次のステップに向かって

昨日は、先日研究発表会が終わった中学校で、今後の現職教育の進め方の会議に参加しました。

事前に取ったアンケートから、ほとんどの先生が授業改善に前向きで、子どもたちの変化を肯定的にとらえていることがわかりました。この1年半の取り組みが教師としての力量向上と幅を広げることにつながったと感じているようです。
学校全体での取り組みでしたが、教科や個人が工夫したこともたくさんありました。いろいろな角度からのアプローチが結果として子どもを育てることにつながっていきます。
教科ごとのグループでの話し合いを聞いていると、学校全体の方向性に基づいて、個々に課題を設定して、それをクリアするためにさまざまなチャレンジをし、その結果が自分たちのノウハウとして蓄積され始めていることがよくわかります。
また目指す生徒像も、各教科の授業場面での具体的な姿がそれぞれ明確になってきたように思います。

次のステップに進むにあたって、これらの目指す子どもたちの具体的な姿や、それぞれの工夫・ノウハウを学校全体で共有することが必要だと感じました。
今までの実践をもとにより具体的な目指す子ども像を共有し、教科の枠を超えた自分たちの基本となる取り組みを明確にすることです。その上で、何ができているのか何ができていないのかを全体で確認することで、次に何に取り組むべきかが具体的になると思います。

普通であれば、研究発表会が終わって気が抜ける時期だと思いますが、さらなる飛躍に向けて素早く動き出していることが素晴らしいと思いました。授業改善に学校全体で取り組むことが、この学校の伝統となっていくことと思います。

ベテランをどう生かす

先週末に開催されたプラネクサスの学校経営セミナーで講師を務めました。

多くの学校で授業改善が課題となっています。これから増えてくる若手をどう育てるかとともにベテランのことがよく話題となります。今回参加した方もこのことを課題とされている方がたくさんいらっしゃいました。おもしろかったのは、このベテランに対する見方が大きく分かれていたことでした。

「ベテランが学校を支えてくれている。ベテランが大量に退職する前に、なんとか次の世代に引き継がなければならない」

「学校改革、授業改善を進めていく上での障害がベテランだ。一番改善してほしい彼らが、変わろうとしない。悪しき伝統・習慣を変えられない」

学校ごとに状況は違うと思いますが、いずれにせよ、退職まであとわずかになっているベテランをどう活用して次につなげるかは大きな課題です。

教師は職人と似たところがあります。技術やノウハウは個人についてきます。それを外に出させるためには、場が必要になります。校内研修で講師を務める、若手をペアで指導する、積極的に授業を公開するなど、意図的に場面を作る必要があります。

また、変わろうとしない教師も、決してよい授業をしよう、よい教師であろうという気持ちを失くしているわけではありません。ただ、変われということは今までやってきたことを否定されたような気持ちになるために、反発するのです。まず、ベテランのよいところを見つけ、こうすればもっとよくなるという視点で働きかけるのです。変わりにくいのがベテランですが、変わった時に最も大きな進歩するのもベテランです。ベースとなる物がしっかりとあるから、それに新しいことを加えた時により大きな成果がでるのです。

学校の人事構成が大きく変化する時代がやってきました。ベテランをどう生かすかが、学校のこれからを決めていくと思います。ベテランの持つよさを引き出し、うまく次世代に引き継いでいただきたいと思います。

子どもが教えてくれる

昨日は小学校の校内研修で指導助言を行ってきました。予定していた授業者が体調不良だったため、急遽同じ学年の先生が自分の学級で同じ指導案で授業を行ってくれました。研究授業は中止して指導案をもとに話しあうという案もあったそうですが、快く引き受けてくださる先生がいたため、実際の授業をもとに話し合いができました。

2年生の国語の授業でしたが、子どもたちはよく集中して課題に取り組んでいました。大勢の先生の取り囲まれているにもかかわらず、子どもたちは普段の様子をよく見せてくれました。授業者は子どもの言葉をきちんと受け止め、同じ考えの子どもをつなぐことも意識していました。2年生ぐらいだとなかなか子ども同士が関われないのですが、グループでの話し合いもほとんどの子どもがうまく関われていました。

今回の授業は読み取った内容をクイズにするという内容でした。「わかりやすい」クイズがキーワードになっていましたが、指導案を見ただけではどのような力をつけるのかがよくわかりませんでした。実際に子どもの作ったクイズを見ると、主語が抜けていたり、目的語が抜けていたりしていましたが、話し合いを行っても修正ができないグループが多く見られました。自分たちが答えを知っているために気づけなかったようです。
この子どもたちの様子から、この授業でのキーワード「わかりやすい」は、クイズに答える人が、「何を答えたらよいかわかる」ということだと気づかせればよいのだとわかりました。また、そのことに気づかせるためには、相手意識を持たせる必要もあることがわかりました。クイズを通じて質問力をつけると考えてもよいかもしれません。期待した答えを相手から得る質問を作る力です。この力は、インタビューなどの場面でも役立つ大切な力です。

