グループ活動と全体指導

グループ活動やペア活動を取り入れる授業が増えてきます。友だちと学び合う楽しさを知る子どもたちが増えるのはとてもよいことです。このような授業を見ていておもしろいことに気づきました。グループ活動に入るときの子どもの様子の違いです。

ホッとした表情をして一瞬ざわつくときと、素早く机を移動して、うれしそうに活動を始めるときがあるのです。前者の場合もしばらくすれば子どもたちは落ち着き、グループ活動はきちんと成立するので、決して悪い状態ではないのですが、注意して観察してみると、グループ活動に入る前の状況に違いがあるようです。

子どもがホッとした表情をするのは、教師の一方的な説明が多く、ただ聞いているだけ、ノートを写しているだけの受け身の時間が続いていたときです。グループやペアで能動的に活動する楽しさを知っているので、よけいにつらいのです。グループ活動のよさを経験すると受け身の時間の集中力が以前と比べて落ちる傾向にあります。受け身の時間からやっと解放されたとホッとした表情になるのです。

一方、素早くグループ活動に取り組むときは、自分の考えを早く話したい、友だちの考えを聞きたいと、課題に主体的取り組む状態ができているときです。

「○○ってどういうことだと思う」
「△△じゃないですか」
「今の意見どう思う。なるほどと思った人手を挙げて。どこでそう思ったか教えてもらおうか」
・・・
「手を挙げていない人の考えも聞いてみようか」
「□□だと思います」
「違った意見が出てきたね。みんなどう思う。じゃあグループで相談してみようか」

このように、教師が問いかけて子どもの考えを発表させるなど、子どもが課題に入り込むための時間をとっているのです。グループ活動に慣れていると、友だちの話を聞く姿勢が育っているので能動的に聞くことができます。聞いたことをもとにしっかりと考えるのです。自分の考えを持てているので、友だちと早く意見を交換したいのです。

グループ活動や、ペア活動が子どもたちにとって充実したものであれば、全体指導でも子ども同士がかかわり、学び合うといった能動的になる場面をつくりやすくなります。反対に受け身の場面での集中力は落ちていきます。
グループ活動を取り入れるということは、全体指導の場面でも子どもたちが能動的になるような工夫が教師に要求されるということなのです。

同じ考えを大切にする

子どもたちの考えを発表させる場面で、たくさんの意見を出させたいので、次々と指名していくことがあります。この時、注意をしてほしいことがあります。

「○○さんの考えを聞かせて」
「・・・です」
「なるほど、いい考えですね。他には」
「はい、△△さん」

教師は「いい考え」と評価しているのですが、その考えを子どもたちにきちんとつないではいません。また、すぐに「他には」と聞くことで、同じ考えの子どもたちの活躍の機会を奪っています。

「○○さんの考えを聞かせて」
「・・・です」
「なるほど、いい考えですね。○○さんと同じ考えの人はいますか?」
「たくさんいるね。□□さん、もう一度聞かせてくれるかな」
「・・・です」
「ありがとう。□□さんの考えも足してくれていたね。2人の発表を聞いて、納得した人手を挙げて」
「△△さん、どこでわかったか聞かせて」

同じ考えの人を挙手させることで、発表者以外の子どもも評価された気持ちになります。また、自分から発表できない子も授業に参加している実感が持てます。自信がなかった子も、この時点であれば指名しても安心して発表ができるはずです。
一方、自分と異なる考えを理解するには時間がかかります。1回聞いてすぐに理解することはとても難しいことです。そこで、教師が子どもの考えを説明してしまうと、それを聞けばよいので友だちの意見を聞かなくなります。同じ考えを他の子どもにも発表させることで、子どもたちの言葉で互いに理解するチャンスを増やすことができます。
また、「納得した人」と自分の考えが友だちにわかってもらえたことを実感できる場面をつくることは、子どもたちの自己有用感につながります。友だちの考えを理解したことを評価することで、より真剣に発表を聞くようになりますし、自分ではなかなか気づけない子どもにも活躍するチャンスをつくれるのです。

すべての場面でこのように子ども同士をつなぐことは、時間の関係で難しいかもしれません。しかし、教師が一つひとつの考えを大事にする姿勢を持つことで、より多くの子どもが授業に参加し、かかわり合えるようになるのです。

子どもたちの活動がばらばらになる

学校の廊下を歩きながら教室を眺めていると、子どもたちの活動がばらばらだと感じるときがあります。同じ教室内で、ノートをとっている、顔を上げて教師を見ている、ボーとしている、いろいろな子がいるのです。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

