授業技術は目指すところを意識して使う

授業技術を教えてはいけないと言われることがあります。形だけになってしまっては意味がないからです。私は、授業技術は必ずその活用場面や目指すところを明確にして伝えるようにしていますが、残念ながら技術だけがひとり歩きしてしまうこともあります。授業技術は何のために使うのか、その理由を意識することが大切です。

たとえば、「『間違い』という言葉を使わない、『なるほど』と受け止める」というのも、授業技術の一つです。ところが、「なるほど。他には?」とすぐ次の意見を求める。「はい、正解」「そうだね。・・・」と自分の求める答えが出れば正解と言って説明を始めるのであれば、「なるほど」と受け止めても「間違い」と言っているのと同じです。「間違い」という言葉を使わないのは、子どもを否定的な気持ちにさせない、子どもたちに自分で判断させたいからです。その目指すところを意識していないとおかしなことになってしまいます。

子どもをつなぐ、友だちの考えを聞くことを大切にするのに、「今の意見、なるほどと思った人?」と返すことがあります。「正解」ではなく「なるほど」というのは、明確でなくてもなんとなく納得した、よさそうだという状態でも参加できるようにしたい。子どもの意見をつなげ、自分たちで考えを深め明確にする過程を大切にしたい。そういうねらいがあるからです。ということは、手を挙げた子どもにもう一度説明させる、手の挙がらなかった子どもにどこがわからない、何に困っているかを聞くといった活動がそれに続く必要があります。多くの手が挙がれば「よさそうだね」と言って先に進んでは意味がありません。(同じ考えを大切にする子どもの発言つなぐことを考える参照)

静かにさせるのに、「口を閉じて、3、2、1」とするのはカウントダウンすることで、軽くプレッシャーをかけ素早く行動させるためです。カウントダウンが終わっても静かにならないのに先に進んでは、カウントダウンのプレッシャーがかからなくなります。逆に「口を閉じて、1、2、3、・・・」とカウントアップするのは、いくつでできたかを評価し、進歩をほめるためです。静かになったからといってすぐに進めては意味がありません。よく似た技術でも目指すところは違います。ポイントも異なります。意識して使うことが大切になります。(プレッシャーを考える参照)

授業技術が先にあるのではありません。どのような子どもたちの姿が見たいかがあって、利用する授業技術が決まってくるのです。見たい姿が明確になっていなければ授業技術は形だけで終わってしまいます。
この日記でもたくさんの授業技術を紹介しています。その技術が何のためにあるのか、どう使えば目指す子どもの姿を見ることができるのかを意識してほしいと思います。
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