私立の中学校高等学校で新人の授業を見る

私立の中学校高等学校で授業アドバイスと今年度の進め方の打ち合わせを行ってきました。
今年度は学級数も増え、それに伴い講師を含めた新人が増えています。今回はその内3人の授業を中心に見ました。

国語の新人は、新卒で教壇に立ってまだ1月です。これまで全く縁のなかった地域に4月からの赴任です。
高校2年生の現代文の授業でした。一言で言うと「余裕がない」です。自分がしゃべることで精一杯で子どもを見ることができません。授業者がしゃべっている時間が長いため、参加できずに倒れている子どももいます。授業者はそういう子どもとどうかかわっていいのかわからないようです。横を通り過ぎても声をかけることができません。倒れていても目は開けています。本当は先生にかかわってほしかったのでしょう。しばらくすれば起きて授業に参加します。決してやる気のない子どもたちではありません。子ども同士になるとしっかりと動くことができます。明確な課題を与えて子どもたちの活動中心にすれば授業の様子は大きく変わると思います。
一問一答で進みますが、一つひとつの発問のつながりがよくわかりません。自分が大切だと思うことは「覚えておいてください」と言うのですが、子どもたちからするとその理由がよくわかりません。
時々よい表情で子どもたちを見るのですが、それが続きません。一生懸命にしゃべるのですが、子どもたちに言葉が届いていないという印象でした。
最後に「しとる」という方言の話をしたのですが、子どもたちはよく聞いていました。余談ですので、授業者にも余裕があったのでしょう。
授業者は、4種類の授業を受け持っているそうです。授業準備に追われていっぱいいっぱいだと言っていました。高等学校は選択やコースの関係で科目が増えるので致し方ないのですが、なかなか厳しそうです。余裕を持って授業に臨めと言うのが無理なのかもしれません。私から、大きく2点を意識してお話ししました。一つは、とにかく常に笑顔で子どもたちの様子をよく見ることです。子どもたちがどのような時によい反応するかを意識することで、しだいに授業のポイントが見えてくると思います。もう一つは、まわりの先生に聞くことです。一人で考えてもなかなか先は見えてきません、先輩に聞いたり授業を見せてもらったりすることで、どのように授業を組み立てればいいかがわかると思います。
毎日かなりのプレッシャーを感じて授業に向かっているようです。まわりの先生に支えてもらえるように、私からも働きかける必要がありそうです。

数学の新人も、教師経験のない方でした。2年生の授業でしたが、確認テストの場面でした。
この確認テストの位置づけがわかりませんでした。問題はけっこうな数があります。子どもたちは真剣に取り組んでいますが、同じ問題を何度も何度も消してはやり直している子どももいます。子どもたちがつまずいている問題はある程度共通のようです。授業者は時々机間指導をしていますが、何をみているのかはよくわかりません。時間になって回収をして、次に進みます。子どもたちのつまずきを見つけて、再度学習させるのであれば、一定時間経った後に教科書やノートを見てもよいようにすればいいでしょう。まわりと相談させるのもよい方法です。せっかく子どもがわからないことを一生懸命考えていても、それで終わってしまえばあまり意味はありません。中には力尽きて倒れる子どもが出てきます。時間延長をしたのですが、倒れている子どもが復活してできるようにはなりません。時間のムダです。評価のためのテストをこの段階でする意味はあまりありません。子どもたちがわかる、できるようにすることを優先すべきです。回収した答案を採点してできるようになるのでしょうか?できるようになるためにどんな活動が必要か考えて授業を構成することが必要です。
ある問題を「宿題にした気がする」と言って、そのまま進めます。複素数の実部と虚部を答える問題です。授業者は一問一答で答を確認していきますが、何の意味があるのでしょうか?実部と虚部を言うだけであれば小学生でもできます。「2」の実部と虚部を考えるのに虚部は「ない」という言葉が出てきます。この言葉をもとに、「ない」と「0」の関係をきちんと押さえることが必要です。iにかかっている係数がないので0という、おかしな説明をします。形式的に係数と見ることができますが、そうではありません。授業者自身複素数の数学的な意味がわかっていません。虚部が0の複素数の部分集合は実数と同型になります。複素数が実数の自然な拡張になっていることに気づかせるという意味もある問題です。
多項式を等号で結び、このとき係数が等しいことで説明をしますが、これも数学的におかしいものです。まず2つの式が式として等しいのか(恒等式)、値が等しいのか(方程式)を明確にしていません。恒等式が等しいのと複素数が等しいのとは本質的に異なります。授業者は、虚数は「ない」と言いますが、そうなのでしょうか?2の平方根は「ある」と言います。どのように表現されるかの問題で、それぞれ、実数から、有理数から「拡張された数」なのです。複素数は複素平面で表現することで、現実のものとして目に見えてくるのです。
問の答を教えることが数学の授業のように思っています。なぜそうなるかを考える場面もありません。問題ごとに解く手順を教えるだけです。意味がわからなくても疑問持たずに、手順を覚えて何とか問題を解く子どもしか授業についていくことができません。この先生の授業観を変えることが必要だと思います。
教科書の問の数字やその順番にも意味があります。教科書はなぜこのように記述しているのだろう、このことを学ぶ意味は何だろうかといったことを考えることが始めてほしいと思います。

この続きは明日の日記で。
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