気になって観察してみると、多くの場合、教師が板書をしているときです。そして、板書しながらしゃべっていることが多いのです。ひどい時は、黒板に向かってしゃべっています。
板書は写すものだと思っている子どもは、時間を無駄にしないためにすぐにノートに写し始めます。
教師が話していると聞かなければいけないと思う子は、ノートをとるのをやめて話を聞きます。
また、教師の指示がないので指示があるまでじっと待っている子もでてきます。

大切なことは、教師が今、子どもにどういう活動をしてほしいかを明確に意識をすることです。
この例であれば、
・板書を写す
・板書を目で追って考える
・板書が終わるまで、待機をする
・教師の話を聞く
が考えられます。
それぞれに応じて明確に指示を出せばよいのです。
・「黒板を写して」
・「写さなくていいよ。板書を見ていて」
・「書き終わるまでそのまま待っていて」
・「先生の話を聞いて」
また、話を聞いてほしいのであれば、一旦板書を止めるべきです。二つのことが同時に起これば子どもたちは混乱し、集中できません。
もう一つ大切なのは、子どもの様子をきちんと確認することです。ばらばらの状態に気づけば指示が必要なことはわかるはずです。黒板を見ていて子どもを見ないようではまずいのです。

教師は、授業の各場面で子どもたちにどのような活動をしてほしいかを、明確に意識する必要があります。その上できちんと必要な指示を出し、子どもたちの様子を確認することが大切です。

意味のある確認をする

子どもの発言の後、それでよいか学級全体に確認する場面をよく見ます。が、おやっと思うこともよくあります。

社会科の元寇の授業でのことです。

「元てどこのこと」
二人しか手が挙がりません。
「○○さん」
「中国です」
「みんないいかな」
ハンドサインでほぼ全員が賛成の合図をする。

以前に習っていたことなら、友だちの発言で思い出すことがありますが、もしそうだとすると、最初に手が挙がらないことが問題です。指名するより、ノートなどを確認させる必要があるでしょう。
この時は、まだ習っていなかったようです。そうならば、知らなかった子には「中国」という答えが正しいかどうかは判断しようがないはずです。にもかかわらず確認をしても意味はありません。しかも、賛成の合図を出すということは、授業の中で確認が形骸化してしまっていることを意味します。

知識などを子どもたちに確認をするときは、確認の手段を持っている必要があります。この例であれば、確認できる資料がなければ聞く意味はないのです。
そして、確認を形骸化させないためには、かならず根拠を具体的に言わせることが必要です。

「みんな○○さんの説明でわかった」
「わかった」
「じゃあ、△△さん。もう一度説明して」

子どもたちに確認して、「わかった」と言ってもらうと教師は安心して次に進むことができます。しかし、具体的に確認せずに進めばわかっていないのに「わかった」という学級になってしまいます。
本当にわかっているかどうかをきちんと確認することが大切です。

ペア活動のポイント

授業にペア活動を取り入れることがよくあります。子どもたち一人ひとりの活動量を増やすにはよい方法です。しかし、自分が活動することばかりに意識がいってしまい、互いにきちんとかかわり合えていないことがよくあります。ペア活動ではどのようなことに注意をすればよいのでしょうか。

大切なことは互いに相手をしっかりと意識することです。相手意識を持つことがかかわり合うための基本となります。

例えば本読みをペアで行う場合を考えてみましょう。読む側は何を注意して読むかを相手に伝えてから読む。聞く側はそれに対してどうだったかを伝える。相手に対する自分の役割を明確にすることで、読む側は聞いてもらうことを意識して読みますし、聞き手側もコメントするために意識して聞きます。このようにすることで、きちんとかかわり合えるようになります。

また、球技のシュート練習をペアでおこなう時などは、主たる活動であるシュートばかりに意識がいき、アシスト役は何も意識せずに漫然とパスを出し続けてしまいがちです。シュートしやすいようなパスをする、シュートのフォームをチェックするなど、アシスト役の役割を明確にしておくことが大切です。

ペア活動では相手を意識してきちんとかかわりあうことが大切です。そのために、互いの役割を明確にすることがポイントとなります。特に、漫然となりやすい受け側の役割を明確にするよう意識してほしいと思います。

ノート作りで意識したいこと

子どもたちのノートを見てみると、板書の内容を写しているだけのものがあります。計算や作業が中心の物もあります。教科によっても違いがあると思いますが、どのようなことを意識してノートを作らせればよいのでしょうか。

大切なことは、ノートを作ることで、自分の考えが深まったり、成長が意識できることです。そのためには、ノートにはまとめだけ、正解だけが書かれているものにしないように注意することです。板書とも連動しますが、途中の考え、間違ったものもノートに残すようにする、消さないということです。

