事前に子どもの考えを知ることの落とし穴

子どもがどんな考えを持っているかを知るために、机間指導でチェックしたり、グループでの話し合いをそばで聞くことはよくあります。この後の全体での追究場面で生かすためです。最初にこの意見を出させて、次はこの子にあてて、最後はこの意見で締めよう。このような進め方のシナリオをつくることもよくあります。このこと自体は決して間違いではないのですが、注意してほしいことがいくつかあります。

教師が指名する時にあらかじめその子がどのような答えをするかわかっているため、子どもの発言が不完全でも教師は理解できてしまいます。しかし、他の子どもたちは初めて聞くのですから、教師よりも理解度は落ちます。子どもたちが発言を理解できず、考えが全体に広がっていないのに教師が次々指名して、教師の予定した結論に導いてしまうこともあります。教師はあらかじめシナリオをつくっているので、子どもの状況を把握することより、予定した通りに進めることを優先してしまうからです。

また、全体の場で出てきた意見を受けて考えが変わることもあります。当然、教師が予定していた意見を子どもが言ってくれないこともあります。そのようなとき、「ノートに書いたことを言って」と無理やり予定した発言を引きだそうとすると、子どもは自分が最初に発言したことを否定されたような気持ちになってしまいます。

事前に把握している子どもの考えにとらわれず、出てきた意見をきちんと子どもたちに広げて、子どもたちの反応に応じて、時には予定したシナリオを捨てることも必要です。事前に子どもたちの考えを知ることが悪いことではありません。それにとらわれず、子どもたちの状況に柔軟に対応することが大切なのです。
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