評価の観点を具体的に示しておく

子どもたちの活動の後、教師がほめることはごく普通の光景だと思います。ところがそのほめる観点を事前に具体的に示さずに活動していることがよくあります。

「A役とB役にわかれて、二人で読みあってください。頑張って読んでくださいね」
・・・
「はい、みんな頑張って読んでくれたね。○○さんは、身振りもつけてくれてとてもよく頑張ったね」

この場合、頑張ることは具体的にどういうことか示されていません。たまたま身振りをつけた子がいたので、それを頑張ったこととして教師はほめたわけです。
「身振りをつければほめてもらえるのなら、最初からそう言ってくれれば意識したのに」と思う子どもが出てきます。頑張ることはどういうことか明確でないために評価に対する納得感がありません。活動のねらいにつながることを具体的な目標として事前に伝える必要があります。

本当に教師が身振りをつけるような工夫をさせたいのであれば、そのことを最初に示しておきます。

「A役とB役にわかれて、二人で読みあってください。その人の気持ちが伝わるような工夫をして読んでくださいね」
・・・
「○○さんは、身振りもつけてくれて工夫してくれたね。△△さんは、声の大きさを変えて読んでくれていたね。みんな工夫してくれていたね。ペアの人がどんな工夫をしていたか、気づいたことを教えてくれる?」

子どもたちに活動させる時は、ねらいを意識させる必要があります。ほめることは、その評価です。事前にその観点を明確にすることで、子どもたちが意欲的に取り組み、意識して活動してくれます。その結果、ほめることが子どもたちのモチベーションアップにもつながっていくのです。

資料集をどう活用する

教科によっては教科書以外に資料集を持たせていることがあります。資料集を有効に活用するにはどんなことを意識すればよいのでしょうか。

資料集の活用には、次の3つのステップがあります。

・必要な資料を見つける
・資料を読み取る
・読み取った内容をもとに考える

注意してほしいのは、活動中に途中のステップで止まっている子がいるかどうかです。資料を見つけることができていなかったり、資料を読み取れていないのに、全体の場で結論を聞かされても話し合いに参加できません。
そこで、いきなり結論を発表させるのではなく、ステップごとに確認をすることも必要になります。

「どんな資料が見つかったか教えて」
「この資料からどんなことがいえる」

このようにすることで、途中で止まっている子ども次のステップに移れます。
また、考えることに時間を取りたいのであれば、ステップを飛ばして、利用する資料を最初から指定したり、全体で資料の内容を確認しておくことも有効です。

もうひとつ大切にしてほしいのは、考えを発表する場面で、必ず根拠とした資料を聞くことです。気づかなかった子は、その資料と出会うことができますし、気づいても違うことを考えた子は、別の視点に出会えます。

「・・・だと思います」
「なるほど、それはどの資料でわかったのか教えてくれる」
「○○です」
「Aさんは、○○から・・・がわかったといってくれたけど、なるほどと思った」
・・・
「じゃあ、私は○○から違うことを思ったという人いるかな」

このようにすることで、資料をもとに子どもたちの考えが深まり、つながっていきます。

資料集には子どもの考えを広げたり深めるための情報がたくさんあります。活用のステップを意識して、大いに活用してもらいたいと思います。

漫然と読ませない工夫

授業中、教科書や資料を読むときがあります。声に出す、黙読する、一斉に、個別に・・・。「読む」場面はとても多いと思います。ところがこのような場面で気になるのは、漫然と文字を追っているだけ、声に出しているだけに見える子どもが多いことです。

子どもが活動する時には、目標やその評価を意識することが大切です。「読む」場面でも、何を目標にして読むかを明確にして、その評価をすることが大切になります。

例えば、全員で一斉に読むときは、「大きな声で読もう」「主人公の気持ちになって読もう」といった指示があります。教師も指示した以上は、きちんと評価する必要があります。大きな声で読んでいるかどうかを評価するのであれば、声だけではわかりにくいので、口元が見えるように顔をあげて読ませるようするなどの工夫も必要です。主人公の気持ちになることを求めるのであれば、読む前に主人公の気持ちを確認しておくことも大切です。一度普通に読んだあとに、主人公の気持ちになってもう一度読ませ、「今、主人公の気持ちになって読んでもらったけど、どんな気持ちになって読んでくれたのかな」と聞くことから、本文の読み取りを始めるようなやり方もあります。
このような指示と評価を教師が意識することでより積極的に取り組むようになります。

より注意が必要なのは、黙読するときや友だちが読んでいるのを聞くときです。自分が声をださないので、どうしても漫然と文字を目で追ってしまうのです。こういうときは、本文に線を引きながら読ませることが効果的です。

「わからない言葉があったら線を引いて」
「主人公の気持ちがわかる表現に線を引いて」
「資料で、・・・がわかるところに線を引いて」

このように指示をすることで、子どもの集中度は間違いなく上がりますし、教師も子どもの手の動きをみることで評価がしやすくなります。
読んだ後は、自分で調べる、友だちに教えてもらう、どこに線を引いたか教え合う、その理由を聞きあう、学級全体で線を引いたことを共有する。このような活動をすることで、より「読む」ことに意欲的になっていきます。

