、全校の授業の様子を見学させていただきました。授業を見ていて印象に残ったのは、学年として同じ方向で取り組んでいることの結果が子どもたちから見てとれたということです。
例えばどの学級も座席は男女が市松模様で並ぶようになっています。子どもたち同士で相談する活動を取り入れています。1年間続けてきた結果でしょう。この日見た授業のペア活動では男女がとても楽しそうにしっかりと関わり合っていました。
また、先生方は子どもたちの言葉を聞くことを大切にし、しゃべりすぎないよう意識しています。その結果、子どもたちと先生の関係がきちんと作られていて、子どもたちは集中して授業に参加しています。
どの学級でも、どの教科でも同じです。1学期の頃は学級や担当の先生によってバラツキがありましたが、ほとんど感じられなくなっているのです。学年にかかわる先生がみな同じことを意識して取り組めば、個々に取り組んでいるときとは結果は大きく違います。子どもたちが育つことで、先生の経験や力量の差を子どもたちが埋めてくれるようになります。誰の授業でもきちんと集中して参加するようになるのです。

この学校では、来年度に向けて、共通で取り組むことを明確しようという動きが出てきています。先生方に、同じ方向で取り組むことのよさが実感されてきているのだと思います。学校全体がどのように変わっていくかとても楽しみです。

わからなければ聞く

昨日は、中学校で授業アドバイスを行いました。

社会科の授業で、おもしろい場面がありました。北海道の農業の授業です。石狩、空知、十勝地区では水稲が生産されているのに、釧路、根室地区では生産されていません。水稲が石狩、空知、十勝地区で生産されている理由をたずねたところ、最初に指名された生徒は、「寒いから」と答えました。授業者は「なるほど」と認めましたが、次の生徒を指名しました。今度は「暑いから。米は暑くないと育たないから」と答えました。2つの意見が対立しました。
しかし、授業者は「あとから考えよう」と一旦その話を保留にしました。

授業後話をしたところ、なぜ最初の生徒が「寒いから」と言ったかわからなかった。稲はアジア原産で暑いところでとれるものだから、間違っている。よくできる子なのになぜそんなことを言ったんだろう。どう扱っていいかわからなかったので保留にしてしまったということでした。子どもが理解できないことを発言すると対処できなくなってしまうのです。
しかし、よくわからない発言でも子どもなりにちゃんとした理由があるはずです。まずはどうしてそう考えたか確認することが大切です。「それってどういうこと」と聞けばよかったのです。
これは私の想像ですが、米の生産量が多いところは北海道や東北地方なので、愛知県に住んでいる子どもから見れば「寒いところで米はとれる」と考えたのではないでしょうか。
もしちゃんと理由を聞いていたら、この2人の発言からよい課題が生まれたことと思います。

教師は自分のペースで授業を進めたいという気持ちがあります。わからない発言、想定外の発言はどうしても無視してしまう傾向があります。わからなければ「それってどういうこと」と聞きながら、子どもと授業をつくっていく姿勢が大切だと思います。

子どもを育てる地域

先日、中学校の学校評議員会に参加しました。

学校に関わる様々な方が参加されましたが、みなさん地域で子どもを育てるということを大切にしておられました。

たくさんの議題がありましたが、子どもたちのボランティア活動の活性化について一番多くの時間が割かれました。

ボランティアなのだから強制するようなことはしたくないが、リピーターの子が多いということは、経験するとその楽しさがわかるはずだ。参加するきっかけをうまく作ってあげたい。

自分が役に立っているという実感を持たせたい。ボランティア活動で地域がこんなに助かっていることを伝えたい。子どもたちに「ありがとう」と言われる機会をたくさん与えたい。そのためにも、子どもたちが活躍する場を地域で作らなければ。

