つけたい力とその力をどのようにしてつけるかを意識する

前回の日記の続きです。

1年生の英語の授業者は4年目の先生でした。
英語の授業では聞くことと読むことが同時に行われる場面がよくあります。授業者の読みに続いて子どもたちが本文を見ながら繰り返すのです。読む力というのであれば、聞かずに読めるようになることが目標のはずです。これが中心では読めるようになるというよりも、暗唱に近くなります。読む力をつけるためのスッテプが見えないのです。言葉として理解できていなければ、ただ字面を追って読めるようになるだけで意味がありません。聞く話すが先にきちんとできてから、読む練習をするべきだと思いますが、いかがでしょうか?
授業者は”repeat after CD”で”powerful”に読むように指示します。「大きな声で元気よく」ということでしょうか。ともすると子どもたちは発音よりも声の大きさを優先してしまいます。機械的に大きな声で読む力がついても、初めて見る英文を読めるようにはなりません。言葉としての理解と読むことは不可分のはずです。暗唱するように読めるようになっても、生きた言葉として使う力はつかないのです。

授業者が活動中に子どもたちの様子をあまり見ていないのが気になります。質問に対して、全員がきちんと正しく答えられていない時でも、そのまま進めています。
英語のナレーションの入ったドキュメンタリータッチの映像を子どもたちに見せます。多くの子どもたちは真剣に見入っていますが、中には視線が外れている子どももいました。授業者は子どもたちと一緒にビデオを見ています。このことに気づいていたでしょうか?
ビデオを観た後、”Do you want to swim here?”と質問しますが、子どもたちは反応できません。一生懸命映像を見てもどれだけの子どもがこのナレーションを理解したのでしょうか。そして、理解できるようになるための活動はどこにあったのでしょうか。
聞き取りの場面でも、同様のことが言えます。相談させることをしますが、答を言われても聞けるようにはなりません。どんな言葉があったか、どんな内容だったかを友だちから聞いた後、もう一度聞かせる時間を取らなければ、確認することもできません。

子どもと会話形式のやり取りをする場面でのことです。誘いを断るのに、子どもが”Busy.”と単語で答えました。それに対し授業者は、”I’m busy.”と修正しました。せめて、”You are busy.”と返したいところです。せっかくの会話形式なのに、子どもが言うべき言葉を授業者が言ってしまえば一問一答の答探しになっています。”Oh, you are busy, aren’t you?”(”tag question”は習っていないでしょうが)といった言葉のやり取りをしながら修正させたり、”Is ○○san busy?”と子どもたち問いかけて気づかせたりしたいところです。もちろんストレートに、「省略しないで言って」と修正させてもよいと思います。子どもに考えさせる場面をもっと意識してつくってほしいと思います。
また、子どもの発言や活動を評価する場面が少なかったと思います。自己評価でもよいので、何ができればよいのかという目標の設定と合わせて意識する必要があります。この時目標は、「早く読む」「大きな声で読む」といった英語の本質とズレたものにならないようにしてほしいと思います。

授業者は表情もよく、子どもたちの参加意欲も高いのですが、英語のどのような力をどのようにしてつけるのかが明確になっていないため、子どもたちはただ活動しているだけのように感じました。つけたい力と手段を意識するだけで、授業はぐっとよくなると思います。

この続きは明日の日記で。
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