授業を大切にしているというメッセージ

先週末は中学校で3つの授業アドバイスをおこないました。

そのうちの1つは本日おこなわれる初任者の授業研究の先行授業です。以前からアドバイスをしている数学の確率の授業です。
指導案をみると流れが明確です。前時の復習、課題の把握、試行、探求・・・。流れはとても自然でした。ここまでにするために、教科の先輩や主任の方の指導がたくさんあったことと思います。まわりが支えることができる学校であることがよくわかります。先行授業にもかかわらず、校長をはじめ先輩が何人も見に来てくれました。
興味を持ちやすい課題で、実際に道具を使って試行をするので、子どもたちは興味関心を持ってくれます。ポイントはいかに子どもたちに数学的な思考をさせるかです。残念ながら、各場面で何が数学的に大切なのかを授業者はしっかりと意識できていませんでした。結局、解き方を教師が教えるだけで、なぜそうなるかを子どもたちが考える場面はありませんでした。
この授業での数学的な本質である言葉、復習の場面と本時の課題でつなぐべき言葉である「同様に確からしい」をどう子どもに伝え、意識させるかがポイントであることを具体的に伝えました。この言葉をもとに、子どもたちの考えを深めるためには、子どもの言葉を問い返す、つなぐという、1問1答でないやりとりが必要です。これは一朝一夕でできるものではありません。本番の授業でうまくできると私も期待している訳ではありません。今回の授業がそのことを意識するきっかけになってくれればいいのです。たどたどしくてもいいので、子どもに問い返すこと、つなぐことにチャレンジしてくれることを願っています。

美術の講師の授業は、授業者の美術に対する思いが伝わる授業でした。子どもたちに互いのよいところを学び合わせようとする場面と、ゴッホの2枚の自画像から技術と表現、個性について考える場面を見ました。
授業者にこの授業を振り返ってもらったところ、非常によいことを言ってくれました。
ゴッホの写実的な自画像と、誰もが知っている個性的な自画像の感想を言わせた後、どちらが若い時の作品かという発問の場面でのことです。

若いころの自画像を「うまく描こうとしている」「写実的」といいった言葉を使って解説したが、子どもたちから出てきた言葉ではなかった。子どもたちから出てきた言葉で説明をするべきだった。うまい言葉が出てこなければ、もっと引きだすようにするべきだった。

子どもの言葉を活かそうと意識していることがよくわかります。この姿勢をとてもうれしく思いました。うまくできなかったかもしれませんが、このことを意識できていれば必ずできるようになります。きっとよい教師に育っていくことでしょう。

最後は英語の講師の授業でした。前回と比べて、コーラスリーディングで子どもたち全員の口が開いていたことに気づきました。声も確かに大きくなっています。子どもたちの声が出るまで繰り返す。大きな声で発音している子をほめる。アドバイスを素直に受け入れてくれたようです。また、子どもたちへの指示も、きちんと通るまで待って、全員ができてから次に進むようにしています。これも立派な進歩です。
わずかな進歩と思うかもしれませんが、この1歩が大切なのです。この進歩をとてもうれしく思っていることを伝えました。授業についていろいろと悩んでいましたが、若い教師であれば当然のことです。その中で確かな1歩踏み出せたことが、大きな進歩につながるのです。次はどのような1歩踏み出してくれるのか期待しています。

初任者を先輩が育てようとしている。たとえ講師でも、私のようなものをつけて育てようとする。この姿勢から、授業を大切にしているという強いメッセージを感じます。教師集団がこのメッセージをしっかりと受けとめてくれることが、この学校のさらなる進歩につながっていくと思います。この学校の変化を見ることが私の学びにもつながっています。この学校の今後がとても楽しみです。
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