採用2年目の先生の授業を見る

昨日は中学校で、採用2年目の先生3人の授業アドバイスを行いました。

3人とも新任から見ている先生ですが、当時を思うと驚くほど進歩していました。どの授業も、若い人にありがちなテンションが高くなるような場面も全くなく、子どもたちの活動を大切にしている、参観して心地よいものでした。
彼らに共通していると感じたのは、素直であるということです。私からの直接のアドバイスだけでなく、研修主任が発信している学校で取り組もうとしていることなど、実に誠実に取り組もうとしていました。
午前にアドバイスした先生は、指摘されたことを午後の授業ですぐに改善していました。この素直さが伸びる条件だとあらためて思いました。

また、共通していたのは自分の授業の課題が意識できていたことです。

・どの子もきちんと授業に参加しているが、どうしても発表等はできる子ばかりが活躍してしまう。
・体育で子どもたちの活動場面をたくさん作ろうとしているが、道具の制約で活動できない待ち時間が多くなり、だれてしまう。
・子どもたちで解答の確認をしたり、意見交換をしたりする場面をつくっているが、答えだけを見せ合って終わってしまう。

こういう課題が意識できることが伸びるためには大切な要素です。それぞれの課題について次のようなアドバイスをしました。

1番目の課題については、「正解」と言わない授業をしているので、できる子が正解を言ったあとで、手が挙がっていなかった子に答えを言わせる。表現を動作化するといった、質問に対する解答以外で子どもたち活躍できる場面を用意する。

2番目の課題については、道具を使わない練習を組み合わせることを話しました。待つ間にできることをする。1グループを半分の数にして、道具を使う活動と使わない活動に振り分け、時間で交代する。こんな発想を持つとよい事を伝えました。

3番目の課題については、子どもたちが考えや意見を交換するやり方を知らないことが問題でした。先生の板書や説明が式や結果に偏っていて、どこで気づいた、なぜこの公式を使おうと思ったといたことを子どもたちに問いかけていなかったことが原因です。まず子どもたちの意見交換のモデルを全体の場で見せるようにすることを話しました。

しかし、このようなアドバイスを受ける機会が、この先いつもあるわけではありません。自分で本読んで考えたり、同僚の先生に相談するというアクションも必要です。授業について学ぶ方法を自分の中に確立することが次の課題になっていくのでしょう。
若い先生の成長の場に立ち会えていることは、大変楽しいものです。このような機会を得ていることをありがたく思いました。

愛される学校づくりフォーラム

私もメンバーの一員である愛される学校づくり研究会主催の「愛される学校づくりフォーラム」に参加しました。
会は発足してから約3年になりますが、その間メンバーがおこなった学校評価と愛される学校づくりの実践を発表させていただきました。

私はプログラムの中の2つのパネルディスカッションに参加しました。一つは司会者として、もう一つはパネラーとしてです。

緊張するのは何といっても司会者です。パネラーの発表は聞く立場によっては、「そうはいってもねぇ」とすんなり入って行かないこともよくあります。そこで、観客の表情からこんなことを疑問に思っているのではないかということをパネラーに突っ込むのですが、あまりきれいな答えが返ってくると、嘘くさくなります。とはいえ、しどろもどろになってしまっては台無しです。このあたりの質問のさじ加減が、おもしろいパネルディスカッションになるかならないかを決める要素です。司会者の腕の見せ所です。幸いにも、私の担当したセッションのパネラーは皆さん研究会のメンバーです。よく知っている人たちですから思い切って突っ込むことができます。その場で発表順を変えるなど当初の予定と違うことをしたり、あらかじめ質問事項を決めておかなかったりすることで緊張感とライブ感を演出してみました。さすが研究会の精鋭メンバーです、私の無茶な突っ込みにもみなさん堂々と答えていただき、とても楽しく終えることができました。パネラーの答えの中に、愛される学校をつくるための思いと実現のためヒントがたくさんあったように思います。私自身としては、ちょっとテンションを上げすぎてついていけなかった方もいたのではないかと反省しているのですが、パネラーの内容のあるお話しはきっとみなさんに伝わったことと信じています。