このような積極的な意見がたくさん語られました。

こうすれば絶対活性化できるという妙案はありませんが、PTAが行っている資源回収を子どもたちのボランティアに移行することが検討されることになりました。

このような地域に育つ子どもは、自分も大人になった時に、次の世代を育てることに力を尽くしてくれると思います。地域の方が、子どもたちを育てることに積極的に関わろうとしていることの素晴らしさをあらためて実感させていただきました。

満足した表情になる授業

昨日は、中学校のソフトボールの授業を参観してきました。

班長や野球経験者を中心に子どもたちが声を掛け合う、学び合いがしっかりと成り立っている授業でした。自分たちで教え合えるよう日ごろから指導している成果でしょう。

「ソフトボールの基本はなんだっけ」という質問に答えられない生徒に対して、「周りの子に聞いてごらん」と指示したり、どんなポジションがあるか周りの子と確認させたり、子どものかかわりを意識していました。

また、班長や友だち同士の声掛けが「移動しよう」「並ぼう」というように命令文ではなく、Let'sになっています。日ごろ授業者がこういう指示の仕方をしているのでしょう。こういったところにも子どもたち同士、子どもたちと授業者の関係がよいことが見てとれます。

最後に集合した時の子どもの表情は、授業開始時よりも明るく、とても満足げでした。充実した時間であったことがわかります。子どもたちのかかわりを大切にすることは、どの教科でも同じです。互いに学び合い、自己有用感を感じたことがこの表情を作ったのだと思います。子どもたちの素敵な姿を見ることができた授業でした。

子どもたちの集中力が続く授業

先週末は、中学校の合唱の授業のアドバイスをしてきました。

印象的だったのはパート練習を子どもたちが集中力を切らさずにやり続けていたことです。パートリーダーを中心にどのように歌うかを話し合い、意見がまとまったら歌ってみる。これを繰り返しているのですが、男子も女子も実によい表情で参加しています。子どもたちの人間関係がよい証拠です。授業者もそうですが、担任を始め関わっている多くの先生方の指導のおかげだと思います。

子どもたちの集中力が切れない理由は人間関係がよいだけではありません。彼らがうまくなりたいと思っていることも理由のひとつです。グループ練習を切り上げて全体で合わせようと言っても、「まだうまく歌えないから練習させて」とお願いするぐらいです。
当り前ですが、前向きな気持ちで取り組んでいれば、集中力は続きます。
子どもたちがうまく歌いと思うのは、授業者が子どもたちをポジティブに評価していることが大きく影響していると思います。授業開始時の発声練習の時や校歌の合唱、子どもたちが出力する場面では必ず誰かをほめています。名前を読んで具体的にどこがよいかを言ってもらえるので、ほめられた子どもは自信を持てますし、他の子どもも意識すべきことが明確になります。教室に笑顔があふれてやる気が出てくるわけです。

3年前におじゃました時には、まだ学校が落ち着いていない状態で、子どもたちの表情が乏しかったのが印象的でした。よい表情で一生懸命歌っている子どもたちの姿を見て、先生方が子どもたちにどれほどの力を注いできたかをあらためて感じました。来年はきっともっと素晴らしい姿が見られることと楽しみにしています。

普段の授業から学ぶ

昨日は、中学校で剣道の授業研究に参加しました。

検討会で授業者から、野中信行先生(ブログ)の「味噌汁・ご飯授業」という言葉が出てきました。研究授業の特別な「ごちそう授業」ではなく、日常的な「味噌汁・ご飯授業」の在り方を学ぶことを大切にしようという主張です。

本時は、子どもたちが始めて竹刀を持って活動する場面です。ところが、時間数の関係でどうしても基本的な動きをこの1時間で教えなければなりません。子どもたちの活動量を確保すると学校で進めている研究のテーマである言語活動の時間をあまりとれないことになってしまいます。よくあることです。そこで授業者は、あえて見せる授業をせずに、こういう時間のない時に普段行う授業を見せることにしたのです。

