短い期間でも変化は起こる

小学校で授業アドバイスを行ってきました。この日は小中連携の一環の授業公開の日でした。前回訪問から20日ほど経っています。これだけの時間で大きく変化することはありませんが、先生方が意識していることや改善されつつあるところを見ることができました。

一年生の国語は、挿絵を話の順番に並べてその場面を説明する場面でした。
教室に入ると子どもたちが落ち着いて授業に参加しています。授業者の表情にも笑顔が見られます。前回訪問時に気になって子どもの姿が見えません。ふと、気づくと机の横の床に寝そべっています。授業者は前回のアドバイスをもとに、あえてそのままにしているようです。そのあと、挿絵のコピーを配って2人一組で話の順番に並べる作業に移りました。子どもたちは、素早く机を向かい合わせにします。その様子に気づいて、今まで寝そべっていた子どもががばっと起き上がって授業に参加し始めました。気になる子どもがよい行動をとったのですから、一言ほめてやりたいところでした。授業中伏せっている子どもが起き上がって授業に参加するのは、多くの場合、教師が注意した時ではなく、この子どものようにまわりの子どもたちに動きの変化が起こった時です。注意をするのではなく、意図的にまわりの子どもを動かすというのも一つの方法のようです。
先ほどの気になる子どもは、挿絵のコピーを独占しています。それに対してもう一人の子どもが身を乗り出してかかわろうとしました。ここは、このかかわろうとしている子どもに「ありがとう」と声をかけたいところです。友だちに独占されて困っていることを授業者はちゃんとわかっている、あなたを見守っているということを伝えておくことが必要なのです。
ペアでの作業が終わった子どもたちの手元を他のペアが見ようとしました。見られたペアの一人が、「見ちゃダメ」と言って相手との間に筆箱を立てて拒否しました。しばらくして先ほど見ようとしたペアも作業が終わると、同じように筆箱で壁をつくっていました。ちょっと気になる光景でした。わからなければ見ていい、相談していいというルールにしておくとよいでしょう。
順番にどの挿絵になるか、実物投影機を使って子どもたちに発表させます。友だちの発表を子どもたちはよく聞こうとしていました。挙手で指名していましたが、ペアでやれているので、挙手に頼らなくてもよかったと思います。一つひとつ発表後、その場面の説明を子どもたちにたずねます。子どもの発表に対して「付け足し」と声が上がることがよくあります。このこと自体は悪いことではないのですが、必ず言われた子どもの表情が悪くなります。否定されたように感じるのです。付け足された後、もう一度その子どもに「どう、なるほどと思った」「付け足してもらえたから、その意見を合わせてもう一度言ってみようか」「付け足してもらって、もっとよくなったね」というように返しやるとよいでしょう。必ずポジティブな気持ちになって終わらせることを意識させたいと思います。
友だちの発言が聞こえなかった場面で、他の子どもに言わせるのに「同じこと『でも』いいよ」と声をかけました。些細なことですが、「○○さんの言ったことと同じことを言ってくれるかな?」と声をかけ、必ず本人に「今△△さんが言ってくれたことでよかった?」と確認を取りたいところでした。他の同様の場面では、「いいことを言ったからもう一度いってくれるかな?」と発言者にもう一度言わせていました。よい対応です。こういう対応を意識できるとよいでしょう。
授業者は、子どもの発言が終わるとすぐ次に進もうとする傾向があります。すべての意見を取り上げる必要はありませんが、必ず「なるほど」と受容することを忘れないでほしいと思います。
先ほどの気になる子どもは、友だちが実物投影機を使って発表するのを見て自分もやりたくなったのでしょう。手を挙げて発表意欲を見せます。授業者はすぐに指名せずに様子を見ています。このままでは、指名されずに集中を失くすかと思ったのですが、その前によいタイミングで指名しました。うれしそうに発表します。発表して友だちに評価されることでとてもよい表情になりました。こういう場面が増えてくると人間関係がよくなり、問題行動も減ってくると思います。よい方向に変化しつつあります。
それと呼応するように、学級全体も落ち着きつつあります。まだまだ大変なことがあるとは思いますが、笑顔を忘れずに、子どもたちをポジティブに評価しながら、学級づくりを進めてほしいと思います。

