見方・考え方をきちんと整理して授業を組み立てる(長文)

ずいぶん間が空いてしまいましたが、前回の日記の続きです。

少人数での3年生の算数の授業です。三角形の学習でした。
授業者は全員が板書を写すまで待とうとしています。よい姿勢の子どもをほめながら全員が書き終るのを見守っていますが、遅い子どもが何人もいます。早い子どもはいつも待たされてしまいます。待っていてくれてありがとうの一言が必要かもしれません。まだ書き終っていない子どもに気づかず話し始めることがあったのが残念でした。

前時の復習で二等辺三角形はどんな三角形かをたずねます。子どもたちは「はい」と大きな声を出して勢いよく手を挙げます。しかし、半分くらいの子どもは手を挙げません。それでも授業者はすぐに指名をします。指名された子どもは正面に出て説明をします。この学校では前に出て発表することがルールになっているようですが、簡単な復習であればその場で答えてもよいように思います。前に出て話すのは子ども同士がしっかりと見あって発表を聞くためだと思いますが、指名された子どもは黒板の端の方の二等辺三角形の図を見ながら話します。その視線につられて他の子どももその図を見ています。せっかく正面に立たせていることがマイナスになっています。こういう場合、図の横に立たせて子どもたちの視線が発表者に向かうようにするといった柔軟な対応をしたいところです。
発表者は「同じセンチが等しい」と答えます。子どもたちは微妙な表情です。授業者は「同じセンチが等しい」と復唱します。よい対応ですが、ちょっと語尾が上がって疑問になっていました。こういった時は、「同じセンチが等しいんだね」と受容的にするとよいでしょう。「同じ」と言いかけた子どもに「何が等しいの?」と返すと、「2つある三角形が」と答えて急いで席に戻ろうとします。すぐに「いいですか?」と確認するのを忘れたことに気づいて確認すると、半分くらいの子どもが「わかりました」と答えます。その声に遅れて「違います」の声が上がります。「他にあるの?」と授業者は他の子どもを指名しました。次に発言した子どもは、「2つの辺が等しい三角形」と発言します。ハンドサインで確認した後、「同じ辺が2つあることを言おうとしていたんだね」と最初に発言した子どもをフォローしますが、どんな気持ちになったでしょうか。できればその子どもに修正する機会を与えてあげたいところでした。
同じという言葉を授業者が曖昧に使っていることが気になります。2つの辺が同じという表現は正しくありません。辺の「長さ」が同じです。最初の子どもの「センチ」という発言は意味のあるものだったのです。「センチって何?」と聞き返して「長さ」を出させ、「何の長さ?」と聞けば辺の長さにつながったはずです。子どもの考えに寄り添いながら進めることを意識してほしいと思います。
正三角形でも指名した子どもの説明は、「長さ」が落ちた定義になっていました。ひょっとすると授業者が定義の時から長さを強調していなかったのかもしれません。結局、授業者も3つの辺すべてが同じ三角形と確認して終わりました。

この日の課題が書かれたプリントを配ったあと、「読んでくれる人?」と問いかけます。「はい」と元気のいい声が返ってたくさんの子どもの手が挙がりますが、中には手遊びをしている子どももいます。反応がよいからこそ、全員参加を意識してほしいと思います。面白いのが、指名された子どもが読んでいる時に、後ろを向いてその子どもを見ている子どもと、手元のプリントを見ている子どもに分かれていたことです。授業者はどちらの姿を求めていたのでしょうか。授業におけるルールが形式になっていて何のためかを子どもも授業者も意識できていないようです。

円の中心を頂点として円周上の2点を他の頂点とする三角形が二等辺三角形になることを考えるのですが、授業者は図を指して、「この円の中の三角形はどれも二等辺三角形になるでしょうか?」と問いかけます。図を指しながら話しているので、わかると言えばわかるのですが、算数としては曖昧な表現です。「どうやってかいている」「円の中心から線を引く」「円の中心を頂点にした」「円周上の点を結んだ」といった条件を強調または確認しながら話す必要があります。算数における言語活動は用語をきちんと使って明確に物事を表現することを意識してほしいと思います。

子どもたちに個人で理由を考えさせますが、動きがありません。時間が来て挙手を求めますが一人しか手が挙がりません。その子どもを指名すると「中心が決まっているからです」と答えます。授業者は子どもの言葉を復唱しながら、「円の中心が?」と「円」という言葉を足しました。発表者からは「円の中心が全部の二等辺三角形の頂点になっている」という言葉が返ってきます。授業者が発表者の考えを整理しようとしているはよいのですが、どこを聞き返すべきかがはっきり意識できていません。まず、「中心って何?」と問い返し、円を意識させることが大切です。「円と中心の関係」≒「円の定義」を明確にすることで、三角形の辺が半径になっている⇒半径の長さは等しい⇒辺の長さが等しい⇒二等辺三角形とつながっていくのです。
授業者は、頂点が中心にない三角形をかいて、これは二等辺三角形になっていないことを視覚的に確認します。ここから頂点の位置に秘密がありそうだと誘導しますが、子どもは突然新しい三角形が出現して戸惑っています。授業者の説明に反応できません。
一人の子どもが挙手をして発表します。「中心から線を引くと必ず半径になっているけれど、後からかいたのは半径が小さくなっている」と説明します。新しい三角形を加えたために、その三角形が二等辺三角形にならない説明に変わってしまっています。また、半径と辺も混乱しています。授業者はそのことを「半径じゃないよね」と新しい三角形の辺を指して確認します。発言者は自分の言葉を否定されて、次の言葉が出てきませんでした。ここは「半径って何?」と問い返し、定義を全員で共有することが大切です。その上で、「これは半径?」「これも半径?」「これは?」と辺を指さしながら修正させるとよかったでしょう。
結局授業者が、辺が半径だから2つの辺が等しくなって二等辺三角形になると説明しました。最後まで、円の半径は長さが等しいことをきちんと押させませんでした。根拠となる事実や性質をきちんと整理することは算数ではとても大切ですが、授業者自身が根拠きちんと整理できていなかったようです。子どものたちの反応からは納得できているのかどうかはよくわかりませんでした。