授業者の説明の後、子どもたちが活動し、互いに動作を確認し合いますが、なかなか修正されません。一つひとつの動きの完成度を高めるためには、ポイントを子どもたちに確認する機会を何度も取ったり、代表者に実技をさせ、全体でどこがよいか、何が違うかを話し合うなどの方策が必要です。しかし、授業者はそのことにあえて時間を使いませんでした。それよりも、子どもたちの活動時間を少しでも多くとろうとしました。
子どもたちは、とても楽しそうに活動していました。たくさん竹刀を振って活動することで、初めて剣道に出会う子どもたちが、剣道を楽しいと感じてくれたのです。
このことが授業者のねらいだったのです。

この授業を別の視点で見れば、竹刀の持ち方がきちんとできていない子がいる、きちんと竹刀の先で面を打っていない子がいる。それなのにきちんと修正できていない。子どもたちが考えたり、発言したりする場面が少ない。そんな意見も出ると思います。しかし、大切なのは授業者が子どもたちに何を求めているかです。剣道を楽しいと感じてくれるという授業者の目指す子どもの姿があり、それが実現できたとてもよい授業でした。
普段の授業の中にこそ、教師が大切にすべきものが何かが見えてくることをあらためて教えていただきました。

感情を話し合う

昨日は中学校の道徳の授業研究に参加しました。

ネットの掲示板の中傷記事にどう対応するかを考えるものでしたが、興味深かったのが、中傷記事を見てどう思ったかを話し合う場面で、子どもたちが負の感情をなかなか話そうとしなかったことです。紙に書かせると、ネガティブな言葉をたくさん書くのですが、グループの話し合いではなかなか口は出しませんでした。その理由として、多くの教師が参加するなかで、ネガティブな感情はよくないものだから口にしない方がよいと判断したことが考えられます。また、話し合うといっても感情なので、理屈や根拠を共有することはできません。理性的であろうとすれば、話し合いが成立しにくいことも考えられます。逆に、紙には負の感情を書くということは、ネット環境があれば、感情的な書き込みをしてしまうのかもしれません。
一方、他のクラスで同様の授業を行った時には、ネガティブな言葉がたくさん出てきて、発言を押さえなければならなかったそうです。無責任な感情の発表ですから、テンションが上がれば抑制が利かなくなるということでしょう。

このように、感情を話し合うこと、特にネガティブな感情はなかなか難しい面があります。感情そのものを問うよりも、どのような行動をするかを問い、その行動の原因となる感情を話し合うようにした方が、感情を口に出しやすくなるように思いました。

子どもたちが真剣に考えているからこそ、子どもたちの様子からいろいろな発見がありました。負の感情をどう表面化させ、どう向き合わせるかについて考えるよいきっかけとなった授業でした。

次のステップに向かって

昨日は、先日研究発表会が終わった中学校で、今後の現職教育の進め方の会議に参加しました。

事前に取ったアンケートから、ほとんどの先生が授業改善に前向きで、子どもたちの変化を肯定的にとらえていることがわかりました。この1年半の取り組みが教師としての力量向上と幅を広げることにつながったと感じているようです。
学校全体での取り組みでしたが、教科や個人が工夫したこともたくさんありました。いろいろな角度からのアプローチが結果として子どもを育てることにつながっていきます。
教科ごとのグループでの話し合いを聞いていると、学校全体の方向性に基づいて、個々に課題を設定して、それをクリアするためにさまざまなチャレンジをし、その結果が自分たちのノウハウとして蓄積され始めていることがよくわかります。
また目指す生徒像も、各教科の授業場面での具体的な姿がそれぞれ明確になってきたように思います。

次のステップに進むにあたって、これらの目指す子どもたちの具体的な姿や、それぞれの工夫・ノウハウを学校全体で共有することが必要だと感じました。
今までの実践をもとにより具体的な目指す子ども像を共有し、教科の枠を超えた自分たちの基本となる取り組みを明確にすることです。その上で、何ができているのか何ができていないのかを全体で確認することで、次に何に取り組むべきかが具体的になると思います。

