先生方の思いを感じる

私立の中高等学校で授業アドバイスを行ってきました。今回も先生方と一緒に授業参観をさせていただきました。

この日は、公共交通機関でおじゃましたのでこの学校の生徒さんたちの登校の様子を見ることができました。てっきりスマホを見ながら歩いている生徒が多いと思っていたのですが、まったくと言っていいほどそのような姿を見ることはありませんでした。交通ルールもしっかりと守れていて、とても感心しました。先生方が通学の様子をチェックしているわけでもないのに、このような姿であることは、子どもたちが自制できるということです。この子どもたちであれば、授業でもっと高いことを求めても十分に答えてくれると思いました。先生方が彼らの可能性をもっともっと信じてあげることを願います。

校内を回って感じるのが、先生方の授業の幅が広がってきていることです。子どもたち自身による活動が中心の授業もあれば、授業者が黒板に向かってしゃべり続けている授業もあります。講義型の授業でも、子どもたちを上手く引き付けて集中させている授業もあります。もちろん同じ子どもたちでも、その姿は授業によって変わってきます。この日は冬休みまであと1週間ほどの時期だったので、気の緩みもでるころだと思っていましたが、その要素よりも授業のありようの差の方が子どもたちの姿に大きく影響しているように感じました。
子どもたちは柔軟かつ功利的です。ノートを取っておくだけでよいと思えば、それ以外のことにはエネルギーを割きません。やりたいと意欲的になれば、自分たちで考え続けることもできます。子どもたちは、自分たちでかかわりながら学習することをいくつかの授業で経験し、そういった授業のよさやかかわり方を学んできています。そのため、授業者がそのような授業を目指せば、子どもたちはすぐに対応できるようになっています。子どもたちの授業を受けるための基盤はかなりできているのです。授業においても多様性は大切ですが、大きな方向性は学校の中で共有できるとよいと思います。今の子どもたちの状態であれば、よい方向に一気に変わっていくと思います。

また、グループ活動といった子どもたちがかかわり合う授業では、次の課題に先生方気づき始めているように思います。子どもたちはグループで相談するように指示すれば、きちんとかかわれます。しかし、その課題が曖昧なものであったり、結論を出すための客観的な指標がなかったりすれば、でてくる結論は発散してしまいます。そういうことに気づいている先生が増えてきています。ただ、子どもたちが話し合うことに満足するのではなく、その結果、問題解決ができたのか、ねらいを達成することができたのかということを求めるようになってきているのです。今後、確実に授業力が上がっていくことが期待できると思います。

この日一緒に回った先生方には、子どもたちをしっかりと見ていただくことができたと思います。特に子どもたちとまっすぐに向き合う熱心な先生からは多くの質問もいただき、私にとってもとても充実した時間となりました。この先生は、過去の経験からでしょうか、子どもたちはあまり能力が高くないので、教えてやらなければ、きちんと指導なければ力がつかないと思っているようでした。しかし、子どもたちが非常に集中して課題に取り組む姿を見て、素直に子どもたちのポテンシャルを感じ取ってくれたように思います。ただ、子どもたちに考えさせる時間を多くとろうとすると、どうしても進度が遅れるのではと心配になるようです。高等学校は特に学習内容が多いために進度が気になるのはよくわかります。大切なことは、すべての問題や内容を網羅することではなく、何を重点的にやればよいか選択することです。ポイントとなることをきちんと学習すれば、後は子どもたち自身で学習することができるはずです。その選択をして子どもたちの課題とすることが、これからの教師に求められる力だと思います。子どもたちをとても大切にしている先生です。目指すべきところは理解していただけたと思います。きっと子どもたちを信じて授業を工夫してくださると思います。今後がとても楽しみです。

国際バカロレア(IB)に関する研修を受けた方が、その目指すものにとても関心を持たれたようでした。今すぐこの学校をIB認定校にするという選択肢はないかもしれませんが、そのカリキュラムの一部でも取り入れることができないかと話されました。私自身もIBについては勉強しようと思っていますので、認定校でなくてもそのよさを活かすことを先生方と一緒に考えたいと思います。よい刺激をいただけました。

発達障害の子どもたちの対応についても担当者とお話させていただきました。この方の働きかけもあり、発達障害についての理解は深まっているようですが、具体的にどう対応すればよいのか先生方に戸惑いがあるようです。マニュアルのようなものがあれば動きやすいと考える方もいらっしゃると思いますが、個人差があるので一律に対応することは難しいと思います。発達障害の基本を共通で理解した上で、実際の子どもの様子をもとに情報交換、相談して対応を探っていくことが基本です。手間がかかるように思えますが、チームで対応を考えて経験していくことで、個人の対応力も上がってくるはずです。このことを先生方に理解していただくことが大切でしょう。こういった方面でもアドバイスをさせていただくことを考えたいと思います。

今年度は、先生方と個別に話をする機会が増え、この学校の先生方の子どもたちに対する前向きな思いにたくさん接することができました。こういった思いを具体的な子どもたちの姿で表現し共有することで学校がよい方向に大きく変わると感じています。来年度に向けて、この点を考えていきたいと思います。
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