報告会で授業評価のあり方を考える

先日、私立の中高等学校の授業評価アンケートの分析の報告会を行ってきました。昨年度まで別の会社が行ってきたものを今年から引き継ぐことになったものです。アンケートの項目自体は大きく変更していませんので、継続性はあるのですが、まずはデータからどのような傾向が見てとれるのかを考えてみました。

アンケートからわかることは、子どもたちは先生方を肯定的に評価していることです。先生方の授業への熱意や工夫については高い評価を示しています。一方、子どもたちの学習へのエネルギーは低いという傾向があります。学習への姿勢の積極性や自己への肯定的な評価が低いのです。
項目間の相関性を調べたところ、面白い傾向がいくつかありました。授業で学力がついたと回答している子どもでも、テストで納得がいく点数が取れているに対する回答がばらつきます。逆に納得がいく点数が取れていると回答している子どもは、ほとんどが授業で学力がついたと回答しています。また、板書以外にも重要と思われることをノートに書いていると何をどう勉強すればよいかわかっているとの相関関係は高い傾向にあります。学習時間とテストで納得のいく点数が取れることも相関関係は高い傾向にありました。あたりまえの結果かもしれませんが、学習のやり方をしっかり伝え、結果を出させることで子どもたちの積極性を引き出すことが大切になるということでしょう。
この他にも、自己有用感を持っていると思われる子どもたちはやる気がありますが、逆にやる気がある、やる気のある授業がなされていると回答しているからといって、必ずしも子どもたちが活躍しているわけでも、自己有用感を持っているわけでもないことがわかりました。少なくとも、子どもに自己有用感を持たせることがやる気につながることは言えそうです。やる気につながる要素は他にもあるのですが、自己有用感を持たせることは有効な方法と言えるのです。

このことを受けて、具体的にどのようなことをすれば授業が改善されるかについてお話ししました。一つは「課題を明確にすること」です。頑張れと言っても何をすればいいかわからなければ話になりません。具体的な学習法やノートのつくり方をきちんと教えることが大切です。宿題等の課題を与えるのであれば、結果の出ることをやらせる必要があります。頑張ったけれど結果が出なかったでは、すぐにやる気を失くす子どもが多いのです。努力が結果に結びつくためには、基礎がしっかりしていないといけません。そのために基礎固めを早い時期にすることも大切です。子どもたちは、達成感を持てれば自分で頑張るようになります。早くこの状態にすることを目指してほしいと思います。
自己有用感を持たせるために、子どもたちを「認める」「ほめる」ことが大切になりますが、これは意外と難しいのです。正解したらほめるでは、できた子どもしかほめられません。どの子もほめるためには、意識してほめるための場面をつくる必要があります。「わかった人?」と問いかければ、わかった人しか活躍できません。「困っている人?」と子どもたちの困った感を共有することから始めることも必要です。また、子どもが間違えた答を言っても、教師が正解を教えるのではなく、自分で修正する機会を与えることが大切です。
いつも全体で授業を進めると、活躍できる子どもは一度に一人しかいません。多くの子どもに活躍の機会を与えようと思えば、子ども同士で活動させる必要があります。ペアやグループを上手に活用することが大切です。

面白かったのは先生方の反応です。最初のアンケート結果の説明の場面では、「またいつもの話か」といった負のオーラが漂っていたのですが、具体的にどのようにすればよいかについての話になると、先生方が集中し始めるのがわかりました。おそらく、これまで課題を指摘されるばかりで、「じゃあ、どうすればいいの」という気持ちになっていたのだと思います。授業評価を実施する時に注意してほしいのは、改善の具体策がなければ先生方のやる気をかえって削ぐことになることです。具体策がすぐに見つからなくても、対策をみんなで考える場をつくるといったことが必要なのです。そういったことなしに、ただ「このスコアが悪いから改善しましょう」と言うだけでは意味がないのです。
先生方は改善の意欲がなかったのではありません。どこから手をつけていいのかわからなったのです。先生方の意欲の高まりを感じることができました。
新年度のスタートから意識した行動をするかどうかで、効果は大きく変わります。4月によいスタートを切っていただけることを期待しています。

全体での発表の後、管理職と教務主任とで打ち合わせをしました。学年や教科の課題について、もう少し詳しく説明をしました。先生からはチームとして動くことの難しさが課題として挙げられました。簡単に解決できることではありませんが、学年や教科としての課題を明確に意識していただくことから始める必要があると思います。来年度も引き続き授業評価と授業アドバイスをやらせていただけそうです。こういったことも意識しながら、あせらずに授業改善を進めていきたいと思います。

全体に対する私の報告に対して学校長から、「失礼な言い方ですが、お話が上手ですね」とほめていただけました。こういうおほめの言葉をいただくことはあまりないので、とてもうれしく思いました。それと同時に、今までの報告会があまり納得のいくものではなかったのだろうと想像しました。同じようにアンケートをとっても、その後の進め方で結果は大きく変わってきます。この学校がよい方向へ変わっていくようなPDCAのサイクルを回して行くお手伝いをしていきたいと思います。
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