子どもたちのよさと次のへの課題が見えた数学の授業

2月に私立の中学校高等学校の授業研究に参加しました。この日は、公開授業の形で4人の方が授業研究をしてくださいました。特にうれしかったのが、数学の先生が2人も挑戦して下さったことです。

高校2年生の数学は、復習の問題を子どもたちが前で説明する形の授業でした。
授業者は子どもたち自身が解説し納得することを目指したようです。子どもの板書を教師が一方的に評価し解説するスタイルを変えようとしていることがわかります。子どもが一生懸命に自分の考えを説明しています。授業者は柔らかい言葉と表情で、必要に応じて発表者に質問したり、補足説明をしたりします。受容的なよい雰囲気です。しかし、残念なのは子どもたちの多くが友だちの説明よりも、板書を写すことに意識が行っているように見えることです。聞く側の子どもをいかに主体的に参加させるかが次の課題です。発表者と子どもたちをつなぐことを意識するとよいと思います。具体的には、「この部分の説明、納得できた?」と子どもたちに問いかけたり、時には「○○さんの説明してくれたこともう1回言ってくれる?」と聞いている子どもに発言をうながしたりするとよいでしょう。また、補足すべきことも「この式が出てきたのはどういうことか、○○さんの代わりに誰か説明してくれるかな?」というように、子どもたち自身にさせることが大切です。
数学の授業では子どもたちに板書させることが多いのですが、多くの子どもたちは自分ノートを見ながら黒板に写します。これは非常にムダな作業です。ノートを見ずに板書をしながら説明させるという方法もありますが、これはかなり高度になります。こういう場面ではICT機器の活用がとても有効です。ノートを実物投影機やカメラを使ってスクリーンに映せば大きく時間が短縮できます。こういったことにも挑戦してほしいと思います。今後どのように授業が変化していくかとても楽しみになる授業でした。

もう一つの2年生の数学は、積分の練習問題のワークシートを子どもたち自身で解かせる場面でした。
「どんな方法を使ってもいい」と相談することを推奨しています。子どもたちの表情はとてもよく、多くの子どもが楽しそうに問題に取り組んでいます。子どもたちは与えられた複数枚のワークシートに最後までしっかりと取り組んでいました。
ただ、相談者を子どもに自由に選ばせると、どうしても仲のよい子ども同士に偏りがちになります。そのためにテンションが上がりやすくなっています。また、手っ取り早く「これでいい?」と授業者に聞く子どももいました。参観している数学の先生に教えてもらう子どももいます。教師に教えてもらうのは間違いのない安全な方法ですが、無批判で受け入れることになります。子どもが自分で考える力をそいでしまうのです。それに対して子ども同士であれば、頭から信じることなく納得しようと考えます。できるだけ教師が個別に教えないようにすることが大切です。
友だちや先生とかかわりながら問題に取り組んでいる子どもたちがいる反面、自分一人で取り組む子どももいます。中にはなかなか手がつかずに困っている子どももいました。友だちに自分から相談できない子どももいるのです。こういった子どもに対しては、「まわりと相談してごらん」と他の子どもにつなぐことが必要です。
子どもたちは、ワークシートを1枚完成するごとに授業者に提出します。授業者はそれをチェックして不備があれば指摘して返します。よくあるやり方なのですが、常に先生がチェックするのでは、自分で修正する力がつきません。例えば、「グループで互いに吟味して完璧な解答をつくる」という課題にするといったやり方もあります。その時は、あまり簡単な問題ではなく、みんなで頭をひねるようなジャンプの課題である必要があります。
今回は面積を求める問題で、解答は「与えられた関数のグラフをかく」「求めたい面積がグラフのどの部分かを知る」「面積を求める式を立てる」「式を計算する」といったステップに分かれます。最初の「グラフをかく」部分ができなければ先に進みませんが、このグラフでつまずいている子どもが多いことが気になりました。中には、グラフをかかずに式を立てている子どももいます。1年生で学習した2次関数のグラフの基本が定着していないように見えます。もしそうであれば、子どもたちがこの部分を自分たちで復習するための手立てを考えておく必要があります。友だちに聞くというのも一つの方法ですが、1年生の教科書を用意しておくといったことも必要です。また、子どもたちの状況に応じて、グラフだけについて確認する場面をつくることも必要かもしれません。こういった形態の学習では、子どもが自力で解決するために必要なものが何かを考えておくことが大切になります。
また、先ほどの授業にも共通するのですが、子どもたちの解答に言葉の説明が少ないことが気になります。式の羅列です。どうも子どもたちが「数学は最終的な答がでればよい」と思っている節があります。数学で大切なのは、過程を論理的に説明することです。「なぜこの式になるのか?」「なぜこのような変形ができるのか?」といった疑問に対する最低限の説明が必要です。根拠を意識させることを大切にしてほしいと思います。
子どもたちが最後まで意欲的に取り組んでいたことが印象的でした。子どもたちのよさと次への課題が見えた、学びの多い授業でした。

この続きは明日の日記で。
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