力不足を感じた現職教育

昨日は中学校の現職教育に参加してきました。今回はグループでこの学校の子どもたちのよいところと、どうなってほしいかについて話し合ってもらいました。事前にアンケートを取っていただいたところ、よいところはほとんどの方が素直と回答されていました。子どもたちが素直であるからこそ、どんな姿を求めるかが問題です。グループでの話し合いの前に、「子どもたちは教師の望む姿にしかならない。先生方はどのような姿を求めるのか話し合ってください」とお願いしました。

最初はにこやかに話し合っていました。子どもたちが素直とはどういうことか、それぞれの考えを話し合います。しかし、しだいに話し合いは低調になっていきます。一部のグループでは活動がほとんど止まってしまいました。また、一部のグループでは、特定の方だけが発言している状態になっていきました。どうも子どもたちこうなってほしいという強い思いがないようです。別の言い方をすれば、現状にあまり問題を感じていないのです。中には私の言葉をとらえて、「子どもは教師が望む以上の姿になることもある」と例をあげて説明している方もいらっしゃいました。確かにそういうことはあります。しかし、それは意図して起こることではありません。それを期待するわけにはいかないのです。自ら学ぶ子どもになってほしいと思わなければ、自ら学ぶ子どもを育てることはできません。先生方に目指す子どもたちの姿を持ってほしいという思いだったのですが、上手く伝わりませんでした。

全体での発表は、子どもたちは話をよく聞く、指示に従う、積極的に手を挙げるといった子どもたちの姿が語られました。たまたまかもしれませんが、私が今までこの学校で見た子どもたちの姿と一致しません。先生方と私の見方が違うのでしょうか。子どもたちはおとなしく座っていますが、あまり集中しているとは感じません。手遊びも多いし、板書すれば写しだします。前かがみになっている姿を目にした記憶がありません。指示に従うというのは、先生の指示が多いことと裏表です。あるグループからは自分で考えることをしないという意見が出ましたが、考える必然性のある授業になっていないということです。教師がそのことを求めていないのです。積極的に手を挙げる場面もあまり見たことがありません。1問1答で簡単な問題の時に、テンションを上げている姿を見るだけです。先生方と子どもの姿を共有できません。
見たい子どもの姿もはっきりしません。素直で指示されたことはやるが、「生きる力がない」という言葉が出てきました。「生きる力」とは具体的何かをもう一度グループで話してもらおうとも思いましたが、この「生きる力」も先生方が共通に目指しているようには見えません。目指すものとして共有していなければ、具体的にそれが何かを話し合っても授業が変わっていくわけではありません。

私の方から少しお話をさせていただきました。
子どもが聞いていると言ってもいろいろなレベルがあること。子どもが大人しくしているので教師がしゃべりすぎていること。素直であれば、教師が求めることに応えようとしてくれるはずだが、求めなければそのままであること。このようなことをお話しました。この学校に訪問するようになって3年目ですが、同じような話しかできません。なかなか先生方に伝えたいことが届きません。
最後に、授業がよい方向へ変化する学校についてお話しました。先生方が授業で困っている、授業をよくしたい、子どもたちの姿を変えたい、そう願っている学校。学校が落ち着いているからこそ、授業の質を上げたいと校長が願い、方向性を示す学校。大体どちらかなのです。私は学校によって言うことが違ったりします。先生方が望むものが違えば、アドバイスも変わるからです。また、個人で私にアドバイスを求める方は進歩します。私のアドバイスがよいからではありません。誰かに聞こうとする姿勢を持った段階で実は進歩が保証されているのです。私でよければいつでも相談に乗ることを話して終わりました。
正直どれほど伝わったかはわかりません。数人の方はうなずいたりして反応してくださいますが、中には試験の採点をしている方もいました。力不足を感じます。

終了後、教務主任に正直に胸の内を話しました。先生方が授業を変えたい、子どもたちを変えたいと思っていません。また、校長は今年度新任の方ですが、2回の訪問とも一言あいさつしただけで、学校をどのようにしたいか、どのような課題を感じているのかを聞かせていただく機会はありませんでした。私を必要としていないようです。外部の者に自分の頭を超えて指導をされるのが嫌なのかもしれません。このような状況では、私にできることはほとんどありません。次回の訪問はキャンセルしたいと伝えました。
もし、一人でも授業を変えたいという方がいらっしゃればその方のために喜んでアドバイスをします。また、誰かの授業を全員で見て授業研究をするのであれば、お受けします。子どもたちの具体的な授業場面での姿を共有して話し合えば、伝わることがあるかもしれないからです。しかし、これまで何度もお願いしてきましたが、実現しなかったことです。あまり期待できません。この市では授業を公開することに抵抗が強いようです。

たくさんの学校に声をかけていただき、少しでもお役に立てばと思って時間を割いてきましたが、今回ほど自分の力不足を感じたことはありません。まだまだ、私自身を鍛えなければいけないと強く感じました。
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