2年生の国語の授業は、本文から主人公の気持ちを見つけようという場面でした。
子どもたちがそれぞれで音読します。主人公のしたこと、気持ちがわかる場面をみつけることを音読の目標としています。読み終ったら教科書のその部分に線を引くという作業が指示されています。読み終った子どもは集中を切らさずにすぐに次の作業に移っていました。よい指示だと思います。ただ、したことと気持ちは色を変えて線を引くというように、区別するように指示をしたいところでした。
子どもたちに発表させます。子どもの言葉を授業者は、主人公が「暗い海の底を泳いだ」とまとめて板書します。次に指名した子どもは「○○が泳いだ」という一文を挙げました。授業者は「同じです」として次に移りました。前の子どもは複数の文をまとめて自分の言葉で発表しました。この時、授業者はそれが本文のどこに書いてあるかの確認を取らなかったので、次の子どもは先ほどの発表と、自分の発表が同じ個所を示していると思わなかったのです。きちんと根拠となる本文を確認しておくことが大切です。
授業者は、主人公の行動場面をもとに気持ちを読み取らせようとしますが、一部の子どもがつぶやくとそれを受けて、すぐに結論づけてしまいます。求めている言葉が出ると、それを受けて自分で説明をしてしまうのです。他の子どもたちが考える暇もありません。これが答だと思って考えるのを止めてしまいます。これでは、「先生の求める答探し」の授業になってしまうことに気づいてほしいと思います。
「ミサイルみたい」という比喩表現を授業者は「すごく速そう」と説明します。こういう表現を読み取る力をつけることが大切です。ここは子どもに言わせなければいけないところです。「一口で(飲み込んだ)」という表現から「大きい」ということも授業者が説明してしまいました。読み取る力をつけるには、どういう活動をさせればいいかを考えてほしいと思います。
次の課題は、まぐろとそれに食べられた主人公の兄弟になり切って、その気持ちを言葉にするというものでした。国語の授業なので、本文の表現から気持ちを読み取って、言葉にすることが大切です。子どもが、まぐろの気持ちを「おいしそう」と言葉にしました。「小さい魚だから、まずそうじゃないの?」といったゆさぶりをして、本文の「おなかをすかせている」という一文と結びつけて読み取らせたいところでした。「本文を合理的に解釈する」という国語の基本的な考え方を意識すると、授業がよりシャープになると思います。

3年生の授業は理科の実験の結果を検討する場面でした。
前時での実験について子どもたちに確認しますが、一部の子どもたちの反応だけで授業が進んでいきます。子どもの言葉で進んでいるようでも、これでは全員が参加できていません。他の子どもにも発言することを求めることが大切です。
「今から大切な説明をします」と言って次の活動の説明をしますが、子どもはその言葉に反応しません。その前に実験の記録を見て活動をしていたのですが、その活動をきちんと止めずに集中力が戻っていない状態で話し始めたからです。どのデータを使って考えるのかの説明ですが、子どもから見るといくつかのステップがあります。ステップごとに確認することなく説明が流れていきます。授業者は、子どもにわかっているか問いかけて確認しているのですが、それでは確認になりません。今回のように、子どもたちにはちょっとわかりにくい指示であれば、指名して具体的に言わせることが必要です。もし、言えなければ他の子どもに確認した上で、もう一度言わせるのです。
グループで作業に入ります。子どもたちの動きが遅いのは何をすればいいのかよく理解できていないからです。授業者は作業中に指示を出しますが、いったん止めてからもう一度指示をし直すことが大切です。
子どもたちは授業者が求めれば、そのように行動できます。授業者との関係は良好です。静かにする、活動を止める指示を出せばそれに従います。しかし、授業者が話し始めるとせっかくの集中が途切れてしまいます。次の活動に対する指示もなければいけません。先ほどのように「大切な説明をするから、よく聞いてね」という言葉も必要なのです。活動に区切りをつける指示、次の指示がペアで求められるのです。
こういったことを意識できれば、この子どもたちと授業者の関係であればすぐによい授業規律ができることと思います。

後半の学年については、明日の日記で。
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