授業参観と打ち合わせ

昨日は、中学校で授業参観と研修の進め方についての打ち合わせをおこなってきました。学び合いを中心とした学校づくりを進めていて、2年間の研究指定も受けている学校です。教え込みの一斉授業からの脱却を目指しているとのことでした。

この日は、午前中3時間を使って授業での全学年の子どもたちのようすを見せていただきました。
4人グループでの活動や、子ども同士の教え合いを意識して取り入れていますが、気になったのがそういう子ども同士のかかわり合いと、教師と子どものかかわり合いのギャップでした。教師が学級全体に対して指導している場面は、教師が一方的に話す時間が多い、従来型の授業との差が見えにくいものでした。子どもの言葉がつながらない1問1答のやり取りが目立ちます。子どもから期待する言葉が出てくると、すかさず教師がそれを拾い説明を始めてしまう場面を多く見ました。子どもたちの発言に対して、教師の発言が圧倒的に多いのです。
子どもが教師や友だちの話を聞く姿勢もあまりよくありません。教師が子どもの言葉をしっかり受け止めて、ポジティブに評価する場面にもほとんど出会いませんでした。教師の聞く姿勢が子どもの聞く姿勢にも表れているように感じました。
指示も多く、子どもが受け身になる時間が多いことも気になります。生活指導的な問題が多かったのでしょうか、先生方が子どもたちを緩めることを怖がっているようにも見えます。

グループ活動での課題も気になります。調べて書き出す、教科書の問題を解くといったものが多く、考える過程を重視するような学び合いを活かすものになってはいません。課題の質の影響もあるのですが、グループ活動での子どもたちのテンションはすぐに上がっていきます。聞き合うというより、わかった子どもが中心となって教えているように見えます。
グループ活動の後の発表場面でも、教師が自分にとって都合のよい部分だけを取り上げるので、子どもたちは自分たちが話し合ったことに対して価値を見出せていないように感じます。教師の説明を聞いてワークシートの穴が埋まればそれで困らないのです。グループ活動は受け身の時間の代償としての、息抜きの時間になっているのかもしれません。
また、先生方は試験に出るような知識を押さえておかなければいけないというプレッシャーを感じているようにも見えます。グループ活動で時間を使う分効率的に教えなければと、子どもとやり取りする時間も取らずに何かに急き立てられるようにどんどん進める場面も目にしました。

子どもたちは決して悪い状態だとは思いません。子どもたちに笑顔で接する先生、子どもをポジティブに評価する先生の授業ではとてもよい表情を見せてくれます。教師の姿勢をよく反映する、ある意味とても素直な子どもたちです。
先生方は、学び合いで目指すものと従来の授業観のギャップを埋めきれないまま、取り敢えず形だけを追っているように思いました。
この市では、学び合いを教育委員会のトップダウンでおこなってきました。先生方はその目指すものを自分のものとして消化する時間のないまま、指示されてきたことをやってきたのかもしれません。トップも変わり、自分たちの目指す子どもの姿は何かをもう一度振り返る時期が来ているのだと思います。そういう意味では、この学校の今後の変化はこの市の次のステップを示してくれるのかもしれません。

午後は、校長、教頭、主幹、教務主任、校務主任それに現職教育の担当者を交え、この日私が感じたことを率直に伝えました。私の厳しい言葉にも真摯に耳を傾けていただけ、先生方の授業改善に対する強い意志を感じました。形を追っているという私の言葉に対して、何を目指して取り組もうとしたのか、その思いをしっかりと語ってくださいました。このような思いを聞くことができれば、私もお役に立てることが出てきます。この学校にかかわる意欲がわいてきました。

・自分たちの目指す子どもの姿を具体的にしてほしい。
・そのためには、互いに授業を見合い、具体的な子どもの姿を共有して話し合う機会をつくってほしい。
・授業において、子ども同士の関係をつくる以前に、まず教師と子どもの関係をしっかりつくることが必要である。
・そのためにも、教師が子どもに外化を求め、笑顔で受け止め、ポジティブに評価してほしい。
・子どもも教師も聞く力をつけてほしい。
・そのためには、まず教師が子どもの言葉をしっかり聞き、受け止めることが必要である。これは、人間関係をつくることにもつながる。
・従来型の知識伝授に縛られないこと、知識を押さえなければというプレッシャーから解放されることが必要である。教えなければできるようにならないという思い込みを捨て、肩の力を少し抜いて、子どもたちの力を信じてほしい。
・そのためには、何を課題とすればこの時間の目標が達成できるかをしっかり教材研究することが必要である。考える過程で必要な知識を身につけるような課題を目指してほしい。
・グループ活動での教師の動き方、子どもの発言のつなぎ方といった、基本的な授業技術を身につけてほしい。
・そのためにも、具体的な授業場面をもとにどうすればよいのか考える機会をつくってほしい。

このようなことを話させていただきました。

年明けに2回訪問させていただく予定です。先生方とどのようにかかわっていけばよいのか、まだまだ自分の中で明確になっていません。しかし、前向きな管理職やリーダーの方と協力することで、きっとよい方向に進んでいくと信じています。私にとっても大きな学びにつながる出会いだと思います。このような機会を得たことを感謝します。
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31