授業参観とアドバイス(2日目)

私立の中学校高等学校で授業参観とアドバイスを2日間行いました。その2日目です。

中学1年生の理科の授業は岩石の分類の場面でした。
与えられた岩石を子どもたちが観察し、その特徴をまとめます。授業者が子どものレポートを選んでスクリーンに映し、どの岩石を観察したものかを考えさせます。子どもたちは興味を持って取り組みますが、自分の結論が出ればそこで動きが止まります。答合わせになるとまたエネルギーが上がりますが、これではクイズと同じです。興味づけの活動としてはよいのですが、あまり時間をかける意味はありません。せめて、子どもたちに解答の根拠を明確にさせることが必要だと思います。
その後、子どもたちの発言から観察のポイントを先生がまとめようとします。「何で見分ける?」という発問に対して、「色」「形」といった言葉が返ってきましたが、それを他の子どもにつないで焦点化することができませんでした。続いて、再度同様の活動をしますが、視点が明確にならいままで、深まりませんでした。観察の発表の時に、「同じ岩石の観察結果を比べて、どの視点で見ているかを子どもたちに考えさせる」、「出てきた視点で他の岩石を観察してみる」といった活動をしながら視点を焦点化していくことで岩石の観察の視点を育て、視点が異なれば分類も異ってくることに気づかせるとよかったと思います。

高校2年生の生物はテントウムシの調査のプロジェクトで、子どもたちにデータを見て気づいたことは何かを発表させる場面でした。子どもたちが考えをまとめている時に、授業者は説明を追加します。様子を見て補足が必要だと感じたのでしょうが、作業中に説明してもなかなか伝わりません。一旦作業を止めてから補足するか、わかりやすく伝えるために、最初に指示を整理して板書しておくといったことが必要でしょう。
発表する子どもたちは、先生に向かってぼそぼそとしゃべり、授業者は自分の求める答に誘導しようと質問をします。子どもに対して、発言はみんなに伝えるのだということを徹底する必要があります。そして、発言者に対して授業者が質問をするのではなく、他の子どもに「どう思うか?」、「質問はないのか?」、「あなたとの考えとの違いはないか?」とつなぎながら全体で考えを深めていくことが大切です。
子どもたちの考えを互いに深めるためには、授業者が意識して子ども同士のかかわりをつくることがポイントです。

高校1年生の現代文は、井上ひさしの「ナイン」の導入の授業でした。ナインでは登場人物の野球部時代のポジションが人間関係にも影響しています。しかし、一部の生徒、特に女子は野球のことに詳しくないので、本文に入る前に守備(ポジション)と攻撃(打順)のそれぞれの役割とその関係性について理解を深めるための活動を仕組んだようです。守備位置と打順、それぞれどのような人が向いているのかを考えさせました。女子の動きが少し悪いのですが、まわりとかかわることで少しずつ考えを持ち始めます。中心人物がバッテリーなので、投手と捕手に時間をかけて考えを引き出します。授業者は子どもたちから出てくる「投手⇒メンタルが強い、スタミナがある、器用」「捕手⇒視野が広い、考える力ある」といった言葉をもとに考えを深めようと「どうして?」と聞き返しますが、子どもたちからはなかなか答が出てきません。野球について詳しくない女子がいることも考えると、「どういうことかわかる?」とつないで、子ども同士で説明させて考えを深めていくとよかったと思います。
とはいえ、本文に入る前に、作品を読むための知識や視点を持たせようというのは面白い発想の取り組みでした。子どもたちの本文の読み取りがどのようになってゆくのかとても楽しみです。

高校2年生の化学は、中和滴定の実験でした。
授業者は全員の視線が自分に集まってから子どもたちへの指示を始めていました。授業規律をつくる技術は以前と比べて格段に進歩しています。
滴定の指示薬に何を使うかを問いかけましたが、子どもたちはあまり反応しません。「指示薬とはどういうものか」、「どういう特性が求められるのか」を子どもたちが理解できていないように見えます。過去に学習したのであれば、そのことを復習しておくことが必要です。そうでなければ、まず、どういう特性を持ったものが指示薬として優れているのかを考えることから始めなければなりません。スモールステップを意識してほしいと思います。
「実験の手順」「実験器具の操作方法」「測定の読み取りの注意」の説明を一気に進めます。子どもたちが情報を整理する時間がありません。また実験の説明の前に、何のための実験なのか、何がわかればよいのかという、目的目標を明確に押さえておくことも必要です。一連の説明を構造化し、「目的」「目標」「手順」「操作」などとラベリングをして、ブロックごとに確認しながら整理して進めるとよいと思います。

中学3年の理科の授業は、地球の自転と公転に関してグループで調べたことの発表場面でした。
気になったのが、子どもたちが先生に向かって発表していたことです。発表は仲間に向かってすることが原則であることを押さえておく必要があります。スライドを使って調べたことを説明していきますが、例えば、恒星日と太陽日の違いは4分だという結論だけを発表して、なぜそうなるのか、それがどういう意味があるのかといったことには触れません。この活動が単なる調べ学習になっていて、疑問を持ったり、より深く探求したりすることにつながっていませんでした。聞いている子どもたちも疑問を質問しようとしません。スライド等の発表準備の前に、中間発表を行い、納得できないことや疑問をぶつけあってブラッシュアップする活動を入れるとよいと思います。

高校の現代社会の授業では、中間発表を通じて探求の内容をブラッシュアップする場面でした。
グループ内で担当を分けて、各グループの同じ担当同士で集まって作業をします。途中で調べたことや自分の考えを発表するのですが、聞く側に「発表者をうならせる質問」をすることを課していました。「うならせる」というキーワードが聞く側の子どもたちの姿勢をとてもよいものにしているようでした。前傾姿勢で発表者を食い入るように見ています。子どもたちの考えを深めさせるためにはこういった工夫が大切であることを実感させられました。

先生方の授業のレベルや段階は様々ですが、どなたからも授業をよりよいものにしていこうという意欲が感じられました。こういった授業に対する前向きな姿勢が学校全体に広がりつつあるのを感じます。ただ、一部の先生を除いて、他の先生の授業を積極的に見ようとしないことが残念です。授業を見あってワイワイ楽しく語り合える雰囲気を醸成したいものです。
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