和田裕枝先生から多くを学び、刺激を受ける(長文)

本年度最後の教師力アップセミナーは豊田市立竹村小学校長の和田裕枝先生の模擬授業でした。

和田先生と知り合って10年以上なります。たくさんの授業を見てきましたが、私が最も影響受けた先生のおひとりです。当時、和田先生の授業を先生方に見ていただく時、「誰でもやっていることでしょう?」と特に意識することなく自然におこなわれていることが多く、そのため本人も敢えてそのことに触れないので、第三者の解説がなければ素晴らしい授業技術が見過ごされることが多かったのを覚えています。

今回は、学級の1年間の基礎をつくる「4月の2週間」を教師がどのように子どもと接すればいいかをテーマに、解説も自身でおこないながら模擬授業していただきました。ふだん和田先生が自校でおこなっている研修の形ということで、竹村小学校の中堅の志賀先生に授業のポイントをリアルタイムで正面に準備したホワイトボードにメモしていただきました。メモをする理由は、先生方のメモが意外とポイントを外していることが多いからだということです。参加者に「自分のメモとホワイトボードのメモを比べて、自分と違うことが書いてあったら、ポイントを見誤っているかもしれません」と軽いプレッシャーをかけてからのスタートでした。

朝の会、音楽、国語、算数と休みなしの模擬授業でした。私が刺激を受けたのは授業のうまさもそうですが、以前と比べて一つひとつの授業技術を意識して意図が明確に伝わるように使っていることです。無意識で自然であることも素晴らしいことですが、意識することでより的確に使えるようになります。授業の輪郭がよりはっきりしたと言ってもよいかもしれません。授業技術を伝えることを意識された結果だと思います。立場が変わっていく中、伝える技術もどんどん磨いていかれたのです。

私も志賀先生のメモを意識しながらメモをしてみました。志賀先生のメモは授業技術のポイントを的確に押さえています。比較しながらメモをとるだけでも大いに勉強になると思います。
少し、志賀先生のメモを紹介します。(矢印等の表現は同じではありません。実際は色を変えたりの工夫がありもっと見やすいものです)
模擬授業を見ていない方にはわかりにくいかもしれません。お許しください。しばらくすると詳細な記録が教師力アップセミナーのホームページに公開されると思いますのでぜひそれをご覧になってください。

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学びの種をまく2週間→学習規律を身につけさせる

子どもの発言を聞く時
周辺視・・・範囲の広さ
意見を聞きながら他の子を
よく見る よく聞く(どういう反応、うなずき) → 歩く
ほめる
やる気

<朝の会>(子どもと一緒に立って)
あいさつ
気をつけの仕方を(上手と)ほめる
健康観察
・いい姿勢でいますね
・途中で痛くなったら言うんだよ
姿勢のチェック・・・まわりながら
教室1周

<音楽>
えらいね←(1人ほめると)まねをする ほめられたい
まねをすることが大切
リコーダー練習・・・1人1人
コメント
指の持ち方 上手に
息のはき方 聞いているね
うでのおき方 姿勢が
音がいいね まっていてあげる
うまいうまい もう少しで
←自分はどういってもらえるか
 待つ 1人1人でも学び

一斉
男の子 ちょっとばらばら
女の子

楽しみながら
朝ごはん食べた人
おしかった人
おかあさん 美人な人
お父さん かっこいい人
先生が美人だと思う人
今日の給食
うれしい時と悲しい時
 10回以上
 吹き方の違い

何回もふく
子どもはきたえる
・・・
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これでも、ほんの一部です。授業技術のポイントが伝わってきます。
では、参考までに私のメモと少し比較してみます。どちらがよいということではありません。

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学びのタネ⇔ほめるタネ⇔やる気のタネ
→大切なこと(よい行為)はくりかえす⇔たくさん たくさん

(朝の会から)教室は1周する

いいですね うまい →まねをする

何をほめる→最初+まねする

具体的に
受けの人(注 指名されていない、注目されていない子ども)をほめる

他者が集中する 学ぶ

子どもの意欲をうまく上げる

反応をつくる⇔子どもの外化→常に評価
         ↓
         表現←具体的 子どもの例

声を出さずに評価する(注 うなずく、笑顔・・・)

