コミュニケーションスキルの研修

企業の新人研修のようすです。

午前中は講師による模擬授業をもとにした、コミュニケーション研修です。模擬授業は1個のトイレットペーパーから、算数の課題をつくる所から始まります。トイレットペーパーを見て、何でもいいから問題をつくってと言われてもなかなか出てきません。今まで課題を与えられてそれを解くという授業ばかりを受けてきたのでしょう。計ってみればわかる、実験してみればわかる、そのようなものは出てきますが、なかなか算数的な課題につながるものは出てきません。参加者からでてきたものを板書して、そこから算数的な課題につながるもの以外をキャッチボールしながら消していきます。ていねいにやり取りをしながら、課題をつくっていきました。
最後は小学生がつくった「トイレットペーパーは無くなるまでに何回転するか」という課題にたどり着き、その解決に取り組みました。いろいろなアイデアが出てきますが、これといったものが出てきません。しかし、仲間の発言を聞いて触発され、だんだん考えが広がり、深まっていきます。仲間の考えを理解した途端、今度は一生懸命にみんなに説明しだす者もいます。最後は誰もが自分で課題の答を計算して求めることができました(計算間違いはありましたが)。もちろんこの課題を解くことがこの研修の目的ではありません。この授業を通じてコミュニケーションについてどのようなことを学ぶことができたかを問いました。
新人は、講師がでてきた言葉を言い換えないことに気づいていました。講師はその言葉を他者につないで発言させています。自分の考えを他の人に言ってもらうと、客観的に見直すことや違う視点が加わることで考えが広がったり深まったりすると、講師の行動の意味を理解しています。先生でもなかなか気づくことができないことに気づいてくれました。
この授業では何を言ってもいいという安心感があると言ってくれた者もいました。同じ講師の研修よりもその度合いが高いというのです。なかなか鋭いことを言います。講師はその理由を、研修は持っていきたいゴールがあるのでどうしても誘導しているからなのかもしれないと分析していました。授業は特にゴールを設定しておらず、どんな課題が出てきてもいいので、ひたすら受け止めることができたので、受容してもらえるという安心感があったのでしょう。なかなか優秀な新人たちです。
笑顔やうなずくといったコミュニケーションスキルについて少し解説して終了しました。

午後は、実際の対人コミュニケーションのロールプレイです。
最初に顧客のもとに出かける前にどんなことをするか考えてもらいました。情報収集に関することがいろいろ出てきますが、社内で先輩に聞くということが出てきませんでした。研修では自分たちで考えることを大切にしてきたので、その影響かもしれません。
続いてグループで顧客と営業、観察者に分かれ、時間を切って交代しながらロールプレイを行います。1回ごとに気づいたことをメモする時間を1分間とるのですが、黙ってメモしているグループはありません。昨年までの研修ではメモをするという指示に従って、黙々とメモをする姿を見ることが多かったのですが、どのグループも盛んに話し合っていました。今年の新人たちはとても人間関係がよいことがわかります。コミュニケーションが苦手と見える新人も、なかなか上手に演じていました。何を話すか、どう答えればいいのか互いにしっかりと学び合っています。どのグループもなかなかのレベルになっていたので、予定を変えて他流試合形式でロールプレイをしてもらいました。各チームから順番に一人ずつ、顧客と営業役を出して全体での前で行います。私はいつものように、演じている者よりも見ている方を注視していました。傍観者然としている者はいません。自分ならどう対応するだろうかと考えていることがよくわかります。感想を聞いても、自分に活かそうとする視点を感じます。互いに学び合おうとする姿勢が身についています。
最後は、新人の代表者が営業役となって、顧客役の講師を相手にロールプレイに挑戦します。誰がやるかを決めるのに普通は時間がかかります。しかし、目が合った人に声をかけると、すぐに立ち上がってやってくれます。顧客役の講師は、実に見事にシチュエーションをつくります。入れ替わり3人とロールプレイを行いましたが、それぞれがどんな顧客なのか会話の最初の一言で想像がつくようにしています。とはいえ、新人ですので彼らはそのことに気づきません。質問の意味を表層でとらえて、一方的に説明します。顧客の知りたいことからどんどん離れていってしまいます。相手の立場を想像して、相手が求めている情報を提供することの難しさを感じてくれたと思います。

頭の中では聞き上手になる、相手に寄り添おうと思っていても実際にはそれほど簡単でないことに気づいてくれたと思います。これからの実践的な研修で、よい経験を積んでほしいと思います。
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