個人作業にこだわりすぎない

自分の考えを持たせようとグループでの活動の前に一人で考える時間をとったり、一人で問題を解かせるようにすることがよくあります。すぐに人に聞いたり、答えを写しては力がつかないと考えるからです。しかし、行き詰って何も考えずにじっとしていたり、手遊びを始めている姿を目にすることもよくあります。個人での作業はどのように考えればよいのでしょうか。

大切なことは、グループでも個人でも子どもたちがきちんと活動することです。たとえ手が止まっていても、思考していれば立派な活動です。しかし、何も考えず時間をつぶしているようでは困ります。それくらいなら友だちに答えを教えてもらった方がよほどプラスになります。
「どうしてもわからなかったら相談したり聞いてもいいよ」と自分の判断で相談できるように指示しておくとよいでしょう。注意してほしいのは、たずねられていないのに勝手に教えないように強く言っておくことです。自分で考えているのに横から教えられるとやる気をなくしてしまうからです。
また、一人では手がつかないような子は、なかなか自分からは相談できないものです。教師が子どもの様子に注意して、動きが止まっているようであれば、相談したり聞くように促す必要があります。

さて、私たちは答えを写しては力がつかないと考えますが、子どもは自分で答えを出せなかったことを悔しく思い、何故そうなるかを考えようとするものです。友だちにたずねたり、その答えになる理由をなんとか自分で考えようとします。また、確認の場面では、必ず理由や過程を発表させるようしましょう。こうすることが、答えを写すだけでなく理由も考えようとする子どもたちの姿勢を育てます。

個人作業は大切な時間ですが、一人でやることにこだわりすぎて子どもの活動が止まってしまわないように注意してほしいと思います。

ほとんどの子が挙手するとき

ほとんどの子は挙手しているが、数人の子が手を挙げていない。そんな場面によく出会います。「わかった人」と確認したときであれば、多くの教師が次に進んでいきます。復習の場面であれば、指名します。このような進め方でよいのでしょうか。少し考えてみたいと思います。

ほとんどの子どもが手を挙げているときは、本当にわかっている場合と周りにつられて手を挙げている場合があります。そのような場合、指名するにしてもちょっと不安な子にするべきでしょう。
わかったかどうかの確認の時も、念のために指名することは大切になります。
しかし、それよりも挙手していない子たちはどのような状態なのか考える必要があります。ほとんどの子が挙手しているのですから、わかっているけど、授業に参加する気がない、かかわりたくないという状態なのでしょうか。それとも本当にわからない、自信がない状態なのでしょうか。

このような時はちょっと時間がもったいないような気がしますが、隣同士や周りの子と確認させるとよいでしょう。挙手をしている子どもはわかっているのでしゃべりたいという気持ちがあります。指名では数人しか発表できないので、挙手した子どもたちにとっても意味のある活動です。
このとき、挙手しなかった子どもの様子をよく観察してください。友だちの説明を聞いて納得できているようであれば大丈夫でしょう。周りとかかわれていないようであれば、全くわかっていないのか、授業に参加する気持ちがないということです。この場合、その場ですぐに対処できることは少ないので、機会をつくって、わかっているかどうか確認したり、声掛けをしたりしてフォローする必要があると思います。

ほとんどの子の手が挙がっているからよいと思うのか、だからこそ手の挙がらない子に注意を向けるのかが、授業の分かれ目になると思います。少数の子のために時間を割きすぎるのは問題があります。だからこそ、大多数の子も少数の子もともに活かすような工夫が教師には求められるのです。

子どもが話を聞いていないと感じたとき

子どもたちに対して、静かにはしているが話をちゃんと聞いていないと感じるときがあります。集中力が落ちていると言い換えてもいいでしょう。話を聞かせようとするあまり、教師の声がどんどん大きくなり、それに反してますます子どもは聞く気をなくしていく。そんな場面もよく目にします。このようなとき、どのような対応をしたらよいのでしょう。

もともと子どもの集中力は受け身の状態では長くは持たないものです。一方的に教師が話し続けていることに原因があることが多いように思います。
話の内容について子どもたちに問いかける。ちょっとした活動を入れる。こうすることで集中力は戻ってきます。