何を評価するか明確⇔意図的に広げる場面をつくる

教師の目指す姿、価値を学級全体に広げる
⇔ほめるという武器を使ってその気にさせる 定着させる
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ほぼ、同じ部分に対応するところです。メモをそのまま(注は除く)なので、言葉が足りないところがたくさんありますが、志賀先生との比較のためにあえて補足はしません。

基本的な授業技術を学ぶ、理解するという視点では、志賀先生のメモが優れていることがよくわかると思います。
では、私のメモはどうなのでしょうか。これはできるだけ一般化して、再現性を求めるためのメモなのです。

教師の目指す姿、価値を学級全体に広げる
⇔ほめるという武器を使ってその気にさせる 定着させる

これが、和田先生の模擬授業の前半部分のポイントです。このポイント意識すれば、和田先生と違ったアプローチでも学級規律は作れるのです。逆にこの視点で授業を見ることで、よいところ、課題が自然に見つかります。何をするという視点も大切ですが、どうチェックする、どう課題を解決するという視点も大切なのです。こういうメタなものを見つけるためのプロセスとしてメモをしています。

一度このような視点を身につけると、授業を見ることからより多くのものを学ぶことができます。
たとえば(視点として私の中に既に明確なので)今回はメモしていませんが、「芸術は自分の感情、表現したいことをその芸術(技術、学習用語)を使って表現すること、その逆に芸術から何を感じるかを自分の言葉で表現すること、この2つを行き来することが大切」という視点で志賀先生のメモにある「うれしい時と悲しい時 吹き方の違い」の場面を見れば、その具体的な方法として、メモしなくても「いろいろな感情を指示して表現を練習させる」という授業技術が自然に整理されて自分のものとなっていくのです。

参考までに後半部分のポイントとなるメモを少し書いておきます。

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底辺はあっている→他者につなぐ
否定しない ↓ 部分肯定
  自信を持ってやらせる

できない子にも活動量を保証する→言葉より行動

子どもが他の子どもにほめられる 認められる
⇔人間関係をつくる

何が評価されるかメタを示す
→数学的価値
  ↑
ないけど→作る

自分のいったこと⇔その結果(注 友だちが理解する 評価する 足す・・・)を見る

かかわりあう つながる
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今回の模擬授業はこのようなメモが10枚になりました。具体的なことをほとんど書かずにです。いかに和田先生の模擬授業と解説が内容のあるものだったかよくわかります。
若手からベテランまで学ぶことの多い模擬授業でした。

あまりに見事な模擬授業ですが、今回のテーマの候補であった「動く教師」の姿に、参加された先生方はこんなに動き回って大変だと思われたのではないかと思います。しかし、これはあくまでも「4月の2週間」の話です。子どもが育てば子どもたち自身の力でどんどん授業は進んでいきます。どれだけ大変でも、ここで手を抜いてはいけないのです。

和田先生の授業は「聞く、つなぐ、戻す」という基礎基本を徹底した授業だといってもいいと思います。それを極めるだけであのような素晴らしい授業ができるのです。
「学び合う学び」ということでグループ活動を積極的に取り入れた市の前教育長からこのことについて話をうかがえました。

「聞く、つなぐ、戻す」は学び合いでよく言われる言葉なので、学び合いの技術、方法と思っている人が多い。でも、これは昔からずっと言われ続けていることだ。グループを使うということは、それができない先生でも子ども同士で自然にそれができるからよいのだ。

聞き様によってはずいぶん先生方に対して厳しいことを言っているようですが、私もその通りだと思います。この市のようにグループ活動を重視している学校でもそうでない学校でも、まず基本となる「聞く、つなぐ、戻す」ができてこそ、授業が改善されると思います。形だけのグループ活動になっている学校の先生方にこそ見ていただきたい模擬授業だったと思います。

このような研修を自校で日常的に受けることのできる竹村小学校の先生方を本当にうらやましく思います。
今回の志賀先生の役割は研修ごとに中堅が毎回交替でされるそうです。中堅にとってもとてもよい学びにつながります。よく考えられた方法です。

和田先生の模擬授業からたくさんの授業技術を学ばせていただいただけでなく、研修の持ち方についても大いに刺激を受けることができました。
教師力アップセミナーは10年間小牧中学校を会場としてお借りしましたが、来年度からは大口町立大口中学校に会場を移します。小牧中学校には本当にお世話になりました。ありとうございました。また、小牧中学校での最後のセミナーを飾るにふさわしい素晴らしいセミナーになったことを和田先生と志賀先生に感謝します。
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