例えば、いくつかの考えが出たら、それらをノートに書かせ、自分がよいと思った考えを丸で囲ませる。できれば、その理由も書かせる。友だちの意見で納得するものがあればそれも書く。間違いに気づいたらその部分を赤で訂正したりしてわかるようにする。このように考えの変遷を残すようにします。
これらを根拠としてまとめを自分で書き、友だちや教師のまとめを聞いて足りないところを付け加える。このとき、色分けなどの工夫をして付け加えたものがわかるようにする。
また、算数や数学であれば、正解が黒板に書かれていても見ずに再挑戦し、見なければ書けなかった部分に線を引くなどして自分にとってのポイントがわかるようにする。

すべての場面でこのようにするのは時間の関係で難しいと思いますが、グループ活動のように自分たちで考えさせる場面ではこのようなノート作りをできるだけ取り入れてほしいと思います。

資料と知識の関係

資料を活用するとき、知識がないと読み取れないことがあります。逆に資料から知識を身につけることもできます。資料と知識の関係を整理したいと思います。

例えば、ある地域の農作物の生産量の資料から、その地域の特徴を考えることを考えましょう。
米づくりに適した環境(8月の平均気温が20度以上、・・・)、野菜づくりに適した環境などの知識がなければ、子どもたちの目は、「米をたくさん作っている」「野菜が多い」といった、資料から直接言えることにしかいきません。しかし、農作物の栽培に関する知識があれば、「気温どうだろう」「降水量は?」と環境との関係を考えようとするはずです。
逆に、その地域の環境と農作物との関係を考えることを課題とすることで、栽培に適した環境の知識を得ることができます。課題を変えることで、子どもたちにとって必要な知識を得ることもできるのです。次の地域ではその知識を活用すればよいのです。

ただ資料を与えて「読み取れ」ではなく、その資料を読み取るためにはどんな知識が必要なのかを明確にしておくことが大切です。子どもたちがその知識を持っていなければ、「事前に知識を与える」のか、「この資料をきっかけにして知識を得ることにつなげる」のか、どのようにするのかを考えておかなければなりません。
資料を活用する時は、その資料と知識の関係を整理してから、どのように扱うかを考えるようにしてほしいと思います。

グループ間格差をどうする

グループ活動で、活発に話し合いが進んでいるグループと手詰まりになっているグループに分かれるときがあります。このような時、手詰まりになっているグループに個別にアドバイスするのがよいのでしょうか、それともこのまま活動を続けた方がよいのでしょうか。
手詰まりになっているグループに対して教師がアドバイスをしていると、子どもたちは苦しくなると教師を頼るようになります。自分たちで解決しようとせずに、すぐに教師を呼ぶようになるのです。しかし、そのままにしておいても、動き出すようにはなりません。

このような時には、一旦グループ活動をやめて途中経過を発表させるのです。答えそのものを聞くのではなく、どんなことを話したか、どんなことに気づいたか、どんな資料を探したのか、過程を共有化するのです。手詰まりになっているグループも、「ああ、こんなことを考えればいいのか、ここを調べればいいのか」と、動き出すきっかけを自分たちでつかむことができます。そこで、もう一度グループで活動をさせればよいのです。

グループ活動は、結論がでるまで続けなければならないわけではありません。子どもの状況に応じて一旦グループ活動を止めて、そこまでの活動を全体で共有化することも必要です。足場がそろうことで、どのグループもしっかりと活動できるようになるのです。

やってきたことを無駄にさせない

予習など、事前に指示したことをやっていない子どもがかなりの数がいた時にどのように対処すればよいでしょうか。

一番いけないのは、やっていないことを前提に授業を進めてしまうことです。やってきた子は、せっかくやったことが無駄になってしまいます。やってこなかった子は結果として困りません。その結果、やってこない子が次第に増えてしまいます。

では、どうすればいいのでしょう。
例えば意味調べをやってくるように指示したとしましょう。

「Aさん。○○の意味を教えてくれる」
「やってきていません」
「こまったね。やってきた人に聞いてごらん。やってきた人助けてあげて」
「教えて」
「△△」
「Aさん、わかった」
「△△です」
「よかったね。教えてくれたBさんにお礼を言って」
「ありがとう」

やっていない子がいても、やってきたことを前提に進めます。その上で、やっていない子はやってきた子に助けてもらうようにします。そのとき、きちんと「ありがとう」と言わせるようにします。
やってきた子は、やってよかったと思います。やってこなかった子は友だちに助けられたことを意識できます。こうすることで、友だちとのかかわりができるようになります。また、自分がやってこないと友だちに助けてもらわなければいけないと感じると、次はやろうと思うようになります。

