これからの1月が勝負

昨日は、授業アドバイスで中学校を訪問しました。
今回は学校全体のスタートの様子を見せていただいてのアドバイスです。

1年生は子どもたちの人間関係がよく、新入生独特の硬さも感じられません。とてもよいスタートが切れているように思います。まわりと自然に相談し、しばらくするとスーと自然に集中するという場面もありました。いくつかの授業では、中学1年生とはとても思えないほどの集中を見せてくれます。自己紹介の場面では全員がきちんと発表者の方を向いて真剣に聞いている姿も見られます。
その一方で、グループの代表の発表で子どもたちの視線が定まらない場面も目にします。ある授業では、子どもたちに作業をやめて顔を上げるように指示してもすぐに全員の手が止まらず、そのまま授業者が話を始める場面がありました。子どもたちの状態はバラバラのままで、続く活動にも全員がすぐに参加できませんでした。また、一列ごとに後ろを向かせ、ペアで活動をする場面では、手を振ったり、すぐに口を開いたりしています。関係がよいのですが、この後指示をされた活動を行う場面はややざわつき、グダグダした状態になりました。
もちろん、きちんと指示が通るまで待ってから次の作業を指示する、先に指示をしてからペアをつくるといったことをすれば違った状態になったと思いますが、そういった授業技術面とは違った危うさを感じました。おそらく子どもたちはどの小学校でもかかわり合うような授業をしっかりと受けて育ってきたのだと思います。子どもたちのよい状態は、小学校の延長上のものなので、中学生としての授業規律を再度身につけさせる必要があります。しかし、基本的な授業規律ができているため特段の指示をしなくても授業がそれなりに進むので、教師がそのことを意識していない可能性があります。授業者が中学生としてどのような姿になってほしいかを意識できている授業では、とてもよい姿になりますが、そうでないと小学生のままなのです。このままの状態が続くと、子どもたちは授業によって態度を変えてよいと思ってしまいます。しかし、きちんと意識できている方でも、自分の授業では子どもたちの姿がよいのでその事実になかなか気がつきません。気づいた時には手遅れになっている可能性があるのです。
学年全体でこのことを意識することが大切ですが、全員が全く同じようにそろうのは難しいものがあります。「中学生だから、指示されなくても今どのようにすべきかを判断して行動できるようになってほしい」と、自分で考えて行動することを学年全体の場や、学級で求めるとよいと思います。そして、指導の場面では、「こうしなさい」ととるべき行動を直接に指導するのではなく「今は、どう行動すべきだったか」を考えさせるようにします。もともとよい状態の子どもたちですので、今後大きな成長が期待できると思います。

2年生は、新年度の緊張が強く残っているように感じました。昨年度この学年は全体としてはよい状態だったのですが、一部の気になる子どもたちがつながり始め、年度末にかけてその対応に追われていました。今年度は異動もあって担任の一部が変わり、学級編成も工夫がされ、子どもたちの気持ちがリセットされたように思います。よい意味での緊張感があり、子どもたちが授業に前向きに取り組もうとしているのを感じます。よく集中しているのですが、時々集中が切れている子どもを目にします。特定の子どもというよりは、ポツリポツリと入れ替わりで目につきます。しかし、集中が切れた子どもも、場面が変わればまた復活します。前向きな気持ちが切れているわけではないのです。
もうすぐゴールデンウイークです。全体として子どもたちが頑張っていてよい状態であるし、集中が切れる子どもも一部だからとそのままにしておくと、休みをはさんで緊張が切れ、せっかくのよい状態が一気に崩れる可能性があります。これからの数週間は特に意識して子どもたちに接する必要があります。では、集中が切れている子どもをその場で注意すればよいのでしょうか。頑張っているけれども集中力が続かなかった子どもたちですので、注意をするのはマイナスです。ずっと集中力が切れたままの子どもはほとんどいません。子どもの集中力が戻った時に、「やる気を出してくれているね」といったほめ言葉をかけるようにするとよいでしょう。また、子どもたちが集中して聞いてくれていると、どうしても教師はしゃべりすぎてしまいます。結果として子どもたちの受け身の時間が増えて、集中力を切らす原因となります。そんな中、数学の時間でグループ活動をしている場面がありました。子どもたちはとてもよい表情で取り組んでいました。中にうまくはグループに入れていない子どもがいましたが、授業者はそれに気づいて声をかけていました。子どもたちの関係は悪くないので、このようにまわりと相談させたり、グループでの活動を取り入れたりすることで子どもたちがかかわる場面を多くつるくとよいでしょう。子どもたちの集中も続きますし、今一つ孤立気味で授業に参加できない子どもも他の子どもとつながることで、一層前向きに授業に取り組み、よりよい学校生活を送れるようになると思います。

3年生は、例年のこの時期と比べてちょっと違った状態でした。非常に落ち着いているのですが、頑張らなきゃ、やるぞといった熱のような物をあまり感じないのです。ここで昨年度のことを思い出しました。この学校では毎年合唱祭が盛り上がるのですが、昨年の秋に訪問した時の練習風景は例年と比べて子どもたちの意欲が高まっていませんでした。そこで、先生方が子どもたちを引っぱることで、結果的には大成功に終わったそうです。しかし、合唱祭が終わった後に訪問した時の子どもたちは、抜け殻のようになっていました。もちろん先生方はそのことに気づいて、自分たちが引っぱるのではなく子どもたちの内部からエネルギーを引き出すことを意識されたようです。その流れで見れば、この状態はよい方向に思えます。ただ、3年生が始まってリフレッシュしたというよりも2年生の延長という感はぬぐえません。子どもたちが新しい学級で様子を見ているという感じも受けます。また、担任が変に引っぱることで合唱祭の時のようになってはいけないと、遠慮をしているのかもしれません。
この後、修学旅行や3年生が中心となって学校全体を引っ張るようなイベントもあります。そこで、子どもたちからエネルギーを引き出せるとよいと思います。子どもたちから出てくるものをコントロールしようとするよりも、少々外れたように見えることでもできるだけ活かしてやるようにしてほしいと思います。自分たちが考えた、自分たちがやった、やれるという自信を持たせるのです。子どもたちは自分で思っているよりも力があります。先生方も子どもたちの力を信じて任せることが必要でしょう。

この日は現職教育について全体での話があり、そこで私の目に写った学年の様子をお話させていただきました。短い時間しか観察していませんので的を外しているかもしれませんが、参考にしていただけたらと思います。

この日は特定の授業を参観しなかったのですが、何人かの先生が相談に来てくれました。とてもうれしいことです。
今年特別支援学級の担当になった先生は、特別支援と通常学級の授業の切り替えがうまくできないと話してくれました。この時以前と比べて表情が変化していることに気づきました。ずいぶん柔らかくなっているのです。特別支援学級での経験がこの変化につながっているのだと思いました。特別支援学級で、子どもをしっかりと受容し、一つひとつの指示をていねいにして、確認もしっかりと行うことの大切さに気づいたようです。
私からは、特別支援と通常学級の違いを意識しなくてよいとアドバイスさせてもらいました。特別支援で意識していることは程度の差こそあれ通常の学級でも意識すべきことです。今経験していることをそのまま生かしていけばよいのです。自信をもって子どもたちに接してほしいとお伝えしました。この先生が大きく進歩する予感がします。

学校全体としてはよいスタートを切れていると思います。ただ、ここで気を抜くとどうなるかわかりません。ここからの1月が勝負だと思います。次回5月末の訪問がとても楽しみです。
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30