わからなければ聞く

昨日は、中学校で授業アドバイスを行いました。

社会科の授業で、おもしろい場面がありました。北海道の農業の授業です。石狩、空知、十勝地区では水稲が生産されているのに、釧路、根室地区では生産されていません。水稲が石狩、空知、十勝地区で生産されている理由をたずねたところ、最初に指名された生徒は、「寒いから」と答えました。授業者は「なるほど」と認めましたが、次の生徒を指名しました。今度は「暑いから。米は暑くないと育たないから」と答えました。2つの意見が対立しました。
しかし、授業者は「あとから考えよう」と一旦その話を保留にしました。

授業後話をしたところ、なぜ最初の生徒が「寒いから」と言ったかわからなかった。稲はアジア原産で暑いところでとれるものだから、間違っている。よくできる子なのになぜそんなことを言ったんだろう。どう扱っていいかわからなかったので保留にしてしまったということでした。子どもが理解できないことを発言すると対処できなくなってしまうのです。
しかし、よくわからない発言でも子どもなりにちゃんとした理由があるはずです。まずはどうしてそう考えたか確認することが大切です。「それってどういうこと」と聞けばよかったのです。
これは私の想像ですが、米の生産量が多いところは北海道や東北地方なので、愛知県に住んでいる子どもから見れば「寒いところで米はとれる」と考えたのではないでしょうか。
もしちゃんと理由を聞いていたら、この2人の発言からよい課題が生まれたことと思います。

教師は自分のペースで授業を進めたいという気持ちがあります。わからない発言、想定外の発言はどうしても無視してしまう傾向があります。わからなければ「それってどういうこと」と聞きながら、子どもと授業をつくっていく姿勢が大切だと思います。

子どもを育てる地域

先日、中学校の学校評議員会に参加しました。

学校に関わる様々な方が参加されましたが、みなさん地域で子どもを育てるということを大切にしておられました。

たくさんの議題がありましたが、子どもたちのボランティア活動の活性化について一番多くの時間が割かれました。

ボランティアなのだから強制するようなことはしたくないが、リピーターの子が多いということは、経験するとその楽しさがわかるはずだ。参加するきっかけをうまく作ってあげたい。

自分が役に立っているという実感を持たせたい。ボランティア活動で地域がこんなに助かっていることを伝えたい。子どもたちに「ありがとう」と言われる機会をたくさん与えたい。そのためにも、子どもたちが活躍する場を地域で作らなければ。

このような積極的な意見がたくさん語られました。

こうすれば絶対活性化できるという妙案はありませんが、PTAが行っている資源回収を子どもたちのボランティアに移行することが検討されることになりました。

このような地域に育つ子どもは、自分も大人になった時に、次の世代を育てることに力を尽くしてくれると思います。地域の方が、子どもたちを育てることに積極的に関わろうとしていることの素晴らしさをあらためて実感させていただきました。

満足した表情になる授業

昨日は、中学校のソフトボールの授業を参観してきました。

班長や野球経験者を中心に子どもたちが声を掛け合う、学び合いがしっかりと成り立っている授業でした。自分たちで教え合えるよう日ごろから指導している成果でしょう。

「ソフトボールの基本はなんだっけ」という質問に答えられない生徒に対して、「周りの子に聞いてごらん」と指示したり、どんなポジションがあるか周りの子と確認させたり、子どものかかわりを意識していました。

また、班長や友だち同士の声掛けが「移動しよう」「並ぼう」というように命令文ではなく、Let'sになっています。日ごろ授業者がこういう指示の仕方をしているのでしょう。こういったところにも子どもたち同士、子どもたちと授業者の関係がよいことが見てとれます。

最後に集合した時の子どもの表情は、授業開始時よりも明るく、とても満足げでした。充実した時間であったことがわかります。子どもたちのかかわりを大切にすることは、どの教科でも同じです。互いに学び合い、自己有用感を感じたことがこの表情を作ったのだと思います。子どもたちの素敵な姿を見ることができた授業でした。

子どもたちの集中力が続く授業

先週末は、中学校の合唱の授業のアドバイスをしてきました。

印象的だったのはパート練習を子どもたちが集中力を切らさずにやり続けていたことです。パートリーダーを中心にどのように歌うかを話し合い、意見がまとまったら歌ってみる。これを繰り返しているのですが、男子も女子も実によい表情で参加しています。子どもたちの人間関係がよい証拠です。授業者もそうですが、担任を始め関わっている多くの先生方の指導のおかげだと思います。

