ワークシートは親切な方がいい?

ワークシートを活用している授業によく出会います。手元にワークシートがあると何をすべきかわかりやすので、子どもたちの作業はスムーズに進みます。子どもたちの状況に応じて適切につくられたワークシートは授業を効率よく進めるのに効果的です。しかし、時として首をひねりたくなるようなものもあります。ワークシートはどのようなことに注意をしたらよいのでしょうか。

国語のワークシートの例です。

作者の気持ちが表れている部分を抜き出そう。
私は      と思った。

気持ちや考えは、「思った」という部分に注目するとよい。このことを意識させることを意図してつくられています。しかし、ここまで親切にすると、文章から「思った」が文末にあるものを探し、そのまま写す者も出てきてしまいます。これでは、ワークシートを埋めることはできますが、国語の力はつきません。少なくとも、「思った」という言葉がキーワードになることを意識させて、このようなヒントがなくても見つけられるように指導する必要があります。

社会のワークシートの例です。


○○条約は    年に    で、            の3国が、         をすることを目的に、             をすることを取り決めたもの。


○○条約について整理しよう。
調印した年
場所
締結した国
目的
取り決め(3つ)


○○条約について整理しよう。

この3つの例はどれが正解というわけではありません。子どもが自分で調べたり整理する力がなければ、教科書をほぼそのまま写せばできるAのワークシートでなければ手がつかないかもしれません。教科書に下線を引くのと変わらないが、せめて自分の手で写すことで少しでも覚えさせようという意図があるのかもしれません。
ここで意識してほしいのは、子どもは進歩していくことです。最初はAのようなものでなければ手がつかなかった子も、力をつければBのようなものでもきちんとできるようになります。ワークシートを通じて何度も作業をするうちに、どのような情報が大切なのかわかってくれば、Cのような指示だけでも何をすればよいかわかるのです。

4月のワークシートと3月のワークシートのレベルが同じということは、子どもたちの力が育っていないということです。最初はだれでも手がつくような親切なワークシートから始まっても、最後はワークシートに頼らず自分でできるようになっていることを目指してほしいのです。調べ方、整理の仕方、考え方といったメタな力をつけることを意識してワークシートを活用してほしいと思います。
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