人間関係のよい学級での授業

昨日は中学校で2年目の先生の授業アドバイスをおこないました。

2年生の英語の比較級、最上級の場面でした。授業者が学級担任をしている学級であったからかもしれませんが、授業者と子ども、子ども同士の人間関係がとてもよいことが印象的でした。授業中最後まで子どもたちは集中を切らしませんでした。全員真剣なまなざしで先生を見ています。
机が男女別々に1列ずつだったのをくっつけてペア学習ができるようにしましたが、そのとき、真剣だった子どもたちの表情がとてもにこやかなものになりました。素早く机をくっつけます。子どもたちの人間関係、男女の関係がとてもよい証拠です。まわりと相談する場面では、笑顔ですぐに子どもたちの顔が近づきます。後で聞いたところ、学年の初めは関係があまりよくなかったのを、1年かけてこの状態にしたそうです。大したものです。

昨年にしたアドバイス、1問3答を忠実に守ってくれていました。たとえ正解が出ても正解と言わずに、3人を指名する。子どもたちは同じことでもそれぞれが自分の言葉で答えてくれました。前の子どもの発言につけ足してくれる子もいます。みんな集中していました。発言に対して、「同じ答えの人手を挙げて」と子どもをつなぐこともできていました。
次の課題は、手が挙がらない子どもにどう発言させるかです。しっかり聞いているのですが、自分からは発言しようとしない子どもが多いのです。正解を言わなければいけない、間違えたくないという気持ちが強いこと。挙手しなければ指名されないので、指名されて間違えるリスクを冒さずしっかり聞いておこうという姿勢です。
よくわかるのが復習の場面です。ノートを見て確認しているのに手が挙がらない。指名された生徒が答えた後、同じ答えの人と聞かれると今度は挙手する。友だちの発言を聞いて思い出したのではなさそうです。その場合は聞いたときの反応が違います。「あっそうか」というように表情が動きます。この学級ではほとんど表情に変化がありませんでした。最初から彼らもわかっていたのだと思います。であれば、1人目は挙手した子を、2人目以降は挙手していない子を指名するという方法が有効です。友だちの答えを聞いて安心すれば、答えやすくなります。こうすることで発言することへの抵抗を減らしていくことができるのです。
まわりと確認させることも有効です。人間関係がよければ、挙手していない子でもしっかりと友だちに確認します。確認し合えれば自信が持てます。その様子を見て、かかわれている子を指名すればいいのです。このとき「どう」とあいまい聞くことで、正解へのプレッシャーを減らす方法もあります。発言してくれなければ、「どんなことを話した」と聞き直すのも手です。

授業者は子どもたち全員にしっかりと声を出させることを大切にしていました。そのために、黒板に文を示してから練習をする場面が多くありました。確かに板書を見ることで発声しやすくなります。しかし、子どもたちは板書を頼っているので負荷がかかっていません。定着させるためにはある程度の負荷も必要です。このことを感じたのが次の場面でした。
大切な文を覚えさせるのに、何度も読んでから、板書を見ずに声に出しながらノートに書くということをさせていました。わからなければ黒板を見ていい。どのくらい顔があがるかで定着度もわかるとてもよいやり方です。ところが、スペルミスではなく、the とか of とか、単語が落ちてしまう子がいるのです。これは何度も発声しているのに文が頭に入っていないということです。板書に頼らない発声練習を工夫する必要があると思います。

また、子どもたちが集中して聞いてくれるので、教師の日本語での説明が増えているようにも感じました。教師がわからせようとするのではなく、子どもたちが自分で気づく、わかるような活動を工夫するとよいことを今回の教材をもとに具体的にアドバイスしました。

とはいえ、2年目の教師に対するアドバイスとしてはかなり高度なものです。基礎となる人間関係をしっかり作れているからこそ、このようなアドバイスができるのです。この1年でとても進歩しているということです。素直で前向きな授業者ですので、また1年後には大きく成長した姿を見せてくれることと思います。私のちょっとしたアドバイスを自分のものにしてうまく活用してくれるのを見ると、とてもうれしいものです。私も授業者からたくさんの元気をもらいました。ありがとうございました。
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