研修を意味のあるものにするためのヒント

今年度もたくさんの学校を訪問し、授業アドバイス、講演などをさせていただきました。私の訪問をうまくきっかけにしていただいている学校に共通のことが何点かあります。そのことについて少し話をさせていただきます。

・個別のアドバイスを、研修の担当者も同席して聞く
これは、なかなか微妙な問題もあります。個人の授業をプライベートな物と考えると同席しづらいところもあります。しかし、同席して、時には私のアドバイスに、指導する立場、指導される立場の両面からフォローをしてくださる方もあります。また、逆にじゃまにならないように目につかないところで、しっかりメモだけとってくださる方もあります。
いずれにしても、一人ひとりへのアドバイスを把握して、後からしっかりフォローしてくださるのだろうと想像がつきます。また、自分がアドバイスする時の参考にもしているといっていただけることもあります。
同席できるということはその学校の人間関係がよいということの表れでもあります。逆に同席して、授業者の立場で一緒に聞いて考える姿勢を見せることで人間関係をつくっていくという考え方もあります。そういう方は、私の指摘に対して「私もそういうことがあります」「私も勉強になる」といった、授業者の側に立った言葉を合いの手で入れられます。そして、最後に「ありがとう」という気持ちを必ず授業者に伝えているように思います。

・授業を見てフォローをする
個別の授業アドバイスもそうですが、全体での講演をした後でも、先生方の授業を積極的見てくださる方がいます。これを機に授業が変化していたり、アドバイスや講演の内容を実行している先生方にたいして、そのことをほめてやる気を引き出しているのです。まず変化した、実行したことを評価することはとても大切です。結果が出るまでには時間がかかります。変化することは不安なことです。そこで、変化したことをほめれば、頑張って続けることができるのです。
もちろん、子どもの姿が具体的によい方向に変わるなどの成果が出ていれば、そのことを指摘することで大きな達成感を与えることができます。たとえ、自分で手ごたえを感じていても第三者にほめられるととてもうれしいものなのです。

・情報を整理、発信して共有化する
講演や個別のアドバイスの内容を、少し時間をおいて整理して配っている方がいます。一度は聞いていることなのだから、あらためて伝えることもないと考える方もいるでしょうが、違う視点でまとめたものを見ることは内容を理解したり自分のものにするのには大きな効果があります。単に議事録のような整理ではなく、自分の視点で、時には自分の考えも付け足し、自分の言葉で再構成される方が多いのもうなずけます。自分の言葉で書かれていることなので、先生方からその内容に関して質問されても、明確に応えることができます。こうした形で発信することで、学校の中に借り物ではない基準ができてくるのです。
また、個別のアドバイスでも、他の先生方にも参考になると思うことは全体に発信している方がいます。このとき、あえてその授業者の名前を書かれる方もいます。○○先生から「学んだ」という言葉を使って意図的に評価し他の先生とつないだり、「学校全体の課題」と言うことで授業者が個人で抱え込まないようにしているのです。

・次につながる研修内容にする
授業研究であれば、その日に出た課題を次の授業研究の授業者に意識して実施してもらう。模擬授業をして、それを受けた授業を次の授業研究とする。このように、研修と研修に連続性を持たせる学校が最近は多くなっています。一過性の研修では、単発的に実施して、毎回が何の関係も持たないようなものでは、積み上がっていきません。1回の研修でそんなに大きな効果は期待出ません。地道に課題を克服していく。やったことの効果を実感していく。こういう積み重ねが大切です。
個別アドバイスも1人1回やって終わりではなく、年に何回か、または翌年にもう1度同じ人に対してアドバイスする機会をつくってくださる学校もあります。単発ではないので、進歩をほめたり、ずれを修正することで次により多くの進歩が期待できます。授業のベースがしっかりできてくれば、次の課題を明確にして提示できます。加速度的に進化するのです。

・研修を教員の人間関係づくりに活かす
若手同士、若手とベテランなどのチームで授業づくりをしている学校があります。授業について互いに相談したり、アドバイスをもらえる関係をつくることで、教員の人間関係を作っているのです。こういう学校では、私のアドバイスも先生同士をつなぐ要素を意図的に増やしています。たまにしか来ないアドバイザーより身近な同僚がいつでもアドバイスしてくれることの方が先生方の力量アップによりつながります。
また、人間関係ができてくれば、互いの授業へのアドバイスをグループで一緒に聞くこともできるようになります。互いの授業から学び合う関係ができれば、これはとても大きな力になります。

以前と比べて、現職教育、研修といったことが重視されているように感じます。それを活かすためにさまざまな工夫がされています。ここで述べたことはそのほんの一部ですが、研修をより意味のあるものにするヒントになればと思います。
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