若手の成長を感じる

昨日は、中学校の社会科の授業アドバイスをおこないました。昨年も1度アドバイスしている先生です。地理の気候の最初の時間でした。

担任をしている学級ではないのですが、子どもとの人間関係が実によいことに気づきます。理由はすぐにわかりました。子どもの発言を否定しない、ポジティブに評価することを徹底しているのです。指名して発言させたあとも、同じ考えの人がいるか確認をして子どもをつなげるようにしています。つぶやきも拾っています。以前と比べて先生がしゃべる時間も格段に少なくなっています。子どもたちの集中力は最後まで途切れませんでした。基本となる部分がしっかりとできてきたので、課題も明確になります。

子どもの挙手の仕方が気になりました。授業者は子どもの発言を否定しないのに、子どもたちは自信なさそうに挙げるのです。ちゃんとワークシートに答を書いているのに手を挙げない子どももいます。
こんな場面がありました。赤道地方が暖かい理由を聞いたところ、「太陽に近いから」と指名された子どもが元気よく答えてくれました。授業者は、否定せずにどういうことか聞いてあげます。手で太陽光線の傾きを示したりすることから、理由は正しく理解しているがうまく言葉にして説明できないようです。結局、授業者は肯定も否定もせずにあいまいなまま次時への課題としました。着席した子どもは「違ったな」とつぶやき、ちょっと元気をなくしました。棚上げになったことでそう感じたのでしょう。
このことと子どもの自信なさそうな挙手とは関係がありそうです。子どもたちは正解を言わなければならない、正解を求められていると思っているのです。授業者はどんな発言も受容しようとしていますが、正解を言わなければいけないと子どもは感じているのです。
子どものノートに○をつけて自信を持たせる。発言をつなぐことで、間違えていた子どもが自分で気づいて最後には正解を言える。間違えても最後はほめられる経験を積むことで、自信がなくても発言できるようにする。このようなことを意識するとよいでしょう。

また、以前に学習したことの復習で子どもたちの手があまり挙がらない場面がありました。このとき、手の挙がらない子どもはじっとしていました。これも気になるところです。子どもたちは復習を試験のように感じて、教科書やノートを見てはいけないと思っているのかもしれません。挙手しなければ指名されないので、指名されて間違えるよりはじっとしている方がいいと思っているのかもしれません。
教科書やノート見るように促す。ときには挙手に頼らず指名する。このようにすることで子どもたちの姿勢も変わっていくはずです。

子どもたちの活動を増やす事を意識して授業を組み立てていますが、どの活動も同じように扱っていました。この授業でいえば、日本地図を見て愛知県より暖かい県はどこか考える。世界地図を見て日本より暖かい国はどこか考える。2つの活動がありました。最初の活動で子どもたちから南が暖かいという言葉を引き出す、2つ目で、南ではなく緯度に注目することを気づかせるという流れです。この2つに同じくらいの時間を割いていました。メインは明らかに2つ目の活動です。南が暖かいという言葉を引き出すのは全体で素早くおこない、世界地図を中心に活動をさせることで、もっと深めることができたはずです。日本より暖かい国としてオーストラリアと答えた子どももいましたが、この時間の中で気温を調べたりして確認する時間を取ることができませんでした。

このようなことを中心にアドバイスしましたが、とても素直に受け止めてくれました。この姿勢が成長につながっています。忘れ物の多い学級だそうですが、地図帳を忘れた子どもはほとんどいませんでした。授業者から、私から受けた忘れ物を減らすアドバイス、「いつも使っていれば忘れない。たまにしか使わないから忘れる」を意識して、地図帳を使った個別の活動をたくさんさせていると聞きました。私が忘れていたようなアドバイスをちゃんと実行していてくれたのです。とてもうれしく思いました。だからこそ、次のステップが見えてくるのです。今後ますます力をつけてくれることと確信しました。

校長、教頭と少しお話をする時間がありました。この学校は、以前は生徒指導上の問題をたくさん抱えていましたが、今は本当に落ち着いた学校になっています。学力もずいぶん伸びてきたそうです。生徒指導の基本を授業において、子どもたちを認める、活かす授業で子どもたちを育てようという方針で立て直されました。うまくいった理由の一つに、管理職や主任の方が目指す子どもの姿、授業のイメージをよく共有されていたことがあげられると思います。きちんと共有化されているからこそ、校長から指示されて動くのではなく、自分のなすべきことをそれぞれが考えて動いていたのです。管理職や主任が、言葉では同じ事を言っていても実はぶれている学校もよくあります。お二人と話していて、言葉は違っていても同じところを目指し、思いを共有していることがよくわかります。この学校がよい方向に向かっている秘密はここにあると思いました。

この学校とかかわらせていただくことで、私も学校経営のあり方、教師が育つ要素など本当にたくさんのことを学んでいます。この日も充実した1日でした。
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