一方パネラーとして参加したパネルディスカッションは、反省しきりです。質問に対して簡潔に答えることができず、ずれた答えをしてしまったように思います。司会者のうまさと他のパネラーのおかげで、パネルディスカッション自体はおもしろいものになっていたとは思いますが・・・

フォーラム終了後、たくさんの方におもしろかったと言っていただけたことで、救われました。素晴らしい観客とメンバー支えられて、楽しい時間を過ごすことができました。

フォーラムの様子については、来月中には愛される学校づくり研究会のホームページで公開される予定です。

研究会の会長はすでに来年に向かって何やら準備を始めているようです。またおもしろい企画で皆さんとお目にかかれたらと思っています。

子育てに関する講演

児童センターで子育てに関するお話しをさせていただく機会がありました。就学前の小さなお子さんをお持ちのお母さんを対象にしたものです。20人以上の参加者があったのですが、当然のことながら皆さんお子さんとご一緒です。講演の間お子さんをどうするのかというと、別室で預かってくれるのです。面倒を見てくださるのは他の児童施設の職員やボランティアで、子どもの数と変わらないくらいの方がこのために集まっていました。地域全体で子育てを応援していることがよくわかります。今回参加されたお母さん方も、子育ての手が離れたら、今度は応援する側にきっと回ってくれることと思います。こうして次の世代へと助け合いがつながっていくのだとあらためて感じました。

さて、講演の内容ですが、次のようなことを話させていただきました。

・子育てに正解を求めない
・ほめ方叱り方
・親が子どものよいところを見つける
・言葉をかける、聞くことを大切にする

「明るく楽しく前向きな気持ちなっていただけるようなもの」という主催者からの、リクエストだったのですが、ちょっと硬くなってしまったかもしれません。終了後、反省させられたといった言葉が聞かれたり、今まで間違えた叱り方をしていたが、これから直せば大丈夫ですかといった相談を受けたりしました。
育て方が悪い、親のせいだという言葉が安易に使われすぎるような気がします。そのために、子育てにプレッシャーがかかるのです。同じように育てても子どもの成長は、一人ひとりのもつ個性や環境によって大きく変わります。うまく育ったかどうかは、大人になるまで、いや大人になっても言えることではないと思います。
私がお願いしたのは、子どもが安心して居ることのできる場所をつくってほしいということです。「あなたを大切に思っているよ。愛しているよ」ということ子どもに伝えることです。居場所のある子どもは決して崩れないからです。
日々大変な子育てですが、だからこそ子どもの成長を楽しめる余裕を持ってほしいと思います。私の思いが参加者にうまく伝わっていれば幸いです。

食の授業づくりの講演

昨日は栄養教諭・学校栄養教職員対象を対象に、食の授業づくりの講演をしました。

食の授業を何度か見せていただいたことがありますが、共通しているのは資料やワークシートなど、事前の準備を驚くほどていねいにされていることです。年に何回も授業のチャンスがないのでその分、しっかりと準備をされるようです。どなたも、食の授業に対して本当に熱い思いを持って臨まれています。それ故に自分の授業に対して、どうすれば子どもたちが興味を持ってくれるのか、子どもたちの行動を変えるには何が足りないのかと、真剣に悩んでもおられます。
参加された方は、みなさん真剣なまなざしで私の話を聞いてくださいました。少ない授業経験を補うために、しっかりと勉強しようという気迫のようなものを感じました。
また、栄養教諭・学校栄養職員の皆さんの横のつながりの強さも印象に残りました。情報交換し助け合おうとする雰囲気が会場にあふれていました。

食の授業は、やっと学校現場に認知され始めたところです。しかし、参加された皆さんの姿を見て、間違いなく学校現場によい形で定着するという確信を持つことができました。ぜひ、実際の食の授業を見せていただいて一緒に勉強する機会をいただきたいとお願いをして会場を後にしました。

