子どもたちの集中力に感動

昨日は中学校で授業参観をおこなってきました。各学年の先生とそれぞれの学年の子どものようすを観察しました。

1年生は、前回訪問時と比べると集中力が戻ってきていました。子ども同士の人間関係もよくなってきたように感じます。合唱大会がよい方向に作用したようです。しかし、授業者によって見せる姿は異なっています。子どもたちの反応を待つ、子どもたちの言葉をつなぐようにすればしっかりと集中して参加する子どもたちですが、すぐに教師が説明をする、子どもたちへの確認をせずに一方的に話をすると、すぐに集中力が切れてしまいます。とはいえ、子どもたちは授業を乱すような行動はとりません。授業者は子どもたちの集中力が切れていることに気づかないようです。指示をしたときも、少し待てば全員きちんとできるのですが、それを待たずに進んでしまいます。このようなことが続けば、授業者と子どもたちの信頼関係が崩れていきます。教師によって子どもたちが見せる姿の差が広がっていくことが心配です。

2年生も似た傾向にあります。子どもの反応を待つ、反応を受け止めることをしている授業では子どもはしっかりと集中できています。しかし、教師が一方的に説明する授業では子どもの集中力が続きません。子どもたちが静かにしていることができるので、つい教師がしゃべりすぎているように感じます。そういう授業では、子どもが理解したかどうかの確認をしないまま先に進む傾向が見られます。子どもの発言、子どもとのやり取りが圧倒的に少ないのです。

両学年とも、一言でいえば「もったいない」でした。子どもたちは教師が求めればそれに応える力を十分に持っています。しかし、教師が求めなければ、そのよい姿を子どもは見せてはくれません。目指す子どもの姿が明確でなかったり、教師によってずれてしまったりしているのかもしれません。
同行した先生方は、この傾向に気づいておられました。この問題を個人の力量の問題ではなく、学年の問題としてどうとらえて対処していただけるのか、今後を見守りたいと思います。

3年生のようすはとても素晴らしいものでした。どの教室も子どもたちの集中力は半端ありません。わかりたいという意欲が廊下にいてもひしひしと感じます。受験が近づいていることもあるでしょうが、それにしても並大抵ではありません。しかもその集中は決してピリピリしたものではありません。柔らかい雰囲気で、表情も穏やかです。笑顔も3学年で一番たくさん見ることができました。
興味深い場面もたくさんありました。一つは教師が説明しているときに子どもが鉛筆を持って板書を写したりメモを取ったりしている場面です。これは授業の原則からいって好ましいことでありません。書くことに意識が行って、聞くことがおろそかになるからです。しかし、子どもたちは聞くこともきちんとできています。それは、書くリズムからわかります。一定リズムではなく、教師の話の合間を縫って素早く書いているのです。本当に集中していることがよくわかります。同行した先生方の授業でも、子どもたちが集中するので、通常よりも多くの内容を1時限でこなすことができるとのことでした。
また、教師がプリントを見ながら淡々と解説をしている場面がありました。子どもが理解できたか確認をしていくことが必要な場面ですが、それをしていません。○をつけたり、間違いを訂正したりするだけの作業になってしまうところです。ところが、子どもたちは隣同士で聞きあったりして、自分たちで確認し合っているのです。これをわかっていて、子どもを見ずに確認もしないで進めているのならその教師の力はすごいものです。そうであるかどうかは別にして、子どもたちは、私の想像を軽々と超えた姿を見せてくれました。高校生や大学生でもなかなか見ることのできない姿だと思います。互いに支え合えながら中学生活の最後を乗り切っていくことと思います。
とはいえ、このようなよい雰囲気に支えられて何とか頑張れている子どもも少なからずいるはずです。彼らは、ちょっとしたつまずきでバランスを崩し、ついていけなくなります。学校では友だちに支えられて頑張れても、家では不安につぶされそうなってしまう子どももいます。学級の雰囲気がよい状態だからこそ、そういう細かいところにも気をつけてほしいことを老婆心ながら伝えました。

授業参観後、教務主任、研修担当の先生とお話をさせていただきました。
3年生の素晴らしい姿はどのようにしてつくられたのか、そのことをきちんと分析して再現性のあるものしていく必要があることが話題となりました。今年の4月、5月は授業者や学級間の差があったのが、今はまったくと言っていいほど感じられません。この間のことをきちんと振り返ってみることが必要でしょう。今の時点で言えそうなことに、3年間かけて育ててきたことと、目指す姿を意識して子どもたちをしっかりと見る、受け止める先生が3年生の担当に多いことがあります。私の感覚ですが、中学校では、子どもを育てる力のある先生が学年で3割を超すと子どもたちがとてもよい状態になります。5割を超すと、どの授業でも子どもの姿は乱れません。育てた時間とこの割合の差が1、2年生と3年生の違いなのかもしれません。

1年の最後に素晴らしい子どもの姿を見ることができて、本当に楽しい時間を過ごすことができました。この子どもたちを育てた先生方に称賛の拍手を送りたいと思います。このような学校にかかわらせていただいていることにあらためて感謝です。
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