「この日のめあては二等辺三角形や正三角形のかき方や作り方を調べよう」です。「調べよう」という言葉が気になります。あらかじめある中なら探すのでしょうか。子どもたちが何を考えるのかが疑問になります。
授業者は「三角形の下の辺をまず引いて」と円の中に二等辺三角形をかく手順を示します。「下の辺」という言葉が気になります。二等辺三角形の「底辺」という用語があるのですから、きちんと使うべきでしょう。辺をまず引くという言葉も正しくありません。「円周上の2点を直線で結び」「その2点と中心を直線で結ぶ」と「二等辺三角形ができる」といった説明をすべきでしょう。
授業者は、先ほどの復習も兼ねてこの三角形が二等辺三角形になる理由を問いかけます。自分の言葉でワークシートに理由を書くように指示しました。
子どもたちは取り敢えず図をかきます。そこから手がなかなか動きません。かなりの時間を与えましたが、あまり状況は変わりません。さきほどの説明が子どもたちの腑に落ちていないのです。
発表してくれる人と問いかけると、数人が勢いよく「はい」と手を挙げます。他の子どもは反応をしません。授業者はそのまま指名しましたが、これではせっかく時間をかけてもあまり意味がなかったということです。この状況は個人で活動させている時からある程度わかっていたことですから、もっと早く活動を切り上げて、まわりと相談させるといったことをする必要があったと思います。
指名した子どもの説明ははっきりしません。前に出て授業者に向かって一生懸命説明します。授業者はしっかりとそれを聞いてあげるのですが、二人の世界にどっぷりとはまってしまいます。他の子ども黙って見ているだけでした。結局どういう考えかよくわからず、共有することも価値付けすることもなく、次の子どもを指名しました。次の子どもはしっかりと言葉で説明しますが、授業者はそれを黒板にメモすることに集中しています。発表者は説明が終わった後「いいですか?」と全員に問いかけます。「わかりました」の声は一部からしか上がりません。一気に言葉で説明されてもついていけないのです。授業者が途中で止めながら、全員で共有し納得する場面が必要です。この子どもの発言も評価することなく次の子どもを指名しました。「二等辺三角形は2つの長さが等しい三角形だから、どの三角形も2つの辺が同じなので二等辺三角形になる」という説明です。この説明に対しても「わかりました」の声が一部から上がります。子どもたちがこの説明に納得するようでは、心配です。この子に限らず、「2つの長さが等しい」「2つの辺が同じ」といった言葉が揺れているのですが、授業者が修正しないことも気になります。続いての発表者も同じ説明です。最初の説明の時点できちんと根拠を意識させていなかったために、問われていることがよくわからないままだったということです。授業者はなぜこの2つが等しいのかと問いかけますが、反応はあまりありません。結局「円の半径だね」でまとめて終わってしまいました。考えるための根拠となるものが明確でないため、子どもたちの思考が混乱したまま終わっていました。日ごろから、論理的に思考することを求めなければいけません。数学的な見方・考え方は何かを意識してほしいと思います。子どもの発表にあった、「中心からどこ引いても半径だから」という言葉を取り上げますが、半径の定義は押さえません。「円の定義」「円の半径は等しい」をきちんと押さえることなく、ここまでに30分近く使ってしまいました。

次の課題に取り組むことを言っても子どもから反応はほとんどありません。問いかけには「はい」と答えることがルールになっているようですが、返事をする子どもは数人です。よい姿勢をつくることが精一杯です。子どもたちはここまでの内容を理解できていないので、わけがわからなくなっているのです。
円の中に正三角形をかいてかき方を説明するのが次の課題ですが、子どもたちに見通しを持たせません。どのような条件が足されると正三角形になるのかを押さえておくとよかったでしょう。
10分ほど活動させて隣同士確認させますが、ただ見せあっているだけです。何を確認するのかが明確ではありません。
かき方を発表させますが、「半径を調べて」「下の辺を定規で半径にして」「そこから中心を結ぶ」「半径を下の辺にする」といった言葉足らずの説明が出てきます。これを子どもたちで修正させることが大切なのですが、「いいです」「同じです」の言葉でスルーされていきます。子どもの言葉通りに図をかこうとして困ることで、言葉の曖昧さに気づかせたり、不足する言葉を足させたりするとよいでしょう。
「半径を下の辺にする」にこだわって発言者に説明を足させたのですが、授業者が納得して自分で説明をします。子ども同士で理解させ、共有することが大切です。子どもたちは形式的に全体に向かって話そうとしていますが、実際には授業者にわかってもらおうとしています。子ども同士をつなぐことを意識したいところでした。
結局ここで時間切れになりました。

子どもを受け止めよう、受容しようとする姿勢はあるのですが、評価したり価値付けすることがなく、また子ども同士をつないだり、考えを共有する場面もほとんどありませんでした。数学的なものの見方・考え方をきちんと整理し、根拠を元に論理的に授業を組み立てることが大切なのですが、定義や性質の違い、何を押さえるのかが曖昧なまま授業に臨んでしまったようです。用語や言葉の使い方を含めて、教材研究をしっかりするようにしてほしいと思いました。

この続きは次回の日記で。
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