活動を学びにつなげることの難しさを感じる

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
なかなか日記の更新が追いついていませんが、時々お寄りいただければうれしく思います。

前回の日記の続きです。

ベテランの家庭科の講師の授業は、8年生の和装を体験するというものでした。
授業開始の挨拶で、授業者が特に何も言わないのに子どもたちの姿勢がよいことが印象的でした。子どもたちの礼を確認してから授業者は礼をします。ちょっとしたことですが、授業者の子どもを見る姿勢が子どもたちの姿に影響していると思います。家庭科なので一つの机に4人の子どもが座ります。普通に座れば授業者とは正対しないのですが、多くの子どもがきちんと授業者に向いて座っています。それでも授業者は「ちょっと狭いですが、体を前に向けましょう」と指示をします。子どもたちにどうあってほしいかを明確に伝えています。子どもたちは素早く反応します。続いて前時の復習で洋服と和服の違いを確認しますが、子どもたちはよく集中しています。問いかけに対して多くの子どもが口を開いてくれます。

この日の課題「浴衣を着て和服のよさを見つけよう」を黙って板書します。子どもたちはそれを興味深げに見ています。家庭科の授業に対する期待感を感じます。興味を持てる授業がいつも行われていることが想像できます。
ここで、教室の隅に置かれていたディスプレイ・ボディ(服を着せる人型)にかけてあった白布を外します。そこには女性用の浴衣がきれいに着せられています。子どもたちから「かわいい」と言う声が漏れてきます。こういう演出もなかなかです。
後ろを向けて帯も見せます。この日の課題のポイントである帯の結び方をさりげなく意識させます。この浴衣は授業者がつくったことを伝え、「いいでしょう」と言葉を足します。家庭科を学ぶことでこういったものも作れるようになることを、上手にアピールします。授業者の家庭科に対する思いが伝わってきます。

子どもたちに浴衣を着たいという気持ちにさせて、着る手順を伝えます。ステップごとにポイントが書かれた紙を1枚ずつ黒板に貼って、それを全員で読ませます。「背中心」「下前」「上前」「お端折り」といった子どもたちが日ごろ耳にしない言葉が出てきますが、ステップごとにディスプレイ・ボディに着せた浴衣を使って、具体的に説明をします。一方的な説明の場面なのですが、子どもの反応を確認しながらていねいに言葉を発しているので、実物があることも相まって、子どもたちの集中はよく続いていました。

授業者が見本を見せる場所をつくるために机の移動を指示します。後ろ側に隠してあった黒板を見せると、そこに机の移動場所が書いてあります。ムダがない提示で子どもたちの集中は途切れません。指示が的確なことと、興味をうまく持たせていることで、子どもたちは素早く行動します。
モデルを募りますが、挙手がないのですぐに出席番号で一人の女子を指名しました。さすが、実習教科です。時間をムダにしません。ここで、ちょっと子どもたちのテンションが上がりますが、授業者はカウントダウンで口を閉じさせます。
「1番は何だった?」と子どもたちに手順を確認しながら進めます。子どもたちから「背中心」と声が上がりますが、ちょっとざわざわします。突然授業者が「あっー」と声を上げ、そのまましばらく間を取ります。子どもたちが静かになって落ち着いたのを見計らって、「この後自分たちでやるんだから、そのことを意識して、見よう」と言葉をつなぎます。子どもたちの様子をよく見て、それに応じた対応をしています。さすがだと思いました。
付け帯ではなく、本物の帯を締めます。ちょっと難しいけれどきちんと帯を締められるようになってほしいという授業者の思いが伝わってきます。前で帯を結びますが、どうして前なのかを問いかけ、自分一人で締められるやり方であることを強調します。ここでも、授業者の思いが伝わってきます。途中でちょっと集中を失くしていた女子も、よく見える位置に移動して、自分でまねをしながらしっかりと見ていました。
最後にどちら向きに帯を回すのか確認します。自分で動作をする子どもがたくさんいますが、ちょっとざわついて聞いていない子どももがいます。授業者はちゃんと聞くようにと言ってから、指名しました。「右」という答に対して、「なぜが大事」と理由を求めます。上手く答えられないので他の子どもを指名しました。上前がずれることを言ってくれたので、すぐに説明を重ねました。時間のこともありますが、最初に答えた子どもや、他の子どもにもう一度確認したいところでした。