やってきたことを無駄にさせない。やらなかったことを他者と関わることにつなげる。このことを意識するようにしてほしいと思います。

説得になっていないか

授業研究で、教師の説明について検討されることがあります。「ここはこういう説明をした方がよいのでは」といった言葉がよく聞かれます。教師は子どもたちにわかってもらうために、いろいろと工夫をするのですが、その視点が気になります。

「このように説明をすればわかるはず」と教師の視点で話をしているように感じることがあります。

「・・・だから、○○になります。わかった」
・・・
「あれ、わからない。じゃあ、△△まではわかる? だから、・・・」
・・・
「じゃあ、もう一度最初から説明するよ。・・・だから△△になるよ。いいね。△△になると・・・だから、○○になることはわかる? いいかな。だからこの場合、○○になるんだ。わかったね」
「???」
「言っていることはなんとなくわかるけど、何だかよくわからない」
「どうしてわからないの!?」

子どもたちが、わからない顔をしていると、それではと、新たに説明を加えます。子どもがわからないと、教師の発する言葉ばかりが増えていきます。はたで見ていると、「わかったと言いなさい」と一生懸命説得しているように見えます。ひどい時には、「わかってくれー」と教師が悲鳴をあげているように感じることもあります。
わからせようとする意識が強いとこのようになってしまうのです。

受け身で説明を聞いて、わかったような気持ちになっても子どもは納得出ません。大切なことは、教師がうまく説明してわからせることではなく、子ども自身が自分でわかったと思うことです。

「なぜ○○になるんだろう。△△になることはわかる?」
「はい、Aさん」
「・・・だからです」
「なるほど、みんな納得したかな。自分でノートに書いて確かめてみて」
・・・
「みんな納得できたようだね。じゃあ、今度はなぜ○○になるのか考えてみよう。周りの人と相談してもいいよ」
・・・

わかったと実感するためには、何らかの活動が必要になります。子どもの視点でどのような活動をすればわかるのかを教師が考えなければなりません。
説明されたことを自分でノートにまとめる、友だち同士で説明を聞きあう、自分で図を書く、・・・。教師の説明の引き出しを増やすことより、子どもたちの活動の引き出しを増やすことが大切なのです。

わかりなさいと説得することは、教師の活動です。大切なのは子どもたちの活動です。「わからせる」ではなく、「わかる」ことが大切なのです。そのために、子どもたちがわかるための活動を中心に考えて授業を組み立てるようにしてほしいと思います。

教師が前で○をつける?

問題が解けた子どもに、ノートを持ってこさせて○をつけている場面に出会うことがあります。子どもたちは○をもらいたいので一生懸命問題に取り組みますが、気になることがあります。○つけをするときには、何に注意をすればよいのでしょうか。

前で○つけをすると、子どもが並んで待つことになります。待っている間子どもは学習活動ができません。問題が解けてテンションが上がっている状態ですからどうしてもざわついてしまいます。一方問題が解けない子どもは、落ち着かない雰囲気に集中力をなくしてしまいます。
また、○をつけた子どもに次の課題を与えていないと、席に戻って遊んでしまい、まだ解いている子どものじゃまになります。時には、聞かれてもいないのに答えを教えたりします。
分からない子は、周りの子がどんどん○をもらってくると焦ってしまいます。
一方教師はどうしてもできた子どもの○つけに集中することになり、できない子の支援ができません。○つけに追われ学級全体の状況を把握することもできなくなってしまいます。

では、どうすればいいのでしょう。
○つけは教師が机間指導をしながらすることが基本です。できた子どもに手を挙げさせたり、正解を見つけて○つけをするのではなく、すべての子どもを見ることです。できない子どもにも声を掛けるのです。
愛知教育大学の志水廣教授が提唱する○つけ法では、正解に○をつけるだけではなく、間違えたり、途中の段階だったりしても、合っているところまでを認めて○をつけて部分肯定するようにします。絶対に×はつけません。子どものやる気がなくなるからです。部分肯定した上で具体的な指示やアドバイスをしていくのです。もちろん正解者にも「いいね」と称賛の声をかけるように勧めています。

○をもらえない子どもは、学習意欲をなくしていきます。ですから、手がつかない子、分からない子、間違えてしまった子をどうやって見つけて支援するかが大切になります。また、一人の子どもに多くの時間を割くと、全員を見ることができません。素早い的確な指示も必要になります。友だちどうし相談して、確認し合うのも一つの方法です。全員を○にして、どの子もできたという自信が持てる授業を目指してほしいと思います。

グループ活動のまとめを板書させる?

