子どもたちが考える活動をどうつくるか

昨日の日記の続きです。

3年生の理科は電気分解と電池の違いを説明する場面でした。
班ごとにゼロから説明できるようにまとめることが課題です。子どもたちは授業者の指示に素早く従い教科書を開きます。授業者は子どもたちに教科書を見せながら、原子がイオンになるのか、イオンが原子になるのか違いだと説明します。当然子どもたち教科書見ているので顔は上がりません。これが大切な確認であれば、子どもたちに問いかけ、もし忘れているようなら自分でノートを見て思い出させるような活動が必要です。
確認が終わると、教科書やノートを片付けさせます。その状態で活動させるというのであれば、知識の整理を参考にするものなしで行う、単に覚えているかどうかの試験と同じです。この活動を通じてどのような力をつけたいのかよくわからないというのが正直なところです。

ワークシートを配って名前を書かせ、まとめを書くシートもグループに配って準備完了です。ここで、全員を前に集めます。金属の組み合わせを変えて、電気が流れるかどうかを確認する実験を見せるのです。この後でグループでの作業を説明するのであれば、この実験を見せてから配った方がよかったのではないかと思います。
小さなビーカーでの実験でしたので、後ろの方の子どもはよく見えません。ICT機器を上手く使って大きくして見せたいところでした。リアルタイムである必要がなければ、事前にビデオに撮ったものを見せてもよいでしょう。
前に集めたままで、電気が流れるかどうかの違いはどうしてかを問いかけます。数人しか手が挙がらない状態ですぐに指名します。指名された子どもがイオン化傾向の違いであることを一気に説明すると、授業者は「そうだね」と受けて、「順番覚えている人」とすぐに問いかけます。1人しか手が挙がらないので、ちょっとびっくりしたようですが、指名せずに「順番覚えておくんだよ」といって次の説明に移りました。教科書やノートのない状態で知識を問うというのは、覚えていることが前提です。覚えることはもちろん大切なのですが、忘れればすぐに確認して思い出すことの方がもっと大切です。他者の答を聞いても「ああ、そうだった」となるだけで、力はつきません。学習は記憶することだと子どもが思ってしまうことが心配です。

席に戻した後、ワークシートの説明を始めます。当然子どもの視線はワークシートに向かいます。子どもたちはよく聞いてくれるので、授業者は目を合わせたいと思っていないようです。しかし、子どもと視線を合わせることは、関係をつくるだけでなく、反応がよくわかるので、授業をどう進めるかの重要な判断材料になります。ワークシートを配る前に、実物投影機などを活用して大きく映し出して説明をするとよいでしょう。
子どもたちにどのような説明をつくればよいのか、内容も細かく指示します。「ノートに書いたようなこと」という言葉が出てきます。極端に言えばノートに書いたことを思い出して書きなさいという課題です。思い出せなければどうすればいいのでしょうか?自分のノートを見れば済むことを誰かに聞くしかありません。この活動のねらいが私にはよくわかりませんでした。

子どもが考えることはあまりありません。当然テンションは上がっていきます。授業者は机の間を歩きながら子どもたち話しかけたり、質問に答えたりしています。グループ活動を導入するねらいの一つは、自分たちで課題を解決させることなのですが、それを授業者がじゃまをしていることに気づきません。全体をよく見て、参加できていない子どもがいればかかわれるように声をかける。活動が止まっているグループが目立つようなら、いったん止めて、困っていることを共有するといったことが必要です。

この活動の評価をどうするのかも疑問でした。わかりやすい説明というのであれば、それはどのようなものかを意識させることが必要です。この時間に子どもたちは何を考えたのか、よくわからない授業でした。

3年生の社会科の授業は、大正デモクラシーの学習でした。
子どもたちはグループの隊形でワークシートをもとに個人作業をしています。よく集中して調べています。友だちに確認している姿も目につきます。グループ隊形での作業に慣れているようでした。
作業を終えて、元の隊形に戻して授業者がしゃべり始めます。大正デモクラシーはいろいろなことがあって、整理しないとわかりにくいので普段使わないワークシートを使ったと説明します。
挙手に頼らず、子どもを指名して「ワークシートの労働者の1920年のところに何と書いてあるか」と聞きます。「初のメーデー」と返ってきます。それを受けて、「メーデーの資料で君たちが見るのはおそらくここ」と、資料をディスプレイに映し出します。また子どもを指名して、「この資料で何に気づいた?」と問いかけます。「右側に失業防止と書いてある」と子どもが答えます。ここで子どもたちの顔が上がらないのが気になります。ディスプレイを見ている子どもが何人かいますが、ほとんどの子どもは手元の資料の方を見ます。せっかくディスプレイを使うのですから、全員の顔を上げさせたいところです。また、友だちが発言している時には、そちらを見てほしいとも思います。
子どもに発言させているのですが、一人の発言を受けてすぐに次に進みます。ほとんどの子どもがそのことを書けているのかもしれませんが、きちんと共有したいところです。子どもたちはワークシートの答が気になるので、どうしてもそこから目が離せませんでした。

「どんな政党ができたか調べた人いる?」と問いかけます。ほとんど手が挙がりません。見つけた子どもに「どこに載っている?」と聞きます。教科書や資料と子どもをつなぐよい場面です。その場所が言われると子どもたちはすぐに手を動かします。よい反応です。ところが、「ここに載っています」と、授業者がわざわざ教科書を開いて見せました。しかし、教科書は小さいのでよく見えませんし、ほとんどの子どもは見ていません。隣同士で確認するといったことをすればよかったと思います。

子どもたちがせっかくいろいろと調べたのですがから、もっと活躍させたいところでした。必ず子どもに問いかけて発言させるのですが、それに続いて、授業者が長く説明をしてしまいます。授業者が話したいことを、子どもたちにどうやって言わせるかを考えてほしいと思いました。

この時間には、子どもたちが調べたことをもとに考える場面がなかったことが残念です。子どもたちはよく動きますから、調べることをもう少し絞って考える時間をつくり、「こういったいろいろなことが、短い大正時代に起こったのはなぜだったんだろう?」といった問いを発すれば、きっとグループで考えてくれたと思います。
また、調べるにしても、例えば初のメーデーの新聞記事を見せて、「なぜこの年だったのか?」といった問いかけをして、疑問をもたせたりするとまた違った動きになったと思います。
もう一工夫で、授業はずいぶんよくなると思いました。

この続きは、明日の日記で。
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