授業参観での保護者の様子を考える

中学校での授業参観での保護者の様子がいくつかの学校のホームページで話題になっていました。廊下でおしゃべりをしてうるさいというのです。保護者に訴えるだけでなく、何らかの手立てが必要だとの意見も多くあります。先日訪問した学校でも、先生方の話題になっていました。どこの学校でも問題となっているようです。このことについて少し考えてみたいと思います。

小学校ではこのようなことはあまり話題になりません。子どもは自分の保護者に来てほしい、見てほしいと思っています。子どもの期待に応えるためにも保護者は教室に入って授業をしっかり見ようとします。また、子どもが活躍する場面が小学校は多いので、自分の子どもの活躍場面を見ようと集中して参観します。授業の内容も保護者に十分わかるものなので、余裕を持って参加することができます。
裏を返せば、中学校はこの条件を満たしていないということです。
思春期の子どもたちは保護者が来ると恥ずかしいから来ないでと言います。
一方通行の講義形式の授業では、保護者にとって興味のない、よくわからない教科の話を聞かされる時間がほとんどです。子どもたちも、一部の子どもが発言するだけで、あとは受け身で板書を写しているだけです。保護者が見たいと願う、子どもの活躍の場面はほとんどないのです。
教室に入らずに廊下でつい世間話をしてしまうのもむべなるかなという気がします。

では、どうすればいいのでしょうか。
子どもが来ないでと言うのを変えるのはなかなか難しいことです。教師が「君たちの授業での姿は素晴らしい。この素晴らしさを知ってもらおう」とできるだけ具体的に子どもたちのよい姿をほめ、その姿を見てもらいたいことを伝える。一方、保護者も「みんなの・・・している姿がすてきだったね。あなたも・・・を頑張っていたね」と、参観後できるだけ具体的にほめる。このとき、自分の子どもだけでなく、学級全体もほめるとよいでしょう。友だちと比較して悪い点を指摘するのではなく、両方をほめるようにします。この時期の子どもは友だちとの関係がとても大切です。共にほめられることで見られることに肯定的な気持ちになれるのです。こういうことを地道に続けていく以外によい方法はなかなか思いつきません。もちろん、子どもたちのよい姿が授業中に見られることが前提ですが・・・。

2つ目の問題はどうでしょうか。授業の内容がわからないという点については、簡単な授業紹介や、授業の見どころを印刷して配るという対応をしているところもあります。教師が工夫しているところ、授業の内容をわかりやすく解説するなどしているのですが、はたから見ているとどうも効果はあまり感じられません。保護者は授業を受けに来ているわけでも、授業そのものを見に来ているわけでもありません。学校評価の一環で授業評価をするのならともかく、日ごろの授業参観では子どもたちの姿を見に来ているのです。保護者に伝えるべきなのは、授業のどの場面で、どのような子どもたちの素敵な姿が見られるのかではないでしょうか。授業参観で問われるのは、毎日の授業で、子どもたちのどのような姿が見られること目指しているのかだと思います。
しかし、学校として授業で目指している子どもの姿が、保護者の受けてきた授業と異なっている場合などは、外から見ただけではなかなか理解することができません。なぜこのような姿を目指しているか理解されないこともあるでしょう。日ごろから学校が目指す子どもの姿をホームページなどで発信して理解してもらうことが大切です。授業参観の時に、目指している子どもの姿と、そのために学校としてどのような工夫をしているのかについてミニ講演をしてもいいかもしれません。学校で取り組んでいる授業のよさを伝える一番簡単な方法は、保護者に生徒役になってもらい模擬授業をすることかもしれません。
実際に保護者対象に授業をした学校もあります。総合的な学習が導入された時に、その目指すものがどういうものかミニ講演をした例もあります。学校と保護者の見たい子どもの姿を共有する方法はたくさんあるのではないでしょうか。

授業参観で大切なことは、子どもの姿を通じて保護者と学校が理解し合うことだと思います。保護者と学校の見たい子どもの姿が一致すれば、その姿を見ようと積極的に参加してくれるのではないでしょうか。私はそのように考えています。
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