グループ活動で、話し合ったことや作業のまとめを、代表者に板書させることがあります。この時、他の子どもたちが集中力をなくして落ち着かない状態になっていることがあります。どうすればよいのでしょう。

まとめを代表が板書している状態は、他の子どもにとってはグループでの活動がそこで終わったことを意味します。その間、子どもたちは特にすることがないので集中力がなくなってしまいます。グループ活動で子どもたちの関係がよくなっていると、かえって授業と関係のない話をしたりします。そのため、板書が終わって全体で話し合おうとすると、子どもたちの集中力を取り戻すのに一苦労させられます。

では、どのようにすればよいのでしょうか。
ポイントは遊んでしまう時間、無駄な時間をつくらないことです。

ひとつは、板書をやめて、口頭で発表させることです。
あらかじめ発表者を決めずにその場で指名する。グループで代表を決めて発表するのであれば、グループ全員でその内容を相談する。こうすることで、発表者以外は関係ないという状況を回避できます。

とはいえ、口頭での説明は難しいこともよくあります。そういう場合は、発表用に適当な大きさの模造紙を準備して、グループでまとめさせるという方法があります。
模造紙を使って発表すれば、無駄な時間はなくなります。保管しておいて、再度利用することも可能です。
模造紙を毎回準備するのが大変だというので、発表用の小型のホワイトボードをグループに一つ準備しているところもあります。
また、ノートやワークシートをそのまま実物投影装置を使って見せるという方法もあります。特に発表の準備のための時間を必要としないので、効率的に進めることができます。ICT機器はこういった場面でとても有効です。

グループ活動後の全体での発表はとても大切な時間です。だからこそ、その前の段階で集中力を切らすようなことがないようにしたいものです。グループ活動の終了から発表までの間に、無駄な時間が生じないように工夫してほしいと思います。

見たいものしか見えない

子どものよいところ見つけて、ほめることが大切であるとよくアドバイスします。ところが、中には「悪いところばかり目につく」「よいところが見つからない子がいる」と、困っている方もいらっしゃいます。どうしてなのでしょう。

生徒指導担当の教師は、生徒とすれ違うと、髪型やスカートの長さといったところにすぐに目がいくようです。立場上、校則違反を見つけて注意しなければならないと思っているからです。「悪いところ見つけ」をしているのですね。人は見たい、見ようと意識していること以外はなかなか目に入らないものです。毎日通いなれている道でも、樹に興味のない人は、どこに何の樹があるかすぐには言えないものです。また、樹の名前そのものを知らなければ、意識もできません。

子どものよいところ見つけたければ、まずそのことをいつも意識することです。何かほめることがないかという目で見るのです。
もう一つ大切なのは、ほめることを子どもの姿として具体化することです。どんなことがほめられるのか、どんなことをほめたいのかを具体的にすることです。
例えば授業中にほめたいことはどんなことなのか、子どもの姿で書き出してみるとよいと思います。

友だちの話にうなずいた。
友だちの言葉をつないだ発言ができた。
わからないことを友だちに聞いた。
聞かれたことを一生懸命説明した。
授業が始まる前にきちんと用具が出ていた。
姿勢がよかった。
手をまっすぐに挙げた。
板書以外にメモをとっていた。
途中であきらめずに、最後まで問題に取り組んだ。
・・・

些細なことでもいいのです。いろいろなレベルが混じってもいいのです。教師の見たいものを具体化するのです。子どもは一人ひとり違います。ある子にとって当たり前のことでも、他の子にとってはなかなか難しいことがあります。ほめることは一人ひとり違っていいのです。一人ひとり子どもたちの顔を思い浮かべながら、「この子はこんなことでほめたいな」と考えれば、ほめることが見つからない子もなくなると思います。

聞くことも同じです。授業中につぶやきを拾うことも、「こんなつぶやきがでるといいな」と思っていると耳に入ってくるのです。

人は見たいもの、見ようとしたものしか見ることはできません。子どもの「何を見たいか」を明確にすることが、子どもをよく見ることにつながるのです。

つぶやきを拾う

「つぶやきを拾う」ということがよく言われます。ところが、授業者はつぶやきを拾うとしているのに、せっかくのつぶやきを拾えない場面によく出会います。何が問題なのでしょうか。

例えば、分数のかけ算の手順を考える場面を考えてみましょう。

「何か気づいたことはないかな」
子どものつぶやき
「上と下」
「???」

教師は子どもから「分数のかけ算は、分子同士、分母同士をかければいい」ということを引き出したいのですが、最初からちんとした言葉では出てきません。つぶやきは、それだけでは何を言いたいのかよくわからないことがよくあります。授業者に聞いてみると、「何を言っているのかよくわからなかった」いう答えが返ってきます。だから取り上げなかったのだと。