授業はいくら頭で考えてもわからないことがたくさんあります。今回も実際に子どもたちの活動の様子を見ることからたくさんのことを学ぶことができました。 これも、ピンチヒッターを快く引き受けてくれた授業者のおかげです。授業者にあらためて感謝です。

やる気のある研修会

昨日は市の中堅研修の講師を務めました。夏に行った模擬授業による授業検討(自分の問題としてとらえる)を受けての授業研究でした。会場校の先生方にも参加いただき、より多くの視点で授業を見ることができました。

模擬授業での反省をもとに、最初の課題をわかりやすいものに変えるなどの工夫がたくさん見られました。子どもたちと先生、子ども同士の関係はとてもよく、男女のペア活動も、グループ活動もきちんと行えていました。
ペア活動では、3つの相似条件を互いに確認し合うのですが、間違いがあってもきちんと訂正できないペアがいくつかありました。決していい加減にやっているわけではないのですが、自分の役割意識がはっきりしていないために、聞く側の集中度が低かったようです。聞く側が責任感じるような工夫、例えばペアの相手がきちんと言えていたかどうかを挙手で確認する等が必要なのかもしれません。

個別に問題に取り組んだ後、グループで答を発表し合ったのですが、授業者が思っていた以上に時間がかかってしまいました。グループで話し合わないと解決しないようなレベルの問題ではなく、どれだけ見つけられるかという問題だったので個別の時間をたくさんとったようですが、できる子は早く見つかってしまい、そうでない子もいくつか見つけて止まっている状態でした。このような時間はもったいないので、周りの人と相談してもよい、最初からグループの体制で聞きやすくするなどの、作業のグループ化をするとよいとアドバイスをさせていただきました。

参加した先生方も、前回自分が生徒役だったので、どこでつまずきそうかよくわかっていたので、子どもたちの理解度をよく把握されていました。また、子どもの話し合いの様子も細かく観察していて、先生方の話し合いからもたくさんのことを学ばせていただきました。授業がうまくなりたいとやる気を持って参加してくださる先生方からたくさんの元気をいただきました。

子どもが育つと教師も育つ

昨日は、中学校の授業研究に参加しました。

この学校のアドバイザーとして1年半余りが過ぎました。子どもたちの授業中に見せる姿がずいぶん変わってきました。柔らかい表情で、友だちと関わりながら授業に参加するようになりました。それと並行して先生方の授業研究での様子もずいぶん変わりました。子ども一人ひとりの発言や友だちとの関わり合い、子どもの変化のきっかけなどを実によく観察しています。検討会での話し合いも一人ひとりの学びの様子がきちんと語られていました。
この授業では、ずっと机にふせって参加していない生徒が後半起き上がって参加を始めました。私はその変化の瞬間を見落としていたのですが、観察していた先生がその前後の本人の様子と仲間の関わり方を詳しく報告してくれました。おかげで、その時何が起こっていたのかとてもよくわかりました。
このように先生方の子どもの事実をしっかり見るようになったおかげで、検討会で学べることもとても多くなってきました。

授業者は6年目の若手ですが、今回が今年3回目の提案授業です。回を追うごとに、子どもたちにこうなってほしいという思いがはっきりし、そのことを意識した授業づくりになってきました。うまくいくことばかりではありません。しかし、意識して組み立てているので、その結果をきちんと分析することで改善点もはっきりします。
この数年、学校として教師と子どもたち、子ども同士の人間関係をきちんと作ってきたことで、子どもたちの学びがうまく成立しなかった場面でも、その原因がどこにあるのかがとても考えやすくなりました。人間関係ができていないときは、そこが原因なのか課題や教師の働きかけが悪いのかがわかりにくいからです。

子どもが育っていくことで教師が学ぶことも多くなります。子どもが育つことが教師を育ててくれるのです。管理職の先生方も彼を温かく見守って、彼の進歩きちんと認めて励ましてきました。授業者は昨年までと比べて、子どもや同僚から学ぶ姿勢がとても素直になってきました。

検討会後も、この授業に関してまだ整理できていないことや疑問をたくさん私に質問してくれました。とてもよい内容で、授業者と一緒に私もたくさん勉強をさせてもらいました。
最後に「来年は異動するかもしれませんが、もし機会があればまた授業を見てください」と言ってくれました。このことが私にとっては何よりうれしい言葉でした。