「読む」場面では、目標と評価を明確にし、そのことを読む前と後できちんと確認する。そして、できれば、読み取ったこと、意識したことをその後の授業展開に生かす工夫をすることで、より集中して「読む」ことができるようになると思います。

ルール化する

子どもに何か活動させる時、事前に指示をたくさんすることがあります。

「グループの全員が必ず意見を言ってね」
「わからないことは聞くように」
・・・
子どもたちは課題に取り組もうと意欲があがっているのに、事前の指示が多すぎて意欲がそがれてしまうこともあります。このような毎回の活動に共通するような指示はできるだけ少なくして、その日の課題に関することを中心に簡潔に指示をする必要があります。とはいえ、毎回確認しておかないと徹底できないようで、不安でもあります。
そこで、このようないつも共通する活動の進め方をルールにするのです。「話し合いのルール」「実験のルール」・・・。最初のうちは詳しく説明、指示が必要ですが、ルールにしてしまえば定着させやすくなります。教室の前に貼っておいて、いつでも確認できるようにするのもいいでしょう。

「話し合いのルールはなんだった。思い出せない人は前を見て確認しよう」

といった指示で済みます。
また、課題ができた子に対する次の指示を、活動中に口頭ですることもよくありますが、まだ作業中の子は自分の課題に集中しているので指示をきちんとは聞きません。そこで、「できた人への指示は黒板に書いておく」というルールにしておけば、できた子は黒板を見て次の課題に取り組むので、遊ぶこともありません。

日ごろの指示で、教室のルールにできそうなものは、ルール化するとよいと思います。

一人で考えることにこだわりすぎない

グループ活動や話し合いの前に、自分の考えを持たせたい。そのためにどのくらいの時間を取ればよいのかと相談されることがよくあります。

自分の考えを持たないと人の話を聞くだけで受け身になって、話し合いに参加できない。
最低一つは自分の考えを持たせてから、グループ活動に参加させたい。

教師にはこのような思いがあるのですが、すべての子に考えを持たせようとすると時間がかかるため、肝心の話し合いの活動の時間が無くなってしまいます。だから相談されるのです。このような相談をされる方は、自分の考えを持たせるために「一人で考える」よう指示していることが多いのです。
実際に授業を見ていると、考えを持てない子は時間を与えてもなかなか持てるようになりません。余分に時間を与えたからといって、考えを持てるようになるわけではないのです。逆に、早く考えを持てた子どもがだれてしまうこともあります。

自分の考えを持つことと、一人で考えることは決して同じではありません。考えを持つためには人の考えを聞くことも大切です。一人で考えて行き詰るなら友だちと相談してもよいのです。一人で考える「時間」にとらわれるより、自分の考えを持てる「活動」を大切にしてほしいのです。そう考えれば、「一人で考える」ことにこだわらず、最初からグループで相談する、苦しくなったら相談するという選択肢も出てきます。大切なのは、友だちとのかかわり合いの中で、答えという「結果」を共有するのではなく、どのように考えたかの「過程」を共有するように指導することです。

「最初に、こう考えたんだけど」
「こうやったけどうまくいかなかった」
「問題の意味がよくわからない」

このような言葉が出るようにすれば、自分の考えを持てていない子どもも、話し合いに参加できるようになります。人とかかわりながら自分の考えを持つことができるようになります。「一人で考える」ことにこだわりすぎないようにしてください。

根拠を問う

子どもに発言を求めるときに、答えや結果だけを確認する場面に出会うことがよくあります。

「主人公はこのときどんな気持だったと思う。考えを聞かせてください」
「とても悲しかったと思います」
「そうです。悲しかったんだね」

しかし、同じ答えだからといってそこにいたる過程や根拠は一人ひとり違うことがあります。また、そこにたどり着けなかった子どもは、結果だけを聞いても何故そうなるか理解できません。子どもに根拠を問うことで結果に至る過程を明らかにする必要があるのです。

「とても悲しかったと思います」
「なるほど、とても悲しかったと思ったんだ。それは、どこでわかるの」
「○ページの△行目に・・・と書いてあるので、ああ悲しいんだなと思いました」
「じゃあ、そこを読んでみて。・・・納得した人手を挙げて」

大人でも「なぜ」と根拠を問われると答えにくいものです。「どこでわかった」「それってどういうこと」と聞くことで、答えやすくなります。

資料から探すような場面でも、

「この人物はどういうことをした人。Aさん教えて」
「○○をした人です」
「それってどうやってわかった」
「資料集の何ページの下の方に書いてありました」
「あっ、あった」
「Bさん見つかった。何って書いてあった」

このようにすることで資料集のよさや使い方を子どもは身につけていきます。

「子どもの発言に対して、必ず根拠を聞くようにするといいよ」とアドバイスした先生に、その後を聞く機会がありました。
子どもが元気よく挙手をする学級でしたが、挙手の数が減ったそうです。今まで根拠を意識していなかった子どもが、根拠を考えるようになったためです。そのかわり首を傾けたりして考える場面が増え、友だちの発言を今まで以上に聞くようなったそうです。

根拠を聞くことで、子どもたちはより深く考えるようにもなるのです。
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