「今、何か言ってくれたね、Aさん。なんて言ったか聞かせてくれる」
「上と下」
「それってどういうこと」
「上と下でかけ算している」
「上ってどこのこと?黒板で指さして」
「これなんていったっけ」
「分子」という声
「Aさんどう?」
「分子だった」
「Aさん、分子がどうしたの」
「分子をかけている」
「なるほど、分子をかけているんだ。じゃあ、下は」
「分母をかけている」
「なるほど。Aさんの説明わかったひと」
「Bさん、もう一度言ってくれる」
「分子と分子、分母と分母をかけている」
「言葉を足してくれたね。分子と分子、分母と分母をかけているんだ」
・・・

言っている意味のわからないつぶやきも、子どもにその意味を聞き返すことで、考えが整理され、足りなかった言葉が足され、しだいに明確になっていきます。一見遠回りにも見えますが、少しずつ整理していくことで低位の子どもたちも理解しやすくなります。結果として、より多くの子どもたちがねらいに近づくことができます。

また、教師が理解できないつぶやきでも、子ども同士では分かりあえることもあります。
「Aさんの考えがわかる人いる」と聞いてみればよいのです。
つぶやきを拾ったがうまく利用できなかった時は、「なるほどね」と認めて、他の子どもに聞けばよいのです。

子どものつぶやきは、たとえよくわからなかったとしても、意味があるはずだ、教師がねらっていることにつなげられるはずだと取り上げてみる姿勢を大切にしてほしいと思います。

子どもの活動で授業をつくる

授業を作るときに考えてほしいことに、子どもにどういう活動をさせるかがあります。教師の視点で何をどのように教えるかではなく、子どもの視点で、理解するためにどのような活動が必要なのかを考えるのです。

例えば、分母の異なる分数の足し算を考えてみましょう。
「分母の異なる分数を足すときは通分する」
このことを教師から説明されてわかった気になり手順を覚えても、なぜ通分するのか自分で説明できないことがよくあります。説明を聞くという受け身では、なかなかきちんとは理解できません。自分の手と頭を使って主体的に考えないと本当に理解はできないものです。

実際に紙を切って組み合わせる。
方眼紙を用意して、塗りつぶしてみる。
タイルを使って並べてみる。
・・・

その上で、

ノートに自分の考えを書く。
全体で自分の考えを説明する。
グループで互いの考えを説明する。
・・・

どのやり方が正しいという訳ではありません。大切なのは、どのような活動をさせると理解できるのかを考え、理解できたか確認できる手立てを用意することです。

授業をつくるときには、どのように説明をするかといった教師の活動ではなく、どんな作業をするのか、何を考えるのかといった子どもたちの活動を中心に考えるようにしてほしいと思います。

グループ活動での聞き方の指導

グループ活動で子どもたちに話し合いをさせる場面をよく目にします。話し合いの基本は友だちの意見をきちんと聞くことですが、これができていないことがあります。グループ活動での聞くことの指導はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。

まず大切なのは、話すことではなく、聞くことを意識させることです。

「今から、○○について話し合いましょう。必ず全員が自分の意見を言うようにしましょう」

このような指示の仕方をすると、自分の意見を言えば、役割は終わってしまいます。自分の意見を言うことばかりに意識がいって、友だちの意見はなかなか聞くようになりません。

「今から、○○について話し合いましょう。必ず全員の意見を聞くようにしましょう」

このような指示ではどうでしょうか。全員の意見を聞くことが目標ですから、自分が発言するだけでは終わりません。聞こうとする意識が出てきます。

もう一つ大切なことは、聞き方です。必ず話し手を見る。相手の話にうなずいたり、わからないことは聞いたりして反応する。このようなことをきちんと指導する必要があります。ところがグループで活動しているので、教師はなかなか個別に指導することができません。グループ活動の前に言葉で指導をしても、徹底することができないのです。
聞き方は、グループ活動の場面ではなく、全体の場で指導しておく必要があります。

「Aさんの考えを聞かせてくれる」
「Bさんいいね。ちゃんとAさんの方を向いているね。ほかのみんなもしっかりAさんを見てくれているね。じゃあ、Aさんお願い」
「○○です」
「なるほど、ありがとう。今、Cさんうなずいたね。反応してくれたね、いいね。それってどういうこと」
「△△です」
「なるほど、Aさんの考えに納得したんだ。あれ、Dさん首を傾けたね。それってどういうこと」
「Cさんの話がよくわからなかった」
「そうか、よくわからなかったんだ。いいよ、わからないことを教えてくれることはとってもいいことだね。Dさんのほかにもわからなかった人いるかな」
・・・