子どもたちの集中力が切れない理由は人間関係がよいだけではありません。彼らがうまくなりたいと思っていることも理由のひとつです。グループ練習を切り上げて全体で合わせようと言っても、「まだうまく歌えないから練習させて」とお願いするぐらいです。
当り前ですが、前向きな気持ちで取り組んでいれば、集中力は続きます。
子どもたちがうまく歌いと思うのは、授業者が子どもたちをポジティブに評価していることが大きく影響していると思います。授業開始時の発声練習の時や校歌の合唱、子どもたちが出力する場面では必ず誰かをほめています。名前を読んで具体的にどこがよいかを言ってもらえるので、ほめられた子どもは自信を持てますし、他の子どもも意識すべきことが明確になります。教室に笑顔があふれてやる気が出てくるわけです。

3年前におじゃました時には、まだ学校が落ち着いていない状態で、子どもたちの表情が乏しかったのが印象的でした。よい表情で一生懸命歌っている子どもたちの姿を見て、先生方が子どもたちにどれほどの力を注いできたかをあらためて感じました。来年はきっともっと素晴らしい姿が見られることと楽しみにしています。

普段の授業から学ぶ

昨日は、中学校で剣道の授業研究に参加しました。

検討会で授業者から、野中信行先生(ブログ)の「味噌汁・ご飯授業」という言葉が出てきました。研究授業の特別な「ごちそう授業」ではなく、日常的な「味噌汁・ご飯授業」の在り方を学ぶことを大切にしようという主張です。

本時は、子どもたちが始めて竹刀を持って活動する場面です。ところが、時間数の関係でどうしても基本的な動きをこの1時間で教えなければなりません。子どもたちの活動量を確保すると学校で進めている研究のテーマである言語活動の時間をあまりとれないことになってしまいます。よくあることです。そこで授業者は、あえて見せる授業をせずに、こういう時間のない時に普段行う授業を見せることにしたのです。

授業者の説明の後、子どもたちが活動し、互いに動作を確認し合いますが、なかなか修正されません。一つひとつの動きの完成度を高めるためには、ポイントを子どもたちに確認する機会を何度も取ったり、代表者に実技をさせ、全体でどこがよいか、何が違うかを話し合うなどの方策が必要です。しかし、授業者はそのことにあえて時間を使いませんでした。それよりも、子どもたちの活動時間を少しでも多くとろうとしました。
子どもたちは、とても楽しそうに活動していました。たくさん竹刀を振って活動することで、初めて剣道に出会う子どもたちが、剣道を楽しいと感じてくれたのです。
このことが授業者のねらいだったのです。

この授業を別の視点で見れば、竹刀の持ち方がきちんとできていない子がいる、きちんと竹刀の先で面を打っていない子がいる。それなのにきちんと修正できていない。子どもたちが考えたり、発言したりする場面が少ない。そんな意見も出ると思います。しかし、大切なのは授業者が子どもたちに何を求めているかです。剣道を楽しいと感じてくれるという授業者の目指す子どもの姿があり、それが実現できたとてもよい授業でした。
普段の授業の中にこそ、教師が大切にすべきものが何かが見えてくることをあらためて教えていただきました。

感情を話し合う

昨日は中学校の道徳の授業研究に参加しました。

ネットの掲示板の中傷記事にどう対応するかを考えるものでしたが、興味深かったのが、中傷記事を見てどう思ったかを話し合う場面で、子どもたちが負の感情をなかなか話そうとしなかったことです。紙に書かせると、ネガティブな言葉をたくさん書くのですが、グループの話し合いではなかなか口は出しませんでした。その理由として、多くの教師が参加するなかで、ネガティブな感情はよくないものだから口にしない方がよいと判断したことが考えられます。また、話し合うといっても感情なので、理屈や根拠を共有することはできません。理性的であろうとすれば、話し合いが成立しにくいことも考えられます。逆に、紙には負の感情を書くということは、ネット環境があれば、感情的な書き込みをしてしまうのかもしれません。
一方、他のクラスで同様の授業を行った時には、ネガティブな言葉がたくさん出てきて、発言を押さえなければならなかったそうです。無責任な感情の発表ですから、テンションが上がれば抑制が利かなくなるということでしょう。

このように、感情を話し合うこと、特にネガティブな感情はなかなか難しい面があります。感情そのものを問うよりも、どのような行動をするかを問い、その行動の原因となる感情を話し合うようにした方が、感情を口に出しやすくなるように思いました。

子どもたちが真剣に考えているからこそ、子どもたちの様子からいろいろな発見がありました。負の感情をどう表面化させ、どう向き合わせるかについて考えるよいきっかけとなった授業でした。
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