私立小学校から学ぶ

昨日は私立の小学校でお話しをうかがってきました。幼稚園から高校・大学まで併設している総合学園です。

子どもたちの目に見える学力だけではなく、目に見えない学力、学ぶための基本となる力をつけることを大切にされている学校です。そのために、子ども同士の学びあいを進め、教師の聞く姿勢を大事にされています。また、年に1度全教員が授業公開するなど先生同士の学び合いにも積極的です。
ICTの活用にも積極的ですが、いかにもICTを使っていますという利用の仕方ではなく、教科書を黒板に拡大して写すといった、そのよさが生きるところで気軽に使うものとなっています。
お話ししていて感じたのは、こういった試みが無理なく自然におこなわれていることです。急激に変化するのではなく、日々の活動の中で着実にレベルアップしているということです。教員の異動を考えると、ある程度限られた時間で結果を出していかなければいけない公立校と違い、じっくりと取り組める私立のよさをそこに感じました。

また、幼小連携、小中連携にしっかり取り組むことで、小1プロブレム、中1プロブレムにも積極的に対応されています。
また、各校種ごとにそれぞれの教育活動をおこなっていたのを学園全体としてより一貫性のあるものにしようというプロジェクトも進んでいるようです。

私が考えているこれからの学校経営に大切なことの多くを実践されている学校でした。大変多くのことを学べました。感謝です。

子どもとの人間関係がベース

昨日は中学校で授業アドバイスを行ってきました。久しぶりの訪問でしたが、若手の授業が本当に進化していました。

特によくなったなと感じる先生に共通していることは、教科の力がついてきたということです。教材研究がしっかりとできていて、発問や進め方に工夫がされていました。しかし、同じ指導案で授業をすれば誰しもうまくいくわけではありません。ちょっとした子どものつぶやきをきちんと拾う。子どもの発言をきちんと受け止め、他の子どもにつないでいく。こういったことがきちんとできているからこそ、教材研究も活きてくるのです。

もう一つ共通して感じたのは、子どもを受容する言葉や表情がとても自然になっていたことです。以前は、受容的な言葉を言わなくちゃ、笑顔をつくらなければ、というぎこちなさがあったのですが、それがまったくと言っていいほど感じられなくなっていました。いつも意識して授業をしているので、すっかり自然になったのでしょう。その結果、子どもたちとの人間関係が非常によくなっていました。教師が子どもをしっかり受け止めれば、子どもたちも真剣に授業に参加してくれます。こういう状態であれば、授業の成否は、発問や展開をどうするかという教材研究にかかってきます。教科の力が自然についてくるようになるのです。

若い先生は、教科力、授業スキル等たくさんのことを一から身につけなければいけません。あれもできない、これもダメだと毎日失敗の連続で苦しむことと思います。まずは子どもとの人間関係をつくることから始めてほしいと思います。これができれば、自然に授業はうまくなっていきます。このことを再確認させていただきました。若い先生の成長を見ることで、とても楽しい時間を過ごすことができました。

生徒の授業アンケートから考える

昨日は中学校の現職教育全体会に参加しました。

メインとなったのは、生徒からとった授業アンケートの結果をもとしたグループでの話し合いでした。
アンケート結果で印象的だったのは、「仲間と一緒に活動すると、楽しく学習できる」に肯定的な生徒が80%を超えているのに、「仲間の考えを聞くのが楽しい」が70%程度、「自分の考えを仲間に聞いてもらうことが楽しい」が60%程度と相対的に低いことです。
このことについて話し合われたグループが多かったのですが、その視点が非常に多様であったことを大変面白く思いました。

・子ども同士が本音で話せないといった、「人間関係」の問題
・子どもがうまく話せない、聞く姿勢ができていないといった、「コミュニケーションスキル」の問題
・話し合うテーマ、問題のレベルといった、「教材・課題」の問題
・自分の考えを持てていないので、人の話も聞けない。自分の考えを持たせる時間を与える必要があるといった、「授業技術」の問題

同じ生徒を見ていて、同じデータを見てもこのようにいろいろなとらえ方が出てくるのです。どれが正しい、正しくないということはありません。今の時点でそれを判断する材料もなければ意味もありません。先生方がアンケートという子どもからのメッセージを受けて、その原因や対策を考えたことが大切なのです。
互いの考えを共有化し、自分たちの立てた仮設のもとに授業を改善していく。その結果、子どもたちにどのような変化が起きるかをしっかりと見て、また次の改善を考える。こうして学校全体の授業がレベルアップしていきます。今回のアンケートがこの学校の授業のさらなる進化のきっかけになると思いました。

誰かが子どもとつながる

昨日は、私立の中高一貫校のお話しを伺ってきました。生徒と教師のコミュニケーションを大切にしている学校です。

面接の充実はもちろんのこと、行事等いろいろな機会をとらえて子どもたちとコンタクトをとるように努めています。いわゆる能力別学級編成をしているので、横のつながりが薄くなりがちなので行事も大切にしています。また、学年で生徒の様子について話し合う機会をたくさん持っています。気になる生徒に関しては、担任にこだわらず、教科担任、養護教諭、部活動の顧問…、誰かがつながっている体制をつくろうとしています。

実は先日授業の様子を外から見せていただいた時に、うまく授業に参加できていない生徒が少し気なったのですが、そういう生徒に対しても、個別にフォローしているので大きな問題になっていなかったようです。学校の中で誰かが受け皿になることは、学校の中に居場所があるということです。このことの大切さを改めて考えさせられました。