このように、全体の場で聞く姿勢や友だちの話に反応することの大切さを指導していくことで、グループ活動の場面でも聞く力がついてきます。
また、教師が子どもの発言にうなづくなど、聞く姿勢の手本を見せておくことも大切です。

グループ活動中には細かいことは指導できません。聞くことの指導に限らず、子どもたちがきちんと活動できるように指示を工夫することや、基本的な態度を全体の場で身につけさせておくことを大切にしてほしいと思います。

大切なことは何度も説明する?

教師が確認のために、同じ説明を後から繰り返すことがあります。最初の説明を集中して聞いていないので、もう一度説明するのですが、実はこれが悪循環になっていることがあります。

ある授業でのことです。教師はこの時間の課題と活動の手順を最初に丁寧に説明するのですが、途中で集中力がなくなってきました。そこで、実際に課題に取り組む直前に、もう一度、活動の手順を説明しました。今度は集中して聞いています。なぜ2度目はきちんと集中したのでしょうか。子どもたちは、教師が大切なことは2度説明することを知っていたからなのです。

教師が大切なことを再度説明していると、最初の説明を聞かなくても2度目の説明を聞けばよいと思うようになります。こうなると一度では徹底しないので、いつの間にか大切なことは必ず繰り返すことになってしまいます。教師の説明の時間が増えるので、子どもたちはますます受け身になって集中力が下がります。子どもが集中しないので、確認のためにまた説明が増えてしまうという、悪循環になるのです。

では、どうすればよいのでしょうか。
大切なことは、きちんと聞いていないと困る状況を作ることです。説明は簡潔に一度で済まし、すぐに活動させます。聞いていないと活動できません。その時に教師がすぐに説明してはいけません。ちゃんと聞いていた子にとっては無駄な時間ですし、聞いていなくても何とかなると思ってしまうからです。そこで、聞いていた子に教えてもらうように指導するのです。こうすれば、聞いていた子も評価されますし、聞いていなかった子も今度は聞こうと思います。
実験等で事前に徹底させたいことであれば、教師が説明した後、指名して子どもに確認すればいいのです。

「実験で注意することは何だっけ。Aさん」
「えーっと」
「だれか、Aさんを助けてあげて」
「○○です」
「ありがとう。Aさんどう?」
「○○です」

教師が何度も説明すれば徹底できるのではありません。繰り返すほど、かえって集中力をなくすことにつながります。子どもが聞かなければいけない状況をつくること、確認は教師が繰り返すのではなく、子どもたちに発言させることを大切にしてほしいと思います。

資料の共有

図書館やパソコン教室で子どもたちに調べ学習をすることがよくあります。教室や手元にある限られた資料ではなく、たくさんの本やインターネットを活用して幅広く調べることができます。特にインターネットの活用は盛んですが、注意してほしいことがあります。それは資料の共有です。

資料集をどう活用するでも述べたように、資料を使って発表しあうときには、根拠となる資料を明確にすることが大切になります。図書館やパソコン教室で調べたことを教室で発表すると、手元にその資料や環境がないと実際に確認をすることができません。よい資料を見つけた子どもの発表が中心となり、多くの子どもは友だちが調べた結果の発表を聞いているだけになります。

「○○についてわかった事を発表してください。Aさん」
「△△です」
「すごいことがわかったね。同じことを調べた人いる」
・・・
「いないね。Aさんどうやって調べたの」
「□□という本に書いてありました」
「なるほど。今ここにはその本はないけれど、Aさんの調べてくれたことは、・・・」

これでは、他の子どもたちはAさんの見つけた資料で確認することができません。Aさんの話を鵜呑みにするか、そのあとの教師の説明を聞いて納得するしかありません。
インターネットを活用した場合でも本をネットに置き換えれば、同じような状況になることがわかります。

では、どうすればよいのでしょうか。
まず、調べたことをまとめる際に、どのような資料のどこから調べたことかをきちんと明確にさせることです。本であれば、タイトル、著者、ページは必須になります。インターネットの場合はURLやサイト名等、必要であればそのページをもう一度見ることができるための情報を記録させます。そして、教室に戻ってしまうと、その情報があっても活用できないので、図書館やパソコン教室で発表させることです。中間発表をさせて、友だちの発表から参考になると思った資料にあたれる時間を確保することで、資料の共有がはかれます。
また、もう一度資料にあたる時間が取れない場合は、実物投影装置などを活用して、資料を全員で共有します。

