悩み事の相談

若い先生は子どもから悩み事を相談されたときに、どうしても気負いすぎる傾向があるように感じます。解決を焦りすぎるあまり、子どもの気持ちにきちんと寄り添うことを忘れて、子どもとの関係を崩してしまうこともあります。どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。

子どもから、悩み事や相談事が出たときに大切なのは、すぐに答えを出そうとしないことです。悩み事があるときは、基本的に子どもの中に負の感情があります。大切なことは子どもが感じている負の感情をきちんと受け止め、共有することです。
いきなり「もっと詳しく」「なぜ」と矢継ぎ早に質問をすると、子どもには問い詰められているように感じてしまいます。また、「こうしたらどう」とすぐに教師がアドバイスをはじめても、自分のことをしっかり理解してくれていると感じていなければ、なかなか素直に聞けません。
深刻な話であればあるほど、柔らかい笑顔で、「それってどういうことかな。もう少し聞かせてくれる」と余裕を持って聞くようにします。子どもから自分を否定するような言葉がでてきても、まず受け止め、「話してくれてありがとう」「気づかなくてごめんね」と子どもに対して教師が寄り添う姿勢を見せます。

「最近みんなとうまくいっていないんです」
「それってどういうこと」
「なにか、みんなが私のこと無視しているように感じるんです」
「そうか、みんなが無視しているように感じるんだ。それはつらいね。話してくれてありがとう。気づかなくてごめんね」

このように、子どもの言葉をしっかり復唱して子どものつらい気持ちを共感してあげるのです。ここで、「そんなことないよ。みんなあなたのことを無視なんかしていないよ。気にしすぎだよ」と励ますつもりで子どもの負の感情を否定しまうと、自分の言葉を否定されたと感じ、わかってくれないと心を閉ざしてしまいます。

子ども気持ちをしっかり共有した上で、解決に向かって進むのですが、ここで注意してほしいのは、教師が一方的にアドバイスしないことです。子どもに寄り添って、一緒に解決するという姿勢が大切です。

「どうすればよいか一緒に考えようね。みんなと言ったけど、全員かな」
「○○さんは、ときどき声をかけてくれる」
「そうか、全員じゃないね。よかったね」
「じゃあ、どうなれば、あなたの悩みは解決するのかな」
「みんなが声をかけてくれる」
「なるほど、みんなが声をかけてくれるようになるとうれしいね。みんなってどのくらいだろう」
「うーん、1人だけはいやだけれど、何人かいればいい」
「そうか、1人はいやだけれど、何人かいればいいんだね。あなたにできそうなことはない」
「無視されるのは怖いけど、声をかけてみる」
「そうか、声をかけてみるといいね。それじゃ思い切ってやってみようよ」
・・・・

子どもの状況が完全にネガティブなことは稀です。その中でポジティブなものを探すことが、気持ちを切り替えるきっかけになります。できないことではなく、できていることを探すのです。その上で、自分がどうなりたいかを子どもに気づかせます。ゴールをイメージして、そこに至るスモールステップを意識させます。この例の場合は、「みんな」というゴールの途中に「何人か」というスモールステップを設定させています。そして、そのために何をすればよいかを考えさせます。

悩み事の相談は、子どもに寄り添い、一緒に考える姿勢が大切です。子どもが「どうなりたい」「どうする」のかを自分の口で言えるようにサポートすることを第一に考えてほしいと思います。
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