説明が終わると男女別のグループに分かれて、着付けを行います。子どもたちのテンションが急激に上がります。目標がはっきりしないので、浴衣を着るというだけの活動になってしまいます。うまく着付けができたかの評価基準を示した上で、評価場面をつくることが必要だと思います。また、男子の場合、結び方は単純なので具体的に見本を見せませんでした。そのため、よくわからないままとりあえずやってみるというノリでの活動になってしまい、女子以上にテンションが上がってしまいました。そのことに授業者は気づき、男子のグループのところに行って説明をしました。よく説明を聞いていたのですが、説明が終わるとまたテンションが上がってしまいます。自分が着終わるとふらふらする子どもが目立ちました。着付けに直接かかわらない子どもに、評価するといった役割を持たせることが必要になるのです。
着付けのチェックポイントが明確でなかったので、かなり雑になっているグループも目立ちました。途中で活動をいったん止めて、全体でチェックして、ポイントの確認をするとよかったでしょう。
途中で、動きを止めて課題を提示します。浴衣を着た時に、洋服の時とイメージがどう変化するか、どんな気持ちになるかを考えてほしいというのです。最初に提示し忘れたのかもしれませんが、このタイミングでは着終わった子どもは考えにくいかもしれません。結局、子どもたちのテンションは上がったままでした。

活動を止め、机を元の状態に戻して浴衣と帯を片付けるよう指示します。移動を終えた子どもたちは静かに席に着いて次の指示を待っています。この切り変えは立派だと思いました。指示された2分間できちんとすべてのグループが最初の状態に戻りました。「すばらしい」と授業者がほめると自然に拍手がわきました。

ワークシートを配って先ほどの課題をグループで相談して書くように指示します。「どんな感じ?」「どんなイメージ?」というのは言いやすそうに思えますが、逆に何を言えばいいのかよくわからないとも言えます。自分のワークシートに埋めることに集中する子ども、まわりと相談する子どもに分かれます。この授業でも、自分のグループ以外の友だちと話をする姿が見られました。
グループごとに発表していきます。子どもたちは静かにしていますが、顔が上がりません。聞く姿勢はこの学校の共通課題です。子ども同士をつなぐことを意識することで、聞く姿勢は変わると思います。順番に発表するのではなく、一つのグループの発表のあと、「同じようなことを考えたグループはいない?」とつないだり、「同じように動きに注目したグループはいない?」と焦点化したりするとよいでしょう。
一通り発表させた後で、板書をします。どんな意見があったかを「教えて」と聞きます。聞くことに価値を持たせるよい方法なのですが、子どもたちはあまり反応しません。子どもたちに聞くことがまだ定着していないようです。「○○さんのグループはどんな意見だっけ?」と具体的に思い出させたり、「どんな意見があったか、まわりと確認して」と相談させたりして、子どもにしつこく発信を求めることも必要だと思います。

子どもたちは体操服を着ていたのですが、「そういうだらっとした感じではなく……」と子どもから言葉を引き出そうとします。「ぴしっとしている」「特別な日に着たくなる」という言葉を受けて「どうしてそうなる」と返すと、「日本伝統の美だから」といった言葉が出てきます。ここで、子どもたちの言葉が止まります。
そこで授業者は、自分は特別な時に和服を着て、着ると背筋が伸びて気持ちが引き締まると説明します。こういった伝統文化や和服のありようについて考えさせ意見を言わせるのであれば、浴衣を着るだけではなかなか出てこないように思います。浴衣を着て歩かせ、その様子の違いを全体で共有するといったことが必要でしょう。また、浴衣は晴れ着ではありません。振り袖や紋付袴といった晴れ着を見せることも必要だと思います。ふだんは和服を着ない、晴れの日に着る、その理由に絞って考えさせてもよかったかもしれません。
子どもから引き出したい言葉に対して、どのような活動や情報が必要なのかを考えて授業を組み立てるとよかったと思います。

最後に折り目正しいという言葉と和服の折り目を関連づけて、あらかじめ用意した「和服は折り目正しく、着れば態度も礼儀正しく」とまとめを書いた紙を貼ります。せっかく子どもたちから一生懸命言葉を引き出したのに、こういった形でまとめを提示すると、「結局、先生はこれが言いたかったのか」となってしまいます。ちょっともったいないと思いました。今回は授業者の思いが強すぎたのかもしれません。思いがはっきりとしているからこそ、授業の組み立てが大切になると思います。活動を学びにつなげることの難しさを感じました。

この続きは次回の日記で。
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