研究発表会

昨日は、昨年より授業のアドバイスをしている中学校の研究発表会が開催されました。私も分科会の助言者とパネルディスカッションのコーディネーターをさせていただきました。

公開授業は、大勢の方に参観されるといういつもとは違う状況のため、先生も子どもたちも緊張していることがよくわかります。最初のうちは子どもたちの表情が硬くて心配していましたが、すぐにいつもの姿を見せてくれるようになりました。何人もの参加者の方から「どの学級も子どもたちが柔らかい表情をしていた」というお声をいただけたことを、関わってきた者としてとてもうれしく思いました。

パネルディスカッションでは、パネラーの方から子どもたちが主体の学びについて実践に基づいたお話を聞くことができ、私にとってもよい学びになりました。
途中で2人の若手に発言してもらいました。自分の授業が変わったきっかけ、今どんなことを意識して授業をしているかをしっかりと話してくれました。この2人に限らず、若手が本当に成長してくれたことをとてもうれしく思っています。
実践についてのパネラーの方とのお話を通じて、私自身がこの学校に関わらせていただいて成長できたことをあらためて実感させていただきました。

また、研究主任が今まで先生方に発信してきた研究通信が一冊にまとめられていました。読ませていただいて、私がお話ししたことを本当に大切にしてくださっていたことにあらためて感謝しました。

今回の発表はあくまでも通過点です。先生方の授業を通じて子どもたちの見せてくれた姿を見て、今後の子どもたちの成長がますます楽しみになりました。

子育てについて考える

先週は久しぶりに、一般の方対象の子育て講座の講師を務めました。
小学生から高校生ぐらいまでの子どものいる方々でしたが、大変熱心に参加していただけました。

親や周りが子どもに期待することがプレッシャーとなってしまうことなどを、具体例を交えながらお話ししました。小グループでの話し合いも取り入れたのですが、私の話と似たような例が参加者からたくさん出てきたのには驚きました。不登校や問題行動など、私の体験を含め、見聞きしてきたことは決してレアケースではないことがよくわかりました。言いかえれば、何の苦労もなく子育てが終わることはないということです。しかし、多くの親はこういったことを我が家だけの問題のように感じ、抱え込んでいるように思います。子育ての悩みを気楽に相談できる相手が減ってきているのもその要因の一つでしょう。

学校生活以外のことに関しても学校が受け皿として機能することがこれからは求められるようになっていくのかもしれません。子どもを育てるということに関して参加者から新たな課題をいただきました。講師の私も学ぶことの多い講座でした。

ねらいの達成を意識する

先週末は、中学校で採用3年目の英語の先生の授業アドバイスを行いました。

落ち着いた和やかな雰囲気で授業が進んでいます。指示も明確で、新任のころと比べて表情にも余裕が出ていました。あとから授業場面に関して質問しても、明確に自分の行動を振り返ることができます。なんとなくではなく、きちんと意図した行動である証拠です。しかし気になる点もあります。

子どもたちに自然な速さの英語で問いかけるのですが、そのあとすぐに日本語で同じことを説明します。理解できていない子どもがいるためです。しかし、いつも先生がすぐに日本語で話してくれるのであれば、わからない子どもは頑張ってわかろうとはしません。英語をきちんと聞きとって理解させたいのであれば、ゆっくりと何度も繰り返したり、シチュエーションを明確にしたりする工夫が必要です。

また、テキストを写す場面で多くの子どもが、単語単位で書き写しています。このことを指摘したところ、1年生のころから1文単位で、もし無理なら句単位で写すように指示しているとのことでした。指示をしていたとしても子どもたちの実態はそうなっていません。ならば、1文を何回見て写したか数えさせるよう指示するなどの工夫をしてきちんとできるようにすることが大切です。

明確な意図を持って行動していても、そのねらいが達成できているか確認して徹底しなければ、単にやっただけということになってしまいます。できる子、わかる子だけしかねらいを達成できません。授業のねらいや視点は非常によいものを持っている先生なので、達成をきちんと意識するようになれば、大きな進歩を遂げると思います。

子どもたちが育つ理由

昨日は、中学校で授業研究に参加しました。

子どもたちは互いに相談しながら一生懸命に課題に取り組んでいました。とてもよく育っている学級です。
グループで課題を考えるように指示をした時です。子どもたちは課題がよく理解できなかったため、何をやればいいかよくわからず、しばらく動き出せないでいました。しかし、しばらくすると額を寄せ合って相談を始め、課題に取り組み出しました。
課題がわかりにくかったことは反省しなければなりませんが、それよりも子どもたちの動きです。課題がよくわからないときは、教師を呼んで聞くことが普通です。しかし、どのグループも教師に頼らず、自分たちで何とかしようとしました。
授業後、先生に確認したところ、4月、5月の頃はわからないことがあれば、すぐに質問していたが、その都度「自分たちで考えてごらん」と子どもたちに返すようにしていたそうです。その結果、まず自分たちで考える姿勢が育ってきたのです。