「Aさん、どうやって調べたの」
「□□という本に書いてありました」
「その本の調べたページをみんなに見せてくれるかな」
実物投影装置を使って、
「このところに・・・と書いてあります」
「みんな、納得できたかな」

時間の関係で教室での発表になる時には、資料の該当ページを原文通りきちんと引用するように指導することです。可能であればデジカメ等を使って記録して、教室でコピーを見せることができるようにするとよいでしょう。インターネットを活用したのであれば、教室にインターネットが利用できるパソコンとプロジェクタを準備すると資料を全員で共有できます。

調べた結果だけを聞き合うのであれば、その時間は教師の説明を一方的に聞いている時間と大きな違いがありません。(もちろん子どもたちの発表の練習にはなりますが・・・)資料を共有することで、調べる過程を共有できるようにしてほしいと思います。

動画の活用の注意点

ICT機器が普及してきて、動画をスクリーンに映して活用する場面によく出会います。わかりやすい教材もどん開発されて、ますます活用されるようになると思います。しかし動画であるがゆえに気をつけてほしいことがあります。

「オリオン座はなぜ冬の星座か」を考える理科の授業でのことです。
コンピュータのシミュレーションをつかって冬の夜空と夏の夜空を映し出し、オリオン座の見え方の違いを見つける場面でした。子どもたちが気づいたことを発表します。中には「おうし座はオリオン座のそばにあるけど、夏でも見える」という素晴らしことに気づく子がいました。オリオン座しか注目していないので、多くの子どもは気づいていません。静止した資料であれば、もう一度自分で確認することができますが、動画は流れてしまうので、確認することができません。動画をもとにでた意見は必ずもう一度該当箇所を映さなければ、確認できないのです。

動画は確認するのに再度再生する必要があります。したがって、あまり長いものは授業では扱いにくくなります。内容を記憶することも考えると授業で扱うものは1回数分にとどめておく必要があります。
また、動画の内容をもとにグループで話し合いをさせるのであれば、グループごとに再生できる環境を用意しなければ互いに確認して共有化できません。

動画は子どもたちの興味を引いたり、多くの情報を与えたりすることができますが、それゆえ注意すべき点もあります。動画の特性をうまく利用して、授業に幅を持たせてください。

「結果を利用する」と「考え方を利用する」

算数や数学で、問題を解くときの手がかりが見つからなくて子どもたちの手が止まる場面によく出会います。解き方の手順を覚えるばかりでは、見たことのない問題を解く力はなかなかつきません。どのようなことが大切になるのでしょう。

解き方を知らない問題を解くときの壁は最初の一手です。どこから手をつけたらよいかがわからないのです。最初の一手を考えるときの基本は、「結果を利用する」と「考え方を利用する」です。
例えば台形の面積の求め方を考えてみましょう。
「結果を利用する」のであれば、面積に関して知っている知識=結果を整理します。正方形、長方形、平行四辺形、三角形の面積の求め方は知っています。台形をなんとかこれらの形にできないかと考えることから出発します。
「考え方を利用する」のであれば、平行四辺形や三角形の面積を求めるときにやった作業を思い出します。図形を切ったり、移動させて面積が求められる形を作ることから出発します。
結果的には、同じような活動になりますが、この2つの視点を意識することで、見通しを持って取り組む力がつくようになります。台形を対角線で2つの三角形に分けて考えた場合でも、先に三角形を意識した子ども、とりあえず切ってみることから始めた子がいるはずです。どちらかが優れているというのではなく、子どもたちにそのこと明確に意識させることで、問題を解く力がついてくるのです。

「A君は斜めに切って考えたんだ」
「A君は、すぐに斜めに切ろうと思ったの」
「平行四辺形の時に切ったから」
「なるほどね。前にやったやり方を覚えていたんだ。偉いね」
「それで、最初から斜めに切ったの」
「斜めに切ったら。三角形ができたから」
「それってどういうこと」
「三角形だったらわかるから」
「何がわかるの」
「面積」
「みんな三角形の面積はわかる」
「底辺×高さ÷2」
「なるほど、三角形の面積の求め方は知っているもんね。知っていることをうまく使ったね」

子どもたちが意識せずに使ったことを、明確にすることで視点が育ってきます。
したがって、新しい課題に取り組むときは、「今まで学習したことで利用できそうなことは何かな?」「今までやったやり方で利用できそうなことはないかな?」このような問いかけが大切になってきます。
算数・数学に限らず、他の教科でも、結果とそれを導き出した考え方を意識することで子どもたちの考える力、問題解決力が高まっていくと思います。
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28