「・・・になるんだけど、納得した。納得した人手を挙げて。○○さん説明してくれる」

「・・・ということが起こったんだけど、君たちならどうする。周りの人と少し話してごらん」

このように、ちょっとした問いかけや活動を入れると、受け身の状態から解放されてまた話を聞けるようになります。

話をしていて子どもたちの集中力が切れたなと感じた時は、一方的に話していないか振り返ってみてください。受け身の状態を続けさせていた場合は、一旦その状態から解放してあげてください。そうすることで、子どもたちの集中力は戻ってくるものなのです。

子どもの発表に対する教師の動き

指名した子どもが発表する時の教師の視線や表情、立ち位置などを見ているとおもしろいことに気づきます。子どもの発表に対する教師の動きについて考えてみたいと思います。

多いのは、発表者をしっかり見て発言を聞いている教師です。子どもの言葉をしっかり聞こうという気持ちがあらわれています。この時、教師の表情が変わらないと、自分の考えが間違っているのではないかと不安に思う子もいます。逆に、笑顔でうなずきながら聞いてもらったり、「なるほど」とあいづちをうってもらったりすると安心して話しやすくなります。教師の表情が柔らかいと学級全体の雰囲気も柔らかくなる傾向があります。

これに対して、発表者と正対せずに学級全体を見ようとしている教師もいます。子どもと視線が合うと発表者を見るように促します。子どもたちに発表者の方を向いてしっかり聞いてもらいたいからです。この時、直接発表者を見ていないので、相手を意識していることを伝えるための工夫をしています。手のひらを上に向けて、発表者に向けてさしだしたり、ちゃんと話を聞いているよとうなずいたりしています。膝を折って頭の位置を下げ、子どもたちの視線に入らないようにすることで、発表者に視線が集中するようにしている方もいます。
子どもたちの聞く様子を注意して見ることで、理解度を確認したり、次にだれを指名するかを決めたりできます。

発表者と教師が二人だけの世界にはいってしまうというのは論外にしても、どちらかでなければいけないということはないと思います。大切なのは、発表者と発表を聞く子、どちらも意識して、発表者や学級の状況に応じて工夫をすることです。子どもが発言することに不安を持っているときは、目を合わせる時間を多くして笑顔で励まし、発表後すぐに全体を見回すようにする。子どもたちが発表することに慣れてくれば、聞く姿勢を意識した動きをする。このようなことが大切になると思います。

子どもの集中力が切れない授業

学習している内容が理解できないと集中力が落ちてしまうのが通常です。ところが、わからない子どもも集中して参加し続ける授業に出会うことがあります。そのような授業にはどのような共通点があるのでしょうか。

一つは、教師がその時間に子どもたちに身につけてほしいことを必ず全員にできるようにするという姿勢が明確なことです。
子どもたちは誰しもわかりたい、できるようになりたいと思っています。しかし、わからないまま次に進めばそこであきらめてしまいます。今わからなくても、ちゃんと授業に参加していれば必ずわかるはずだという安心感があれば集中力はきれません。説明を聞いてわからなくても、その後の問題練習でわかることもあります。友だちに聞いてみることで、意外とすんなりわかることがあります。子どもの集中力が切れない授業は、子どもが理解するチャンスや場面を何度も用意していることが特徴です。

もう一つの特徴は、子どもが自分はできた、わかったと実感できる場面が1時間の中に用意されていることです。
できなかった問題を教師に説明され、「わかりましたか」の問いかけに「はい」と答えても、なんとなくわかった気にはなりますが、達成感はありません。
例えば、○つけをして、必ず全員に○をつけて終わるようにする。周りの子と確認しあって、友だちから「OK」と言ってもらう。「みんながわかった」ではなく、「あなたがわかった」と伝える、個を意識した評価場面が必要なのです。

このようにして、毎日の授業で必ず達成感を味わうことで、子どもたちは授業そのものに前向きになっていきます。今わからなくても、きちんと授業に参加すれば最後には必ずわかるようになる。子どもたちがこのように信じてくれるようになれば、集中力の切れない授業に自ずとなっていくのです。