終日特定の学級を見る

先週末に、中学校の授業アドバイスをおこないました。今回は、終日2つの学級を中心に授業を見学し、その学級にかかわっている先生方に対してまとめてアドバイスをさせていただきました。

今回の子どもたちの様子を見て感じたことは、授業の雰囲気をつくっているのは授業者の個性や進め方よりも、学級集団の特性のようでした。
1つの学級は、子どもたちと教師との信頼関係がうまくできていないようでした。過去に友だちの発言をからかうようなことがあったようです。子どもたちが安心して発言できる状況を教師が保証できなかったので、信頼関係も崩れてしまったのです。先生方に次のようなことをお願いしました。

・「わかった人」と正解を求めるような問いかけをしないこと
・どんな発言も「なるほど」とまず教師がきちんと受容すること
・その発言をポジティブに評価すること
・「同じ考えの人」「説明に納得した人」と問いかけることで、他の子どもとつなぐこと

残された時間はあまりありませんが、教師が子どもを認める、子ども同士が互いを認め合う雰囲気をつくることからやり直すのです。

もう1つの学級は、明るく元気な子どもが多いのですが、ちょっと落ち着きがありませんでした。どの時間でも共通していたのは、やるべきことが明確に指示されると取り組む姿勢を見せるのですが、集中力がすぐになくなり、同性間ですぐにおしゃべりを始めてしまうことです。学力的には2極化が進んでいるようです。できる子は終わってしまうとすることがない、できない子は途中で手が止まって集中力をなくす。そのために、ざわついてしまうようです。

・課題に対して答えだけではなく理由の説明をきちんと求めること
・わからなければ友だちと相談できるようにすること
・課題をスモールステップに分けて、わからない子がつまずいたままになる時間を減らすこと
・座席を男女市松模様にすること

このようなことをお願いしました。
できる子には説明などの高度な課題を与える。できない子どもには、わからない状態、手つかずの状態でいる時間を減らすことで、集中力を切らさないようにするわけです。また、同性間で相談すると無駄話になりやすいので、座席の工夫もします。

今回のような授業アドバイスのやり方は初めてでしたが、1つの学級にかかわる先生方が一緒に話をすることで、自分の抱えている問題が個人の問題ではないことに気づき、気持ちも楽になったようです。互いの授業の様子を共有化することで、注意すべき点も明確になり、共通の対応をとれるためにその効果もより期待できます。学級づくりを担任だけの問題ととらえるのではなく、かかわる先生方全員の問題ととらえることが大切だとあらためて思いました。

ICT活用研究校訪問

先週、来年度ICT活用研究のお手伝いをする学校と打合せを行いました。私の方から無理を言って、授業の様子も見せていただきました。この子どもたちの様子であれば、ICTを工夫して使うことで、授業での関わり合いや集中度を高めることができると思いました。

ICTの活用研究というと、まず利用することが第一歩ととらえがちなのですが、この学校ではICTの活用以前にどのような授業を目指すかを明確にすることから始めていました。その上で、どのような場面でICTの出番があるかを考えるのです。そして、ただ使ってみるのではなく、きちんと従来の方法と比較して、どちらがより効果的かを検証しようとしています。このような視点を意識することで、ICTを使う、使わないにかかわらない、基本となる授業力の底上げを図ろうとしていることをしっかり感じました。
目指す授業像も「伝え合う、学び合う」ことをベースとしたしっかりものでした

目指す授業像、子どもの姿を明確にし、それに向かってどのような工夫をするかが、授業をよくしていくための基本です。ICTは黒板やプリントなどと同様に、ツールの一つにしか過ぎません。そのことをわかった上でそのよさを活かす場面を工夫することが大切です。このポイントしっかり押さえている学校です。足が地に着いた研究になることと、今後が楽しみになりました。
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