家庭訪問雑感

小中学校では授業も始まり、1年の内で最も大切と言われる1か月の真っ只中だと思います。PTA総会と合わせて授業参観、学級懇談が行われている学校も多いことと思います。子どもの家庭環境を知るためにゴールデンウィークの前後に家庭訪問を行う学校もあるでしょう。しかし、最近は家庭訪問をする学校が減ってきているようです。保護者が日中働いていて、仕事の都合をつけなければ対応できない家庭が増えたため、結構負担になっていることも理由の一つです。わざわざ休みを取っても、教師と話ができる時間はとても限られています。家庭にとってたったこれだけのために、時間の都合をつけるのは負担が大きいという判断も十分納得できます。先生にとっても、忙しいこの時期にあえて家庭訪問をするよりも、別の機会に十分な時間を取って話す機会をつくるほうがよいという考えもあります。

私は時期をずらして夏休みに家庭訪問をした経験があります。相手が高校生だったので、子どもの家庭環境を知るという意味では、保護者の同席は必要ありません。絶対家にいるという日と時間をいくつか申告させて、その中から選んで訪問しました。子どもが日ごろ学習している場所を見せてもらうことが一番の目的です。学習している場所は家庭の中でも特に子どものテリトリーです。面白いことに、そこへ先生が来るということは、子どもにとってはお客を招くという意識になるようです。多くの子どもが日ごろとは違う、客を招く主人といった態度で迎えてくれたことを覚えています。子どもたちの別の面を見ることができました。
宿題等をちゃんとやれない心配がある子どもは、夏休み終了の1週間くらい前に訪問しました。1週間くらいあれば宿題は何とかなります。家庭訪問をきっかけに、学習に取り組んでもらうことを意識したのです。他の学級と比べて宿題の提出率が高く、夏休み明けの実力試験で下位の生徒が少なくなりました。相対的な問題ですが、夏休み前終了前に少しでも学習に取り組めば、何もしていなかった者との差は大きくつくことは想像できると思います。

先日、ある学校が今年からこの時期の家庭訪問を中止することを学校ホームページに掲載しました。家庭訪問を止めることの是非はともかく、その理由をきちんと知らせる姿勢に好感が持てます。教員の移動時間が多くかかり、授業も8時間分削ることになります。兄弟姉妹がいる方であれば、時期が重なりますのでその調整に時間がかかります。かわりに夏休みに入ってすぐに保護者との個別懇談会を設けるという連絡です。理由と代替案が示されています。また、早い時期に保護者と個別に話せないマイナスについては、「PTA総会」「学校公開日」などの機会を利用して担任に声をかけていただくようにお願いすることで対応しようとしています。
実はこの記事を掲載することになったのは、PTAの役員会で理由について質問があったからのようです。「行わないのは何かあったのかしら」と思われるのは当然です。しかし、疑問に思っても一般の保護者はなかなか学校に質問できません。例えPTA役員であってもこのような質問をするのは意外とハードルの高いものです。互いに意見を言い合えるよい関係であることが想像つきます。その質問を受けて、ホームページに記事を掲載する姿勢がよりよい関係づくりにつながっていきます。ほんのちょっとのことですが、とても重要なことだと思います。

家庭訪問を行うにしても止めるにしても、その意義や理由をきちんと説明して、そのことがよりよい学校と保護者との関係づくりにつながるようにしてほしいと思います。
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