グループやペアでの相談が止まる理由

子どもたちグループやペアで相談させる場面に出会うことが増えてきました。ところが子どもたちは互いに答えを見せ合ったり、写したりするだけで、そのまま活動が止まっていることがよくあります。どうすればよいのでしょうか。

このような状態になるのは、相談するとはどういうことをすればよいのか明確になっていないことが原因です。どうしてその答えにたどり着いたのかを聞き合う。その考えに対して納得できるのか、疑問はないのかを話し合う。具体的な方法を子どもたちが知らなければうまく進みません。相談の目的は、答えではなく、そこにいたる過程を共有化することだと知ることが必要です。教師は相談という言葉は使うが、その意味をきちんと伝えていないのです。

では、具体的にどのようにして教えればよいのでしょうか。いきなりグループ活動で身に着けさせようとすると無理があります。全体の場面でどのようにすればよいのかを経験させるのです。

「○○さん、どうしてそうなったのか、考えを聞かせてくれる」
「・・・からです」
「なるほど、今○○さんが言ってくれたことわかる。なるほどと思った人」
・・・
「○○さんの意見に質問のある人はいますか。△△さん」
「私は○○さんの説明の・・・がよくわかりません」
「なるほど、△△さんの質問に答えられる人いるかな」
・・・

答えを発表させて、その解説を教師がするのではなく、その理由を子どもたちから聞く。その考えに対する意見を発表させる。自分の意見を変えてもいい。このようにして、グループ活動でやらせたい活動を具体的に経験させておくのです。

グループ活動やペア活動では、その活動の具体的な進め方をきちんと子どもたちが知らないと、ただ発表しあうだけで終わってしまいます。子ども同士のかかわり合いの基本は、全体の場面できちんと身につけさせる必要があるのです。

グループ活動と全体指導

グループ活動やペア活動を取り入れる授業が増えてきます。友だちと学び合う楽しさを知る子どもたちが増えるのはとてもよいことです。このような授業を見ていておもしろいことに気づきました。グループ活動に入るときの子どもの様子の違いです。

ホッとした表情をして一瞬ざわつくときと、素早く机を移動して、うれしそうに活動を始めるときがあるのです。前者の場合もしばらくすれば子どもたちは落ち着き、グループ活動はきちんと成立するので、決して悪い状態ではないのですが、注意して観察してみると、グループ活動に入る前の状況に違いがあるようです。

子どもがホッとした表情をするのは、教師の一方的な説明が多く、ただ聞いているだけ、ノートを写しているだけの受け身の時間が続いていたときです。グループやペアで能動的に活動する楽しさを知っているので、よけいにつらいのです。グループ活動のよさを経験すると受け身の時間の集中力が以前と比べて落ちる傾向にあります。受け身の時間からやっと解放されたとホッとした表情になるのです。

一方、素早くグループ活動に取り組むときは、自分の考えを早く話したい、友だちの考えを聞きたいと、課題に主体的取り組む状態ができているときです。

「○○ってどういうことだと思う」
「△△じゃないですか」
「今の意見どう思う。なるほどと思った人手を挙げて。どこでそう思ったか教えてもらおうか」
・・・
「手を挙げていない人の考えも聞いてみようか」
「□□だと思います」
「違った意見が出てきたね。みんなどう思う。じゃあグループで相談してみようか」

このように、教師が問いかけて子どもの考えを発表させるなど、子どもが課題に入り込むための時間をとっているのです。グループ活動に慣れていると、友だちの話を聞く姿勢が育っているので能動的に聞くことができます。聞いたことをもとにしっかりと考えるのです。自分の考えを持てているので、友だちと早く意見を交換したいのです。

グループ活動や、ペア活動が子どもたちにとって充実したものであれば、全体指導でも子ども同士がかかわり、学び合うといった能動的になる場面をつくりやすくなります。反対に受け身の場面での集中力は落ちていきます。
グループ活動を取り入れるということは、全体指導の場面でも子どもたちが能動的になるような工夫が教師に要求されるということなのです。
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31