普通であれば、研究発表会が終わって気が抜ける時期だと思いますが、さらなる飛躍に向けて素早く動き出していることが素晴らしいと思いました。授業改善に学校全体で取り組むことが、この学校の伝統となっていくことと思います。

ベテランをどう生かす

先週末に開催されたプラネクサスの学校経営セミナーで講師を務めました。

多くの学校で授業改善が課題となっています。これから増えてくる若手をどう育てるかとともにベテランのことがよく話題となります。今回参加した方もこのことを課題とされている方がたくさんいらっしゃいました。おもしろかったのは、このベテランに対する見方が大きく分かれていたことでした。

「ベテランが学校を支えてくれている。ベテランが大量に退職する前に、なんとか次の世代に引き継がなければならない」

「学校改革、授業改善を進めていく上での障害がベテランだ。一番改善してほしい彼らが、変わろうとしない。悪しき伝統・習慣を変えられない」

学校ごとに状況は違うと思いますが、いずれにせよ、退職まであとわずかになっているベテランをどう活用して次につなげるかは大きな課題です。

教師は職人と似たところがあります。技術やノウハウは個人についてきます。それを外に出させるためには、場が必要になります。校内研修で講師を務める、若手をペアで指導する、積極的に授業を公開するなど、意図的に場面を作る必要があります。

また、変わろうとしない教師も、決してよい授業をしよう、よい教師であろうという気持ちを失くしているわけではありません。ただ、変われということは今までやってきたことを否定されたような気持ちになるために、反発するのです。まず、ベテランのよいところを見つけ、こうすればもっとよくなるという視点で働きかけるのです。変わりにくいのがベテランですが、変わった時に最も大きな進歩するのもベテランです。ベースとなる物がしっかりとあるから、それに新しいことを加えた時により大きな成果がでるのです。

学校の人事構成が大きく変化する時代がやってきました。ベテランをどう生かすかが、学校のこれからを決めていくと思います。ベテランの持つよさを引き出し、うまく次世代に引き継いでいただきたいと思います。

子どもが教えてくれる

昨日は小学校の校内研修で指導助言を行ってきました。予定していた授業者が体調不良だったため、急遽同じ学年の先生が自分の学級で同じ指導案で授業を行ってくれました。研究授業は中止して指導案をもとに話しあうという案もあったそうですが、快く引き受けてくださる先生がいたため、実際の授業をもとに話し合いができました。

2年生の国語の授業でしたが、子どもたちはよく集中して課題に取り組んでいました。大勢の先生の取り囲まれているにもかかわらず、子どもたちは普段の様子をよく見せてくれました。授業者は子どもの言葉をきちんと受け止め、同じ考えの子どもをつなぐことも意識していました。2年生ぐらいだとなかなか子ども同士が関われないのですが、グループでの話し合いもほとんどの子どもがうまく関われていました。

今回の授業は読み取った内容をクイズにするという内容でした。「わかりやすい」クイズがキーワードになっていましたが、指導案を見ただけではどのような力をつけるのかがよくわかりませんでした。実際に子どもの作ったクイズを見ると、主語が抜けていたり、目的語が抜けていたりしていましたが、話し合いを行っても修正ができないグループが多く見られました。自分たちが答えを知っているために気づけなかったようです。
この子どもたちの様子から、この授業でのキーワード「わかりやすい」は、クイズに答える人が、「何を答えたらよいかわかる」ということだと気づかせればよいのだとわかりました。また、そのことに気づかせるためには、相手意識を持たせる必要もあることがわかりました。クイズを通じて質問力をつけると考えてもよいかもしれません。期待した答えを相手から得る質問を作る力です。この力は、インタビューなどの場面でも役立つ大切な力です。

授業はいくら頭で考えてもわからないことがたくさんあります。今回も実際に子どもたちの活動の様子を見ることからたくさんのことを学ぶことができました。 これも、ピンチヒッターを快く引き受けてくれた授業者のおかげです。授業者にあらためて感謝です。
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