介護職員の研修で、主体性やチームワークについて考える

介護職員向けの研修を毎月行っています。9月からは、「移動介助」「介護職ができる医療行為」「感染予防」と行ってきました。

参加される方はどなたも前向きで、利用者に対する姿勢も、相手に寄り添うとても素晴らしいものだと思います。しかし、少し気になることがあります。全体的に、主体的に動くことやチームワークの感覚が少し弱いように感じるのです。自分に与えられた仕事は誠実にきちんとこなすのですが、仕事が手一杯になった時に「助けて」と言えない雰囲気があるように思います。逆に言えば、手が足りていないと思っても自分から助けに行こうとしない、これは自分の仕事だと思わなければやろうとしない。そのような空気を感じるのです。
これは、決して参加されている皆さんの仕事に関する意識が低いということではないと思います。与えられた仕事をこなすことが働くことだという感覚が子どものころから染みついているからではないでしょうか。これは、私たちの教育の結果なのかもしれません。

このことは、今、学校で「主体的・対話的で深い学び」ということが言われていることと無関係ではないように思えます。「宿題だからやる」「当番だからやる」のではなく、「宿題を一生懸命やる」「当番を一生懸命やる」という子どもは育ててきたのかもしれませんが、そこから一歩進んで、「自分がやるべきことだから」、さらに「やりたいことだから」と思って行動するような子どもを育ててはこられなかったということではないでしょうか。

自分は指示する立場ではないので、指示をされなければやらない。これをやると仕事が増えて自分の仕事がやりきれなくなる。そう思うと、与えられた仕事だけをきちんとこなす方向に人は動いてしまいます。これをやるべきだと思うからやる。その分手が回らなくなったことを、少し助けてと頼む。助けてもらった分、他の場面で助ける。こういった助け合いの輪ができれば、もっと楽に仕事が進むと思います。当たり前のように「助けて」「手伝おう」が言える雰囲気をつくることが大切です。

学校でも似たようなことを感じることがあります。担任は自分の学級に責任を持って一生懸命頑張りますが、何かあっても自分の責任だからと一人で解決しようとして、どうしようもなくなってから助けを求めることをよく目にします。困ったことがあれば、助けてもらう。その代わり、他の学級のことであっても、自分にできることがあれば積極的に手伝う。学校内にこういう雰囲気をつくらなければ、先生方にとって、そこはとても苦しい職場になってしまいます。

介護や学校の現場に限らず、どの職場でもこのことはとても大切なことだと思います。とはいえ、「チームワークをよく仕事をして下さい」と言ったところで状況は変わりません。職場の雰囲気を変えるのはとても難しいことです。一人ひとりがほんの少しでもよいので、頼る、頼られることへの抵抗感をなくすことがその一歩のように思います。
今後、このことに気づいてもらうような研修も考えていきたいと思います。
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