送辞・答辞の読み方指導

先週末は、中学校で送辞・答辞の指導に参加しました。プロのアナウンサーにお願いして読み方を具体的に指導していただくのです。

アナウンサーの指導というと、発音や抑揚などの技術的な指導が中心になると思いがちですが、もっと根本的なところから指導されます。
文章全体を通じて一番伝えたいところはどこであるか。何を伝えたいのかを生徒に意識させます。その上でどう読むのかを考えさせます。
生徒たちは事前にしっかり指導されてきたのでしょう。一つひとつの文の読み方も声の調子に変化をつけるなどの工夫がされていました。このまま本番を迎えても恥ずかしくないほどでした。しかし、前半から変化をつけてしっかり思い出を伝えているため、後半の伝えたい気持ちのところで相対的に盛り上がってくれないのです。だからこそ、よりよくするためには、今までの読み方をリセットしてもう一度全体を見る必要があったのです。

生徒たちは、指摘されたことを素晴らしい早さで吸収していきます。読むたびに確実に1ランク上に上がっていきました。指摘の内容も、語尾の発音、どの単語を強調するか、間の取り方など、ピンポイントなものに変わっていきます。何がいけないのか、どうすればよいのか、非常に具体的で説得力のあるものです。さすがにプロと感心させられました。

また、休みの日にもかかわらず、担当の先生だけでなく国語科の先生全員がこの指導に参加されていました。プロの指導から学んで自分たちの日ごろの指導に活かそうとしているのです。先生方の熱心さに頭が下がります。

プロのアナウンサーにうまくなったとほめられた生徒たちは、自信を持って本番に臨んでくれることだと思います。わずかな時間でこれだけうまくなった2人です。残された時間でもっとうまくなっていることでしょう。「できることなら卒業式に参加して聞きたいですね」と話をしながら学校を後にしました。

若い先生のやる気に元気をもらう

先日の中学校訪問時(授業アンケートが生きる参照)に、とてもうれしことがありました。生徒指導を担当している2人の先生から相談されたのです。

その内容は、次のようなものでした。

子どもたちは授業がわからなくなると学校から離れていく。そのことが問題行動につながっていく。中学校に入学する時点で子どもたちの学力にはかなり差がついている。なんとか下位の生徒が中学校の授業についていけるような工夫をしたい。理科の授業でも簡単な計算ができないためにつまずく子がいる。そこで、数学と理科を連続授業としたり同時展開したりすることで、習熟度別等の学級編成を可能にし、下位生徒が授業についていけるような方策をとりたいと思うがどうだろうか。

たまたま、2人が数学と理科の担当でもあったことがこのようなアイデアにつながったようです。
学習指導と生徒指導の関係を意識して、教科の枠を超えて子どもたちに対してできることを考えようという姿勢はとても素晴らしいものです。
彼らの想い、考えを聞き、私もできる限りのアドバイスをしました。特に、彼らが何とかしたい下位生徒に対してどのような授業、どのような取り組みが効果的であるかの具体的な仮説を持つことが大切であることを強調しました。これが明確になれば、今の枠組みの中でも改善できることがたくさん見つかりますし、また、必要な対策がよりはっきりするはずです。
実際にカリキュラム的に実現可能かどうかはわかりませんが、何とか実現できるよう願っています。

まだ若い2人の先生から、このような相談を受け、私も大きな刺激と元気をもらいました。

授業アンケートが生きる

昨日は、終日中学校で授業アドバイスをおこないました。2年生の2つの学級を中心に見ましたが、授業者に影響されない学級の特徴がよくわかりました。

作業や課題に対する指示に対してあまり積極的に取り組まず、答えなどの結果が示されると、それはノートに写す学級。
作業や課題に対しては取り組むのだが、教師や友だちとはあまり積極的にかかわろうとしない学級。

作業や課題に取り組む度合いの差はありますが、基本的に教師と子どものコミュニケーションがうまくいっていないことが問題です。子どもは試験で点をとるために必要な知識、結果のみを求めていて、その過程、教師や友だちとのかかわり合いを求めていないようです。
この日見た授業に共通していたことは、先生が子どもたちをポジティブに評価している場面がほとんどなかったことです。

こんな場面がありました。
ある生徒に友だちの発言を確認したところ、声が小さいから聞こえないと答えたので、発表者に再度みんなに向かって大きな声で発表するように指示しました。
指示された生徒は、嫌がっていましたが、何とか再度発表してくれました。
ところが、それでもよく聞こえないと言うので、その生徒にはちゃんと聞くように注意をした上で、もう一度、もっと大きな声で、みんなの方を向いて発表するように指示しました。
今回はかなり抵抗しましたが、なんとか発表してくれて、確認もできました。

このやり取りの間、確認された生徒も、発表した生徒も注意されるばかりで、発言の内容や聞いていたことを評価されていません。このようなことが続くと、子どもたちは発表することを嫌がりますし、友だちとの関係も悪くなってしまいます。コミュニケーションがとれなくなってしまいます。
子どもが何らかの外化をおこなったときに、きちんと評価することはとても大切なことです。このことを先生方に意識してもらうことが改善への第一歩です。

授業後このことをアドバイスしましが、「先日おこなった授業アンケートで、『先生はよくほめてくれたり、励ましてくれたりする』の評価が低かったのですが、そのことがよくわかりました」と、驚くほど素直に納得していただけました。ほかにも授業アンケートの結果を受け止めて、子どもたちの接し方をどうしようかと考えている先生がいらっしゃいました。
それまであまり意識していなかったことが、授業評価をきっかけに意識され始めていたのです。授業アンケートに項目として入れることが意識してもらうことにつながるのです。また、このアンケートを受けて先生の授業に変化が見られれば、子どもたちも先生方を信頼してくれるようになります。授業アンケートにはこのような利点もあるのです。

先生方が、子どもたちからの評価を素直に受け止めていただいていることをとてもうれしく思いました。この授業アンケートをきっかけに先生方の授業が進化し、先生と子どもたちの関係も改善していくと確信しました。
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