前へ向かう気持ち

昨日は中学校の数学の授業研究に参加しました。

先週末におこなった先行授業へのアドバイス(授業を大切にしているというメッセージ参照)でどのように変わったか楽しみにしていました。
しかし、どうやらたくさんのアドバイスをしすぎたようです。ポイントを伝えたつもりでしたが、消化しきれていなかったようです。大きく変わることのない授業でした。あらためてアドバイスの難しさを知らされました。先行授業を見た先輩方もいろいろアドバイスされたのですが、同じ感想を持たれたようです。

授業検討会での授業者の反省は、子どもから言葉を引き出そうとしたが、うまくできなくて自分で説明してしまったというものでした。子どもの言葉を引き出そうと意識していたことはうれしく思いました。検討会で先生方からでた意見は、子どもたちが興味を持った教材であることを評価し、その上で子どもたちの数学的な気づきや思考がどうであったかという点を指摘するものでした。授業者の工夫を認めた上での指摘で、受け入れやすいものでした。先生同士の関係がよいことがわかります。
とても素晴らしいと思ったのが、感想という言葉で語られたベテランの言葉でした。指導案の添削をはじめとし、先行授業にも参加し、たくさんのアドバイスをされた先生です。アドバイスを活かすことができなかった授業者に厳しい言葉がかけられるのかと思いました。ところが、若いころ授業研究で厳しく指導され、その悔しさをばねにして成長した自分の体験をもとに、この授業をきっかけにして目標を定めて前へ進んでほしいという励ましでした。授業後、アドバイスが伝わらなかったのは、自分たちが反省すべきことだと言っておられたことが思い出されます。次にすべきアドバイスは何かを考えての発言だったのでしょう。若手を育てることを自分の仕事としてとらえられていることがよくわかります。彼の発言を受けて、もう一人のベテランも次へのステップへのアドバイスと励ましの言葉をかけました。阿吽の呼吸だと思います。こういうベテランがいることがこの学校の強みだとよくわかります。

教科指導員の方の助言も素晴らしいものでした。この授業に関して指摘したいことは山ほどあるはずです。しかし、そんなことより、この授業、この教材をきっかけに授業のポイントはどこにあるか、また、どのような進め方が大切であるかを自分の言葉で語られました。数学におけるグループ活動を中学校で実践されているようです。自身の体験に裏付けされた言葉は受け入れやすいものでした。数学を通じて、どの教科にもつながることを話していただけました。

検討会後、授業者が反省した、子どもの言葉引き出せなかった場面に絞って少しアドバイスをしました。
子どもが話し合っていたのになぜ答えようとしてくれなかったのかという私の問いかけに、正しいことを言わないといけないと思ったからと答えてくれました。自分でもわかっているのです。しかし、わかってはいても、すぐに変わるものではありません。子どもが何も言っても許される、正解でなくても認められる。日ごろからそういう授業にしなければなりません。このことを意識することが第1歩です。
今回の場面で有効なスキルとして、「どんなことを話したか聞かせてくれる」という問いかけを教えました。こんな些細なスキルでも、子どもが発言してくれるようになります。あとは、その発言をどうポジティブに評価するかです。まだまだ、時間がかかるとは思いますが、少しずつ前に進んでくれることを期待します。

最後に彼が「また、授業を見てください」と笑顔で前向きに言ってくれました。私自身この言葉に救われました。彼に対してうまくアドバイスをできなかったことにちょっと沈んでいたのですが、チャンスをもらった気持になりました。うまくいくときばかりではありません。失敗にこだわるのではなく、前へ向かう気持ちが大切です。このことを実感した1日でした。
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