子どもから言葉を引き出すために必要なことを意識する

前回の日記の続きです。

6年生のもう一つの授業は、国語の説明文「鳥獣戯画を読む」でした。
ちょっと緊張していたのでしょうか、授業者の表情がかたくなっていました。余裕がなかったのか、子どもたちがしっかりと聞く態勢になっていないのに、授業を進める場面が目立ちます。
電子黒板を活用して授業を進めますが、使用しない時にもディスプレイに教科書が映っているのが気になりました。子どもたちがどこに集中すればよいのかを明確にするためにも、必要のない時には消す習慣をつけるとよいと思います。

「なぜ筆者は絵巻物を提示したのか」という問いかけをします。曖昧な問いかけです。絵巻物を提示することで、「文章全体の構成上どのような効果を狙ったのか」「何を伝えたかったのか」……、何を答えればよいのかよくわかりません。「なぜ」というのは難しい問いかけです。具体的に何?(what)、どのような?(How)などで聞くとよいでしょう。いろいろな意見を出させたいのであれば、「絵巻物を提示したのはどういうこと?」と何を答えてもよいような聞き方をしたいところです。
授業者は、「考えながら音読しよう」とさせるのですが、音読しながら考えるのはそれほど簡単なことではありません。音読のペースが速いことも気になります。考えるのであれば、ちょっとゆっくり目に読む必要があります。子ども自信が気づき、考えるために何が必要かを意識して、活動を考えることが大切です。

筆者は鳥獣戯画を2つに分けて見せていますが、2つに分けた時にどう見えるのかを相談させます。これも曖昧な発問です。「自分たちにどう見えるのか?」「筆者がどう見えると考えているのか?」を明確にしたいところです。
子どもに相談させた後、挙手で進めますが、すぐに手は挙がりません。子どもの反応を待ちたいのですが、手を挙げた子どもをすぐに指名します。
「アニメと同じ原理で動いている」という答が出てきます。それに対して、「どこからわかった?」「どこに書いてある?」と全体で共有する場面が必要ですが、すぐに板書します。子どもたちが写し終らない内に、次の質問をしてしまいました。子どもがじっくり考える時間を与えずに、挙手した子どもを指名してすぐ次に進みます。
子どもから答えを引き出すのに、「漢字二字の言葉を見つける」とヒントを言います。答を「考える」のではなく、漢字二字の言葉を本文から「探す」子どもが出てきます。「先生が注目してほしい言葉がある」と、天下りで指示を出すこともあります。こういう言葉は子どもたちの答探しや誘導につながってしまうことに注意が必要です。

後半は、教科書を閉じて黒板に貼った絵を元に考えさせます。子どもたち自身で筆者と同じようなことに気づかせたいのでしょうか。それとも、筆者と異なる視点を引き出したいのでしょうか。絵は筆者の伝えたいことを理解するための材料や補助です。国語の授業としてはあくまで本文を正しく理解することが中心です。「筆者は○○を根拠としてこうだと言っている」、このことをきちんと理解した上で、絵を見て本当にそうだと思うのか、どう感じるのかを考えさせるとよいでしょう。
最後は、授業者が自分の言葉で説明してまとめてしまいました。子どもたちにとっては、それが答えです。答探しの授業になってしまいます。先に進むこと、結論を与えることをちょっと優先しすぎでした。

授業者が気づいてほしいキーワードに子どもが気づくためにどのような活動すればよいのでしょうか。読み取りの力をつけるためには、どのような課題に取り組めばよいのでしょうか。子どもたちの目線に立って、授業の構成を考えてほしいと思います。
授業者は、随所で子どもを受容する言葉、認める言葉をかけることができています。とてもよいと思います。国語としてその発言にどのような価値があるかという、価値付けができるようになることが次の課題だと思います。それには、どのような発言を子どもたちから引き出したいかという、授業者自身の課題意識が大切になります。子どもの発言をもとに教材研究することを目指してほしいと思います。
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