愛される学校づくりフォーラム 2016 in東京(午前の部)(その1)

2月に開催された「愛される学校づくりフォーラム2016 in東京」の午前の部は、昨年と同じく日ごろの愛される学校づくり研究会の公開研究会の形で行われました。
岐阜聖徳学園大学教授の玉置崇先生のコーディネートで進んでいきます。玉置先生は、最初に「この協議を聞いて会場の皆さんは、スッキリしない、ストレスが溜まると思います」と会場に伝えます。一つの結論にたどり着くことをしないからです。協議を聞きながら、それぞれが、一緒に考え、悩んでほしいということです。
今回のテーマは4つです。
1つ目は「『授業の見方』を高めるには」ということで、私が提案を行いました。

授業を見る時どうしても授業者を中心に見ることが多いのですが、本当にそれでよいのでしょうか?授業で一番大切なのは子どもがどのような力をつけたかです。全く同じ説明をしても、子どもの反応は学級によっても、もちろん一人ひとりも異なります。その子どもたちのありようを見なければ、その授業で何が起こっているのかを知ることはできません。全員参加の授業を目指すのであれば、まず子どもたちが全員参加できているかどうかを知らなければその先に進みません。また、自分が授業者となることを考えれば、子どもたちの姿から情報を得る力が必要です。そのためにも「子どもたちを見る」ことをしてほしいのです。

子どもの姿から学ぶためには、その姿をつくる要因を考えることが大切です。子どもたちのよい姿勢を見て、集中しているからなのか、緊張して固くなっているだけなのかがわからなければ、判断を誤ってしまいます。このことを意識していないと、子どもたちからの隠れたメッセージを読み取ることができないのです。
その子どもたちの姿をつくった要因が、授業者が意図したものなのかどうかが次の視点です。授業者は子どもたちどうあってほしかったのか、そのためにどんな働きかけをしたのか、してきたのかを考えるのです。秋に授業を見ると、授業者が「作業を止めて」というだけで子どもたちがすぐに手を止め、授業者に集中するといった場面に出会います。子どもたちが素晴らしいと言いますが、その姿をつくったのは間違いなく4月からそれまでの授業者の働きかけです。意図したことが達成されてしまうと、それまでの働きかけは必要なくなり、外からは見えなくなります。それがどのようなものなのかを想像することも必要です。
授業者の働きかけの意図の背景にあるものを読み取ることも大切です。例えば、授業者が笑顔で子どもたちを見ながら、よい姿勢になった子どもを名前でほめている場面があります。子どもたちが素早くよい姿勢になった姿を見て、「こうすればいいのだ」と思ってまねをしても上手くいくとは限りません。この授業者は、子どもたちが指示しなくても動けることを意図して、「よい姿勢になって」といった指示をしていません。また普段から子どもたちとの関係を大切にして、思ったように動かないからといって叱らないようにしています。この場面だけをまねしても、他の場面で指示をして、できないと叱っているようでは子どもたちは育ちません。
一方、意図せずに起こっていることであれば、その原因を考えることが必要です。原因を知ることで修正することができます。よい結果が得られているのであれば、そのことを意図的に活用すれば再現が可能になります。

授業を見あうことで多様な視点に出会え、新たな視点で自分の授業を振り返ることで進化します。同じ視点で授業を見あうことで、授業が深化し、学校の授業基盤がそろっていきます。授業を見あうことを大切にしてほしいと思います。

このような提案に対して、なるほどと言って終わらないのが愛される学校づくり研究会です。賛否様々な意見がでてきます。初任者指導を担当している会員からは、「子どもたちの首が授業者の移動に伴って動くがどうかで集中して聞いているかわかる」という私の意見を例に、経験の浅い者はそこまで子どもを見ている余裕はない。まず自分が次に何をするかで精一杯だ。だから、授業者を見て、まず教師が何をすべきかを知ることが大切だと主張されます。また、授業の達人級の会員からは、「子どもの姿をつくるのは授業者だ。だから、両方とも見られるように、教室の真ん中あたりから授業を見る」という意見が出されます。もちろん私の意見に賛同していただける方もいらっしゃいます。それぞれに、納得性のある理由があります。
子どもを見ると言っても、授業者を全く見ないわけではありません。授業者の声もききます。しかし、意図して子どもを見ようとしないとどうしても授業者の一挙手一投足に注意が集中してしまいます。授業者の技術が高ければ、その授業技術に目を奪われます。少経験者の拙い授業であれば、そのまずい点を指摘することに意識が行ってしまいがちです。そうではなく、子どもが授業をつくる上での一番の要素であることを意識してほしいのです。
授業者のレベルが上がれば上がるほど、子どもの反応によって次の授業者の行動は変わります。子どもが常にトリガーとなって授業は動いていくのです。その子どもの様子を見落としてしまうと、授業者の行動の意図が見えなくなり、その場面から学ぶことができなくなるのです。

玉置先生は、対立する意見を上手く引き出しながら議論を深めていきます。会場の方々も、それぞれの立場で議論に参加しようとされていたのではないでしょうか。結論を出すことはされませんでしたが、私としては、子どもを見ることを意識する方が少しでも増えればうれしく思います。

この続きは「愛される学校づくりフォーラム 2016 in東京(午前の部)(その2)」で。
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