また、次のような場面がありました。
A君が気づいたことを発表したところ、なかなか全員が理解できませんでした。「A君の考えを説明してくれる人」と聞いたところ、B君が挙手をして発表してくれました。説明が終わった後すぐに「A君これでいい」とA君の方に向いて確認しました。A君は「うん、いい。ありがとう」とうれしそうに答えました。
日ごろ友だちの考えを説明する場合は、必ず本人に確認をすることを授業者がきちんとしつけていることの現れです。

子どもたちが育つのには理由があります。日ごろの教師の働きかけが必ずあるのです。この時期の授業研究に参加すると、「子どもたちがいいからうまくいく。うちの学級では・・・」といった感想がよく聞かれます。育った子どもは結果です。そこに至る過程にきちんと思い至らなければ、授業を見たことにならないのです。先生方の日ごろの地道な働きかけが目の前に浮かんでくるような授業でした。この先、子どもたちがどんなふうに育っていくのか、次回の訪問がとても楽しみです。

自分たちの授業として見る

一昨日は、終日中学校で授業参観と授業研究に参加しました。

授業では子どもたちの「つながり」を大切にしています。先生同士のつながりを密にしようと、授業検討会をグループで行うようになって半年余りがたちました。授業に対して真剣にかつ楽しく話し合っています。内容も教師の動きだけでなく、子どもたちの動きについて語られるようになってきました。とてもよい雰囲気です。しかし、個々の授業に関してのよいところや気づきは話されるのですが、どこか他人事のようなとらえ方をしているように見えました。そのためか、検討会で話されたよい気づきが他の授業になかなか活かされず、学校に広がっていかないと感じていました。

今回、いくつかのグループで、この授業に限らず、自分の授業や他の教科ではどうなのだろうという視点で話し合われていました。

「自分の授業でも、うまく他の子どもと関わって意見を言えない」
「子どもたちがつながるためには、どの教科にも共通して子どもたちに示すべきことがあるのでは?」

こんな意見が聞かれるようになりました。
先生方が変わり始めたのです。授業を他者のものではなく、自分たちのものとして見るようになってきたのです。このようになってくると、一つひとつの授業から得た学びが学校全体に広がるようになります。互いに学びあえるようになっていくのです。

今回の授業検討会をきっかけに、この学校が大きく進化していくのでないかと楽しみにしています。

授業技術に縛られない

先週末は、中学校の特別支援学級での和太鼓の授業のアドバイスを行いました。採用2年目ですが、講師時代を含めるとこの学校の特別支援に関わって8年目の先生でした。

2日後が発表ということで最後の仕上げの段階です。20人ほどの生徒が一生懸命集中して練習していました。子どもへの指示ははっきりとしていて、実技の見本もポイントがわかりやすいように大きな動作で見せています。和太鼓の授業の押さえどころをつかんでいるようでした。
最後に子どもの集中力を高めるために、声が出ていないことを指摘して再度挑戦させました。授業者の思惑通り、子どもたちは大きな声で演技をし、最後に子どもたちを大いにほめて授業は終わりました。

見事な授業でした。授業者はこういう場面ではこうすればよい、このような対応をすれば子どもたちはこうなるという授業技術をいくつも持っています。が、逆にその授業技術に縛れているように見えました。
例えば、教師と子どものコミュニケーションを図ることはできているのですが、子ども同士の関わりが少ないのです。他者とのコミュニケーションが苦手な子が多いようですが、子ども同士をつなぐことで関われそうな子もたくさんいます。そこまで目指せると思いました。しかし、授業者は子ども同士の関わりを意識していなかったし、そのような授業技術も持っていなかったのです。自分の持っている授業技術の範囲でできることが目指す子どもの姿になっていたのです。

特別支援に限らず、経験を積めば、このように指示すれば子どもはこう動くという授業技術はいくつも身に着きます。しかし、大切なのは目の前にいる子どもたちをどこまで伸ばせるかです。子どもたちの状況をしっかり把握して、ここまでいけるという目指す姿をきちんと描き、そのためにどのような活動をすればよいのかを考えることです。そうすると今まで身につけた授業技術だけではうまくいかないことに気づきます。だからこそ、新しい工夫が必要になり、その結果教師も成長するのです。

まだ若い先生です。今まで身につけた授業を技術だけに頼らずに、子どもたちをより伸ばすにはどうすればよいか、新しいことにどんどんチャレンジしてほしいと思います。
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